就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け! ~鏡の向こうのダンジョンでドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ~   作:月城 友麻

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3-18. エステルの選択

 システムからは、頻繁に警告のメッセージが出る。

『重大な被害が出るルートです! 衝突回避しますか? はい/いいえ』

 マリアンはそのメッセージのたびに『いいえ』を押し続けたが、そんなことをやっていては逃げられない。

 マリアンは男の死体を片付けると、エステルを呼んだ。

 

 ほどなくして現れるエステル。

「はい、なんでしょうか?」

 ちょっとビビりながら部屋に入ってくる。

「六十一号。ちょっと、この画面で『いいえ』を押し続けてくれる?」

 マリアンにそう言われ、テッテッテと画面の所まで来たエステルは警告文を読んで、

「これ、何ですか?」

 と、聞いた。

「私を殺そうとする悪い奴に天誅(てんちゅう)を下してるのよ。『いいえ』を押し続けてて!」

「えっ!? そんな悪い人が!? わ、分かったです」

 エステルは正義感に燃え、椅子に座ると、淡々と『いいえ』を選び続けた。

 それを見るとマリアンは、急いで逃げ支度をし、どこかへテレポートして行ってしまった。

 

 エステルは淡々と『いいえ』を押し続けた。マリアンはエステルの製造者。その命令は絶対だった。

 しばらく押し続けていると、違うメッセージが表示された。

『ミネルバとソータ、二名に重大な命の危険があります。衝突回避しますか? はい/いいえ』

「ソ、ソータ……?」

 その文字を読んだとたん、エステルは動けなくなった。

 理由は分からないが心が頑固としていうことを聞かない。

 『いいえ』を押そうとするがどうしても手が動かず、気が付くと、頬にツーっと涙が伝わってきた……。

「え!? どうしたですか、私?」

 エステルは涙をぬぐい、困惑した。

 ソータという聞いたことのない名前に、なぜこんなに動揺しているのか、エステルは全く分からなかった。

「ソータって誰なんです?」

 涙声で取り乱すエステル。

 しかし、マリアンの命令は絶対だ。押さねばならない。マリアンを殺そうとするこの悪者ソータに正義の鉄槌(てっつい)を食らわせねばならない。

 

 エステルは何度か深呼吸をし、呼吸を整えると『いいえ』に指を伸ばした。ブルブルと震える指先……、押す、押さねばならない、エステルは力を振り絞って指を前に伸ばした。

 

      ◇

 

 ソータとミネルバを乗せたシャトルがジグラートに接舷(せつげん)した。

 

 プシュー!

 

 エアロックが開くと、中は無数のインジケーターがチラチラと明滅し、まるで満天の星空のようだった。

 ミネルバが照明をつけると、中の様子が明らかになった。そこには交番くらいのサイズの円柱状のサーバーがずらーっと見渡す限り並んでいた。足元の金属の金網越しに下を見てもずーっと下の方までサーバーの階層は続いている。トータルで言うと三十階建くらい、各フロアの広さは新宿の街くらいだった。すごい量のサーバー群である。これがスパコン富岳一兆個分のコンピューターシステムらしい。確かにこれだけあれば星を一つシミュレーションすることも問題ないよなぁ……と、思わずため息をついた。

 

 入り口の脇に(たたみ)くらいの板があり、ミネルバがしゃがんで説明してくれる。

「これがサーバーのブレードよ。これが円柱にズラッと刺さっているの」

 ブレードには微細な模様がビッシリと施されたガラスで埋まっていて、何がどうなっているのかもわからない。

「これはすごいですね……」

 俺はまるでアートのような美しいガラス工芸品に、感嘆の声を漏らす。

「ここに細工するというのは相当な事なのよ。多分、コネクタ付近に変な部品をつけているんじゃないかしら?」

「で、マリアンが細工したらしいサーバーはどれなんですか?」

 俺はサーバー群を見回すが……あまりに膨大過ぎてしらみつぶしという訳にはいかない。

「魔王が候補を上げてくれてるわ。えーと、まずはF16064-095だって。16階のF列ね。行きましょ!」

 

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