outwardの世界に異世界転生   作:越波

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第21話 大盤振る舞い

 [アルファ・トゥアノサウルス]の攻撃方法はシンプルに2つだけだ。この巨大な顎での噛みつきと、たまに来る炎のブレス。

 

 しかしこの噛みつきが厄介なのだ。

 

「くっそ、全然攻撃に移れねぇ‥‥!」

 

 出が速く、しかも痛い。警戒して盾で受けたのが悪手だった。途端に噛みつきが3連発でコンボになり、あっと言う間に[耐衝撃]ゲージが削れていく。

 

 ミカが必死に注意を引きつけるべく[電撃弾]を撃ち続けているが、下手すると今度は俺がヘイトを取り返せなくなってミカが墜ちる。

 

「これでも‥‥!」

 

 苦し紛れに打った[シールドバッシュ]だったが、奴はその巨体をふわりと浮かせて小憎らしくバックステップで回避して見せる。

 

「野郎~‥‥! なら、これだ!」

 

 バックステップされたと言っても数歩の距離。十分、射程圏だ。俺はショートカットに入れたばかりの新スキルを放った。

 

 一瞬の貯めモーションの後、光を纏った斧の一撃が尾を曳いて空間を裂く。[僧兵]師範の上級スキル、[パーフェクトストライク]だ。

 

 土手っ腹にこれを受けて、さしものの[アルファ・トゥアノサウルス]もたじろいだ。ここで畳み掛ける!

 

「大盤振る舞いだよトカゲ野郎!」

 

 すかさず、俺は浮き上がった奴の胴体向けてもう一つの新スキルをぶちかました。

 

 俺のスキル発動に合わせて世界が闇に包まれ――一瞬の内に幾条もの斬撃が乱れ飛び、闇と共に敵を切り裂き吹き飛ばす。2つめの上級スキル、[閃光の猛襲]だ。

 

「スッゴ、めちゃ派手~‥‥」

 

「ボーッとしてんなよ、今の内だぞ!」

 

 [アルファ・トゥアノサウルス]は既に起き上がりつつある。俺は一旦距離を取って作り置きしていたポーションを飲んだ。

 

 倒しきれなかった、という事実に忸怩たるものはあるが、あの劣勢を跳ね返せたのは大きい。奴のHPゲージも半分を切っているし、このまま行けば倒しきれるだろう。

 

 先程の[パーフェクトストライク]にしても、[閃光の猛襲]にしても、どちらも強力な分デメリットはある。

 

 それが、同じ[僧兵]師範から学んだ[集中]や[ブレース]で付与出来る[鍛錬の恩恵]がないと発動出来ない、という点だ。しかも[閃光の猛襲]に至っては発動条件である[鍛錬の恩恵]を使用と同時に消費してしまう。

 

 [鍛錬の恩恵]自体、現時点でも物理攻撃力15%アップという有用なバフなので、特に長期戦だと途中で消えてしまうのは避けたい所だ。

 

 だから確実にトドメを刺すタイミングで切り札として使うか――最初に[鍛錬の恩恵]を付与したのとは別の手段で再度付与し直す事になる。

 

 より冷却期間(クールタイム)の短い[ブレース]を確実に発動出来ればベストだが、俺が取ったのは[鍛錬のポーション]というアイテムを使う事だった。

 

(俺の腕じゃ[ブレース]ミスる可能性もあるからな‥‥)

 

 残念ながら、[ブレース]はカウンター技で、構えている待ち受け時間内に敵の攻撃がヒットしないと発動しない。[シールドバッシュ]を避けられる程度の俺の腕では無駄撃ちするかもしれないのだ。

 

 ポーションなら、使えば消えてしまうが確実にバフを得られる。数さえ揃えられるなら何度でも使用出来る分、プレイヤーのテクニックに頼るより安定する。

 

 旅の途中ならともかく、ここぞという時には惜しみなくアイテムを使ってでも確実な方を選ぶ。それが俺と相方のモットーだった。

 

「さあ、まだまだ[鍛錬のポーション]は作ってあるぜ! 根気比べと行こうかトカゲ野郎!」

 

 俺は再び突進してくる[アルファ・トゥアノサウルス]の鼻先に今度こそ[シールドバッシュ]を叩きつけ、ミカに注意が向かないよう適度に攻撃しながら奴の猛攻を必死に盾で凌ぐのだった。

 

 

 

 

 

「だあっ、しんどっ!」

 

 結局、トドメを刺したのはミカの[ルーントラップ]だった。

 

(まあ、まだ[隠者]のブレイクスルースキル取ってないからな‥‥[僧兵]のスキルだけで活躍するってのは高望みのし過ぎってもんだ)

 

 それに、無理してでもこのトカゲの親玉に挑んだ価値はあった。

 

 俺は奴の死体から剥ぎ取ったアイテムを、手元のクラフトメニューで組み合わせる。

 

「出来た‥‥!」

 

 俺は出来上がったばかりのそれを、早速身に付けた。

 

 俺(おじさん) ★→前回との差異

  近接武器:★トゥアノサウルスの斧/生木の斧

       深紅の盾

  間接武器:リカーブボウ

  頭:エリートの頭巾

  胴:銀の鎧

  脚:銀のブーツ

  近接耐性:54

  近接攻撃力:24→★32/24

  間接攻撃力:31

 

  スキル:ハンターの目、スナイパーショット

      フィットネス、要素の招き、

      耐候性、涼しさ、

      タラスクリーバー、安定した腕、

      シールドチャージ、

      ブレース、集中、

      閃光の猛襲、

      パーフェクトストライク

      低代謝、堅固な苦行者

 

 [残忍な斧]に、先程倒した[アルファ・トゥアノサウルスの尻尾]と[パラジウムの欠片]を組み合わせたのが、この[トゥアノサウルスの斧]である。

 

 PS4で初プレイ時に武器の名前が[トゥアノサウルスの斧]だからと普通の[トゥアノサウルス]ばかり倒して、尻尾が手に入らず首を傾げていたのは内緒だ。

 

 単純に物理攻撃力も高くなるが、更にこいつは45%確率での[大出血]ステータスを与える。秒0.41のスリップダメージを120秒間与え続けるオマケ付きだ。

 

 その上、攻撃速度も[残忍な斧]の1.0に対し1.1と速くなっている。

 

 より痛くなり、より素早く斬りつけられ、斬れば斬る程[大出血]を与え続けられるという素敵武器だ。おまけに元となる武器はレア武器の中では低レアな方で、[アルファ・トゥアノサウルス]さえ倒せれば確実に強化が可能なんだから、使わない手はない。

 

(‥‥正直、普通にクリアまでならこれがあれば十分だ)

 

 ゲーム時代、俺は両手剣や両手斧を愛用していた。だからこの[トゥアノサウルスの斧]よりもう少し強い武器にも心当たりはある。

 

 だが、盾と片手武器でいくなら、これでも十分だ。

 

 そんな事を考えていると、ふと思い詰めた目でこちらを見つめるミカと目が合った。

 

「…‥おじさん、その武器があれば、さっきより楽に勝てるようになるよね」

 

「ああ。まあ、まだ[隠者]のスキルもあるしな」

 

 そう答えると、ミカは更に眉をしかめて悩む仕草を見せる。

 

 そうして暫く経った後、彼女は呟いた。

 

「…‥ミカがもっと強くなるには、どうすればいいと思う?」

 

 なるほど。

 

 俺が思うより、彼女はこのゲームに真剣なのだろう。単語帳ならぬコンボ帳を作っていたのもそうだし、この[神聖な沼地]での退屈だったろう稼ぎ狩りにも文句一つ言わずに着いてきた。

 

 ならば応えてやるのが世の情け。

 

「金色になればいいんじゃないかな」

 

 ミカは顔中に「?」を浮かべているが、俺は彼女の為に一度[エンメルカルの森]に戻る事にした。

 

 ――前言撤回。やはり俺は両手斧を持たなければならないらしい。

 

 そうした決意と共に。




トゥアノサウルスの斧はよく使ってました。ブンブン丸なんで大斧の方でしたけどね。
何せスキルスロットが少ないので武器だけに絞った方が楽ですし‥‥。
ラストでおじさんがミカに勧めたのは、見た目がアレな例の“アレ“です
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