outwardの世界に異世界転生   作:越波

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そろそろ書き貯めていた分が尽きてきました‥‥。
ちなみに鬱展開にする予定はないです。


第19話 モンスーンへようこそ

「だあ、もう! 恐竜しつこいし道狭いし盗賊ばっかりだし、サイアクだよここ!!」

 

「まあ、それでもミカの火力ならコイツらとも渡り合えるんだよなー」

 

 俺はミカが[ルーントラップ]で始末した野盗の死体からアイテムを回収しながらほくそ笑んだ。

 

「ちょっと重量オーバーなんでこれ持ってて」

 

「えぇ~、またぁ? これ重いんだけど‥‥」

 

 ミカが嫌がって見ているのは、円形の[鋼の盾]だ。重量5.0だからそこまで重い代物ではないが、リュックの中に4枚も入ってるから嫌なのだろう。

 

「まあ、そう言うなよ。これ高く売れて便利なんだよ」

 

 宝箱の中身みたいにレアな奴なら売れる、って物じゃなく、ほぼ確定で出る上に持ってる奴も頻繁に出くわすのが素晴らしい。町の外でぐるっとマップの外周回ってこの盾を集めるだけで銀貨数百枚稼げるぐらいだ。

 

「そんなに? 大した値打ちあるように見えないけど‥‥」

 

「そうかもな」

 

 実際、この等身大の世界がどのバージョン準拠なのかはわからないが、自分がPS4でやってたバージョンなら、盾一枚で銀貨50枚だったはずだ。ただ、PC版では25枚に減額されていた。別のアイテムと売価の設定を取り違えてたのではないだろうかと思っている。

 

 とは言え、減額アップデート後は以前程ではないにせよ、この盾のお陰で俺に取っての沼地は“中盤の稼ぎ場所“というイメージなのだ。

 

 そう話すと、ミカはあからさまに機嫌よく[鋼の盾]を受け持つようになった。他にも売価の高いアイテムがないかとよく質問してくるし、逞しい限りだ。

 

「にしても、ヤなマップだねー。目の前に見えても沼とか崖で行けなかったり、正しい道には恐竜や盗賊がいっぱいだったり」

 

 確かに、白い光を放つ巡礼碑の周りはともかく、少しでも道を外れると沼や崖に道を阻まれる面倒なマップが、この[神聖な沼地]だ。積極的に襲ってくるモンスターばかりだし、油断も出来ない。

 

 特に、今戦っても楽には勝てないのが、森で言う牡鹿のような[アルファ・トゥアノサウルス]。電気を纏う機械[ゴールドミニヨン]、徘徊する巨人[アッシュジャイアント]に、特定の[ダークジグラット]付近だけにいる[ソードダンサー]だろう。マップの出現モンスターの半数近くが該当するので、俺たちの強さも高が知れている。

 

「[アッシュジャイアント]は、実は[エンメルカルの森]にも出るんだけどな。場所が悪いと他のモンスターに倒されて死体だけ残ってたりする」

 

 基本的にoutwardでは同種以外は敵扱いなので、鉢合わせすると勝手に戦って勝手に死ぬ。そして一定時間が経過するとドロップアイテムも消えてしまうのでプレイヤーが生息に気付かない事もある。

 

 その後も沼地の敵や注意点についてミカに話しながら、俺たちは巡礼碑を辿って大きな赤いキノコの生えた辺りを通りがかった。

 

「デッカ! これは採れたりするの?」

 

「いやー、これはムリだわ。ただの背景。でもその根本には薬の材料が生えてるよ」

 

 そう言って、俺はミカに[出血キノコ]と[星のキノコ]を回収させた。[出血キノコ]なんて名前だが、これがHP回復ポーションの材料になる。[星のキノコ]がMP回復用。

 

「後で[錬金術セット]買って、調合やっとこうか。この先はポーション自分で用意しないとキツいからな」

 

 ミカもMPを回復する[星気のポーション]は愛用している。有り難さもわかっているので、真剣な顔で頷いた。

 

 その後はまた、野盗と恐竜を避けながら細い橋のような道を渡り、電波搭にも似た[見張り搭]の下を抜けて古い小屋が建てられた桟橋に辿り着く。

 

「あれ、行き止まり? 町ってこの辺りじゃなかったっけ」

 

 不思議そうに桟橋の先の沼の水面と、その先に見える巨大な発光する蓮の花を見つめるミカに、俺は笑いながらもっと手前の桟橋を指さした。そこにはフードを目深に被った人影の座る小舟が係留されている。

 

「その小舟が町の入り口代わりなんだ。ようこそ、[神聖な沼地]の拠点[モンスーン]へ!」

 

 

 

 

 

 沼地の町[モンスーン]の町並みで一番目立つのは、やはり巨大な神殿だろう。町の大通りの正面に作られており、やたら派手な大階段の先に入り口が設けられている。

 

 後、沼地地形は町の中にも存在するので、大通りの商店は建物の屋上同士を回廊で繋ぎ、その上に野外市場として開かれているのが特徴だろうか。

 

「おじさんに教わってなかったら気付かなかったかも。てか、あのやたら眩しいドアとかどうなってんの?」

 

 買ったばかりの新しいリュックにお互い荷物を詰め替え、俺たちは野外市場から街並みを見下ろしていた。ミカが言っているのは、この[モンスーン]特有の、蛍光灯のように輝くドアや建物の装飾だろう。

 

「知らん。そもそも、ここに来る時の巡礼碑だって同じなんだけどな。[聖なる使命]の作るものだし、神のパワーとかじゃないの」

 

 恐らく宗教的な意味付けでわかりやすくデザインしてるんだと思うが、中世ヨーロッパ風ファンタジーで蛍光灯並みの発光オブジェクトが複数あるのはなかなか目が痛い。と言うか、ドア光らせるのは面積的に現実世界でも目が痛いんで止めて頂きたい。お陰でドアを見失う事だけはないが。

 

「‥‥この先はまた、お金貯めるんだよね?」

 

「まあな。あの盾もいい金になったしな」

 

 リュックを2つ新調したので、ここまでの儲けは大体なくなったが、狙いが非常によく湧く野盗なのでしばらくは稼げるだろう。下手したら町から[見張り搭]までの短い範囲でも12-15匹ぐらいは狩れる連中である。

 

「‥‥そしたら、例の[派閥]クエストっての、やるんだよね」

 

 妙に思い詰めたと言うか、深刻な表情でミカが呟く。

 

「…‥しっかり準備してからの方がいい。一度始めてしまったら、時間制限が厳しいからな」

 

 そう。[派閥]クエストを今まで俺が避けていたのは、開始してしまうとカウントダウンが始まり、一定期間にクエストを進行しないと勝手に失敗扱いになるからだった。

 

 おまけに並行で始まる別のクエストも時限制で、効率的に進めないと後味の悪い思いをする羽目になったり、有力な報酬スキルが手に入らなかったする。

 

 少なくとも、俺は今現在手に入るスキルと装備を整え、沼地で避けてきたモンスターを狩れる程度にならない限り、[派閥]クエストを始めるつもりはなかった。

 

 何故なら、[派閥]クエストの中~後半でそういった難易度の敵とやり合うからだ。

 

(未だに2人とも安全マージン広めに取ってるから、戦闘不能になったら()()()()()()、わからないんだよなぁ)

 

 ゲーム時代の通りなら、マルチプレイ時は残ったプレイヤーが助け起こす事で戦闘再開出来るはずだ。最悪全員倒れたとしても、イベントシーンがローディング画面に表示された後、決まった再開ポイントの何処かにペナルティー状態で復活するだけだ。

 

 ここまで忠実に等身大のゲームを再現しているんだし、仕様は変わってない気もする。いや、そう信じたい。

 

 だが一方で[メインメニューに戻る]や[画面分割を終了する]といったコマンドがないのも確かなのだ。

 

(俺たちをここに呼んだ誰かさんが、何を狙ってるのか次第なんだよな‥‥)

 

 クリアまでプレイさせたがっているのか?

 

 ワンプレイで何処まで行けるのか試しているのか?

 

 確証はない。ないからこそ、慎重に進めざるを得ない。

 

(用意周到にシステムを利用するのがoutwardの醍醐味だ。だから、システム上出来るなら、やるべきだろう)

 

 ミカの焦りの浮かぶ横顔を見ながら、俺は黙ってこれがら取得するべきスキルとアイテムの優先順位を整理していった。

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