乙女心もシグルイ   作:hasegawa

32 / 33
Epilogue ”やり直し“

 

 

 

 乳首にローターを付けた剣士は、剣を振る事が出来るのか?

 アナルバイブを装着した剣士は、骨を断つ事が出来るのか?

 

 ――――出来る! 出来るのだ!

 

 

「 でも私が知ってる駿河城御前試合とちがうッ!? 」

 

 

 この度、見事に復活を果たした岩本三重(本物)の叫びが、駿府のお庭に響いた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 その後の話をしよう。

 

 あれから三重は、出陣の支度を終え、ゆっくり世界の景色を目に焼き付けながら、藤木と共に歩いた。

 もちろん参着したのは、駿河城御前試合の会場。数多くの者達が集まる、厳粛ながらにぎやかな場所だった。

 

 なにやら、たこ焼きだのチョコバナナだの金魚すくいだのといった露店が、所狭しと並んでいた事には、すごくビックリしたけれど。

 とりあえず第一試合という事もあり、三重はイソイソと準備に入り、甲斐甲斐しく藤木の世話をした。

 

 出陣の盃の際に、彼が言った「どこへも行き申さぬ」の言葉――――

 実は彼女にとって、聴くのは二度目になるのだけれど、それでも胸が高鳴った。

 そして、結果をもう知っていたとはいえ……この上なく心強く感じた、

 

 自分はただ、ここで待っていれば良い。

 そして、決着の時が来たならば、今度こそ間違えない。

 それだけを想い、藤木源之助の背中を見送ったのだった。

 

 

 けれど……蓋を開けてみたら、なんか自分の記憶にあるヤツと違う。

 藤木は乳首のローターでくねくね悶えているわ、伊良子はなんか尻を押えて、まさに剣を杖にして「おおお……!」と縋り付いているわ。

 

 もう随分と遠い記憶のように思えるが、私が過去に体験した、己の知っている二人の勝負とは、決してこんな面白ルールでおこなわれる物では無かったハズだ。

 

 ――――ついでに言えば、藤木さま左腕あるじゃん! でも何で骨折だらけ?!

 ――――――伊良子メガネしてるじゃん!? しかも河童頭になってる!

 

 とまぁ、あまりの違いにビックリすること目白押しであった。

 そして……。

 

 

『おい(うぬ)……、何をたわけた事を申す。三重を泣かせる気か(・・・・・・・・・)?』

 

 

 二人の仕合がついに決着を迎え、藤木の刃が(ギリギリ2.9寸で)伊良子を打ち倒した瞬間、三重は意を決したように、広場の中央に駆け出した。

 たとえ御殿忠長さまの命に背き、その場で殺される事になろうとも、決して藤木さまには、伊良子の首を斬らせまいと。

 身を呈してでも止めに入り、藤木の心を守ろうとしたのだ。

 

 けれど……三重がやっとの想いで藤木にガバッと縋り付いた瞬間、かの忠長が口にしたのは、決してこちらへの非難の言葉ではなく、己の家臣に対する叱咤。

 その当道者の首を斬れ、武士の習いだと強要した者を、いきなり扇子でバチコーンと殴り倒したのだ。

 

『――――破れたとはいえ、その者は三重の友ぞ(・・・・・)

 まぁ度し難い変態ではあるが……、すぐ治療をさせぃ』

 

 

 三重が目をパチクリさせる中、すぐに駿府の使用人たちがこの場に駆け寄り、伊良子を担架に乗せて運んでいった。

 

 まったく状況が理解できず、あわあわと呟くばかり三重に、出来る事と言えば……。

 いま己の腕の中で、子供のように哀れに震えている源之助の身体を、しっかりと抱きしめてやる事。それのみであった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「先の場でも申しましたが……。

 改めまして、『おかえりなさいまし』、藤木さま――――」

 

 駿河城御前試合を無事に終えた、その日の夜。

 三重と藤木は、お世話になっている笹原邸に戻り、寝室にて向かい合わせに座っていた。

 

「三重は……ほんに嬉しゅう御座います。

 貴方さまがご無事で、心より安堵いたしました。

 伊良子を斬れなどという、私のワガママ……。

 そんなつまらぬ物の為、貴方を死地に追いやった自分を、恥ずかしゅう存じます」

 

 三つ指を立て、静かに頭を下げる。

 心からの謝罪。そして「貴方が生きていてくれて嬉しい」という、感謝を告げる。

 

 

「お慕い申しております――――藤木源之助さま。

 どうか妻として、私を貰って下さいまし。

 抱いて……頂けますか?」

 

 

 

 

 顔を近づけ、そっと瞳を閉じた。

 三重は彼に全てを委ねるように、愛する殿方に全てを捧げるべく、ゆっくりと身を預けていく。

 

 夢にまでみた瞬間。ようやく乙女の本懐が成就する時。待ちに待ったこの日――――

 

 しかし……。突然三重の意識はここでブラックアウトし(・・・・・・・・・・・)、まるで吸い込まれるようにして、夢の世界へと落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

『――――はぁ~い、そこまででぃす☆

 交代しましょうか~三重どの?(ニッコリ)』

 

「えっ」

 

 ここは! 私が慣れ親しんた場所! ずっと長いあいだ居た世界っ!

 そんな、もう二度と来るまいと思っていた夢の中で、いまあの優しかった女の子(・・・・・・・・)が、仁王立ちしていた。

 弾けんばかりの笑み! ニコニコと太陽のような笑顔で!

 

「あれっ……!? なんで成仏していないのっ?!

 あんなにいい感じの別れだったのにっ! なんでっ!?」

 

『やかましゅうございまする! なんか意外と消滅しなかったのでぃす♪

 これもひとえに、愛ゆえにッ! ラブパワーにございますれば☆』

 

 ガーン! と恐れおののく三重を他所に、ただいま女の子は絶好調。

 さもありなん。彼女は“虎眼流の阿修羅”と呼ばれし乙女。そう簡単に消滅するワケないのだ!

 

 

『――――えっちの時は代わりなさいっ!!

 何しれっとSEX(つかまつ)ろうとしてるのです! アホかっ!』

 

「うそぉぉーー?!?!」

 

 

 三重さん(本物)の叫び声が、この世界に大きく響き渡った。「なにそのルール!?」と。

 

『当然でしょう!? エッチの時はわたくしでしょうッ!?

 何ふざけたこと抜かしとるのですかっ! この淫乱生娘! あぁいやらしい! 痴女めッ!』

 

「ちっ、痴女は貴方の方でしょう!? なんでいきなり帰って来るのよ!

 まさか貴方……エッチしたさに無から復活したの(・・・・・・・・・・・・・・・)?!

 それだけのために?!?!」

 

 あれだけ自分が願った、「もう一度だけ機会を」という想い。切なる願い。

 それと全く同等のパワーを、こやつは「エッチしとうございまする!」という一念のみで捻り出したのか。あっさり復活したというのか。

 

 そして、これからもこの身体で、好き勝手やると言うのか。

 ――――岩本三重ご本人がいるのに! それを押しのけてまで!!

 

 

『 藤木さまは、わたくしのですッ!(ババーン!)

  めっちゃラブラブだし、アナルだってモリモリ責めたのです!

  あーんなキュートで愛らしい御方、誰にも渡しませぇぇーーぬ!! 』

 

「 ――――私だってエッチしたいもん! 三重まだ一回もした事ないんだよ!?

  良いじゃないケチ! 今日くらいは目をつぶってよ!

  バカっ! 鬼! 悪魔! 阿修羅ぁーっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~乙女心もシグルイ、完~

 

 

 

 







 お読み頂き、ありがとう御座いました。
 そしてコメントにて応援をくださった方々に、心よりお礼を申し上げます。

 最後まで書き切れたのは、貴方のおかげです。本当にありがとう。


 hasegawa


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。