寫眞機の少女(しゃしんきのしょうじょ) 作:butai yukkuri
〜案外上手くいきましたね!〜
「失礼します。」
局長室には文部科学省学園艦教育局の局長である辻局長がいた。その周りには局長用デスクとテーブル。そして二つのソファがあった。
「どうぞそちらのソファにお座り下さい。」
そう局長が言ったので座る。
そこまではいいのだが、何か局長の様子がおかしい。少し落ち込んでいる。いや、悩んでいる感じだった。何かあったのだろうか。もしかすれば大洗女子学園絡みかもしれない。廃校予定だった学校が日本戦車道大会で優勝してしまったのだ。学園艦教育局の局長の責任が問われるのは当たり前のことだ。辻局長が大洗女子学園に優勝すれば廃校を撤回すると言ってしまった責任は大きい。お役所仕事のことだ。書類にサインと印鑑がないものは踏み倒してしまえなどと命令でもされているのだろうか。もしそうならマスコミは辻局長を責める形で報道するだろう。辻局長が悩むのも納得できる。
そんな今の凪にはどうでもいいことを考えていると、辻局長が発言する。
「今日は私立川跡学園高校の戦車道に関してでしたね。」
「はい。」
と牡丹が答える。今日は戦車道連盟の会長も来ているが、基本的には私立川跡学園高校の問題だ。牡丹が答えられることに関しては牡丹に任せられている。つまり凪がすべきことは何もない。
「戦車道連盟に確認は取ったんだろう。何の問題があるのかね。」
確かにそうだ。ただ戦車道をするだけなら日本戦車道連盟に確認を取った時点で何の問題もない。
「はい。戦車道をするだけならば何の問題もありません。しかし、我々はいつかは日本戦車道大会に出場したいと考えています。大会は文部科学省も絡んでいますよね。」
「だが貴方のところの戦車道は同好会でしょう。選択科目で受講している学校には敵わないのではないですか。」
「それはやってみないとわかりません。ですが今確認を取っておかなければ武装を買い替えなければならない可能性が出てきますから。」
「それでも部活動ならともかく同好会では。」
「お言葉ですが同好会でも出場している大会は多くあります。戦車道大会だけ別というのは不公平ではないでしょうか。」
「そうとも言えなくもないが。戦車道は必要な予算が桁違いだろう。やはり予算面に差が出る同好会を大会に出すというのは。」
「その点については大丈夫です。我が校の戦車はお金がかからないですから。」
「お金がかからない戦車とはどういうことなんです。」
「はい。偵察用の軽戦車のような代物ですが。」
「は。偵察車両ですか。聞いていませんよ。」
「言ってなかったんですか。七郎さん。」
急に話を振られて七郎が一瞬焦った後の発言する。
「そういえば私立川跡学園高校の戦車道同好会に関してとしか伝えておりませんでしたな。」
局長の表情が少し呆れたようなものに変わる。
「すみません。ええと、鎌田牡丹さん、でしたかな。ここからは日本戦車道連盟の会長と話をさせていただきたいのですが。」
「そうですね。わかりました。こちらも車両のことは伝わっていると思っていたのでそっちの方がありがたいです。」
「そうですか。では児玉会長。偵察用車両での戦車道を認めたんですか。」
「そうだが、別にいいんじゃないか。装甲が薄いのはカーボンさえ付けていれば乗員は安全ですからな。」
「装甲の面はわかりました。では火力面はどうなのだ。偵察車両の火力で他の戦車の相手ができるんですか。」
「そんなものアンツィオ高校と比べれば何の問題もないでしょう。偵察用車両ということで我々は対戦者ライフルを使えばいい。それで火力が足りないならばRPGのようなものを使えば問題ないだろう。」
「そういうことでしたら細かい武装のルール調整は日本戦車道連盟に任せますが、そもそも偵察用車両を戦車と認めてもいいんですか。」
「全周装甲で履帯まであるんだから戦車でしょう。」
「そうですか。とりあえず偵察用でも戦車であるということは認めましょう。ですがそれと同好会に大会出場資格を与えることとは別問題です。」
「出場資格と言ってますけれど同好会は参加してはいけないなんて規則ないですよね。ただ前例がないということで確認に来たんですよ。勝手に新しいルールを作らないでもらえますかね。」
「うっ。わかりました。ですが条件があります。大会に出るまでにある程度の実績を作っておいてください。有力校がいつの間にか定めていた不文律があるですからね。大洗女子学園が大会に出場した時もいろいろあったんですから。面倒を増やさないで下さいよ。」
「それは。善処します。」
どうやら辻局長には周りからの圧力がかかっているようだ。戦車道のようなお金がいる競技は戦車が買う為の初期投資が必要のため、どうしてもお金のある高校の力が強くなってしまう。戦車道の問題点の一つだ。
そのようにに細かい交渉が続き、日本戦車道大会に出場するためにはある程度の実績を作っておく必要があるという点以外は大方上手くいった。
◇ ◇ ◇
文部科学省の外に出ると、既に夕方になっていた。いいことがあった直後に見る夕日はとても幻想的に感じる。
だが、凪の心は曇っていた。凪は何もできなかったからだ。確かに今日の話し合いに凪が入ってもできることは何もなかった。凪には川跡学園高校を動かす権限もないし、日本戦車道連盟で発言力があるわけでもない。凪が付いてきた理由も当事者だというものしかない。だが凪はそれが悔しかった。自分のことなのに何もできない。その無力さがとても悔しかった。
もし凪の戦車道同好会が大会で良い成績を残すような同好会なら今日の話し合いにも混ざれていただろう。その予想が凪の戦車道大会への思いを大きく変えた。ただ戦車道をするだけではダメだ。実績を残さないと何にもならない、と。
「案外上手くいきましたな。」
そう七郎が言う。
「そうですね。こんなに私達に有利に進むとは思っていませんでした。」
牡丹がそう答えると、七郎が笑う。どうやら牡丹の発言に何かおかしいことがあったらいい。
「笑ってすまんかったねえ。いやいや、初めからこうなる事は決まっていたんだよ。向こうには武器にできるルールが何一つないからねえ。その証拠に予算がないということしか言われなかっただろう。」
確かにそうだ。辻局長は同好会で選択科目受講者に敵うかというところばかり指摘してきていた。今考えると反論が思い浮かばなく無理矢理作った言い訳だったのだろう。
牡丹と七郎が用意してくれた戦車道をする条件。それを無駄にしてはいけないと凪は強く思った。
来年の大会までに戦車道の実績を残す。その為には一刻も早く練習試合を取り付けなければならない。その為に必要なのは武装だ。凪は家に帰るとインターネットでクーゲルパンツァーでも使える武装が買える場所を探し始めた。
ぜえ、はあ、ぜえ、はあ。間に合ってしましました。ワードデータが消えたことを理由に一週間休んでしまおうと思っていましたがギリギリ間に合いました。これからは1話書き上がるごとに投稿予約してしまうことにします。先週予告した中二病でも恋がしたい!の二次創作は消えた分書き直してからになるので延期します。
来週は武装を手に入れに行くパートです。お楽しみに!