outwardの世界に異世界転生   作:越波

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第4話 ケルネソスを往く

「いやー、異世界転生初ダメージでしたわ」

 

 漁村[シェルツォ]の灯台で、俺とミカは向かい合っていた。

 

 あの後、シャコの電撃弾を食らって怯んだものの、俺の命に別状はなかった。まあ属性防御皆無なのでかなりHPは減ったものの、逃げ帰るだけなら支障はなかった。

 

 帰ったその足で族長の家に赴き、[部族恩]で借金は完済。晴れて序盤の時間制限クエストはクリアである。

 

 とは言えミカは涙目でまだ拗ねている。

 

「もう機嫌直せよ。おじさん生きてるし、借金も返したし。取りあえずの問題は全部片付いたろ?」

 

「‥‥」

 

 ふい、とそっぽを向かれる。

 

 まあ、異世界転生な上に彼女にとっては全く予備知識ない環境だし、不安だったんだろう。そこに精神的な支えが出来たのにいきなり死にかけ(たように見える)て感情がこんがらがっているんだろう。

 

 だが――。

 

(甘やかしてやれる程、余裕ある訳でもないんだよな)

 

 当座の危機は去った。次は[派閥]参加を目指して金を稼ぎつつ、自分達の強化に勤しまなければならない。

 

 何せ、このoutwardには“レベルが存在しない“。

 

 戦えば戦うだけ強くなる、というRPG大半に存在する大原則が通用しないのだ。

 

 ではどうするか?と言えば、武装を揃えて強化するか、各地に点在する[師範]キャラクターからスキルを学んで強くなるしかない。

 

 とは言えこの[師範]からスキルを学ぶのにも金がかかる。しかも良スキルは銀貨500枚~600枚必要になる。序盤の借金の3倍以上一つのスキルにかかる上に、それは1人ずつ払わなければならない。

 

(取りあえず、[マナ]解放したら[エンメルカルの森]経由で[聖なる沼地]行くか‥‥)

 

 [マナ]は魔法を使うためのエネルギー、いわばMPに当たる。ただ、このゲームの主人公は特別な生まれではないただの村人Aでしかない為、そのままでは魔法が使えない。

 

 そこで、地脈(レイライン)の交点に赴き、己の生命力を捧げることで初めて魔法が使えるようになるのだ。

 

(‥‥俺は慣れた前衛ビルドが一番安全パイだとして‥‥ミカをどうビルドするか、だよな‥‥)

 

 正直な所、ゲームに慣れている訳でもないただの女の子を近接戦闘職にするのは抵抗がある。例えゲーム通りの挙動しかせず、血も出ない現実味のない戦闘だとしても、だ。

 

(シャコの電撃弾食らっただけでもすげー心配してたからなぁ‥‥)

 

 実際、スタミナの消耗と比べて痛みは特に感じなかった。強くぶつかったな、というぐらいの衝撃である。後で確認したHPゲージの減り幅に驚いたぐらいだ。

 

 しかし、この世界で死んだ時、どうなるかはまだよくわかっていない。

 

 ゲーム通りの仕様であれば――何処かのリスポーンポイントに復活するだけだ。キャラクターが復活不能になる[死亡]は、このゲームでは基本的に存在しない。

 

(だからと言って積極的に試す気にもならんけどな)

 

 俺は暗くなる気持ちを頭を振って追い払い、目の前の問題に集中し直した。

 

「いつだってoutwardは金策が課題なんだよな‥‥」

 

 

 

 

 

「と言うわけで、少し遠出をしたい」

 

 [シェルツォ]の中で諸々用事を済ませた俺は、灯台の寝室でミカの向かいに腰掛けた。

 

 机の上には新しいリュックと、[水袋]。[鍋]に[携帯糧食]もある。それにミカの分の[簡易テント]。

 

「‥‥何処行くの‥‥?」

 

「[交わりの山]って所だな。そこで俺たちの[マナ]を解放して、魔法が使える準備をする」

 

 “魔法“という言葉にミカがピクリと反応する。

 

「ま、魔法? 使えるの?」

 

「ああ。使える‥‥けど、何でも出来る訳じゃないけどな‥‥」

 

 俺の言葉にミカは「ふーん」と気のない返事をしたが、ややあってチラリとこちらを横目に見ながら呟いた。

 

「それって‥‥強くなれる?」

 

 ちょっと驚いた。

 

 俺は、ミカはこの世界に消極的なんだと思っていたからだ。だから“帰れるかどうか“とか“生きていけるか“ならともかく、“強くなれるか“という言葉が出てくるとは思わなかった。

 

(ふむ。でも、いい傾向かもな)

 

 どの道、二人で旅をするにしても自衛の力は持ってもらわないと話にならない。レベルがない以上安全マージンを取りにくいし、自分が育てきったキャラならともかく、今はお互いスタートラインだ。

 

「ああ、おじさんの相方は魔法使いだったよ。雷の魔法をバンバンぶっ放して、俺の出る幕がないぐらいだった」

 

 よく家に遊びに来て、泊まりがけでoutwardを画面分割プレイした友人を思い出しながら肯定する。

 

 ミカはその言葉にも「ふーん」と気のない返事をしたが、その目は何かを納得し、決めたたように見えた。

 

 

 

 

 

 漁村[シェルツォ]から目的地の[交わりの山]までは結構な道のりがある。

 

 俺たちは道に生えた[ガベリー]が食料になる事や、道端の木の洞や保管箱にアイテムが入ってる事をレクチャーしながら歩く。

 

「げっ‥‥[地図]は見れるけど現在地がわからんのもゲーム通りか‥‥」

 

 正直、outwardで最初一番苦労したポイントかもしれない。地図が読めない訳じゃないが、昨今のゲームではなかなか見ないマゾ仕様だと思う。

 

 平坦な2Dゲームならまだしも、高低差の激しい地形で現在地がわからないのはかなりしんどい。リアルでも見知らぬ土地だとGoogleMapを頼りにしている身としては、地図改造modは欲しかった。

 

 とは言っても、一番歩き回った初期マップの[ケルネソス]であれば、まあランドマークさえわかれば大体問題ない。

 

 俺は時々遭遇する[ハイエナ]や[野盗]を、手に入れたばかりの[シンプルな弓]で撃退しながら、とにかくアイテムを回収しながらサクサク進む。

 

「取りあえず、野盗から手に入るショボい武器は矢にするから、ミカも弓に慣れとくといいよ」

 

 エイムモードにしながら、遠くにいる野盗の胴体に一発ぶち当てる。エイムモードと言ってもほぼフリーハンドで点が見えるぐらいなんだが、それでも完全フリーハンドより少しはマシだ。

 

 ちなみに中距離になると脳内コントローラーで右スティック押し込みする事でターゲットロック出来る。現実の自分の身体がターゲットロックって意味不明なんだが、これで弓や近接戦闘で空振りがなくなるんだから便利なものである。

 

 途中、登った崖を滑り降りたり、倒れた死体からアイテム剥いでミカが泣き喚いていたがご愛嬌だ。

 

 そうこうする間に、俺たちは[交わりの山]に入るための洞窟の入り口へとたどり着いたのだった。




誤字訂正:木の弓→シンプルな弓
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