乙女心もシグルイ   作:hasegawa

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第六景  秘剣伝授の儀(♂)

 

 

 

 掛川城下、岩本の屋敷――――

 武家の家においては、毎年元旦には家族全員で屠蘇酒(とそしゅ)を祝う習わしがあり、この日は虎眼の妾である“いく”も、岩本の屋敷にて過ごしていた。

 

「ばぁ~ぶぅ! ばぁ~ぶぅー!」

 

「おーよちよち。どうしまちたか~?」

 

 そして現在、いくは虎眼の私室にて、いつものように主人への奉仕をおこなっている。

 

「おんぎゃあ! おんぎゃあ!」(母上どの! ごはんを所望いたす!)

 

「あらあら、お腹空いたんでちゅか~虎眼ちゃん? ミルクを飲みましょうね~♪」

 

 これは【虎眼流・赤子還り】と呼ばれし、男女の営みの一種なり。

 その起源、古代中国にまでさかのぼり、(いにしえ)より数多くの貴人たちにより嗜まれて来たという、伝統と格式ある行為。

 互いへの信頼や、高度な技術を要するゆえ、これをおこないし者には、相応の修練、そして高い熟練度が要求される。

 更に虎眼流においては、創始者である岩本虎眼により数多くの工夫や、独自の掟がいくつも追加されており、とても常人には行うこと出来ぬ荒行として、広く知られている。

 

 

 

・其の壱。 【赤子たる者、衣服着用するべからず】

 

 赤ちゃんは、はだかんぼうが大好き!

 然れば(なんじ)着用するは、涎掛けのみ也。チャイルドスモッグは可なり。

 

 

・其の弐。 【赤子たる者、下の毛生やすべからず】

 

 赤ちゃんなのに、下の毛が生えてるのって、すごくおかしな事だよね!

 ゆえにプレイの前には、あらかじめ全ての毛、剃っておくが習い也。

 あえてママに剃毛(たまわ)りし儀も、極めて趣ありて粋なり。

 

 

・其の参。 【赤子たる者、無力に徹すべし】

 

 赤ちゃんは何も出来ないんだ! だからぜんぶママにやってもらおうね!

 ごはん、お着換えはもとより、排泄の世話まで対手に委ねるという恥辱。

 これにより、至高の快楽来たれり。新たな門ひらけり。

 

 

・其の肆。 【(なんじ)、勃起したもうこと無かれ】

 

 赤ちゃんはとっても純粋! えっちなこと考えたりしないんだ!

 ゆえにもし、力及ばずおっき(・・・)(つかまつ)ること相成りし時、慎みママのお仕置き(・・・・)賜るべし。

 ママより「いけない子でちゅね~」とか言われつつ成されしお仕置きの儀こそ、この遊戯の本願たるもの也。全身全霊を持ちて堪能すべし。

 

 

 ……と、このように虎眼流・赤子還りの儀という物は、様々な鉄の掟を持って行われし、恐るべき荒行であるのだ――――

 

 

 

「まんま! まんま!」(おいちゅう御座いまする! おいちゅう御座いまする!)

 

「はーい、いっぱい飲みまちょうねー♪ 虎眼ちゃんは甘えん坊でちゅね~♪」

 

 先ほどまでは門下生たちを前に、真面目な顔で新年の挨拶をおこなっていた岩本虎眼。

 しかし今は、こうして朝っぱらからいくにお願いし、赤子還りの儀をおこなっている。

 まぁぶっちゃけた話、何をどう言い繕おうとも、これはただの“赤ちゃんプレイ”である。

 関係ないけど、いくさんも凄くノリノリだ。彼女の母性が輝かんばかりに迸っている。まるで菩薩のように。

 

「おんぎゃあ! おんぎゃあ!」(母上どの! 拙者もお願い申す!)

 

「はいはい♪ いま行きまちゅよー♪ 待ってて下ちゃいね~♪」

 

 虎眼のもとを一旦離れ、いくは隣の布団の方へと行き、同じように哺乳瓶を咥えさせる。

 

「お腹ちゅきまちたねー、清玄ちゃん♪ いっぱい飲みまちょうね~♪」

 

「まんま! まんま!」(恐悦至極! 恐悦至極!)

 

 そして、いくはそれが終わった後、手にガラガラを持って、再び虎眼の方へと戻った。

 

「じゃあ虎眼ちゃん、おしめを代えまちょうね~♪」

 

「おんぎゃあ! おんぎゃあ!」(こんな体勢っ! わし恥ずかしゅう御座る!)

 

「それじゃあ清玄ちゃんも、脱ぎ脱ぎちょうね~♪ はーいゴローン♪」

 

「ばぁぶー! ばぁぶー!」(拙者の全てが見られており申す! 恐悦ッ!)

 

 二つの布団の間を、行ったり来たり。

 いま一人の女性として、いくは最高に輝いている。母性が眩しい。

 

「ばぶ? ばぶぶ?」(あれ? なんか今“清玄”って言わなんだ?)

 

「気のせいに御座いまする虎眼ちゃん。

 ほらほら、ガラガラでちゅよ~♪ 楽しいでちゅねー♪」

 

「いやでも、いくよ……? なんかワシの隣に、知らん布団があr」

 

「まぁ虎眼ちゃん! 赤ちゃんは喋ったりしないでちゅよ~?

 おしゃぶり咥えまちょうねー♪」

 

「もがっ……?! ばぁぶ! ばぁぶ!」

 

 

 いま部屋の中では、涎掛け一枚の姿となった男二人が、おしゃぶりを咥え、いわゆる“ちんぐり返し”の体勢でバブバブ言っている姿がある。

 その筆舌に尽くしがたき凄まじい光景を、いま岩本家の子女である三重、そして門弟である藤木の二人が、襖の隙間からじぃ~っと覗き込んでいた。

 

「ねぇ藤木さま? あれ私の父親なんです」

 

「三重さま。あれなるは……、拙者の同胞に御座る」

 

「お父上と清玄、とても楽しそうですね」

 

「なによりに御座る(震え声)」

 

 ばぶばぶ! だぁだぁ! きゃっきゃ☆

 今も部屋から聴こえてくる、大の男が発する気色の悪い声。

 二人は白目を剥いたまま、眼前で行われている儀を見つめ続ける。

 

「ちなみに今、私たちの後方にて、九朗右衛門がちゅぱちゅぱ(・・・・・・)やっておりまする」

 

「……」

 

「恐らくは涼之介あたりを対手とし、これなる行為を想像しながら、致しておるのかと。

 同じ門下の後輩として、藤木さまはいかが思われまするか?」

 

「…………」

 

 引き続き、仲良く身を寄せ合いながら「じぃ~!」っと部屋を覗きこむ二人。

 

 

「――――まったく、虎眼流は地獄だぜッ!!

 とりあえず三重は、そう申しておきまする」

 

 

 やがて、いつまで経っても終わる様子の無いそれに、少しばかり飽きて来た頃……。

 三重と藤木は、ようやく襖から目を離す。

 

「おせちでも摘まみに行きましょうか。もう昼時ですゆえ。

 では藤木さま、お手を」

 

「か……かたじけのう御座る」

 

 人生史上かつてない精神的ショックを受け、もう足腰がガクガクガク~となっている藤木に優しく付き添いながら、三重は新雪の降り積もる庭を歩き、玄関の方へと向かうのだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 虎眼ボケてるし、バレないと思った。いけるかなと思った――――

 清玄といくの両名は、後にそう供述をした。

 

 でも現実は、全然そんな事はなく……。

 後日清玄に対する“先生の妾に手を出した制裁”は、しっかりと、つつがなく行われる運びと相成ったのである。

 

 

「やってくれた(のう)……! やってくれたNO! IRAKOッ!!」

 

「……」

 

「…………」

 

 関係ないけれど、何故いくと清玄は、そんなチャレンジャーなプレイをしようと思ったのだろう? そんな事しなけりゃ密会もバレなかったし、怒られずに済んでたのに。

 もうあまりにも自業自得すぎて、アホすぎて、三重も藤木も全然同情が出来ないというか……、同情の余地が見あたらないのだった。

 

 様々なプレイへの渇望、その飽くなきフロンティアスピリッツは、人の業なのか――――

 果たして、そこまでしてやりたいモンなのだろうか? 全てを投げうってまで。

 三重も藤木もよく分からないし、皆目見当もつかないが、「げに度し難き物だなぁ」と思う。願わくば、こうはなりたくないものだ。

 

「――――相すまぬ! まこと申し訳御座らぬって! 許し候えって!」

 

 場所は秋葉山、昆嶽(こんたけ)神社。

 岩本虎眼が秘剣“流れ星”を開眼した地であり、虎眼流にとっての聖地とされるここに、いま門弟たちに腕を引っ張られながら歩いてくる、伊良子清玄の姿が現れた。

 

「じゃ……、じゃあ何にござるか!

 師匠の妾を寝取っちゃならぬという、そんな法でもあると申すか!

 (それがし)存じんかったし! 何も言われんかったし!

 あるんだったら先に申しとけよッ!」

 

 彼が喚き散らしながら、まるでアホな中学生の如き逆ギレをしながら、ここへやって来る。

 いま甲冑を着込み、合戦さながらの佇まいを見せる、岩本虎眼のいるこの場へと。

 もちろんその周りには、権左衛門や藤木を始めとする門弟たち、そして子女である三重も控えている。

 

 神社の大きな社を背に、己を待ち構えていた大勢の人間達の姿。そしてこの場に漂う大掛かりでただならぬ雰囲気。

 伊良子は額から汗を流しながら、ゴクリと生唾を飲む。これアカンやつに御座ると。

 

「い、伊良子清玄……只今参着(さんちゃく)に御座る……」

 

 とりあえず虎眼の目の前にやって来た伊良子は、ビクビクしながらもその場にしゃがみ、首を垂れる。

 これなんや、わい一体どうされんねや。

 そうは思いつつも、とにかく虎眼の言葉を待つ。

 

『伊良子清玄。

 本日この場にて、その方に流儀の秘奥を伝授いたす――――』

 

 

 …………。

 …………………。

 

 虎眼は堂々とした佇まいで椅子に腰かけたまま、ハッキリと告げた。

 それを聞いた伊良子は、ただ瞳を大きく開き、その場で呆けるばかり。

 

 ――――えっ、何で伝授されんの? (それがし)って別に、跡取りでも師範でもないよね?

 ゆえに伊良子は、それがおかしいという事を、一発で悟る。

 これは、なにかしらの体裁を取り繕った、自分への制裁の儀に他ならないという事を。

 

 ……だって「わしの妾が弟子に寝取られた! ムカついたので殺します!」では、あまりにもカッコ悪い。先生めっちゃ恥ずかしいじゃん。もう掛川の町を歩けないじゃん。

 自分がここに連れてこられたのと、この仰々しいまでの準備は、十中八九そういう事なのだろう。

 たとえ“流儀の秘奥伝授”とか言われても、伊良子は何も期待しなかった。これ絶対ぶっころのヤツに御座る。

 

「さすれば、まずは何本かの手合わせを行い、業前(わざまえ)をお見せした後じゃ。

 ……よいな、清玄?」

 

「しょ、承知(つかまつ)った……」

 

 権左衛門が言葉を引き継ぎ、伊良子がそれに応えた。

 とりあえずはもう、やるしかない。なにがあっても切り抜けるしかあるまい。

 伊良子はそう覚悟を決めて、静かにその場から立ち上がる。

 

「それでは、船木道場の剣士の皆さん(・・・・・・・・・・・)。こちらへ。

 今日はご協力を頂き、まことかたじけのう御座る」

 

「えっ」

 

 伊良子が声を漏らす中、権左の指示に従い、この場にゾロゾロと船木道場の皆さんが集まって来る。

 ちなみにであるが、5人や10人とかでは無い。ものすごい数である。

 

 

「ではこれより、虎眼流・秘奥伝授の儀!

 【伊良子清玄 vs ホモ剣士100人! 負けたら百人がかりで即レイプ!】を執りおこなう!!」

 

「――――ちっとは隠せよッ! 悪意をッッ!!」

 

 

 もうこの世界は、悪意だらけだ! 憎悪に満ち満ちている!

 (それがし)の知ってる武士道と違うと、伊良子は力の限りに叫ぶ。

 

「何故じゃ!? なにゆえ普通に、腹を切らせてくれぬッ!?

 某は今生で、前世で! そこまでの罪を犯したと申されるかッ!!??」

 

「諦めよ伊良子。……虎眼流の門を叩いたのが、お主の運の尽きよ」

 

 権左がそそくさとこの場を去り、代わりに本日一番手となる、衆道大好き船木道場の剣士が、この場に現れる。

 ちなみに今、彼の後ろには、もう順番が待ちきれないとばかりに満面の笑みを浮かべる99人の衆道フリークスたちが、神社の敷地外の階段の下まで、ズラッと一列で並んでいたりする。

 “BLに非ず、衆道なり”をキャッチフレーズに、彼らは「伊良子をファック出来る」と聞き付け、二つ返事でこの場に集まったのだ。

 

 この時代にはまだ開発されていないが、もし核という物が使えるのなら、今この場に落としてしまえば良いと思う。

 

「皆様こんにちは! 虎眼流・岩本道場師範、三重に御座いまする。

 本日はここ、秋葉山、昆嶽(こんたけ)神社より、白熱した仕合の模様をお届け申しまする」

 

 神社の敷地内に備えられた特設実況席にて、近所の裏山で採れた立派な松茸をマイク代わりに握る三重が、皆に挨拶をおこなう。

 お正月らしい華やかな着物は、正に女子アナといった風貌。

 

「解説は、同じく岩本道場師範代、藤木源之助さまです。

 藤木さま、今日も男前でいらっしゃいますね! 本日は宜しゅうお頼み申しまする」

 

「……う、(うけたまわ)り申す」

 

 三重の隣にちょこんと座り、ダーダー汗を流している藤木。

 いま眼前にある、同胞である伊良子の身震いするような状況のこともあるが……、きっと今は「拙者に流暢に喋れと?! まことに御座るか?!」と心配になっているのだろう。

 頑張れとしか言いようが無い。

 

「さぁ藤木さま! 本日は伊良子vsホモ剣士100人という立ち合い!

 負ければその場で即ホモファック!(100回)

 という事にございまするが、いかが思われまするか?」

 

「南無八幡大菩薩」

 

「ありがとう存じまする。

 短い言葉ながら、この場の絶望感がビンビン伝わって参りまする。さす藤」

 

 あ、ちなみに吐きたい時は、机の下に袋が用意しておりますゆえ。

 そう顔面を真っ青にした藤木を、優しく気遣ってやる三重であった。

 

「そして本日は特別ゲストとして、みんな大好き駿河大納言(するがだいなごん)でお馴染み、徳川忠長(・・・・)さまにも、お越し頂いておりまする。

 忠長さま、本日は宜しゅうお頼み申しまする」

 

 そして更に藤木の隣の、なにやら色の無い瞳でヌボォ~っと座っている徳川忠長が、静かにその口を開いた。

 

 

「――――全員、打ち首獄門」

 

「はい、ありがとう存じまする。

 それではまもなく、仕合開始ですっ!」

 

 

 今の言葉は聞かなかった事にして、三重たちは会場の方へと向き直った。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「さぁ始まり申した! 虎眼流プレゼンツ・伊良子清玄vsホモ剣士100人!

 ホモファックという一時の欲望に、全てを賭けろッ!

 長年磨き上げた、己の全て! まさに(さむらい)の魂とも言うべきその剣を、ただただ眼前の男の、小汚い蕾を散らさんが為に使うのか!

 ガチ衆道家たちの織り成す、狂気の宴! ここに開演でありますっ!」

 

 とりあえず、ここから暫くは描写ではなく、三重さまたち実況席の音声のみでお送り仕ります。

 もし細かく描写いたせば、とてもRー15では済まない事態に成りかねぬ事情ゆえ、何卒ご容赦(たまわ)りたく存じ候。

 

 

 ……………

 …………………………

 ………………………………………………

 

 

 

 

「船木道場一人目、稲垣 吾郎丸! いきなり上半身のお召し物を脱ぎ捨てたぁ~!

 これが長きに渡る修練の末、手に入れた鋼の肉体! 筋肉の二世帯住宅でありますっ!」

 

「笑顔がキショう御座る……。ホモ特有の笑みに御座る……」

 

「なんとぉー! ついでに木剣も放り投げたぁー!?

 そのまま南蛮柔術(レスリング)におけるキャッチ・アズ・キャッチ・キャン!

 いわゆるクラウチングの姿勢っ! もうファックのことしか考えていなぁーい!!」

 

「剣士とは、(さむらい)とは何ぞや!? それで本当に構わぬのかっ!?」

 

「武士道じゃない! 衆道です!(キリッ)

 そして一気に駆け出すぅー! 捕まえに行ったぁ~!

 脳天に面打ちを喰らっても離さない~!」

 

「組み打ち!? 伊良子の剣が先ぞ! なぜ仕合を止めぬ!?」

 

「お父上(虎眼先生)は、止めよとは申しておりませぬ!

 これは仕合に非ず! 男の矜持を賭けし死合いにてっ!

 今わたくし達の眼前では、まさに“散らすか散らさせないか”という、男達の暑苦しい取っ組み合いが繰り広げられておりまする! 眼福ッ!!」

 

「伊良子ッ! 突き放せっ! 離れよっ!

 決して組み付かれてはならぬッ! かように足を掴まれてはっ……!」

 

「――――駄目だぁー! 押し倒されたぁぁーーー!!

 そのままのしかかられぇ~、ファック・タイーム☆

 全国の衆道フリークの皆様ぁ! お待たせいたしましたぁ!

 仕合開始20秒! 一人目にしてファックタイム突入でありますっ! ライドーン☆」

 

 

 

 むーざん♪ むーざん♪ とーらの かーこいもの♪(BGM)

 

 

 

「……おおっと振り払ったぁっ! ここで両者立ち上がって、仕切り直しぃ!

 只今の記録、“18ピストン”なりッ! お美事にございまする!

 果たして今日、清玄の蕾は大丈夫かぁ~!? 最後まで原型を留めていられるのかぁ~!?」

 

「伊良子っ! 逃げろ伊良子ッ! もう構わぬからッ!!」

 

「稲垣吾郎丸、引き続き徒手空拳のまま、ジリジリとにじり寄っていくぅ!

 当然ですッ! 彼はまだ満足していないッ! 彼のもう一本の刀(・・・・・・)は、今も三日月の如く、雄々しくそり立っております!!

 一度刀を抜いたからには、獲物を仕留めるまで収まりが付かぬとばかり!

 これは武士として生きる者の(さが)なのかぁー!」

 

「虎拳だ伊良子ッ! きゃつの頭蓋を潰せッ!

 そうせねばお前がッ……!」

 

「――――駄目だぁー! また組み付かれたぁぁーー!!

 そのままガードポジション(全然守れてない)に移行ぅ~!

 さぁ皆様! お手を拝借! リズムに合わせて手拍子をば、願い上げ候!

 そ~れ、はいッ! はいッ! はいッ! はいッ!」

 

 

 

 むーざん♪ むーざん♪ とーらの かーこいもの♪(BGM)

 

 

 

「……伊良子っ! 大事ないか伊良子ッッ!?」

 

「おーっと伊良子選手ぅ! なんかグッタリしている(・・・・・・・・)

 それに対し稲垣選手は、スッキリした顔で満面の笑みぃぃーー!

 やったか!? “本懐”を果たしたか!? これは成し遂げたかぁーー!?」

 

「立て伊良子ッ! 逃げろッ! その場に居たら……!」

 

「あなや! なんという事に御座いましょう!?

 船木道場が誇る、100人のホモ剣士達が、ゾロゾロと伊良子の近くに集まっているッ!!

 そのまま全員で取り囲んだぁぁーー! もう辛抱たまらぬとばかりにっ!

 こちらからは何も見えませぬ! まさに“人は石垣、人は城”だぁー!」

 

「うぶっ!? お……おぐぁ!」(机の下に入り、袋を手に取る)

 

 

 

 むーざん♪ むーざん♪ とーらの かーこいもの♪(BGM)

 

 

 

「……はい! さてさて現在も私の眼前では、引き続きホモホモ剣士たちによる、楽しい楽しいパーティが繰り広げられておりまする!

 セックス・アンド・ザ・シティならぬ、衆道アンドザ神社!

 神仏の御前で、なんとも罰当たりな行いであります! まこと衆道は、業が深いですね!」

 

「……」

 

「藤木さまは、さっきから無言で白目を剥いておりまする! 彼はもう限界ですっ☆

 まったく、虎眼流は地獄だぜッ!!!!

 さて、現在100人のホモ剣士達による人垣で、こちらから伊良子の様子は伺えませぬ。

 時折きこえてくるのは、ホモ剣士たちのぬふぅ、ぬふぅの声だけに御座いまするが……ゲストの徳川忠長さま、いかが存じまするか?」

 

「――――全員、打ち首獄門」

 

「ありがとう御座いまする。いったんCMです♪」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ちなみに、このあと追加の罰ゲームとして、清玄の下まぶたに“番手林(バンテリン)”という、異国の薬品をぬりぬり。

 目がスーっとし、もう瞼を空けていられないという状態にしてやってから、満を持して虎眼先生と立ち合ってもらった。

 

 言うまでも無く、伊良子清玄のボロ負けである。

 ひと欠けらの慈悲すらなく、秘剣“流れ星”でスパーン!

 

 立ち合い後、伊良子の傍に駆け寄ったいくに「ひとでなし!」と罵られてしまったけれど、三重や藤木をしても「ほんまその通りやでぇ」としか思えない。

 

 

 ――――なんで私たち、虎眼流なんてやっているんだろう? こんな外道剣法を。

 

 剣に対する根本の気持ちが揺らぎそうになった、新春の一日であった。

 

 

 

 

 

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