Qどうしてそんなに速く走れるの? A呼吸の仕方があるんだよ 作:競輪
用務員として雇われたが、仕事内容はまだ若いからか、少し軽めのものが振り当てられてる気がする。行動範囲が狭い。
蛍光灯の確認や入れ替え、発電機のメンテナンス、ブレーカーの確認、校内巡回に清掃。どれもすぐに終える。今の季節はともかく、冬に備えストーブの点検などもしてみた。作動させたり分解したりせずとも内部を確認できる美好からすれば簡単な作業だ。それを抜きにしても仕事が少ない。
「理事長も気を使ってくださったんですよ」
「気を?」
園芸用の土の入った土嚢袋を運びながら、偶然出会ったたづなと話す。
「用務員さんがトレーナーになるには他のトレーナーから、色々学ばないといけませんからね」
「今更何を」
「それはもちろん、本では得られない知識です」
本では得られない知識と聞いても、あまり実感がわかない美好。おそらくは人間関係のことだとは思うのだが。
「あ、じゃあ俺はこのへんで」
「お忙しい中話に付き合っていただきありがとうございました」
「いえいえ、私の方こそ……………それにしても………」
と、たづなは離れていく美好の背を見つめる。通りかかったウマ娘達がギョッと立ち止まる姿も見えた。
「あれ、前見えるのかしら?」
自分の身長以上の高さになるほど土嚢袋を抱えて、視界は完全に塞がっているはずなのに何にも誰にもぶつかる事なく歩いていた。何なら階段も普通に………。
おまけにあの土嚢の数………嘗ての時代、荷台を運ぶ労働力として使われていたウマ娘も力は強いが彼はそんなウマ娘と比較しても引けを取らない。
「………彼にも、色々あるんでしょうね」
身辺調査した結果、彼には交友関係が全く無いことが分かった。あれだけの力の差があれば、対等など不可能だろう。身体能力の近いウマ娘が彼にとって唯一等身大で接することの出来る相手だったのかもしれない。
「そう言えば、この学園に居るそうですが誰のことなんでしょう?」
名前聞いておけば良かった。
因みにほぼ同世代の美好はかなり目立っていた。用務員の制服を着ているが、それでもやっぱり同い年。ウマ娘が名前の通り女性しかいない都合上、女子校当然の園に男………恋愛ゲームでも始まりそうだがこの男、生来言われた事はこなす性格ゆえに今は仕事のことしか考えていない。
仕事がなくなり、たづなに言われた通り現役トレーナーを探す事にした美好。丁度サングラスをかけた男がウマ娘達を走らせている光景を見つけた。
「………こんにちは」
「ん? 用務員………ああ、理事長の言っていた………」
「今は何を?」
「見てのとおり、スピードとパワーのトレーニングだ」
コースを走るウマ娘達は疲労の色が見て取れる……が、殆まだ余力がある。
「まだ走れますね、彼女達は」
「ほう………そうだ。スタミナは努力で得られるとはいえ、過剰なトレーニングは身を壊す。常にギリギリを見極める、それがトレーナーにとって大切な事だ」
「ギリギリ……つまり、限界ですか?」
「を、少し超えた所だ………精神は、肉体を凌駕する。その為には強靭な精神を鍛える必要がある」
根性論か。美好とて一度だけとはいえ身体能力が勝る相手に勝ったことがあるからわからなくもない。その後からは向こうの気合の入りようも変わって、一度だけだが。
「…………あれ、彼女は」
と、美好は遅れているウマ娘に目を向ける。
「ああ、最近疲れやすくなってタイムが落ち来ている。精神は肉体を凌駕するとは言ったが、無理をさせ過ぎては本末転倒だから、ノルマは下げてるんだが………」
その言葉に、美好は更にそのウマ娘を観察する。
「………ひょっとしたら病気かと思って医者にも見せたんだが特に異常は見つからなくてな」
「それ、きちんと喉の奥見せました?」
「なに?」
「彼女喘鳴症ですよ」
体力が落ちてきているウマ娘……タニノムーティエは確かに喘鳴症を患っていた。
別名ノドナリとも呼ばれる喘鳴症は喉頭部の麻痺により気道が狭まる事からヒューヒューと喉が鳴る。それ故に喉が鳴ると言う意味でノドナリ。ウマ娘の人生に大きく影を落とす病症の一つだ。
「ですが喉が鳴るという先入観から、重症化するまで気付かなれないことが多いと聞きます。良く気付きましたね」
病院の帰り道、手術を受けるタニノムーティエの付添として残った黒沼の代わりにミホノブルボンと言うウマ娘が迎えに来た。
淡々とした口調に、無表情、ロボットのような印象を受けるがれっきとしたウマ娘だ。そんな彼女の言葉に、美好は己の目を指差す。
「俺は昔から人の体を透かして見る事ができるからな。もちろん、あれはかなり初期症状だったけど、筋肉の動きで異常だったのは解る」
「そのようなスキャン能力が………まるでロボットですね」
「ところで、ここから学園まで走って帰るのは良いのか?」
「それでは私が貴方をおいていってしまいます。それと、トレセン学園までの道のりは人通りが多いのでどのみち駄目です」
「…………そうか」
少し残念そうな美好。走るのが好きとは、ウマ娘見たいな人だな、とミホノブルボンは思った。
「………ありがとうございました」
「ん?」
「喘鳴症は……場合によっては二度と全力で走れなくなる病。早期発見も難しく、それ故過去多くのウマ娘が選手生命を絶たれたと記録しています。タニノムーティエがまた走れるかは定かではありませんが、可能性が上がったのは貴方のおかげです」
「速いウマ娘が走れなくなるのは、俺としても避けたいから。お礼は良い」
「ですが………」
「俺の趣味な走ることとぬいぐるみ作りと美味しいものを食べることなんで、お礼はどこか美味しいお店を紹介してくれれば良い」
「…………了承。では、そのように」
トレセン学園に戻ってきた美好。ブルボンと別れ、用務員室に向かう。と………
「バクシンバクシン!」
何やら奇声を上げながら一人のウマ娘が走っている姿が見えた。こちらに気づくと満面の笑みを浮かべ駆け寄ってきた。
「こんにちは!!」
ビリビリよく響く声で挨拶してきたウマ娘。そのまま頭を下げる。
「本日より勤務の中澤美好用務員でしょうか!?」
「ああ………」
「それは何より! 自分はサクラバクシンオー! 生徒会長より伝言を預かって参りました!」
「生徒会長?」
「はい! 時間が空いたら、生徒会室に来てほしい、との事です!」
「そうか、わかった。ありがとう」
「いえ、委員長として当然の事をしたまでです。では私はこれで!」
再びバクシンバクシン! と叫びながら走っていくバクシンオー。元気なウマ娘だ。
「さて、生徒会室は、と………ん?」
ふと、窓の外を眺める美好。居残りか自主練か、一人走るウマ娘の姿が見えた。足は………お世辞にも早いとは言えない。言えない、が………
「……………………」
何であんなに
本来の走り方ならもっと速く走れるはずなのに走らず、明らかに本人もストレスが溜まっている。そう、速く走れるはずなのだ………それこそ、今日見た中でもトップクラスに
「…………」
美好は窓から飛び降りると、ウマ娘が走るコースまで駆け出した。
ミヨシの秘密
実はフライドチキンを骨まで食べれる
感想待ってます
幼馴染ヒロインは誰にしよう。名前短縮により候補増加
-
スペ(正統派)
-
ライス(妹)
-
スズカ(しっかり)
-
マルゼン(姉)
-
ゴルシ(理解不能)
-
タキオン(研究者)
-
ウララ(後輩)
-
オグリ(大食い)
-
ルナ(ライバル)
-
マック(お嬢様)