俺と暴走妹   作:Atlantis

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いや~な奴ら

「おはよう、今日も元気そうだな」

 

 背の高い金髪の男子生徒が、こちらに視線を向けた状態で挨拶をする。

 

 俺は彼とそこまで仲が良いわけではなく、俺の後ろには彼の親友である背の高いロン毛生徒がいた。なので、声を返さないことにした。……思えば、これがすべての始まりだったのかもしれない。

 

 

「おい、お前に言っているんだけど」

「あ、はい、すみません。おはようございます」

 

 鋭い視線をこちらに向けた男子生徒に、謝罪した後挨拶を返す。

 

「ははっ、ちゃんとしろよ」

「は、はい」

 

 いかつい顔を無理やり笑顔に変えながら、彼は俺に注意を促す。……うん、無視は良くなかったな。きちんと反省して次につなげよう。

 

 

 

 

 

 俺は今、ちょうど楽しい時期の中で生きている。新しいクラスになったばかりの落ち着いた雰囲気は俺にとって心地よいものだ。最初から仲がいい人はほんの一部。その一部の人以外はみんな他人のような関係性だ。この雰囲気がずっと続けばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城さんって、とってもきれいだね」

「彼女みたいなこと友達になりたいけれど、私なんかじゃダメだよね……」

「結城さんは身分の高いお嬢様、って感じがするよね」

 

 次の日、学校に来て席に着いた俺の耳に女子同士の会話が入ってきた。……早い、早すぎる。背の高い金髪達のグループ以外はみんな他人のような関係性だったのに、もうクラスで目立つ人が誕生しちゃうなんて。平穏は早くも過ぎ去ってしまうのか……

 

 あ~あ、今回はついていなかったな。せめてひと月ぐらいは粘ってほしかったのに。これじゃ、すぐにもクラスが俺にとって心地悪い雰囲気になってしまう。

 

 

「おお、おはよう。お前、髪を切ったのか。さっぱりしてイイ感じだぜ」

 

 昨日の金髪の男がやってきて、俺の方を向きながら挨拶をする。……確かに俺は昨日髪を切った。だが、さっぱりするほどは切っていない。目に髪がかからないように軽く切っただけだ。それに、俺の席の後ろには金髪と仲の良い、がっちりとした男子生徒が座っているのだ。彼の髪形は昨日とは違ってスッキリしている。金髪はきっとこのがっちりした男子生徒に挨拶をしたのだろう。

 

 ……いや、待てよ。俺は昨日金髪の挨拶を無視している。彼は俺にきちんと挨拶をするのかを試しているのかもしれない。ここで無視したら関係性が悪化してしまう。

 

 一体、どうすればいいんだ……

 

 

「おう、4月になったからな。ちょっとイメージを変えようかなって思ってな」

「おいおい、だったら入学式の前の日にしておけば良かっただろ。」

「そんな細かいこと気にすんなよ」

「ははっ、そうだな。本当にごめん。だからそんなに怒らないで?」

「怒ってねえよ。ハハハハハ」

 

 二人はどうでもよいことを笑いながら話し始めた。……俺の後ろの人、変わってくれないかな。心地いい雰囲気が台無しになるし、金髪が俺の近くにやってきてしまうし。

 

 あれ、でも本当に金髪は俺に挨拶をしていなかったのかな? 昨日あんな事があったんだし、今日声をかけて来てもおかしくはなかった。……もしかしたらガッチリとした男子生徒が俺に無視された金髪をフォローしていただけなのかもしれない。もしそうだったとしたら俺は……

 

 何だか、不安になってきた。どうするのが正解だったのだろうか。う~ん……

 

 

「おい、こいつの様子が何だか変だぞ」

「あ、本当だ。お~い、元気ですか~」

「生きてますか~……はははっ!」

 

 

 ……なんだか、いやな感じ。早急な席替えを要求したくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、俺は何度か金髪とその仲間たちと関わらざる得ない状況を経験した。……そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ~、3限目は体育か、めんどくさいな。4月や5月の体育の授業は楽しかったのに、最近のは本当にめんどくさい。4月と5月はつまらないはずのラジオ体操が中心で、最近は楽しいスポーツを中心とした授業なのに。……なんでだろうな。

 

 まあいいや。今は着替える準備をしなくっちゃ。体操着袋を取りに、ロッカーに……

 

 

 あれ? 俺の体操着袋が、教室の後ろの方に落ちている。ロッカーはきちんと占めたはずなのに。もしかしてロッカーの調子が悪いのかな? ちょっと見てみよう。

 

 

 ……俺のロッカーは、ちゃんと閉まっていた。あれ? おかしいな。とりあえず、中を開けてみよう。

 

 

 

 

 ロッカーを開けると、俺の目の前に「BIG」という文字が現れた。……これは、スナック菓子だな。何故だか分からないが、スナック菓子が俺のロッカーに入っていたようだ。

 

 何でそんなものが俺のロッカーの中に入っているのだろう? とりあえずほかに何か入っていないか確認しよう。

 

 

 スナック菓子をどけると、今度はガムがたくさん出てきた。ほかにも、ガムだけでなく、あめがたくさん入った袋も出てくる。……おかしいな、俺はお菓子を学校に持ってきた記憶はないんだけれどな。

 

 ……本当に、どうしてなのだろう?

 

 

「おい、汚い手で俺のお菓子を触るなよ。勝手に人のもの触るな」

 

 俺が困惑していると、あれた声を出しながら、金髪がこちらにやって来た。……なんで? どういうこと?

 

 

「おい、何ボケっとしてんだ。謝れよ」

 

 金髪は俺の胸を掴み、謝罪を要求し始めた。……この体制じゃ、俺が不利だ。とりあえず謝るしかないか。

 

「え、あ、はい……すみませんでした」

「……棒読みで謝るとかさ、お前は俺を怒らせたいわけ?」

「え、別にそんなわけじゃ……」

「もういいよ。次から気をつけろよな」

 

 そう言い残し、俺から離れていく金髪。

 

 

 え? 本当に訳が分からない。なんで俺のロッカーの中に金髪のお菓子があるんだ?

 

 

「あの、このロッカー俺のなんだけれど。なんでお前のお菓子がここにあるわけ? ……もしかして、俺の体操着が地面に落ちてたのもお前の仕業?」

「ああ”? お前なんかに文句を言う権利なんてあるわけ? この場所は俺がお菓子を入れる場所だ。お前なんかが荷物を入れるんじゃねえよ」

「あの、このロッカー俺のなんだけど。なんで自分の物のように使ってんの?」

 

 

 本当に意味が分からない。ロッカーにもしっかり名前が書いてあるのに。

 

 

「あの……」

 

 突然、1人の男子生徒から声がかかってきた。……良かった、救いがやって来た。

 

 彼は背が高くもなく、低くもない。そして金髪の友達でもない。金髪の理不尽なルールに従うことはないだろう。……だが、彼の口からは予想外の言葉が出てきた。

 

 

「君はそんなに強い言葉を使わない方がいいよ。悪目立ちしちゃうから。……体操着なら、体育のある日に体操着袋を持って登校すればいいじゃん」

 

 

 ……え? 彼は一体何を言っているんだ?

 

 

「ほら、謝ったほうがいいよ。彼は優しいから今謝れば許してくれるはず」

 

 

 ……何それ。

 

 

 

「ねえ、邪魔なんだけれど。ずっと同じ場所で立っていないで?」

 

 別の男子生徒が俺を力ずくでどかし、ロッカーへと向かう。……そうか、そうなのか。

 

 

 

「おいお前ら。そろそろ時間だぞ。廊下に並んで整列しろ」

 

 体育の先生がやって来た。……一応、言ってみようか。

 

 

「あの、すみません先生。金髪のヤツが俺のロッカーに勝手にお菓子を入れてきて……」

「お前はまだ着替えてないのか。集団行動を乱すなっ!」

「あの、ですから金髪のヤツが俺のロッカーに……」

「自分の問題は自分で解決しろ。……お前が着替えるまで皆には廊下で待ってもらう。授業が終わったらお前がノロいせいで待たせたことをみんなに謝るんだな」

「ええ……」

 

 

 自分の問題って……俺の問題というか、むしろこれは金髪の問題だろう。

 

 

 ……うわ、みんなが凄い顔で俺のことを睨んでいる。この状況で、着替えなくちゃいけないのか。もう、嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ちょっといいかな」

 

 授業が終わって、放課後になってもずっと教室の中でダレていた時、俺に声がかかる。……透き通るような、美しい声。

 

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