乳首にローターを付けた剣士は、剣を振る事が出来るのか?
アナルバイブを装着した剣士は、骨を断つ事が出来るのか?
――――出来る! 出来るのだ!
「 でも私が知ってる駿河城御前試合とちがうッ!? 」
この度、見事に復活を果たした岩本三重(本物)の叫びが、駿府のお庭に響いた。
◆ ◆ ◆
その後の話をしよう。
あれから三重は、出陣の支度を終え、ゆっくり世界の景色を目に焼き付けながら、藤木と共に歩いた。
もちろん参着したのは、駿河城御前試合の会場。数多くの者達が集まる、厳粛ながらにぎやかな場所だった。
なにやら、たこ焼きだのチョコバナナだの金魚すくいだのといった露店が、所狭しと並んでいた事には、すごくビックリしたけれど。
とりあえず第一試合という事もあり、三重はイソイソと準備に入り、甲斐甲斐しく藤木の世話をした。
出陣の盃の際に、彼が言った「どこへも行き申さぬ」の言葉――――
実は彼女にとって、聴くのは二度目になるのだけれど、それでも胸が高鳴った。
そして、結果をもう知っていたとはいえ……この上なく心強く感じた、
自分はただ、ここで待っていれば良い。
そして、決着の時が来たならば、今度こそ間違えない。
それだけを想い、藤木源之助の背中を見送ったのだった。
けれど……蓋を開けてみたら、なんか自分の記憶にあるヤツと違う。
藤木は乳首のローターでくねくね悶えているわ、伊良子はなんか尻を押えて、まさに剣を杖にして「おおお……!」と縋り付いているわ。
もう随分と遠い記憶のように思えるが、私が過去に体験した、己の知っている二人の勝負とは、決してこんな面白ルールでおこなわれる物では無かったハズだ。
――――ついでに言えば、藤木さま左腕あるじゃん! でも何で骨折だらけ?!
――――――伊良子メガネしてるじゃん!? しかも河童頭になってる!
とまぁ、あまりの違いにビックリすること目白押しであった。
そして……。
『おい
二人の仕合がついに決着を迎え、藤木の刃が(ギリギリ2.9寸で)伊良子を打ち倒した瞬間、三重は意を決したように、広場の中央に駆け出した。
たとえ御殿忠長さまの命に背き、その場で殺される事になろうとも、決して藤木さまには、伊良子の首を斬らせまいと。
身を呈してでも止めに入り、藤木の心を守ろうとしたのだ。
けれど……三重がやっとの想いで藤木にガバッと縋り付いた瞬間、かの忠長が口にしたのは、決してこちらへの非難の言葉ではなく、己の家臣に対する叱咤。
その当道者の首を斬れ、武士の習いだと強要した者を、いきなり扇子でバチコーンと殴り倒したのだ。
『――――破れたとはいえ、その者は
まぁ度し難い変態ではあるが……、すぐ治療をさせぃ』
三重が目をパチクリさせる中、すぐに駿府の使用人たちがこの場に駆け寄り、伊良子を担架に乗せて運んでいった。
まったく状況が理解できず、あわあわと呟くばかり三重に、出来る事と言えば……。
いま己の腕の中で、子供のように哀れに震えている源之助の身体を、しっかりと抱きしめてやる事。それのみであった。
◆ ◆ ◆
「先の場でも申しましたが……。
改めまして、『おかえりなさいまし』、藤木さま――――」
駿河城御前試合を無事に終えた、その日の夜。
三重と藤木は、お世話になっている笹原邸に戻り、寝室にて向かい合わせに座っていた。
「三重は……ほんに嬉しゅう御座います。
貴方さまがご無事で、心より安堵いたしました。
伊良子を斬れなどという、私のワガママ……。
そんなつまらぬ物の為、貴方を死地に追いやった自分を、恥ずかしゅう存じます」
三つ指を立て、静かに頭を下げる。
心からの謝罪。そして「貴方が生きていてくれて嬉しい」という、感謝を告げる。
「お慕い申しております――――藤木源之助さま。
どうか妻として、私を貰って下さいまし。
抱いて……頂けますか?」
顔を近づけ、そっと瞳を閉じた。
三重は彼に全てを委ねるように、愛する殿方に全てを捧げるべく、ゆっくりと身を預けていく。
夢にまでみた瞬間。ようやく乙女の本懐が成就する時。待ちに待ったこの日――――
しかし……。突然三重の意識は
◆ ◆ ◆
『――――はぁ~い、そこまででぃす☆
交代しましょうか~三重どの?(ニッコリ)』
「えっ」
ここは! 私が慣れ親しんた場所! ずっと長いあいだ居た世界っ!
そんな、もう二度と来るまいと思っていた夢の中で、いまあの
弾けんばかりの笑み! ニコニコと太陽のような笑顔で!
「あれっ……!? なんで成仏していないのっ?!
あんなにいい感じの別れだったのにっ! なんでっ!?」
『やかましゅうございまする! なんか意外と消滅しなかったのでぃす♪
これもひとえに、愛ゆえにッ! ラブパワーにございますれば☆』
ガーン! と恐れおののく三重を他所に、ただいま女の子は絶好調。
さもありなん。彼女は“虎眼流の阿修羅”と呼ばれし乙女。そう簡単に消滅するワケないのだ!
『――――えっちの時は代わりなさいっ!!
何しれっとSEX
「うそぉぉーー?!?!」
三重さん(本物)の叫び声が、この世界に大きく響き渡った。「なにそのルール!?」と。
『当然でしょう!? エッチの時はわたくしでしょうッ!?
何ふざけたこと抜かしとるのですかっ! この淫乱生娘! あぁいやらしい! 痴女めッ!』
「ちっ、痴女は貴方の方でしょう!? なんでいきなり帰って来るのよ!
まさか貴方……
それだけのために?!?!」
あれだけ自分が願った、「もう一度だけ機会を」という想い。切なる願い。
それと全く同等のパワーを、こやつは「エッチしとうございまする!」という一念のみで捻り出したのか。あっさり復活したというのか。
そして、これからもこの身体で、好き勝手やると言うのか。
――――岩本三重ご本人がいるのに! それを押しのけてまで!!
『 藤木さまは、わたくしのですッ!(ババーン!)
めっちゃラブラブだし、アナルだってモリモリ責めたのです!
あーんなキュートで愛らしい御方、誰にも渡しませぇぇーーぬ!! 』
「 ――――私だってエッチしたいもん! 三重まだ一回もした事ないんだよ!?
良いじゃないケチ! 今日くらいは目をつぶってよ!
バカっ! 鬼! 悪魔! 阿修羅ぁーっ!! 」
~乙女心もシグルイ、完~
お読み頂き、ありがとう御座いました。
そしてコメントにて応援をくださった方々に、心よりお礼を申し上げます。
最後まで書き切れたのは、貴方のおかげです。本当にありがとう。
hasegawa