ワールドトリガー -お兄ちゃん頑張ります!- 作:カボス太郎
ネイバーフッド遠征
それは、ボーダーにとっての一大プロジェクト。
膨大な時間、資金、人員がかけられて行われるこのプロジェクトに参加するのは、精鋭ぞろいで
あるA級の中でもトップチームのみである。
そのネイバーフッド遠征から帰還したA級トップチーム、太刀川隊、冬島隊、風間隊。
彼らの今回の成果は、未知のトリガー4つという、ボーダーのトリオン技術を飛躍させることが
できる立派な成果だった。
だが彼らに休む暇はなく、次の指令すなわち近界民、空閑遊真が所持している黒トリガーを
奪取せよという命令が出された。
No1アタッカー太刀川の発案で、襲撃は今夜ということとなり、各隊はそれぞれの作戦室で待機となった。
そんなこととは、関係なく鬼怒田さんに呼び出された仄(ほのか)はボーダー本部開発室へと
向かった。
- ボーダー本部 開発室 -
「そうか、だいたいイメージはつかめたよ、ありがとう仄くん」
キーボード端末で、記録をまとめながら、仄にお礼を言う雷蔵。
仄たちが行ったのは、A級トップチームが持ち帰った4つの未知のトリガーに対して
仄のサイドエフェクトを使用して、現状引き出せるだけのデータを収集するという作業だ。
生物以外に使用した場合、仄のサイドエフェクトは、物質が持つ性質、または対象に対して
深い思い入れがある人物の記憶を垣間見ることが可能である。
時間をかければ、開発室のトリオン技術なら解析は可能だが、ある程度の指標を立てる為の前準備として、仄のサイドエフェクトは最適なのである。
「え?鬼怒田さんは今日はいないのかって?、あーよく知らないけど大事な会議があるんだって」
そうなんですね、と自分を呼び出しておきながら、留守をしている開発室長に思うところがない
ではないが、結構遅い時間までかかってしまった。
お腹が空いた仄は、雷蔵に挨拶して食堂へ向かった。
- ボーダー本部 食堂 -
ちょっと遅めの夕食を食べに来た仄。
ボーダーの食堂で食べられる料理はどれもうまい。
中でも木虎兄妹が揃って大好物なのが、100倍激辛カレーである。
数百人を超えるボーダー隊員の中で、木虎兄妹のみが注文するメニュー。
「おばちゃん、100倍激辛カレー大盛りで!」
その瞬間食堂スタッフがざわつき始める。
その理由とは、100倍激辛カレーがあまりに危険なので、注文が入るとベテランのおばちゃんが
水中ゴーグルとゴム手袋を装備し、カレーを盛り付ける。
もうおばちゃんにトリガーを支給すればよいのでは?なんて声もあるほどだ。
そんな食堂スタッフの事情は、つゆ知らず大盛りの100倍激辛カレーを受け取りご満悦名な仄。
早速席につき、いただきますを言って食べようとした時、声をかけてくる空気の読めない男が
いた。
「仄先輩じゃないですか!お疲れ様です!」
「・・・・」
声をかけてきたのは、A級1位部隊太刀川隊のお荷物、唯我尊。
彼はボーダーに出資しているスポンサーの息子で親のコネをつかいA級の太刀川隊に
入隊したのだ。
そんなわけで、仄は唯我尊が苦手である。
「聞いてくださいよぉ、仄先輩、太刀川さんたちひどいんですよ~」
仄は出来れば食事は1人で食べたい派だった。別に誘われれば、一緒に食事に行くのだが、好物は別だった。
そもそも、なぜ唯我が仄になついているのかというと。
数か月前、なぜか唯我にランク戦を挑まれた仄、唯我の思惑としては、A級隊員である木虎藍には勝てないので、兄でありB級の仄なら倒せるし、藍に恥をかかせることが出来ると踏んだのだが
結果は10-0のストレート負け、その結果に絶望する唯我だったがその後、事あるごとに仄に
挑み負け挑み負けを繰り返し、いつの間にか仄になついてしまったのである。
「今日だってですねぇ、大事な作戦があるのに最大戦力の僕を置いて行ったんですよ!」
「大事な作戦?」
唯我はともかくA級トップチームは、遠征任務から帰ったばかりだ、そんな人達にすぐに次の任務だなんてA級も大変だなと仄は思った。
仄のスタンス的には、この町と妹や家族や友人が危険でなければ大丈夫なので特に
気にしてないが。
そう言えば、嵐山さんたちも忙しそうだったな。などと考えつつカレーを食べ進める仄。
その大事な作戦とやらに、大切な妹が一枚かむことも知らずに。
- 玉狛支部 周辺の警戒区域 -
「なんとか、なったな迅」
「あぁ、本当に助かったよ、嵐山、藍ちゃんも」
「・・・・」
A級トップチームを退けた迅と嵐山隊、辛くも勝利したが大団円とはならず、藍は迅を
にらんでいた。
「迅さん・・・」
「わかってる、藍ちゃんが言いたいのは、お兄ちゃんのことだろう?」
迅は藍の言いたいことを言い当てた、サイドエフェクトを使わずとも迅にはわかっていた。
「・・・そうです、兄さんはいつになったら正当な評価を受けられるんですか?
私は兄さんに助けられてばかりです、チームさえ組めれば兄さんはすぐにでもA級になれるはずです、でも迅さんの指示で兄さんは、チームを組めません、そのことを兄さん自身気づいているはずなのに、気にしてないふりをしています。
無力な私では、兄さんに何もしてあげられないそれがたまらなく悔しいんです」
「藍・・・」
「藍ちゃん・・・」
木虎藍の悲痛な思いを乗せた言葉を聞いた迅は真顔になりこう返した。
「無力なんてことないさ、今日の作戦だってあいつの未来を少しでも良くするための一手なんだ」
「おぉ!じゃあ今回の近界民が、仄くんのチームメイトになるのか?」
「!?」
迅の言葉に、そうだったらいいなという願望を口にする嵐山。
「いや、そこまでは断言できない、そうなるかはもうすぐ来る本番次第かな」
そうか、と残念そうな顔をする嵐山、よりにもよって近界民なんてと考える藍。
その後、嵐山隊と別れた迅は、ボーダー本部との交渉の末、自身の黒トリガー 風刃と引き換えに遊真の入隊を認めさせた。
- ツヅク -
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