俺と暴走妹   作:Atlantis

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結城由愛菜とカレンたち/屋上での対談

 

「ところで、お兄さんは元気かな?」

 

 私は二人の天使に、彼の状態を聞く。常日頃から一緒にいる妹たちならよく知っているはずだからな。

 

「……お兄様は最近影があるのですよ。お兄様はカレン達に何か、隠し事をしているのです!」

「う~ん。隠し事はともかく、確かに最近お兄ちゃん調子悪そうだよね。結城さんは何か知っていますか?」

 

 何か知っているか、か。彼はきっといじめの事を妹たちに隠しているに違いない。私にそれを伝える権利はないな。

 

「残念だが、あの件に関しては私からは伝えることが出来ない」

「そうですか……」

 

 ふわふわ妹が残念そうにしながらつぶやく。

 

「だが、彼を元気にしてあげたい気持ちは本物だ。二人とも、どうか私に力を貸してくれないだろうか」

 

「はい。出来ることならなんでも手伝います。お兄ちゃんを、よろしくお願いします」

「もちろんなのです。カレンはお兄様の闇を取り除きたいのです」

 

 二人とも快く受け入れてくれた。それだけお兄さんのことが好きなのだろう。微笑ましいことだな。……彼女たちのためにも、頑張らなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流れる風が肌をやさしくなでる。太陽はまぶしく、俺は目を少し細めた。わずかな汗が体を流れ、自分の体が臭わないかが心配になる。学校の屋上、ここで俺は結城さんに呼び出されたのだ。

 

 結城さんはどうして俺を呼び出したのだろうか。俺なんかを呼び出して何がしたいのだろうか。……正直、ちょっと気になる。

 

 ……もしかして、カレン関係の何かがあったのではないだろうか。たしか、カレンは結城さんに対して強い感情を持っていた。その感情が爆発して、結城さんに迷惑をかけてしまったのかもしれない。

 

 ははは、まさかな。……でも、カレンならやらかしそう。

 

 もしそうだったならどうしよう。結城さんは大人だから俺に対して怒りの態度はとらないだろう。でも、本心では怒ってるのかもしれない。対応に気を付けなければ……

 

 

「お待たせ」

 

 

 屋上へ、結城さんがやって来た。堂々たる振る舞いで、俺のもとへと向かってくる。

 

 

「5分前には来たつもりだったんだがな。まさかキミに先を越されているとは」

「特に休み時間にすることもなかったので。結城さんとのやり取りを楽しみにすることにしました」

「なっ……そんな、大胆な……」

 

 突然顔を赤くし、目線をそらしてくる結城さん。……用件を聞く前に狂気モードに移行しないでくれると助かるのだけれど。

 

「……それで、用件は何でしょうか」

「ああ、そうだ。キミに、一つだけ聞きたいことがある」

 

 結城さんは再びこちらを見つめてくる。彼女は一体、何を聞きたいのだろうか。

 

「聞きたい事、ですか」

「ああ、そうだ」

 

「……キミは、今のままで満足しているのか?」

 

 

 真剣なまなざしで、視線をそらさずに質問する結城さん。その表情に、非常に強い熱意を感じ取ることが出来る。

 

 

「……まあ満足できる状況ではないよ。理不尽な状況に追い込まれて、縮こまることしか出来ない今の現状には」

「それなら! その状況を変えてみたいとは思わないか?」

「……俺の力で出来るのならすでにそうしている。でも、俺には今の状況を改善する力が無い。結城さんのような優秀な人と違って、俺には現状を変える力なんてないんだ」

 

 

 今の俺にはイジメを解決する手段は一つしかない。結城さんに泣きすがって彼女の家の権力で金髪達を脅してもらう事。それくらいしか思い浮かばない。……でも、さすがにそんなことはしたくない。

 

 結局、俺がとれる手段は人任せしかないのだ。自分だけでは何もできず、誰かの力を頼らざるを得ない。……本当に情けない話だ。

 

 そんなことを考えていた時、結城さんは俺の肩に手を当ててきた。おっきくて力強いけれど、確かな温かさを感じる手。

 

「確かに、この問題は一人だけで解決するには厳しいものがあるだろう。日々精神をすり減らされ続けて心がボロボロの状態で、怖い金髪の男に逆らうなんて、普通の人にはできることではない。……でも、今のキミには私たちがついている」

 

 

 結城さんが、とても大きく感じる。もともと俺よりも身長が高かった彼女だが、今はさらに大きく感じる。……でも、私達って? 俺の味方になってくれそうな人は結城さんくらいしかいないはず。

 

 

「……みんな、来てくれ」

 

 結城さんは、物陰に隠れた人物に声をかける。……教師は絶対にありえない。どいつもこいつも金髪の味方だ。自分たちの保身のためかどうかは分からないけど、発言力の高い金髪に従うような人たちしかいない。教師じゃないとなると……まさか須田さんか?

 

 

「お兄ちゃん!」

「お兄様。カレンが来たのですよ」

 

 ……どうして、カレン達がここに?

 

 

「すまない。彼女たちは私が呼んだのだ。一人だけでは解決できない問題も、多くの人に支えられることによってどうにかできるかもしれないからな」

 

「そうだよお兄ちゃん。事情は良く分からないけど、私は応援するよ。もしお兄ちゃんが失敗しても、私が支えてあげる。だから、勇気を出して」

 

「カレンが来たからにはもう安心なのです。思い切って凄いことをやっちゃってください。お兄様には頭脳派の天才カレンがついているのです。万が一のことが起きても、カレンの機転で逆転なのですよ」

 

 

 みんな、俺なんかの為に……

 

 

「キミにはみんながついている。失敗を恐れていては先には進めない。……それじゃ、行こうみんな」

「お兄ちゃん、頑張ってね」

「頑張るのですよ♪」

 

 

 

 ……そうか、自分ひとりきりだけだと思っていたから、俺はあいつらに強く出れなかったんだ。先生やクラスメイトを味方にした金髪を相手に、一人きりで立ち向かわなければならないと思い込んでいた。

 

 でも、それは違った。俺には応援してくれる人たちがいたんだ。壊れてしまいそうな俺の心を支えてくれる人たちが。

 

 ……そろそろ決着をつけるときかもしれない。

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  • カレン
  • 結城さん
  • 金髪
  • 主人公
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