『気軽に他人の顔をネットにさらすのは危険です。人間関係を壊してしまう危険性があります』
1人の女の子が、だいすきな親友の顔を勝手にネットにさらして絶交されてしまう物語が流れた後、ナレーションによる忠告が行われる。
……本当に何なんだろう、この映像は。
「何なのですか、この映像は。……でも、結果オーライなのです。お兄様、お友達の顔を勝手にさらすのはダメなのですよ」
開き直った様子のカレンが、笑顔で俺に忠告してくる。彼女はどうやら、以前の自分の行いを忘れてしまったようだ。
……それにしても、どうして映像の女の子は親友の顔をネットにさらしたのだろうか。彼女といい、金髪といい、理由もなく人に嫌がらせをする人の気持ちは理解しがたい。
映像の女の子は悪意が薄く、金髪には強い悪意があった。しかし、悪意の量に大きな違いがある二人はともに他人への嫌がらせをした。……つまり、二人の間には共通点があるはずだ。
二人の共通点……もしかしたら二人とも、嫌がらせで得られる楽しさがリスクを上回っていたのではないだろうか。
そうだ、だから金髪は俺に対して嫌がらせを平気でしてくるんだ。大してリスクがないからな。
……でも、どうしたらイジメるリスクの高い人になれるんだろう。
『みんなやっているから大丈夫だと思ったのに』
テレビの画面には、再び無機質なテロップと涙を流す女の子のフリー素材が表示された。そして、いじめられっ子をネットにさらした女子集団が、逆にいじめられっ子の手によってネットにさらされ将来を滅茶苦茶にされる映像が流れる。
俺は、こういう展開を望んでいたのか。嫌な奴がいて、嫌がらせをされて、そいつらに反撃してそいつらの人権を破壊する。……いや、違う。俺はただ楽しく生きていたいだけなんだ。
『他人を晒すと、反撃を受ける可能性があります。誰も幸せにはなりません』
物語が終わった後、ナレーションによる忠告が行われる。……あれ? ひょっとしてこの声。
「もしかしてこのナレーション、結城さんの声じゃないかな?」
「確かに! よく聞くと、結城様の声なのです。カレンとしたことが、結城様の声に気づかなかったなんて。何たる不覚っ、なのですよ」
長い髪の毛を握り、悔しそうに叫ぶカレン。そして、彼女は突然の話題転換を行う
「そうなのです! 結城様の事なのです。お兄様、結城様の事、好きなのです?」
……どうなんだろう? 俺は結城さんのこと、どう思っているんだろう。
初めて関わったときは、困惑したな。まさか一緒に帰ろうって誘ってくるなんて。しかもそのあと大胆な行動を起こして。あの時は突然でびっくりしたよ。
結城さんには驚かされてばかりだったな。……でも、嫌じゃなかったかも。声をかけてきて嬉しかったし、目の前でありのままの自分を見せてくれたし。美味しいプリンもくれたし、大好きな妹たちの事も好きになってくれた。
もしかしたら、結城さんの事、好き、なのかも。屋上で励ましてくれて、仲間の頼もしさを教えてくれた。あの時の結城さんはかっこよかったな。
結城さんと、もっと一緒にいたいかも。
「お兄様、笑顔なのです。さては、結城さんのことを思い浮かべていたのですね」
ニタニタ笑顔のカレンが、核心をついてくる。カレンは、こういう時に鋭いんだから。
「ただ、結城さんの事を考えていただけだけど……」
「ごまかしても無駄なのです。自分の気持ちに素直になる事が好かれるために大切なのですよ」
うう、実際にみんなから好かれているカレンが言うなら、本当にそうかもしれない……
「えっと、あの、その……恋愛感情とかじゃなくて、ただ、友達以上の関係になりたいというか……」
「つまり、好き、という事ですね」
「……はい」
「それじゃ、早速結城さんに電話するのです。デートを生み出すのですよ」
「え、でーと? いきなりそんな……」
「好きな人とは、デートするものなのです」
「えと、その、じゃあ、カレンも一緒に来て」
「何でなのですか?」
「……カレンがいると、心強いから」
誰かと話さなきゃいけない時、カレンが一緒だと、凄く心強い。場の空気が凄く明るくなって、みんな仲良くなりやすくなる。結城さんとも、もっと仲良くなれるかもしれない。
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