outwardの世界に異世界転生   作:越波

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第25話 黄金への道④

「さて。面倒なのはここからなんだよ‥‥」

 

 俺は[光の尖塔]を出ると、大きな吊り橋の袂で溜め息をついた。

 

 折しも目の前で意味ありげな半透明の(と言うかほぼ透明で輪郭だけの)人影が姿を消し、メッセージログによくわからないクエストの開始を告げるメッセージが流れた所だ。

 

 案の定ミカは何が起きたかわかっていないので、これからの進め方を説明する。

 

「今のが、[ライトメンダーのリュック]を手に入れる為のクエスト[奇妙な幻影]の始まりだ」

 

「今のが? めちゃめちゃ気持ち悪いんだけど‥‥」

 

 まあ、確かに。多分幽霊とか残留思念を意図してあんなモデリングにしてるんだろうけど、それより表示がバグっておかしな見え方してんじゃないのか不安になるよな。

 

 ともあれ、クエストの流れとしては他にも先程と同じような墓っぽいオブジェを探してこの[光の尖塔]の周りを探索する事になるのだが――。

 

 ミカは不安げ、とも違う怪訝な表情で俺を見つめている。

 

「…‥どうした?」

 

「どうしたじゃないよ。おじさんがどうした?だよ」

 

 眉間を擦られて、知らず皺を寄せていた事に気付く。

 

 俺は深々と嘆息する。

 

「…‥正直、俺このクエスト苦手なんだよなぁ~…‥」

 

 ヒントがなく、幻影を探して高低差のある足場の不安定な[神聖な沼地]を探すのは、結構大変なのである。

 

 PC版では自分の現在地がわかるmodを入れていたからまだマシだったが、PS4版では相方と手分けして尚、2時間ぐらい彷徨っていたのではないだろうか。

 

 足を踏み外して下の沼地に落下し、死体のまま救助を待っていた無力感も輪をかけているかもしれない。

 

 キャラは離れ離れでもプレイヤー同士は声が掛け合える状態だったから何とかなったが、離れれば実際声が届かなくなる等身大(リアルマルチ)の今だと、余計にこのクエストの嫌な面が倍化している気がしてならない。

 

「俺の記憶だと、[神聖な沼地]でも探す場所は地図南東の一角に固まってたはずなんだ」

 

 俺は手頃な枝で地面に適当すぎる沼地の略図を描くと、右下のエリアにぐるぐると円を描いた。

 

「全部で5箇所。今見た奴を除けば4箇所で、最後の奴は低い所の板で出来た足場を渡った島の裏側にある[イマキュレートのキャンプ]辺り。そこ以外は島のこの陸地の上にあるんだが――手分けしてってのはないな」

 

 順番があるのだ。場所が合っていても先に調べるべき箇所を調べないと幻影が出て来ず、何度も行き来する羽目になる。

 

「じゃあ、やろうか‥‥」

 

 渋々、俺は重い腰を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 しかし、思った以上にサクサクとクエストは進み、1時間しない内に俺たちは最後の幻影を見つけ、無事[ライトメンダーのリュック]を手に入れていた。

 

「思ったよりカンタンだったねー」

 

 ニコニコと機嫌良く微笑むミカ。うん、そうね。今回はマジでミカ大手柄だったよ‥‥。

 

 何度も往復せずに済んだのも、墓と思わしき怪しいオブジェを遠くから見つけたのもミカだ。俺が勾配の激しい坂で足を踏み外しかけたり、追いかけてくる草食竜[ステゴサウルス]に慌てて道を間違えた話なんか、わざわざする必要もないだろう。

 

(もう保護者面もしてられないな‥‥)

 

 俺は[雷属性]の攻撃力が増えた代わりに容量が25減ったミカの為に物資を受け持ちながら、頭の中でこれからの事を整理していた。

 

「これから、[派閥]クエストなんだよね?」

 

「ああ。せっかく沼地に来てるし、受けといて損はない」

 

 ミカは気のない素振りをしながらも、少し落ち着かない様子だった。

 

「…‥心配しなくても、初期の段階じゃ大した戦闘もないから」

 

 そう言ったものの、彼女の不安は取り除けなかったようだ。

 

「正直、[電流の孵化場]や[光の尖塔]で戦えるなら最後の[派閥]クエストの戦闘でも問題ない」

 

 俺はクエストで出て来る敵について説明してみたが、そるでもミカの表情は晴れなかった。

 

(‥‥何だろうな。[派閥]クエストだからってそんなに身構える必要はないんだが‥‥ああ、もしかして、“アレ“が原因か?)

 

「もしかして、“制限時間“を気にしてるのか?」

 

 その言葉が出た瞬間、ミカがピクリと反応する。

 

「なるほどなぁ‥‥まあ、でもそんな気にする必要はないよ。最悪、失敗したとしても報酬が変わるだけでゲームオーバーになる訳でもないし」

 

 “制限時間“にしても、受注したまま放置して何十日も経過しない限り失敗になる事はない。

 

 ただ、このゲームは地方間の移動や戦闘不能による強制タイムロスが存在するので、何も考えずに探索して死に戻りを繰り返すと上手くいかないクエストもある、というだけの話だ。

 

(いや、これは俺のせいなのかもな‥‥)

 

 失敗したくないから周到に準備した訳だが、ミカからすると経験豊富な俺がこれだけ念入りに準備()()()()()()()()()クエストだと、過大に意識してしまっているのだろう。

 

 なら、やる事は一つだ。

 

「よし、じゃサッサと終わらせよう」

 

 子供の頃の予防接種の注射のようなものだ。長く待たされるから恐怖が増大するし、より痛く感じてしまう。

 

 嫌なことは先に終わらせてしまうに限る。

 

 俺は固くなったミカを追い立て、沼地の都市[モンスーン]へと向かうのだった。

 




いよいよ次回から[派閥]クエスト、アウトワード異世界転生も終盤です。
最後まで書ききれるよう頑張ります。
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