outwardの世界に異世界転生   作:越波

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ようやく[派閥]クエスト編開始です。


第4章 いよいよベテラン[派閥]クエスト編
第26話 聖なる使命①


 [派閥]クエストの中でも、[聖なる使命]のクエストは報酬が豪華な事で有名である。特に希望がなければ[聖なる使命]を勧められるぐらいにはスキルも装備も良い物が手に入る為だ。

 

「まず最初に、[派閥]に加入するのが第一段階だ」

 

 俺たちは[モンスーン]の町まで帰って来ると、入り口近くの広場の隅に立つNPCの前に集まった。

 

「こいつが勧誘の鍵になるキャラの、[オリエレ]だ」

 

「何かどっかで見たような‥‥」

 

「そうそう! 実は最初の[シェルツォ]って町にいたんだよ。借金返済の後の展開で、もう一人の幼なじみと同じタイミングで町を出て行ったんだよね」

 

 まあ、[派閥]に入るのに誰かの推薦がいるんでそれぞれ知り合いという背景を持つNPCを配置したんだろう。

 

 ミカは気取ったポーズで柱に寄りかかる[オリエレ]をしげしげと観察しているが、俺は構わず会話イベントを進める。

 

「ふーん、このゲームだと割と可愛い方? おじさんこういう子が好きだったりとか?」

 

「断じて違う」

 

 ぶっちゃけこのゲーム、キャラの顔はみんな濃すぎて好きではない。自キャラのキャラメイクも選べるパーツが酷いんで遠目に判別しやすい奴にしたからな。紫色の徹子ヘアー婆ちゃんとか、緑色のアフロ褐色オヤジとか。

 

 [派閥]に加入を希望すると、[モンスーン]の奥にある神殿でお偉いさんに挨拶しろと言われるので、町の中央通りを奥に向かい、宝塚ばりの大階段を登る。段数的に京都駅の大階段の方が近いだろうか?

 

「うわぁ、高いね~」

 

「落ちるから気をつけろよ」

 

 何だろうね。この変に行ける所が制限されるのは個人的に気持ちが悪い。それならガッチリ書き割りにするか、SaGaシリーズのスカーレットグレイスやWizardryのようにコマンド選択だけでも良かった気はする。

 

 神殿でも、お偉いさんは加入に条件がある、とお使いクエストを出してくる。

 

「何かたらい回しだね‥‥」

 

「RPGのお約束といやお約束なんだけどな」

 

 まあ、一番楽で手っ取り早いのは神殿内にいる聖騎士に[鍛錬のポーション]を渡す事だ。このポーションは自分自身、[集中]スキルのクールタイム中に使う事が多いので在庫を切らさないようにしている。リュックから手持ちを渡すだけで達成だ。

 

「これで[聖なる使命]に正式加入だ」

 

「‥‥何か有り難みがないなぁ」

 

 有り難みはないが、もらえるスキル[光の注入]は、[雷光のニス]と同じ[雷属性]攻撃力を武器に付与するエンチャントスキルだ。近接職としては非常に使いやすい。

 

「で」

 

 加入したその脚で、俺はミカを連れて沼地のマップのちょうど中央辺りに向かった。

 

 [見張り塔]から巡礼路を南下した所で、東西に伸びる道も合流するという沼地でも数少ない大きめの十字路である。

 

 その傍らに、小汚く崩れたテントの残骸があった。勿論こういったポイントはアイテムを回収できる一種のランダム採取ポイントなので忘れてはいけないのだが――。

 

「ここで重要なのがその横で寝てるオッサンなんだな」

 

「‥‥寝てるの? こんな地べたで?」

 

「いや、死んでるんだけどね」

 

 俺が訂正するとミカは少しだけ顔をしかめた。露骨に引かない辺り訓練されたoutwardプレイヤーになりつつあると言える。

 

「‥‥じゃ、このヒトからもアイテム剥ぐんだね?」

 

「いや、これはちょっと特殊で、調べるとイベントが始まるんだよ。時限式の奴が」

 

 “時限式“というワードは最近のミカのご機嫌をすこぶる逆撫でする訳だが、ここに関しては黙っている訳にもいかない。

 

「このクエストに失敗はあるけど、やっとくと[派閥]クエストの最後の方が楽になるからな。その一環で済ませよう」

 

 ちなみにこのクエスト、流れはサスペンスっぽくて個人的には好みだったりする。ウィッチャー3の捜査クエストみたいなの好きなんだよね。

 

 要は、[聖なる使命]の人間がホームである[神聖な沼地]の巡礼路で誰に、何故殺されたのか?という謎を追うクエストな訳だ。

 

 メインシナリオである[派閥]クエストで語られている事件を補足する良クエストだと思う――時限式でなければもっと良かったんだが。

 

 まあ、今は[派閥]クエストの方が待ち時間で時間を経過させないと進まないので合間にやるクエストとしては丁度良いのだ。

 

「まず、ここで[聖なる使命]の信徒が殺されてる件を報告して、他の生き残りを探す」

 

 報告先は、[モンスーン]の住宅街にいる編み笠の農民みたいな格好をした爺さん[モファット]老師だ。[雷属性]の耐性を上げる[恵み]というスキルを教えてくれる[師範]キャ

 

 

でもある。

 

 彼によると、巡礼路で死んでいた男の一行に生き残りがいる、という情報が手に入る。具体的に言うと、ミカがお世話になったMP自動回復スキルの[哲学者]の師範である。

 

「…‥あたしがスキル教わった時がらずっとあの[師範]動いてないと思うんだけど‥‥じゃあ襲われたのってかなり前の事なんじゃ‥‥」

 

「深く考えてはいけない」

 

 20日程度で季節が変わるoutwardの世界で数十日。半年以上前の失踪事件を今更調べ始めたような物だが、ゲームとしては“ついこの間の出来事“という体裁で進んでいる。

 

 [哲学者]に事件の失踪者の事を尋ねると、襲ってきた賊が、西にある[大樹]を根城にしているという情報が手に入る。

 

「これで次の目的地が明確になったな」

 

「盗賊の根城? じゃあ殲滅戦だね」

 

 ミカもなかなかoutward脳に汚染されて来たようである。端から見ると少し物騒な気もするが、outward的にはこれで正解なのだ。

 

 西の[大樹]も盗賊の数こそ多いが、ライトメンダー装備で強化されたミカと俺の敵ではない。若干[イマキュレート]には手こずったが、出て来るのがわかっていれば怖い相手ではない。

 

 それより、持って帰る戦利品を取捨選択する方が大変だった。

 

「何か勿体ない‥‥」

 

「まあ、今となっちゃそこまで金に拘る必要もないんだけどな」

 

 ともあれ、[大樹]の盗賊のアジトから巡礼路で信者を襲った陰謀の証拠は手に入った。

 

「これでクエスト終わり?」

 

 人気のなくなったアジトで緊張感から解放されて屈み込むミカに、俺はニヤリと笑って見せた。

 

「この陰謀の証拠の使い道があるんだよ」

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