就活か魔王か!? 殺虫剤無双で愛と世界の謎を解け! ~鏡の向こうのダンジョンでドジっ子と一緒に無双してたら世界の深淵へ~ 作:月城 友麻
それは何個目かのサーバーにたどり着いた時だった――――。
俺はハァハァと息を切らしながらロックを解除し、力いっぱい引き抜いた。
ヨイショ! と掛け声をかけて、床の上に置く。だいぶ慣れてきた。
美しいガラスの工芸品をじっくりと見ていく。変な物はついていないか、異常はないか……。
と、ここでコネクタの所に小さくセロハンテープのような物が貼られているのに気がついた。こんな物、今までのサーバーには無かった。もしかして……。
俺はステータス画面を出して、ミネルバに連絡を取った。
「すみません、変なの見つけたんですが、これですかね?」
俺はカメラ機能を使って動画で実況する。
「ハァハァ……。どれどれ……。うーん、これだけじゃわからないわね……、今すぐ行くわ!」
◇
程なくしてミネルバが走ってきた。
「ハァハァ……。お疲れさま……。これね……」
ミネルバはテープをジーッと観察し、テープに手をかけ、ペリッと剥がした。
すると、その瞬間、サーバー全体がピカッと光り輝く。
「うわぁ!」
俺が驚いていると、ミネルバは
「ビンゴ!」
と、うれしそうに叫んだ。
「え? これで問題解決ですか?」
「そうよ、マリアンはこのチップでサーバーを誤動作させ、OSの特権処理に介入していたんだわ。ソータ君、お手柄だわ!」
そう言ってミネルバはいきなりハグしてきた。
モフモフとした猫の毛が柔らかく俺を包み、俺は何だか幸せな気分になる。猫ってすごい。
「これでもう大丈夫! 戻ってマリアンをとっちめてやるわよ!」
ミネルバはヒゲをピンと伸ばして力強く言った。
その時だった、
ヴィ――――ン! ヴィ――――ン!
急に警報が鳴り響き、照明が全部真っ赤に変わった。
「えっ!? なにこれ?」
俺がビックリしていると、ミネルバはどこかと通信を始めた。
「えっ!? 貨物船? 十五分後!?」
深刻そうな話が聞こえてくる。
「警備隊は何やってんのよ!? えっ? 強硬突破? こっちにはシャトルしかないわよ! ……。分かった。コードを送るからやってみて。うん……、うん……」
通話が終わるとミネルバは頭を抱えた。
「ど、どうしたんですか?」
「貨物船がここに突っ込んでくるわ」
「えぇ!? そんなの、ジグラートは耐えられるんですか?」
「耐えられるわけないじゃない。外壁を破壊されたら氷点下二百度の高圧ガスが一気になだれ込んできてサーバー群は全滅だわ」
「えっ? サーバー群全滅ってことは……」
「うちの星は消えるわ……」
ミネルバはガックリとうなだれる。
「マリアンがやってるんですか?」
「多分そうじゃないかしら? 私たちが海王星へ来たのを知って証拠隠滅を図ったんだわ」
「証拠隠滅のために星ごと滅ぼすんですか!?」
「サーバーハックは重罪。星を滅ぼしてでも逃げたいんでしょうね。あー、私に対する恨み……かもしれないけど……」
「狂ってる……」
「今、魔王がシャトルを遠隔操作して、貨物船に体当たりをさせているわ。何とか針路をそらせたらいいんだけど……」
ミネルバはそう言って、シャトルからの動画を俺にシェアした。
動画を開くと、雪が舞い散る風景と、レーダーの画像が見えた。レーダーには巨大な貨物船が迫ってきている様子が映っていた。
「シャトルぶつけたら何とかなるんですか?」
「貨物船の全長が四百メートル、シャトルの全長は十五メートル。どうかしらね……」
ミネルバは渋い顔で淡々と言う。
「厳しい……感じが……」
俺はちょっと気が遠くなった。
「魔王の操縦に期待するしかないわ。私たちにもできることをやりましょう。えーと、粘着ゴム弾……。ついてきて!」
ミネルバはそう言って駆けだした。