模擬戦が終了し、俺達の機体はすぐピットに運んで装甲等のダメージチェックが開始されて、幸い俺のPGは外装交換だけで済み1日そこらで修理は終わる。オキサキのODINも外装交換と腕部ジョイントの交換だけで済みこちらも1日前後で修了する。
クラスメイトのみだが模擬戦の祝勝会と激励会が慎ましく学食で開始されて、こんな風に祝勝会をクラスのメンバーが開いてくれたのは少し理由がある。
それはクラスメンバーの十数人がさっきの俺みたいにオキサキの方が模擬戦をしようと声をかけて、15人ほど試合して対戦相手を完膚なきまで叩きのめされた生徒が10人、オキサキに苦勝したのが俺を含め3人で、俺以外のメンバーはユキトと、メリッサさんである。
逆にオキサキをフルボッコにして負かしたのがユナさんとカナさんの2人である。
アノ馬鹿に叩きのめされて自主退学した生徒はいなかったのは良かった事だ。
この祝勝会は俺だけでなく他のオキサキに勝ったメンバー全員の勝利を祝う為の小規模なパーティーである。
クラスメイト一同「「「かんぱーいっ!!」」」
ジュースの入ったグラスが景気よく触れた後にクラス委員長のオノデラさん(女子)が
俺に近づいて来て
ユウコ:「いやー、整備士志願のゴトウ君があのオキサキ君勝てるなんて思わなかったわ。」
「オノデラさん、俺だって勝てるとは思ってなかったぜ。実力じゃあっちが数段上だし、俺のアーマーポイントだってレッドラインに達していたからギリ勝った状態だよ。」
ユウコ:「謙遜なのかガチなのかは聞かないけど、でもいいじゃない。これこそ逆転劇よ。」
正直なところ、一方的展開で、こっちがODINの片腕を切り落としていなかったら間違いなく負けていたのは俺の方だった。
「それに、これは俺と言うよりユナさんとカナさんの2人の祝勝会と言った方が納得いく気がする。」
ユウコ:「そんな事、気にしないの。これはユナさんとカナエさんの提案よ、(マサキ君のために祝勝会をあたい達の分もまとめて祝おうよ。)ってね。」
カナさんはこう言った誰隔てなく接して仲良くなろうとするだけでなく、気遣いのうまい女性である。だからこそ入学してすぐにファンクラブが立ち上がったのみたいだけど、え?俺?会員になっていないぜ。そこまでミーハーにはなれないから。
俺が委員長のオノデラさんと話していると同時に生徒が俺に近づいて来た。
その人は、髪色は黒と茶の混じった姫ショートで、フレームレス眼鏡をかけて制服に英数字でⅡとペイントされたピンバッチを付けているところから2年生であることと、首からかけた一眼レフと左腕に新聞部と書かれた腕章を付けていたので、誰かの取材でここに来たのだろう。
アヤ:「こんばんは。学内新聞部のアヤ・イノウエです。スーパールーキー、クウヤ・オキサキ君を破ったマサキ・ゴトウ君にインタビューに来ました。」
俺に近づいて上からなめるように見た後に、
アヤ:「ほほぅ、あなたがマサキ・ゴトウ君ですね。」
「ん?マサキ・ゴトウは俺ですけど、新聞部の人が何か用でしょうか?俺以外にも取材する人はいるはず?」
アヤ:「それにはご心配なく、他の人は勝利したときにもう既に取材済みです。後はあなただけですので、それじゃあ早速インタビュー始めますね。」
彼女が喋り終わった後ICレコーダーを鞄の中からとりだし、RECボタンを押して
「なるべく長くならないようにお願いしますよ。」
アヤ:「OK。それじゃあ早速、最初の質問。PGパイロットを目指したきっかけは?」
いきなりの答えたくない質問だな。仕方ない、嘘は言わないがなるべく包み隠すか。
「元々は整備士志願ですけど、整備するのにパイロットも経験するのも悪くない、と思ったのでこっちに来ました。」
アヤ:「ほほぅ、整備士志願でパイロット精神を学びたいからですね。では次の質問を、PGの世界で尊敬している人は?」
「リュウ・バンセイさんですね。あの人の整備技術にはただ舌を巻くとしか言いようがないぐらい、すばらしい整備技術者です。」
こっちは即答できる質問だから間髪入れずに答えた。ちなみにリュウ・バンセイさんとはフェイの父方の祖父で、今では旧型になるタイプだが、レーシングPGのメカマンとして頂点に立った事のある超一流の整備士だった。今は整備士で生計は立てず晴整雨読(せいせいうどく)まぁ様は晴耕雨読の整備士版だと思ってくれ。
アヤ:「確かにあの人無くしてPGのメカマンは語れないですからね。それでは最後に今後PGでの最終目的は?」
「うーんそうですね。今のところ、私に明確な目的はないですけど、整備士とパイロットどちらに進んでも自分を偽らずに仕事がしたいですね。」
アヤ:「そうですか、ありがとうございました。おかげでいい記事が書けそうです。」
言い終わるとレコーダーの停止ボタンを押して更に
「それでは最後にオキサキ君に勝利したメンバーのみで写真を1枚下さい。」
「いいですよ。」と短く返したら一眼レフを構えて自然に笑った顔をしてすぐにシャッターを押した。
その後、20分前後で祝勝会がお開きに為り、俺は家路につくためにクラスのメンバーと挨拶を交わしホバーバイクを駐輪しているエリアはどうしても1-3用のガレージ前を通らなくてはいけないので、そこを歩いていたら人用の扉が少し開いておりそこを見てみるとガレージの内に明かりが灯っていた。
消し忘れか?1年生の誰かがまだ整備か調整でもしているのだろうか?しかし、それ自身は悪くはないけどそれにしては人が少ない気がする。
時刻は20時30分を過ぎており部活の練習時間は過ぎているから違うと思うが、いかなる生徒でもガレージに進入する時間は事前に許可を取っていれば翌日のホームルームまで戻れば夜通し使えるけど、それ以外は21時までにガレージを出て行かなくてはいけないのである。
俺のRAIUN KAIGATAの様子でも見に行くついでに声をかけておくかと思い俺はガレージに進入した。
「こんばんは。誰かいますか?」
と声を上げても俺の声がエコーしただけで反応無し。カツカツと俺の靴音だけがコンクリートの廊下とガレージ内に反響していた。
RAIUN KAIGATAの所まで来たら俺のPGはコックピットブロックとダメージが少なかった部分の外装は取り外されてはいないが、それ以外はシリンダーやボーンフレーム、アクチュエーター、シェイドモーターなどが表に出ていた。
これはこれで惹かれる姿だな。整備士志願だから外装を外された姿を見る事は整備士志願で無い限りあまり見られる物ではない。俺は外されていないふくらはぎ部分に手を添えて
「明日、外装が装備されたらもう少しマルチスロットにセンサー類付けてやるからな。」
さり気なく独り言を言ったけど周辺に人がいなくて良かったよ。
自分のPGを見たので帰ろうと思ったらここから3つ奥隣の収納エリアに明かりが灯っていた。
そこに近づいてみるとユナさんの専用機DIAMOND FLOWERを入念にチェックしている少女がいた。
彼女はパイロット科の生徒が任意で着る事がある作業用のつなぎを着ており、髪は作業用ぼうしで隠れているが、ベナス星人特有の青髪が見えたのでユナさんだと思い、俺は声をかけた。
「おーい、ユナさん。こんな時間まで愛機の整備とチェックかい?ご苦労様。でも時間外整備申請書出してないなら、そろそろ自室か自宅に戻った方がいいよ。」
そう言って振り向いたのはやっぱりユナさんだったけど雰囲気が少し違った。そして作業用のリフトから降りて俺に近づいて来た。
ユナ?:「ちょっとよろしいかしら?あたしをユナお姉様と間違えるなんて、どこのボウフラかしら?」
いきなり俺をボウフラ扱いって、ずいぶん言葉のひどいお嬢さんだ事で。
口の悪いお嬢さんに少々ムッとしたが、少し冷静に対応しようと思ったらすぐに疑問に思った。
「・・・・ん?さっきキミは、ユナさんを(ユナお姉様)って言っていたな。キミは誰だい?」
そう言って彼女は作業用ぼうしを脱ぎ捨て帽子の中に隠れていた髪が光にさらされてユナさんと異なり腰まである髪は変わらないが軽めのウェーブが掛かっていた。
ミナ:「あたしは、ミナ、ミナ・フェルボート・ベナス。先ほどあなたが間違えたユナお姉様の、双子の妹よ。覚えておきなさいボウフラ。」
「はぁー。俺をボウフラ扱いとはずいぶんと躾のなっていないお嬢さんだ事で。」
そう言った後に彼女は顔を真っ赤にして俺に食って掛かった。
ミナ:「なっ!なんですって?!あたしの躾がなってないとはどう言う意味ですか?!」
「いや、そのままの意味だよ。教育の行き渡っている淑女なら、初対面の男をいきなりボウフラ扱いはしないと思うけど。」
ミナ:「う。・・・・確かにあたしはいきなり貴男をボウフラ扱いしたのはお詫びしますけど、その前にあたしをユナお姉様と間違えた事をお詫びして欲しいわ。」
「ユナさんに双子の妹がいる事を知らなかったから、それはすいませんでした。」
ミナ:「す、素直に謝ってくれればそれでいいわ。えーとあなたは?」
「マサキだ。マサキ・ゴトウ。俺は自分の機体の様子を見に来たのさ。」
ミナ:「貴男の機体?それはどちらに?」
と聞かれたのですぐに
「俺の機体は仮名称だけどRAIUN KAIGATAになるぜ。場所はここからガレージゲート方面に三つ進んだ所にある。ただ、今は外装外しているから内部に興味ない人が見ても面白くないと思うな。」
ミナ:「いいえ。そうでなくあなたの機体データが欲しいのですよ。」
「それは冗談抜きで、断るっ!」
ミナ:「何故ですか?」
「そうは言ってもたった1~2ヶ月程度の機体データなんてたかがしれているし、それにそれ位なら自分の機体でも蓄積データとして残るから、必要ないと思うけどな。」
ミナ:「り、理由ならありましてよ。私の機体を仕上げるためにはユナお姉様のデータとお姉様の優秀なご学友の機体データがあれば、あたしの機体を完成させる事が出来ますのよ。」
「機体完成?おかしいな、量産機ならメーカーの人がきっちり丁寧に仕上げてくれるし、カスタム専用機ならその話何となく判るけど・・・」
ミナ:私の機体は入学前に自費で購入した機体でしてよ。それを相応しい機体に仕上げるのにデータが足りませんのよ。」
「うーん理由はわかったけど、ユナさんには許可とったの?」
ミナ:「お、お姉様には下さいとは言えませんでしたからだからこっそりとデータコピーを。・・・・っは、ごめんなさい。」
俺はその言葉を聞いて完全に沈黙した。何とか気力を搾って口を開いた。
「仮にも双子のお姉さんから無許可で機体データを盗むのは良くないよ。ユナさんに一言断って立ち会いの下データコピーするか、お姉さんからデータメモリーもらうとか、合法的に手に入るはずだけど。」
ミナ:「そうなのですけどあたしは、お姉様ほどPG操作は得意ではありません。もちろん上達するために努力は惜しみませんけど、お姉様は勤勉型の天才です。あたしにはお姉様の隣を歩くには距離がありすぎます。それを埋めるためにはお姉様のデータは、あたしには必要なのです。」
彼女は拳をぎゅっと手から血が出るぐらいに握っており、彼女がユナさんに追いつきたいと必死で努力しているのはわかった。こんな風に姉と共に歩きたいっていい妹じゃないか、俺は頭をかきながら
「わ、わっかったよ。さっきは頭ごなしに否定したけど、俺のデータでどこまで役に立つか判らないけど、良ければデータコピー上げるよ。」
ミナ:「ほ、ほんとですか?」
「ただし、ちゃんとユナさんとしっかり話してデータが貰えなかったら俺のデータを上げる。それにデータコピーするには時間が足りないから、明日以降にコピーしてだから最短で2日後に渡せるから。」
ミナ:「う、うんわかった。明日ユナちゃn・・・いえ、お姉様とお話ししてみますね。」
ミナさんって本当はユナさんの事ユナちゃんって呼ぶ可愛い子なんだと思ったけど口には出さなかった。
思い出したように時計を見たら時刻は20時45分そろそろガレージから出て行かなくてはいけないと思い出して
「あ、いけないミナさん。そろそろ俺はガレージから出て行かないと後で怒られる時間になったよ。」
彼女は時計を見て同意した後に1-3ガレージを出た。
翌日はホームルーム前にユナさんの所に赴いて、まずは昨日ガレージでの出来事を話した後に
ユナ:「あらあら、あの子もちゃんとわたくしに申してくれれば良かったのに。」
「つまり、ユナさんはミナさんにデータコピーを渡す事はやぶさかでは無いって事だね。」
ユナ:「うふふ、そういうことよ。」
そんな風にユナさんと話しているとクラスメイトがざわついていた。そっちの方を見るとミナさんが教室に入ってきた。
クラスメイトA:「あ、あれユナさんがもう1人いる?」まぁ知らなきゃ当然な反応だな。
クラスメイトB:「おおお、落ち着け彼女はドッペルゲンガーだ。この世に同じ顔の人間なんていない。」お前は双子や三つ子を知らないのか?
クラスメイトC:「おかしいな、ユナさんって双子だったっけ?」正解だけど疑問系で聞くな。
センイチ:「ユナ殿、ユナ殿と同じ顔したご婦人が貴殿を訪ねて参ったぞ。ご姉妹ですか?」
ユナ:「え、えぇ、そうよわたくしの妹ですわ。」
「・・・・もしかしてユナさん、双子の妹いるのをクラスのメンバーにも言って無かったの?俺だって昨日知ったばかりだから、他の奴が知っているとは一部を除いて、いないよ。」
ユナ:「練習とか色々重なっていて皆様に喋るのを忘れていましたわ。」
俺は完全に頭を抱えた。
ミナ:「お姉様にマサキさんおはようございます。今日はお姉様に折り入ってお話しがあり、お姉様の教室に参りました。」
ユナ:「話はマサキさんから伺いました。私の機体データが役に立つなら差し上げましょう。ただしこの後コピーをとりますので、地球時間で一日かかります少しの間お待ち頂けるかしら?」
ミナ:「それで構いませんわ。それとマサキさん昨日は失礼な発言をお詫びせずにすみませんでした。」
「俺はあれぐらいじゃ気にしないって、でも良かった。双子の姉妹で確執があるのかと思ってヒヤヒヤしたよ。」
「「マサキさんは心配しすぎですわ」」双子が綺麗にユニゾンした。
その後は、ユナさんはクラスのメンバーに双子の妹がいて1組にいる事をさらっと喋り
ユキト:「僕は友人が1組に居るから、ユナさんに双子の姉妹が居るのは何となく知っていた。」
メリッサ:「俺は初めて知った。俺の星じゃ双子なんてベルガー星人同士の親からは全く生まれないから、母さんから‘フタゴ’って単語初めて聴いたぜ。」
ユウコ:「クラス委員として当然知っていた。」
ユナさんに双子が居ると判った各自の反応である。