乙女心もシグルイ   作:hasegawa

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番外編  守護者見参

 

 

 

 ――――あれっ!? よぅ考えたら(たばか)られてない? ハメられてない?

 

 童心に返り、久方ぶりに思う存分ゲッターごっこをやったのは、良いんだけど……。

 二人でおてて繋いでルンルンと帰路に着いていた時、とつぜん三重の喉から「へあ゛っ!?」と変な声が出た。ウルトラマンみたいに。

 

・藤木さま呼び出される。

     ↓

・でも来たのはミキプルーン。

     ↓

・伊良子バックレてんじゃん!

     ↓

・ん? じゃあヤツは今どこに?

 

 念には及ばず*1。岩本家に決まってる。

 きゃつは今日、卑劣にも私達にゲッターごっこをさせておいて(?)、我らが屋敷を離れているその隙に、お父上を襲う算段だった。最初から全部そのつもりで、藤木をここへ呼び出したのだ!

 全てはきゃつの(はかりごと)だったのだ! 抜かったわぁぁーーッ!

 

 ということは……今回不幸にも、友六にホモ疑惑が掛かってしまったのも、全てヤツのせいということに相違ない!!

 あぁ何たる鬼畜の所業(しょぎょう)! 卑怯なり伊良子 清玄ッ!

 人をホモ呼ばわりするなんて、人として最低のことだろう! 絶許也!

 

 そして三重は、再びゲッター2に変形。全速で屋敷へと向かったのだった。

 その胸に、正義の炎をメラメラ燃やしながら!

 ごめんよミキプルーン!

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 三重の予感は正しかった。

 ちょうど彼女らと時を同じくし、他の虎眼流の高弟たちにも、刺客が差し向けられていたのだ。

 

 牛股権左衛門は、掛川を離れること七里の“浜松”という土地で、各地の道場めぐりをしたその帰り道を狙われ、大勢の刺客に襲われた。

 その比類なき実力により、牛股は見事に彼らを撃退したのだが、最後の最後に蝉丸(せみまる)という男の仕込み毒を受けてしまい、夜明けまで意識を昏倒させてしまう。

 

 宗像、丸子、興津といった高弟たちも同様だ。

 手分けをし、実質的な道場破りである“無双許し虎参り”を各地でおこなった帰り道に、それぞれが刺客に襲われていた。

 このたび晴れて“可憐”の身となり、ちょんまげにリボンを結んだ筋骨隆々の高弟達は、「いやーん!」とか「だめぇーん♪」とか「えっちぃー☆」とか言いながら、クネクネと気持ち悪く戦いつつも、その全てを撃退。

 各々が無事に生き残りはしたが、牛股よりも更に遠くへと出掛けていた事もあり、ついに先生の危機に駆けつける事は、出来ず終いだった。

 

 

「涼ちゃん! 気張られよッ!」

 

「涼之介どのっ! しっかり!」

 

 そして、掛川に残りし若い門弟たちにも、同様に刺客が差し向けられた。

 この日、近藤涼之介は家に千加と夕雲くんを招き、三人で実家の裏山に赴いて花火をしていた所を、刺客たちに取り囲まれてしまった。

 

 年若きとはいえ、虎眼流剣士。

 まさに一騎当千の実力者たちであるから、各自奮闘してはいるものの……、だが涼之介に限っては相当に苦戦している様子が伺えた。

 

 レイピアで刺突を放ちつつ、素手で大の男を粉砕しつつも。

 夕雲くんと千加は、いま苦渋の表情を浮かべる涼之介のことを常に気に掛け、自分が駆けつけるまで頑張るようにと、必死に檄を飛ばす。

 

 

『それは、誘っているのであろう……? 拙者を誘惑してるんだろう……?

 リボンをつけた美少年など、そんなの鴨ネギ(・・・)も良い所ではないかッ!

 ――――いったい(おれ)をどうするつもりだッ!! この感情(リビドー)をッ!!』

 

 

 それもその筈。さもありなん。

 いま涼之介が相手をしているのは、まごう事なき変態だ(・・・)

 

「なんやねん! この超絶ぷりてぃぼーい☆ 拙者みた事ござらぬわッ!!

 お主のせいで、拙者は目覚めてしもうたのだ(・・・・・・・・・・)ッ!!!!

 まさか、こんなにも素晴らしい世界があったとは♪ さぁ責任を取らぬか♪」

 

 かの者の名は、座波(ざは) 間左衛門(かんざえもん)

 現在は流浪の身であり、このように検校の雇われとなってはいるが、その実力は非常に高く、並の道場であれば“皆伝”を許される程の腕前だ。

 

 実際に彼はこの数年後、駿府の城下で自分の道場を開いており……、近き未来に行われし“駿河城御前試合”においても、藤木や伊良子と同様に、出場剣士として肩を並べる運命(さだめ)にある男である。

 

「ヒィィ~♪ オヒィィ~ッッ♪♪(恍惚)

 さぁ(わらし)よっ! わしを切り刻んでくれ(・・・・・・・)

 もそっと! もそっとぉ! お主の刃で傷付けてくれぇ~い☆☆☆」

 

 だがこの男は、とてつもない変態(・・・・・・・・)であった。

 むしろその変態性によって、同じくイッちゃってる徳川忠長に見出され、なんと200石で召し抱えられちゃう程のホンマもんである。

 

 間左衛門は確かに優秀な剣士なれど、その身に度し難い十字架(せいへき)を背負っている。

 彼は眼前に麗しい美貌を持つ者が現れると、その者によって斬られたい(・・・・・・・・・・・・)という願望を、抑える事が出来なくなるのだ。

 

 現に今日、刺客として涼之介の前に立った時、彼が一番始めにした事と言えば、刀を抜くでも襲い掛かるでもなく、自らの着物をはだける事であった。

 涼之介の姿をひと目みた途端、もう「うっひょー!」と声を上げて服を脱ぎ、一瞬にしてふんどし一丁になってみせた。

 これは彼の「着物や鎧など無しに、全身で美剣士の刃を受けたーい!」という欲望から来る行動。

 いま間左衛門は、まだ前髪の涼之介を前にして、パンいちの恰好で戦っているのだ。

 

「ひっ……! 来るなぁー!」ザシュウ!

 

「おっへぇ☆ 良いぞカワイ子ちゃん! もっとじゃーい!」

 

「来るなっ! こっちに来るなぁー!」ザシュウ! ザシュウ!

 

「ぐぎゃあー!(建前) ナイスゥ(本音)

 Oh! とっても良ぅ御座るぞボーイ! ワンモアセッ☆」

 

 虎眼流の教えいわく、【三寸切り込めば人は死ぬ】

 だが間左衛門は、ちょうど2.9寸だけ斬られるという器用なことをしつつ、ふんどし一丁でその場を駆け回っている。

 そのクネクネした立ち回りは、まるでアホ踊りかタコ踊りのよう。有り体に言って、物凄く気色の悪い動きだ。とても人のする物とは思えない。

 

「いやだ! 来ないでよっ! 来ないで下さいませっ!」ザシュウ! ザシュウ!

 

「ああ~ん♪ かたじけのぅ御座る! かたじけのぅ御座るるるるる!

 いえーい! 拙者うまれて来てよかったぁーーッ!! 

 ンギモッヂイイィィ(アヘ顔)」

 

 その身が斬られる程、切り傷が増えていく程に、間左衛門の身体に途轍もない快感が押し寄せ、その表情が恍惚に染まる。

 瞳孔は開き、焦点が定まらぬ瞳のまま、犬のように「アッヘー☆」と舌を出して喜ぶ。

 そして更なる快楽を求め、涼之介へとにじり寄っていく! もっと頂戴とばかりに!

 

「いいゾ~これ。アーイキソ。

 男の子に斬られるの最高って、それ一番言われてるから。

 フゥー↑ 気持てぃ~♡♡♡」

 

「うわー! たすけてぇーっ! 気持ち悪い気持ち悪いっ!」

 

 教えられた剣技も、日々鍛えた技も、秘剣“流れ”すらも! こいつには通用しない!

 すべて丁度2.9寸(一番気持ち良い深さ)で受けられ、それどころかガンガン前に出てくる! にじり寄って来る!

 

 その凄まじいまでの変態性、今まで感じた事のないような恐怖。

 敢えて己が身を斬らせ、その全てをギリギリ死なない間合いで受け続けるという無駄な絶技!

 可愛い子に斬られたい☆ ズタボロにされたい☆

 そんな度し難い性癖から生まれし、人呼んで【被虐の受け太刀】を前に、いま哀れな少年の勇気は脆くも砕け散り、ついにその精神が崩壊へと至ろうとしていた……その時。

 

 

『――――そこまでだ悪党ッ!! これ以上の狼藉、まかりならぬッ!!!!』

 

 

 闇夜を切り裂く、とても強い声。

 月明りが煌々と照らす闇夜に、一体の黒い影が舞い降りる。

 

『長生きだけを願うなら、人は獣と変わりなし。

 ただ一筋の、美しき道(男子児童性愛)、駆け抜けるから人という――――』

 

 涼之介、間左衛門、そして者達すべてが硬直する中……、この場で一番高い木の上に、その姿はあった。

 

『二つ無き身を惜しまずに、チュパる我が身は、ショタが為。

 たった三文字の不退転――――それが心の華である』*2

 

 そして、黒い影が〈シュバッ!〉とその場から飛び立ち、間座衛門の眼前に着地する。

 涼之介を背中で庇うようにして、雄々しく立ちはだかる。

 

 まるで音に聞く黒い獣(ジャガー)のような、黒い鎧。

 だがまるで日ノ本の物とは違う、明らかな異形の風体(ふうてい)

 首もとに巻いた白いスカーフをはためかせ……、いま男が毅然と悪に立ち向かい、自らの名を告げる。

 

 

『――――我が名は【エクゾチュパる(・・・・)零】

 強化外骨格なる鎧を纏いし、正義失格者也。

 具体的に言うと、牙を持たぬ人々……主に愛らしい少年とかを、守る者也』

 

 

 へ、変態だぁーーっ!!

 変態に襲われてたら、変態が助けに来たでござる! たすけて藤木さま!

 涼之介はそう思ったけれど、なんか腰が抜けちゃって、その場から立つことが出来ない。今すぐにでも逃げたいのに。

 こいつ、見た目は仮面ライダー風の姿だけど、全然ヒーローじゃない!!

 

「なっ……何だうぬは! この変質者め!(棚上げ)

 もう少しなんじゃ! (おれ)の物語が、ショタっ子ルートのトゥルーエンドに到達するのじゃ!

 頼む! 邪魔をするでない! 叩っ斬られたいかッ!」

 

『――――その言葉、宣戦布告と判断する! 当方に迎撃の用意有り!!』

 

 “不当な攻撃には、正当な報復を”

 これがエクゾチュパる零の基本戦闘理念である。

 

 かの制裁により、正義失格者の烙印を押されはしても(金玉ふみ潰され、仕置き追放されたけど)、彼は牙を持たぬ人々、主に可愛いショタっ子を守る者である。

 正義……いやセルフフェラという“性技(せいぎ)”をおこなう者なのだ! 決して退く事は無い!

 

神武(しんむ)の名に於いて、賊を粛清する。

 死に方用意せよ――――』

 

 お前も性犯罪者やろ。神武もビックリするわ。

 涼はそう思ったけれど、黙って見守ることしか出来ない。だって近寄りたくないもん。

 

 

 

『悪よ、安息せよ――――』

 

 そして今、エクゾチュパる零が操る【零式防衛術(性)】が炸裂し、間左衛門の拘束に成功。いわゆる現代における“チョークスリーパー”の形に捕らえた。

 

 ……ぶっちゃけた話、実は二人は「アヘェー☆」とか「んほぉ~♪」とか言いながら、小一時間ばかり戦っていたのだけど……。

 変態が変態と戦ってる所なんて、そんな気持ち悪いモン書きたくない(・・・・・・)ので、申し訳ないが省略いたし候。

 ここでは決着の様子のみをお伝えしよう。

 

『――――零式防衛術奥義・一人上手圧迫(ちゅぱちゅぱ・プレス)!!』

 

 チョークによって意識を失った間左衛門。その背骨をエクゾチュパるがグキッとへし折り、コンパクトに折りたたむ。

 いま間左衛門の頭は、ちょうど自らの股間の位置(・・・・・・・・)に来ている。

 背骨とはいえ関節を攻める以上、これも立派なサブミッションと言えよう。原作通りだ。

 そして、身体がすごく柔軟になった間左衛門は、きっとこれからの自己処理ライフに、新たな彩りが加わる事だろう。めでたしめでたし。

 

『涼よ、健やかにあれ。

 私はいつでも、お主を見守っておるぞ――――』

 

 未だその場に座るばかりの涼之介に、正義失格者は万感の想いを持って告げる。

 そして〈シュパッ!〉と身を翻し、再び月夜の闇の中に消えていった。

 

 

「エクゾチュパる零、いったい何奴(なにやつ)なんだ。

 でも何故だろう、なんかよく知っている(・・・・・・・)ような気もする……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いが終わり、この場は静けさを取り戻す。

 そこには、見えなくなるまでエクゾチュパるを見送る、涼之介たちの姿があるのみ。(刺客は全員ちゅぱる時のポーズ)

 

 彼の愛らしく大きな瞳には、決して正義のヒーローを見るような熱はなく、一片たりとも憧れなど浮かんではいない(・・・・・・・・)

 

 もう来ないと良いなぁ。でも一応助けてもらったしなぁ――――

 そんな変態共に対する、深い葛藤があるのみだった。

 

 可愛いと大変だネ!

 

 

 

 

 

 

*1
侍言葉で、確認するまでもない の意

*2
※注 牢にぶち込まれるのが怖くて、ショタコンがやれっか! の意






 涼ちゃんにはピッコロさんならぬ、ちゅぱコロさんが付いています。

 此度の物語には、シグルイ作者たる若先生が作品【エクゾスカル零】、及びシグルイ原作小説たる【駿河城御前試合】のネタありけり。

 ちなみに“被虐の受け太刀”の間左衛門さんについては、私は今回「一切の誇張をしていません」
 むしろ原作では「もっと酷い!」というくらい、とてもナイスな人物(マゾ野郎)ですので、ご興味があれば原作を読んでみると良いですぞ!

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