かの仇討ち仕合から数か月が過ぎ、まさに虎眼流が黄金期を迎えていた頃。
寛永五年、十一月三日の早朝――――岩本家の客間にて。
「三重どの! ご無沙汰しておりました!
駿河藩
「あら、
遠路はるばる、よく参られましたねぇ」
左の頬にある黒子、如何にもモテなさそうな間抜け面。
かしこまり岩本家を訪れた客人を、三重は容赦なく
「恐れながら三重さま……。かの御仁は、駿河より使いに参られし御方。
アホの馬淵というは、その……」
「およよ、ちと気安ぅございましたか。
こやつとは、拳で語りおうた間柄ゆえ、ついいつもの呼び方を♪
失礼をいたしました、
「……」
傍に控える藤木に窘められ、三重は小さく謝罪を返す。
ちなみに“拳で語り合った”と言えば聴こえは良いが、その実は「駿河に遊びに行った際に、何じゃお主はと言いがかりを付けられたので、何度かブン殴った事があります」というのが正しい。
士としてのプライドもあるのか、馬淵はそう訂正する事も出来ず、ただ黙り込むばかりだ。
「して、御用のおもむきは?
ようやく、そのうざったい
「いや……親からもらった大切な身体ゆえ、遠慮
本日参ったのは、忠長さまより仰せつかりました、三重どのへの“ご相談”の件にて」
ぜったい無い方がいいって。三重がプチ整形して差し上げまする。その方がモテます。
以前からそう言っているのだが、馬淵はなかなか首を縦に振らないのだ。この臆病者め。
「ぶっちゃけた話……この度我らは、江戸の光成さまより
何がフンドシじゃ、ちゃんと仇討ちやれと、激おこでおられるのです」
「当然でしょうね。そも伊良子と藤木さまが、戦っておりませぬし。
そりゃあ怒りたくもなりまする」
まるで他人事のように、しれっと言い放つ三重。彼女に罪悪感は無かった。
「幕府が報奨金を負担させられし事は、ともかくとして……。
流石にもそっと何とかならんのか? というのが、光成さまのご要望でして」
「討ち手、咎人、共に生存という、前例なき事態ですもの。
仮にも家康公の名に於いて行いし、先の仇討ち仕合。
さような前例を作るワケには参らぬ、という事にございましょう?」
「しかり。ゆえに改めまして、伊良子清玄との決着、つけて頂きたく。
一応は、これなるも
なにとぞ光成さまのお顔を、立ててあげて下され……あの御方も大変なのです」
「ふむふむ、なるぼど」
バッチこいである――――二人に異論は無い。
ちょっとばかり不幸な出来事があり、先の場では死合うこと叶わなかったが、かの者は藤木源之助の宿敵。倒すべき相手だ。
三重も藤木も、言われずとも決着をつける気マンマンであった。
「承りました。次こそは必ずや、伊良子清玄めを。
ではでは、仇討ちの場は如何いたしましょう?
なんなら今すぐにでも、斬りに参りまするが」
(こくこく)
「いやいや?! 此度参りましたるは、正にその事についてで御座いましてな!?
実は
「はて、わたくしを?」
三重と藤木はコテンと首を傾げ、暫し見つめ合う。
「忠長さま曰く、『どうせやるなら、パーっとやれ』
三重殿のご意見を聞き、此度の儀を“駿河城御前試合”として、ひとつ大々的におこなってみようではないか、との仰せに御座いまして」
◆ ◆ ◆
「という事でぇ! 三重は藤木さまと共に、駿府へ参る事となりました♪」
その日のお昼。活気で賑わう稽古場にて、三重は門弟を集合させる。
藤木を隣に置き、このたび駿府の威信を賭けて行う一大イベント、“駿河城御前試合”の総合プロデューサーとして、駿府へ招聘*1された事を報告する。
「これなるは、藤木さまと清玄のみならず、他にも何組もの仕合が行われる、大規模な物。
開催はまだ、一年近くも先なのですが……、今より企画立案や、参加者の選定などの準備をしたいというのが、忠長さまの御意向にございまする」
「おおー!」という歓声。「なんと!」という驚きの声。
徳川の副将軍に頼られるという、三重の得も知れぬ凄さに、みんな改めて驚愕している。
いつもの事ながら、この人はいったい何なのだろう? 一体どういう存在なのだろう?
そんな事はもう、誰も気にしてなかった。ホント慣れって怖い。
「ようやっと門下生も増え、道場も大きゅうなりましたのに……。
かように大切な時期、道場主たる藤木さま共々、岩本のお家を留守にするは、大変心苦しゅうございまするが……。
どうか許しておくれ、皆の衆」
三重は御前試合の準備。そして藤木は無明逆流れを打ち破るべく、修行をしなくてはならない。
いわばこれは、道場を離れての武者修行がわり。これまでとは違う環境にて、更に腕を磨いていく良き機会となるだろう。
せっかく道場も軌道に乗って来た所だけれど……、三重たちは旅立たねばならないのだ。
「
まだここへ来て、半年と経たぬというに。貴方の傍を離れること、どうか許して下さい。
これも暫しの別れです。道場の皆と共に、頑張れますか?」
「心得ました、三重さま……。お任せ下さいませ」
じわっと目に涙を浮かべる夕雲くんの頭を、優しく撫でてやる。
三重に心配をかけぬようにと、必死に寂しさを押し殺しているこの子が、とても健気でいじらしい。
「
いつか
その日を目指し、邁進して参りましょう!」
「はい! 三重さまっ!」
三重の足であれば、もう2日もあれば掛川に戻って来られる。
また必ず会いに来る事を約束し、夕雲くんをギュッと抱きしめる。
「うっしー、留守を頼みます。
ご苦労をおかけしますが、どうかお父上のこと……」
「承知して御座る。
ご案じ召されますな。この権左にお任せあれ」
万感の想いを込めて、ガシッと握手を交わす。権左衛門も力強く頷いてくれた。
「
貴方達は、虎眼流の要です。皆を導いて下さいませ」
「心得申した、三重さま」
「委細承知に御座る。ご武運を」
「源之助をお頼み申す。お気をつけて」
4人でコツンと拳を合わせ、健闘を誓い合う。ちょんまげにリボンを結んではいるが、彼らがいれば何の心配もいらない。虎眼流は盤石だ。
「涼や? もし何ぞピンチの時は、“エクゾチュパる”の名を呼びなさい。
かの者は、貴方の影……。わたくしが託したあの鎧が、きっと守ってくれます故」
「えっ?」
あの黒い鎧って、三重さまの友達?
誰に託したのかは知る由もないが、あの変態さんが守ってくれるらしい。あんまり嬉しく無いケド。
「次に戻りし時は、虎眼流の秘奥を伝授いたしましょう。
それまでに、しっかり腕を磨いておくのですよ?」
「は……はいっ! 行ってらっしゃいませ、三重さまっ!」
貴方こそ、虎眼流の未来――――わたくしの一番弟子。
この一年で、見違える程に腕を上げ、眩しいほどに輝きを増した麒麟児を、三重は誇らしげに見つめる。
そんな風にして、矢次に皆と別れを告げていく。
この場の誰もが生き生きとした顔で、駿府へと向かう三重たちを激励している……かに思えた。
「ちょっとお待ち下さりませ――――三重どの」
しかし、いま一人の乙女が。
「認めませぬ、
これも良き機会と、どさくさに紛れて、藤木さまと……」
プロミネンス――――
まるで太陽の表面で燃え盛る炎の如く、その身に得も知れぬオーラを纏う
「――――SEXするんでしょ!? 二人きりで暮らし、存分にSEXするつもりでしょ!?
千加には分かっておりますよっ!?」
雄たけび。これまで我慢に我慢を重ね、ひたすらイチ門弟として耐えて来た千加の、獅子の如き咆哮。
「な~にが仇討ちじゃ! ぬぁ~にが御前試合じゃあ!
それにかこつけて、二人でイチャイチャしに参るんでしょ!?
チュッチュチュッチュ! コリコリコリコリすんでしょうがぁー!
ごまかされぬぞ岩本三重ぇ! ――――汝の正体、淫魔也ッ!!」
「「「!?!?!?」」」
門弟達は「な、なんだってぇー!?」とばかりの顔。それに構わず、千加は騒ぎ立てる。
――――藤木さまを想うは、貴様だけに非ず! この千加もだ!!
お主を駿府へやるワケにはいかんと、徹底抗戦の構えである。
正式な夫婦となりはしても、先の仇討ちや道場の事もあり、未だ式すら挙げられていない三重&藤木。夢に見ていた熱海すら、一向に目途が付かないという状況の中……ここへ来て二人暮らしだとぅ?
これまでは「まだ慌てるような時間じゃない」と、じっと機会を伺っていた千加であるが……そんなモン駄目に決まってるじゃないか! 絶許也!!
「征かせぬぞ岩本三重っ! かような
SEX反対! SEXダメ、ぜったい!
だたお主は、SEXしたいだけじゃろがぁぁぁーーーー!!」
「「「!?!?!?!?」」」
もうぐうの音も出ない門弟たちを他所に、ひたすら「グゥアー!」と責め立てる。
ビシッと指を突き付け、鬼の首でも獲ったかのように。
「やれやれ、いったい何を申すかと思えば……。
これなるは、忠長さまより申し付けられし、正式な御公儀なのですよ?」
しかし三重は、まるで鎧袖一触。そよ風に対するかの如く……。
「――――するに決まってるでしょう? 朝から晩まで、えっちいたしまする」
「「「するの!?」」」
真っすぐお天道様に顔を向けて、堂々と言い放った。
「ずっこんばっこん致しまする――――猿の如く。
藤木さまの
貴方……何をおっしゃっているのです? この期に及んで。
当たり前にございましょう! しないでどうするのですか!」
「ッ!?」
馬鹿な娘――――今さら何を。
そのハッキリとした物言いに、逆に千加が怖気づいている。グラッと身体が傾き、一歩後ずさる。
「あらゆる事をします。コスプレも、拘束プレイも、SMも、四十八手も、受けも攻めも。
痴漢、無理やり、睡眠姦、声を出せぬ状況での羞恥プレイ。時間停止に
この世の全て、ありとあらゆるえっちを、やり尽くさずにはおかーぬ!!
わたくしは虎……虎眼流の子女たる女ですよ?」
「ッ!?!?」
「――――皆様ぁ! SEXいたしまするっ!!
このたび三重は、女となりまするぅー!」
「ッッ!?!?!?」
「何度でも言うたるわぃ! こんなモンは!!
――――SEX! 三重ちゃんはせっくす☆ 三重はズッコンバッコン!
みんなぁー! SEXにございますればー♪ セェェェエエエーーックス!!!!(迫真)」
まるで選挙カーにでも乗っているかのように、大きく手を振りながら、笑顔で言い切る。
皆様! 自由SEX党の岩本三重にございまする! 清き一票を!
そのあんまりにもアレな姿に、千加が膝を尽き、ワナワナと身を震わせる。
――――これが岩本三重! 虎眼流の阿修羅ッ!!
今も「ウケケケ!」と高笑いを上げる姿に、敗北感すら覚える。
こんなハッキリ言うんですね。真っ昼間から。
「えっと……アレもするのですか? かのNTRとか……」
「しますよ。もちろん致しまする。
お家の子女を手籠めにし、心と身体を屈服させ、道場の跡継ぎとなる――――
そういった設定のイメージプレイ、リアリティ満載にございまする。
または……妙におモテになる藤木さまを、三重が
「お、おしりもですか……!? 後ろでも致すのですか!?」
「前も後ろも、関係ございませぬ!(キッパリ)
使える物はなんでも、惜しみなく使いますよ?
藤木さまの全て! 堪能せずにはおれませぬ。
犬耳と首輪を付け、犬のようにされとぅございまする! わんわん!」
千加が恐る恐る口を開くも、帰ってくる答えは全て『YES』
何を訊いても、彼女は縦にしか首を振らぬ。虎眼流恐るべし!
「まさか、ごにょごにょ……もですか?!
あーんな理解出来しがたき儀であろうとも!?
三重さま……、貴方という御方はっ!」
「ようございますねぇ……♪ 藤木さまが仰せとあらば、三重は喜んで♪(ウットリ)
例えば、無理やり鼻を摘まんで咥えさせられ、散々クポクポやらされた挙句……。
そこから三重の口内に〈しぃ~!〉っと発射されるというも、ほんに趣き有りかと♪」
「なっ……なななな!」
「たいへん業の深き、女の尊厳を踏みにじる所業ッ!!
なれど、それも“愛の形”なれば♪
三重はガブガブいきます――――そう申し上げておきまする。おかわり!」
ば、化け物ぉー!!
千加はそう叫んで駆け出したかったが、腰が抜けて立つことが出来ない。
いま目の前にいるのは、修羅! 淫魔どころではない、愛の修羅なのだ!
「ちなみにですが、世の中には“男の潮吹き”なる物があるそうな。
せっかくですし、藤木さまにも存分に味わって頂きまする。
純潔を奪われしその夜に、人生初の潮吹きまで……。たいへん素敵だと思いませぬか?
まさか、二つも藤木さまの“初めて”を頂けるとは……。
三重は幸せ者にございまする♪」
「あわわ……! あわわわ……!」
千加は地面に両手を付き、ガックリと項垂れる。
いくら性に奔放な船木家の子女とはいえ、自分にそのような事は出来ない。
まだ生娘だし、花も恥じらうお年頃。ロマンチックに憧れる乙女なのだ。
最初からス〇トロだの、男の潮吹きだのは、いくらなんでもハードルが高すぎる。きっと一生もののトラウマを負うだろう。
まぁ三重も生娘のハズなのだが……一切負い目のない真っすぐな瞳が、「こいつならやりかねんで御座る」という真実味を感じさせる。
――――美事也、岩本三重! お主こそ古今無双の乙女ぞ!
「参りました、三重どの……。
とても千加の及ぶところではございませぬっ! ううっ……!」
「およよ、何を嘆くことがありましょうか。
そのように泣いていては、せっかくのプリティ・フェイスが台無しですよ?」
士よろしくの所作で、「参りまして御座る」と土下座する千加。
三重は優しく肩を抱き、そっと身体を起こしてやる。「大丈夫だよ」と花のような微笑みと共に。
「 ご安心召されぃ! 今は江戸時代でぃす☆
妾なんて、何人囲おうが問題ありませぬ!(キリッ) 」
ガガーン! という効果音と共に、千加の脳天に雷が落ちる。
対して三重は、もう輝くような満面の笑み。
「SEXいたしましょう! 千加さんも!
我ら二人でメロメロにし、
二度とホモになど目がいかぬように!」カッ!
「ほわぁーっ!?!?」
そんな!? まさかそんな落し所が!?
ビバ江戸時代! ビバ武家社会! なんと素晴らしき
この時代に産まれたる事を、千加は天に感謝する。まさに青天の霹靂!
「なんという懐の深さ……その包容力、菩薩の如しッ!
感服つかまつりましたぁ三重どのぉー! 一生ついて行きますぅぅ~!」
「なれば……共に参りしょう、駿府へ!
千加さんが来てくれるなら、ほんに心強ぅございます故。
そして藤木さまから
1+1=2じゃない! 十にも百にもなるのですっ!」
そっと涙を拭ってやり、コクリと頷き合う。
そして二人は示し合わせたように、ガバッと抱き合うのだった。
――――我ら
とばかりに。
「あ、ちなみに駿河城御前試合の折りは……。
藤木さまと伊良子のおしりに、南蛮渡来の
「良いですねぇ三重ちゃん!
緊張で震えとるのか、アナルバイブの振動で震えとるのか、よう分からん事になりますね!
わーい面白そーう♪ 立ち合いなんだか、
仲良くお話をし、「うふふ♪」と笑い合う竿姉妹(予定)。
そんな彼女たちを他所に、そぉ~っとこの場から離れた後、突然ダッと走り出す者がいた。
「――――あっ! 藤木が逃げたぞぉ! 追え追え~い!」
「どこへ行くのです藤木どの!? 駿府はどうするんですかぁー!」
うおっ! 藤木はえぇ! 流石は若先生!
門弟達をぶっちぎり、ひたすら駆け抜ける源之助。大切な純潔を守らんが為に。
「敵前逃亡は死罪ですよ! それでも
――――待てぃ藤木源之助ぇ!! 三重から逃れられると思うてかぁぁああーーッ!!
貴方さまは、愛から逃げると仰るのですか!」ドドドド
「お許しをっ! どうかお許し下さいまし! 三重さまぁぁーー!!」
新番組【アナルバイブもシグルイ】、Coming Soon。