風の姉妹と過ごした日々   作:零之悪夢

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風タイトルを作るのに時間かかりますね……


冷たい風は止まることを知らない

今日は修羅場だ。どのように修羅場であるかと言うと十香が転校してきてそれに対抗しようとしている鳶一折紙とそれに対抗しようとしている耶俱矢と夕弦の四人で争いを始めたのである。俺的には争わないで欲しい。切実に。

 

 「シドー!くっきぃとやらを作ったから食べてくれ!」

 

 「夜刀神十香よりもこっちを食べた方が良い」

 

 「士道?勿論、私の作った奴を食べるよね?」

 

 「士道?三人よりも私の方が美味しいですよ」

 

困った。男はハーレムに憧れると言うが、なってしまった本人は苦労話しかない。どうやってこの雰囲気を打開しようか考えを巡らせる。そうして、考え付いたことを実行してみる。

 

 「とりあえず沈まれ。ちゃんとお前らの作ったクッキーは食べてやるから……十香は……すげぇ甘いな。……折紙は均等に味は纏まっているけど遊びがあってもいいかもな。耶倶矢は……俺の作った奴参考にしたのか?あれは、クッキー用じゃないんだよ……だけど美味しいな。夕弦は……辛っ!!……でも、甘くなった……味変は良いけど個性的すぎるからもうちょっと考えような?皆、俺に何食べさせようとしてるんだよ……俺は普通で良いのに」

 

そう、一人一人に感想と改善点を上げ自分が食べたいものをさりげなく言う。これこそ必勝法である。

 

 「むう……それならばもっと特訓しなければな!!」

 

修羅場をくぐりぬけ放課後。俺は久しぶりに、図書室に入っていた……というのもあの時、真士が言っていた<龍風騎士>について調べることにしたのだ。スマホで調べても良いのだが……文献の方が詳しく乗っていたりするのである。

 

 「へぇ……魚なんだ。それを原典としてドラゴンの姿になった幻獣ね……」

 

思ったよりも興味深い話を見ることが出来た。恐らく、昔に夢見た龍をモチーフとして耶倶矢、夕弦の<颶風騎士>と融合させたものが俺の<龍風騎士>なのだろう……あの鎧は確か、ゲームに出てきた竜騎士が身に付けていた鎧だと思うのだが。確かにそういう事を考えていた時期もあったし黒歴史ではあるけど……実現すると心が躍る。

 

 「空を飛ぶために龍を想像する……あの頃は純粋だったな……」

 

子供の頃は空を飛ぶ生き物と言えば鳥を思い浮かべると思うが、あの時の俺は鳥を思い浮かべず龍を思い浮かべたのだ。人が空を飛ぶとき、鳥に乗ることは現実的ではない、ならば空想上に存在する龍という存在は人を乗せあらゆる場所を飛び回る……あの自由な翼が羨ましかった。

 

 「家に帰って、飯の準備っと……」

 

本を元に戻し、学校を出る。帰り道に商店街で買い物をし帰り道の途中から雨が降り始めた。今日は、雨は降らないと言っていたはずだが。最近よく外れている。

 

 「結構降るな……ずぶ濡れ確定かよ」

 

走って家に帰ろうと走り出したがその横にある神社に女の子が居た。不思議な感覚が言っている。あの子は精霊だと……ずるべったぁぁ!!と俺もどうやったらそんな風に転べるのか分からないが、とりあえず助けに行く。

 

 「大丈夫か!?怪我してないか?」

 

 「ひ……痛く……しないでください……」

 

すごく怯えている。人が怖いものだと教えられているようで近づくことすら恐怖の対象の様だ。

 

 「これ、君のだろう?ほら……」

 

彼女が持っていたコミカルなパペットを手に着けてあげると急にうねうねと動き始めた。

 

 「っぷはー!!助かったよー、おにーさん」

 

彼女が話しているとは思えない位はきはきとしゃべり始めたが、何か違和感があった。彼女が本当に話しているとは思えず、このパペットに人格があるような……?

 

 「いや、人として困った人を助けるのは当たり前だからな……寒っ!!……へくしゅん!!」

 

くしゃみをしたら其処ら一帯に暴風が巻き起こる。気を付けていないと精霊の力は勝手に出てしまうらしい。

 

 「おんーや?おにーさんもよしのん達と一緒なのかなぁ?」

 

 「同じではないけど……考えてることはあっていると思う。気を抜きすぎて出ちゃっただけだからさ」

 

まさか、くしゃみで風を巻き起こすとは……颶風騎士の力、恐るべし。

 

 「ああ、でも時間だから……じゃあねーおにーさん」

 

そして走り去っていった。とりあえず……帰ろう……

 

 「ただいま……皆帰ってきてるのか。とりあえず、風呂入るか……」

 

雨で濡れた体を温める為に着替えを持ってきて風呂に入る。少し風邪を引いたかもしれないと思いつつも、今日あった子の事を考える……臆病と陽気、性格が正反対なのは何か理由があるのだろうか?

 

 「……考えても仕方ないか。……ん?」

 

何か扉の前でもぞもぞ動いている影。二つ。嫌な予感を察知した俺はとりあえず声を掛けてみる。

 

 「あのー?入ってますけどー?}

 

 「士道?入ってたの?」

 

声の感じ的に耶倶矢なので、もう一人は夕弦だろう。しかし、何故入っていることに気づかない?服は置いてあるので分かるはずだが。

 

 「入ってたんだけど……着替えあるから分からなかったか?」

 

 「応答。着替えはありませんでした。そして、琴里からお風呂が空いていると言っていたので入ろうと思ったのですが」

 

極悪非道な妹だ。俺の困る顔を楽しむためにこういうトラップを仕掛けているのだろう。本当に困る。

 

 「分かった……今上がるから、二人が入ったらどうだ?俺は、少し妹を締め上げる」

 

この、事故を起こそうとした犯人に制裁を与えるとしよう。風呂から上がり、リビングに居る犯人に話しかける。

 

 「よう……よくもやってくれたなぁ……」

 

俺が本気で怒っていることに琴里が驚く。謝っても許さんが。

 

 「俺は誠実なお付き合いをしているんだが……壊そうとしたよな?……制裁を与えてやる!!」

 

とりあえず縛り付けて、こちょこちょの刑に処しておけば暫くはこんなことはしないだろう。

 

 「ふぅ……満足、満足。もうこんなことするなよ?」

 

 「はぁ……自分の身を持って理解したからもうやらないわよ」

 

数十分間に渡るこちょこちょを食らった琴里は、やらない事を心に決めたらしい。そうすると耶倶矢と夕弦がリビングに入ってきた。

 

 「はぁ……さっぱりしたー。制裁は終わったの?」

 

 「終わったー。お前らもやるなよ?そういうのはもう少し後だな」

 

気になっているのはそうだが、やりたくない。不純な動機を作りたくないと言うのが理由だ。

 

 「さ、飯だ飯。さっさと作るから待っててな?」

 

そして調理をしている最中にそういえばと思い出した。

 

 「琴里?何か精霊みたいな子に会ったんだが……そっちで確認してないか?」

 

 「ん?特に確認してないわ……どんな子だったの?」

 

合羽を着ていてパペットを付けている小さな女の子だと言った。

 

 「……<ハーミット>ね。静粛現界して、現れたけど直ぐに隣界に戻ったって感じね」

 

 「とりあえず精霊ってことは確定なんだな。問題はすごい怯えるんだよな……」

 

それをどうにかすれば普通の女の子なんだけどなぁ……と思う。あの陽気なパペットの様に話せれば怯えなくても大丈夫になると思うのだが。

 

 「考えても仕方ないか……さ、出来たぞ。食べた食べた」

 

次会った時にでも、どうにかすればいいか。そう思い、食事を済ませて寝た。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

次の日、学校へ向かうと思ったより早く着いてしまった。

 

 「八時前って……俺、どうかしたか?」

 

なんとなく朝食を作り、食べ、学校へ向かった時間はいつも通りだったはずだが……

 

 「早く着いたなぁ……何しよう」

 

そう考えていると後ろから何かを感じた。

 

 「おはよう、士道」

 

 「おおう、おはよう折紙……」

 

あの修羅場事件から彼女の事を折紙と呼ばなければならなくなったのだが、何か違和感がある。前まで鳶一と呼んでいたのですごい言いやすい事が不思議だ。

 

 「聞きたいことがあったんだが……いいか?」

 

頷いた彼女を見て、話す。

 

 「前、精霊に親を殺されたって言ってたよな?だからって……精霊を殺すのはおかしくないか?あいつ等だって話すことも出来る。そうしようとは思わないのか?」

 

 「精霊は殺すべき存在。私の行動理念。それは変えられない……でも、上からの指示が無かったら私も他の方法を探す」

 

別の方法、まあデートしてデレさせるとまではいかないが対話を試みようとしていることは分かった。折紙にもちゃんと区別を付けているらしい。

 

 「そうか……それを聞けて良かった。後、無暗に抱きつこうとするな。彼女居るの分かってるだろ?」

 

 「彼女が居ようと関係ない。愛人の方に愛を注ぐいうのはよくあること」

 

何故ドラマの方に行くのか……俺はそんなことしないけど。

 

 「満足するまで良いけど……人前ではしないで欲しいんだが。俺こんなこと二人にやったことないぞ」

 

 「頼めばいい。二人なら快くやってくれる」

 

そうして二人が抱きついて来て甘えてくる姿を想像する……

 

 「……やば、鼻血でた。破壊力有りすぎる」

 

 「士道はまだまだ純粋だから」

 

そうなのだろうか?俺、結構汚れてると思うけどなぁと思いつつもその後の授業を受けた。

 

 「……朝から疲れたな、時間の速さがおかしいというか何というか」

 

自分でも意識せずに颶風騎士を使っているのだろうか?扱えるようにするためにはもっと集中しなければならないのだろうか?例えば折紙の様に感情を無にして過ごしてみるとか……いや、耶倶矢と夕弦が心配するから無し。どうすればいいだろうか。

 

 「今日はシドーがすごい速さで動いていた気がするぞ。何だろうか……風みたいにびゅーと行ったという方が正しいだろうか?」

 

 「無意識に颶風騎士を使ってるみたいだな……十香はどうやって鏖殺公を扱ってるんだ?」

 

精霊は天使の扱いに長けている。師匠が近くに居るなら聞くべきだろう。

 

 「鏖殺公をどうやって扱っているか……私の場合は思いをぶつけるだろうか?例えば、シドーを守りたいとか……敵を倒すという事を考えているな」

 

他の人から学ぶことは多いと実感する。純粋な意思を持っている十香はそういう事を考えて行動しているのだろう。純粋すぎて逆にそれが戦う時以外に足を引っ張っているのだと思う。

 

 「思いをぶつける……か。分かりやすくすれば正しい心で使えばいいって事か」

 

自分が思っている事、正しい心を持ち使う。俺の一番は耶倶矢と夕弦だからそれを守る、または一緒に居る為に生き抜くと考えればいいのだろうか?

 

 「まあ、本番で合わせるしかないか……アドバイスありがとな」

 

 「シドーは困っている人が居たら手を差し伸べるだろう?それを真似しただけだ」

 

十香も少しづつ成長している。精霊だった時の彼女ではなく人として生きようとしている。他の精霊たちもこうやって生きて欲しい……ならば、俺が頑張って精霊を封印する。その信念が強くなった気がした。

 

 「俺は……もっと手を差し伸べることが出来るのか?」

 

自分の正義と信念を貫こうとしても、それは一部にしか通用しない。別にそれでいいのかもしれない。俺が手を差し伸べることが出来る範囲で手助けをする。それを決めた。

 

 「何難しい事考えてるんだが……十香?晩飯は何が良い?」

 

 「むう……ハンバーグが良いぞ!!」

 

うちのお嬢様二人と健啖家の十香が五河家の食卓の決定権を持っているため俺はそれに従うまでである。まあ、食べてくれる彼女たちの笑顔を見たいと言うのが本音だが。

 

 「さて、帰りながら買い物だな」

 

帰りながら食材を買う。十香が居る為商店街のお店の人はおまけをしてくれる……俺の時はしてくれないのに……

 

 「シドー、今日はいっぱいもらえたな!」

 

 「そうだな……俺には魅力不足なのか……ん?」

 

帰り道、昨日会った顔を見た。相変わらず合羽を着てパペットを持っている彼女を見間違えるわけがない。

 

 「十香、あの子が昨日言ってた子だ。ちょっと話してみるか?」

 

 「そうだな!新しい精霊が来るのは嬉しいぞ!」

 

そして彼女に近づくと案の定怯えて後ずさる。

 

 「ひっ!!……痛く……しないで、ください……」

 

 「大丈夫だ、俺達は痛くしない。怯えなくても良い」

 

頭を撫でながら話すと思ったより大人しくなった。どれだけ他の人に痛くされたのやら。

 

 「ん?あの時のおにーさんじゃない。四糸乃を大人しくさせるなんて、流石だね」

 

 「君が四糸乃で、こっちがよしのん……でいいのか?」

 

あの時自分でよしのんと名乗っていた気がする。

 

 「そうそうー。何処かで言ってたかな?」

 

 「自分で言っていただろ?宜しくな」

 

そうして精霊、四糸乃を家に連れて行き食事を食べさせることにした。

 

 「ただいま~。……皆居るみたいだな、四糸乃?人がいっぱい居るけど大丈夫だからな?皆優しくしてくれるから」

 

頷く四糸乃を見てからリビングに入る。そうすると、ソファーに座っている耶倶矢と夕弦、椅子に座っている琴里がこちらを向いて来た。

 

 「士道?まさか連れてくるぐらいまで出来たの?ちょっと引くわ……」

 

 「うるせぇ、またされたくなかったらちゃんと見ててくれ。二人とも?優しく接してくれな?怖がりだから」

 

決して幼女に趣味があるわけではない、彼女持ちなのにそんなことするか。

 

 「自己紹介してなかったな……俺が五河士道で赤い髪の人が五河琴里、俺と一緒に居た人が夜刀神十香、ソファーに座っているのが八舞耶倶矢と八舞夕弦だ。後言うとみんな精霊だから安心してくれ」

 

それを言うと安心したようだ。それを他の四人に任せ、夕食の準備に取り掛かる……他の四人は話しながら俺の作っている風景を見ている……そんなに面白みもないと思っているが。

 

 「お前らそんなに作ってるの面白いか?あんまり見ないで欲しいんだが……」

 

見られているとすごく作りずらい。手が思う様にテキパキと動かなくなるのだ。

 

 「いやさ、なんていうの……士道が完璧な主夫だな~って思って何となく見ちゃうんだよね……私達も覚えれば作れるかもだし」

 

 「士道の技を模倣するのは難しいですし味の再現も出来ません。どうやって作っているかを研究できるので」

 

二人ほど研究者が居るようだが……意味がないと思う。自分でやって覚えた技術なのでオリジナルが入っているので他の人にはやりずらいと思う。

 

 「まあ、お母さんよりも料理うまくなったしね……ほぼ帰ってきたら士道が料理作ってるシーンしか見たことないわね」

 

 「そうなんだよな……俺も他の人の料理食べてみたいよ。死なない程度で」

 

主に夕弦と折紙が何か入れそうで怖い。耶倶矢はどちらかというと材料を間違えるタイプだ。十香は……分量を間違えるだけでまだまともだ。

 

 「あら、何か忘れてないかしら?」

 

 「お前は普通に作れるけど、あんまりさせたくない。何か作り方間違えそうで……まずは調理器具とか調理方法を学びなさい」

 

不安要素しかない。例えば、チョコレートを湯煎する時そのままチョコレートをお湯の中に入れるとか……容易に想像できる。

 

 「お前らにキッチンを渡すなら、俺を唸らせてからだな。火事起こしそうだ」

 

 「信用無いわね……まあ料理を作ってる本人が言ってるから反論できないけど」

 

四人に見られながらもなんとか作ることが出来た。精神的にすごい疲れた。

 

 「はい……ハンバーグ。おかわりもあるから大丈夫だぞ……少し休む……」

 

ソファーに横になって休憩する。四糸乃はよしのんと話しながら食べているのが見えたので大丈夫だろう。そして少しの間寝ることにした。

 

 「ん……何時だ?」

 

 「士道が寝てから30分しか経ってないわ。お早いお目覚めね」

 

少し寝るだけでも疲れは取れたようだ。しかしまあ、30分で回復するとは……本当に人間じゃなくなってきた感が否めない。

 

 「皆食べたのか?」

 

 「大体食べ終わってるわ。士道の分以外全て無くなったけど」

 

ブラックホールの胃袋を持つ十香が残さず食べたという事だろう。それでもまだ食べられると言ったりしているのはおかしいと思う。

 

 「俺も食べるかぁ……」

 

遅いが俺も食べ始め、皆はテレビを見始める。今日は忙しい一日だったなと思い返す。

 

 「洗い物……っと」

 

洗い物をして、何となく四人の方を見ると四糸乃を撫でまわしているようだ。人形のように可愛がるのは些かどうなのだろうか?

 

 「よし終わり……何やってんだ?お前ら……」

 

 「話を聞くはずが撫でまわし大会になっちゃってこの状況よ」

 

なんでそうなるかなぁ?子供に意地悪は良くないと思う。

 

 「はぁ……四糸乃?こいつ等に意地悪されなかったか?」

 

 「大丈夫……です……」

 

本当に優しい心を持っているなぁと実感する。女神に見えてきた。

 

 「よいしょっと……四糸乃もこれでゆっくりできるだろ?少し話を聞かせて欲しい」

 

四糸乃を膝の上に乗せて話す。こうしていると昔に琴里をなだめていた時を思い出しつつも話を聞いた。彼女は襲ってくるASTの人も痛いのは嫌であるからという理由で攻撃しないという優しい心を持っていたのだ。優しすぎるばかりに自分が痛みばかり貰う。可哀想な四糸乃を俺は救う事を決めた。

 

 「四糸乃にとってよしのんはどんな存在なんだ?」

 

彼女はヒーローを求めていたのだ。よしのんは自分に変わってやってくれるが居なくなるのが怖いとの事だ。

 

 「大丈夫だ、四糸乃から怖いのとか痛いのとかは全部俺が無くしてやる。まあ、よしのんとまではいかないと思うけど」

 

 「あ……ありがとう……ございます……!」

 

彼女の心を占めているのはよしのんなので、無くなった時に何か支えになるものを作っておくべきだと思ったのだ。

 

 「はぁ……こいつ等に四糸乃は任せられん。可愛いからって、撫でまわすのもどうかと思うからやめておけ」

 

 「ふ~ん。士道君は結構大胆なことするんだねぇ。見直したよ~。でも、時間みたい」

 

時間と言うと四糸乃は消えていった……が。

 

 「よしのん置いていったのか?……次出たときにでも渡さないと大変なことになるんじゃないか?」

 

 「<ハーミット>は氷を操る精霊よ……町中が氷漬けになるわね」

 

今後の対策会議をしつつその日は終わった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

次の日の昼休みに警報が鳴った。学校から遠く離れていたのでフラクシナスに拾ってもらった。もちろん十香たちも同じくだ。

 

 「よしのんは……あった。バッグに入れておいて正解だったな」

 

一応、洗濯と乾燥を施しておいたので新品同様の輝きを放っている。四糸乃が見たら驚くだろうなと思う。

 

 「今、彼女は外の中心街でドームを形成して引きこもっているわ。あの氷のドームをどうにかしないと……」

 

あのドームを見て、俺はあることを思いついた。

 

 「令音さん?あのドームって真ん中風吹いてます?」

 

 「台風と同じさ。周りに風が吹いていて中心は静かな空間になっている」

 

それなら、簡単だ。俺には風の精霊の力がある。死にそうになってもゾンビも顔負けする回復力もある。

 

 「じゃあ、ちゃっちゃと救いに行ってくる。転送してくれ」

 

 「ちゃんと帰ってくるのよ……三人が泣くから」

 

 「はは、頑張って帰ってくるさ」

 

そうして外に転送され、ドームの前まで歩く。その手前では寒さを感じられるくらい風が吹き荒れていた。

 

 「……それだけ苦しいって事か。今助けてやる……<颶風騎士>……」

 

その名を呟けば俺の周りに風が纏う。そのままドームに進んで行き、途中で風に干渉する。これで直ぐにドームを破壊できる。

 

 「……ひっぐ……ぐす……」

 

すすり泣く声。もう少しだ。

 

 「居た……迎えに来たぞ、四糸乃。そして……忘れ物だ」

 

そうして手に持っていたよしのんを手に着けてやると、うねうねと動き始めた。

 

 「っぷはー!!四糸乃ってばよしのんを置いてっちゃうんだもん~。本当に焦ったよね~」

 

 「ぁ……え……」

 

自分が置いて行ってしまった事が信じられないのだろう。何故なら、彼女にとって大切な友達を見捨てて行って挙句の果てには自分の元にないから泣いていたという始末に困惑しているのだろう。

 

 「別に四糸乃のせいじゃないだろう?ただ、取れただけだしな。ついでに綺麗にしておいた」

 

 「よしのんがぐるぐる回って、乾燥されて……新品みたいにピカピカになったんだよ~。士道君には感謝だね~」

 

その会話に付いていけない四糸乃。自分の心の整理が追い付いていない事がよく分かる。

 

 「ふぅ……四糸乃?もし……精霊の力が使えなくなって人間と同じように生きれるようになれたらどうする?」

 

その言葉には、封印というニュアンスは含まれていない。少し難しいと思ったからだ。

 

 「出来るだったら……やってみたいです……」

 

 「本当に、良いんだな?最大限俺は四糸乃を守る努力をする。それだけは覚えておいてくれ」

 

そうして唇を合わせた。何かいけない事をしている気分だ。ん?

 

 「士道さん……これって……」

 

まずい!!精霊の力が封印されると霊装まで解けるとは思いもしなかった。三人は普通に服を着ていたから裸にならなかったのか……と考察している暇はない!!

 

 「と、とりあえずこれ着てくれ……ついでに<颶風騎士>……これで壊れただろ」

 

四糸乃に服を着せて、ドームを破壊すると転送され彼女らが待っていた。その後疲れがどっと来て膝を付いたのはおかしくないと思う。四糸乃はその後、検査を受けた。俺達は普通に学校生活を謳歌しつつも楽しく過ごしていた。

 

 「琴里?家の隣にこんなの作ったのか?確かにマンションが出来るとは聞いてたけど……」

 

前に言っていたマンションが完成したと聞き外に出て見てみると思ったよりも大きく豪華だった。

 

 「一応、十香と四糸乃は入ってもらうけど……耶倶矢と夕弦は士道と一緒に居たいからってうるさいのよね……」

 

 「別に居させてもいいんじゃないか?あいつ等俺の部屋で寝てくるし、夕飯だって十香と四糸乃も来るだろうし全然問題ないだろう?」

 

今、問題的な発言があったと思うが気にしないで欲しい。よく分からないがあの双子は添い寝と称して俺と一緒に寝ようとしてくる……それも毎日。人間なれると何も感じなくなることが怖い。

 

 「まあ士道がそう言うならいいわ……これで、四人。まだまだ精霊は居るから気を張っていきなさい」

 

精霊を救う……ぼやけた信念を破壊してくる奴が来ない事を祈りつつ日常に戻った。

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