就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け! ~鏡の向こうのダンジョンでドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ~ 作:月城 友麻
俺がウンウンと思案に暮れていると、
「今日はどうするですか?」
ニコニコしながらエステルが聞いてくる。
ハムエッグホットサンドを両手で持って、頬張る様子はまるで子リスである。
俺はその様子に癒されて、つい笑みがこぼれる。
くだらないことを必死に考えるのがバカらしくなった。
この子と一緒に世界を救ってやればいいんだろ? 女神様。いいじゃないか、やってやるよ。俺は異世界で英雄となって、たっぷり報酬ももらっちゃうぞ!
俺はこぶしにギュッと力を込めて気合を入れた。
◇
「レベルを上げたいと思うんだ」
俺はエステルを見て言った。
「レベルですか?」
「俺もエステルもレベル低いから、殺虫剤が上手く決まらなかった時に命の危険があるじゃないか。レベル高かったら回避できたりするんだろ?」
「うーん、そうですね。防御力や回避力が上がれば危険は減りますね」
「なら、当面はレベル上げを頑張ってみようと思うんだ」
「わかりました!」
ニッコリと笑うエステル。
「じゃあ、今日はダンジョン攻略の準備をしっかりして、それから潜ってみよう。地図とかも買わないとね」
「はい! 頑張るです!」
両手のこぶしを握ってブンブンと振るエステル。やる気満々である。
「まずは、服どうしようか?」
「服?」
首をかしげるエステル。
「ダンジョン潜るのに俺のパーカーじゃマズいだろ」
「えー、これでいいですぅ」
「ダメダメ! 防御力高いのにしなきゃ!」
「え? この服、今までで一番防御力高いですよ?」
「は?」
俺は驚いた。なぜユニクロで買った3,980円のパーカーの防御力がそんなに高いのか?
「ソータ様のエキスがしみついているからですよ!」
そう言ってエステルは、そでの匂いをクンクンと嗅いだ。
「いや、ちょっと、そういうの困るな……」
一体異世界の神は何を考えているのか? 先輩、頼みますよ。俺は天を仰いだ。
◇
自宅に戻ると、家の前に段ボールが積み上げてあった。昨日Amezonで発注しておいた殺虫剤が届いたようだ。くん煙式殺虫剤『バルザン』と最強の殺虫剤『ハチ・アブ・マグナムZ』を百個ずつ。でも、十万匹の魔物が襲来したらこれじゃ全然足りないのだ。千個ずつくらい用意しないとならないが、そんなの家に入りきらない。異世界に拠点を借りないとまずそうだ。
◇
装備を整えて鏡に潜ると、教会の倉庫に出た。
「えっ!? なんで教会に!?」
驚くエステル。
「エステルは昨日ここで上機嫌だったんだよ」
「あぁ……、なんて罰当たりな事を……」
エステルはしょげるが、美奈先輩がそんなこと気にするとはとても思えない。
「大丈夫、女神様にはちゃんとフォローしておくから」
俺はそう言って元気づける。
「ソータ様……、すごいです……」
エステルは手を合わせてキラキラとした目で俺を見る。
俺は尊敬させたままでいいのか、ちょっと悩んだ。
俺はサークルの先輩によって送り込まれた就活生であり、同時に女神によって選ばれたこの世界を救う救世主である。
尊敬のまなざしは自尊心をくすぐるが……、ちょっと後ろめたい。いつか時が来たらエステルに全部話そうと思った。そして、どんなに持ち上げられても、ただの就活生であることは常に忘れないようにしよう。