俺と暴走妹   作:Atlantis

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金髪の動揺、対金髪対策

 

 

 

 俺の名前は若村頌平(わかむらしょうへい)。髪を金髪に染めてはいるが、まあ学校の中じゃ、ごく普通の学生だ。

 

 だが、俺にはもう一つの面がある。

 

 

「お疲れ、若村君。今日のダンスもキレがあったぞ」

『ありがとうございます、山村さん』

 

 俺には、アイドル研究生という一面があるのだ。ちなみに、今俺に話しかけて来てくれた人は山村さん。俺の所属する大人気グループ『イケメンダンサー』の正規メンバーであり、テレビで大活躍中のお方だ。

 

 そんなお方に、俺は良く褒められる。つまり、俺の成功は約束されているも同然というわけだ。

 

 

 

「あっ、若村君。」

 

 俺が将来を思い浮かべて楽しい気持ちになっている時、後ろから声がかかってきた。彼は確か、同じ研究生の鈴木だったな。

 

『おお、鈴木か。俺は東山さん(偉い人)に呼ばれたので今から向かうところだ』

 

「そうなんだ。もしかしたら正規メンバーに選ばれるかもね」

『ははは、そうかもな。お前も頑張れよ』

 

「それじゃあね。バイバイ!」

「ああ、またな」

 

 

 正直言って、鈴木もピンとこない奴だ。目が小さく、声も少し小さい。一般人としてはまあいいだろうが、鈴木は研究生とはいえ『イケメンダンサ―』の一員だ。正直言って相応しくない。

 

 本来なら雑な扱いをするべきなのだが、『イケメンダンサ―』はメンバー同士の中の良さを売りにしているグループである。もし鈴木を雑に扱ってしまったら、俺はチームの秩序を乱す愚か者と化してしまうのだ。

 

 そんなわけで、俺は表面上は鈴木と仲良しを装っている。裏で圧力をかけることも考えたが、万が一が起きて『イケメンダンサ―』の結束が崩れてしまうのは最悪だ。鈴木如きの為にそんなリスクを背負うことはできない。

 

 影で馬鹿にされているのも知らず、楽しそうに俺と話す鈴木はなんて愚かなのだろうか。まさに道化だな。

 

 

 

 

 ……確か、この部屋だな。ここで、東山さんが待っているはずだ。

 

 豪華な扉の前に立つ俺は、軽くノックしてから部屋の中へと進む。色々なものが置かれている部屋のなかに、東山さんが居た。

 

「おお、若村クン。来てくれて嬉しいぞ」

『東山さんに呼ばれたからには、行かないわけにはいきませんよ』

 

 いよいよ俺の正規メンバー入りか。ここまで来るのには意外と時間がかかった。さすがの優秀な俺でも、大スターとしてテレビデビューするまでにはそれなりの訓練が必要だったわけだ。

 

 思えば、俺は今まで窮屈だったんだ。俺は優秀な能力を持っているのにもかかわらず、多くの時間を学校というくだらない所で過ごしてきた。そこにいる奴らは、俺にふさわしくないダサいやつらばかり。俺という優秀な人間が所属するにはあまりにもちんけな場所だったのだ。

 

 だが、それも今日までだ。俺はようやく、俺にふさわしい場所を手に入れたのだ。

 

 

「若村クンに、一つ確認したいことがある」

「ええ、何でしょうか」

 

 ようやく! 俺という人間が一番輝く場所へとたどり着くことが出来たんだっ!

 

 

 

 

 

 

 

「『若村頌平、いじめ映像拡散事件』について確認したいのだが……」

「はへ?」

 

 俺の耳に届いたのは、俺の昇格の知らせではなく、良く分からない事件の確認だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どけよ。邪魔だ」

「あの、ここ俺の席なんだけれど……」

「邪魔だって言ってんだろうが。今からここで俺たちが会話するんだ。空気読めよ」

「……」

 

 

「おい、のどが渇いたからジュースを買って来いよ。お前のお金でな」

「……お金持ってきてないから買えない」

「おい、嘘つくんじゃねえよ。ボコすぞ」

「そんなこと言われても、本当にお金がないので……」

「ちっ、使えない奴だ……」

 

 

 手元の機械から、不快な声と自分の声が聞こえる。いわゆるボイスレコーダーというやつだ。俺が結城さんやカレンに頼らず金髪に対抗できるかもしれない唯一のアイテムだ。

 

 ……けど、おそらくこれをそのまま先生に見せても軽く流されてしまうだけだろう。先生たちは基本的に金髪の味方だから。

 

 これを有効活用するためには色々と工夫する必要があるだろう。見せるタイミングに気を使ったり、見せる人に気を付けたり。

 

 可能性は低そうだけれど、もしもうまくいったら。金髪は学校退学になって、アイドル界からも干されて……

 

 ……なんで俺、こんなに陰湿なことを考えているんだろう。こんなことを考えなきゃいけないなんて、いじめって本当にめんどくさい。

 

 そんなことを考えていると、突然部屋のドアが開き可愛らしい声が部屋に響く。

 

「お兄様! カレンがお兄様の目を、覚まさせてあげるのです!」

 

 カレンが突然部屋の中に入ってきた。カレンは良くこうして俺の部屋の中に入ってくるのだ。それのしても、目を覚まさせるという言葉……俺はもしかしたら陰湿になってしまったのかもしれない。

 

「何をするつもり?」

「ふっふっふ。ディスクを持ってきたのです。一緒に見るのですよ」

 

 ニコニコ顔のカレンは、俺の部屋のテレビをつけてディスクを挿入する。すると、テレビに映像が流れ始めた。

 

 

 

『ちょっとしたいたずらで、友達の顔を晒してみただけなのに』

 

 

 

 

 無機質なテロップと、涙を流す女の子のイラストがでてきた。恐らく、フリー素材の女の子だろう。 ……一体何なんだろ、これ?

 

 

「あれれ、おかしいなのですよ! 流れている映像が、カレンの想像していたのと大きく異なっているのです!」

 

 カレンも驚いているようだ。彼女にとっても予想外の映像だったようだ。……本当は、何を見せようとしていたのだろうか。

 

 

 

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  • 結城さん
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