乙女心もシグルイ   作:hasegawa

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番外編  さよならは言わない

 

 

 

「えー、ちょんまげのみなさん。おはようございまする」

 

 ピヨピヨと小鳥たちの声がする、岩本道場の朝。

 

「本日はお稽古の前に、ひとつみなさんに、残念なお知らせがありまする」

 

 今日はどんな稽古をするんだろう? ぼくもっと強くなれるかな?

 そんな風にワクワクし、目を輝かせている前髪の子達の前に、師範の岩本三重が立つ。

 

「先日、みんなの友達である涼之介くんが男の娘になったことにより、なんかテンションが振り切れてしまった九郎右衛門、こと“ちゅぱ衛門”おにいさんですが……。

 このたび岩本道場から、仕置き追放される事となりましたので(・・・・・・・・・・・・・・・・・)、ご報告いたしまする」

 

 えっ、ほんとに!? あの気持ちの悪いお兄さん? なにやったの?

 幼い前髪の子達が、ざわざわとし始める。

 大変遺憾な事ではあるが、このたび虎眼流では先の伊良子清玄に続き、二人目となる仕置き追放(破門)が出てしまったのである。

 

「ほんに詳しくは申せませぬが……、昨日ちゅぱ衛門さんは涼之介くんに対し、おいた(・・・)をしそうになりました。

 ぶっちゃけ道場の床には、入念にアップをしていたらしき形跡や、なにやら良からぬ器具などが沢山用意してありましたゆえ……。

 これは衝動的な犯行ではなく、計画的な物かと存じまする」

 

「ですが……、偶然そこを通りかかった藤木源之助さまが、きゃつのチンコを踏み潰し(・・・・)、しっかりけじめを着けさせましたゆえ、どうぞ安心して下さい。

 なにとぞ親御さまには、『もう大丈夫だよ』とお伝え下さいますよう、お願い申しまする」

 

 うっそぉ~! 信じらんないよちゅぱえもぉ~ん! ちょー幻滅ぅ~!

 どこもかしこも、「気持ち悪い、気持ち悪い」のオンパレード。

 三重はパンと手を叩き、前髪の子達へ静粛にするよう呼びかける。

 まだお話は終わっていませんよ? と。

 

「おほん! 三重先生も、みんなの心中はとてもよく分かりまする。

 これまでちゅば衛門を慕っていた者、教えをこうていた皆さんには、大変申し訳ない気持ちです」

 

 えっ、誰か慕ってた人いる?

 私あの人にがて!

 藤木さんのほうが好きー♪

 

 子供達がヒソヒソと囁き合う。

 

「みんな色々と、思うこともあるかと存じまするが……。

 しかし、あんなんでも一応、虎眼流の弟子です。剣の腕だけ(・・)は確かでした。

 ゆえに……、どうぞご心配なく。

 ちゅぱ衛門さんにご指南いただいた技術は、これからもみんなの中で、ずっと生き続けます」

 

 えーっ! やだぁーっ!

 あんなのもう忘れるぅー!

 ぼく使わなぁーい!!

 

 岩本道場が今、阿鼻叫喚の地獄となっている。

 

 

「昔の偉い人の言葉に、『それはそれ、これはこれ』という物も、ございまする。

 みんな、此度のことはそっと胸の奥に仕舞い、元気にお稽古していきましょう」

 

「そして、今後のちゅぱ衛門さんの活躍に、ご期待ください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ひい! ふう! みい! よぉ! 愛ッ! 羅舞ッ! 日ノ本!

 

 たくさんの子供達の声が、稽古場に響いていく。

 みんなの汗がキラキラと光る。活気に満ち溢れている。

 

 

 岩本道場は今日も、元気いっぱいだ――――

 

 

 

 

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