「おいやちるー! 一緒行くか?」
「行く! 待ってて!」
書類を持ってバタバタ忙しなく走りながらすぐそこにいたやちるに呼びかけると、元気のいい返事が返ってきた。見た目も相まって子供だとしか思えない。
……本当に年端もいかない子供じゃ、ないよね?
「何しに行くんだ? 遊びか?」
「ちげーよ、仕事……のついでにちょっと、な」
「ウインクすんなキモいんだよ」
どこからともなく一角が現れた。お前は遊びの匂いを嗅ぎつけすぎなんだよいやだから遊びじゃねえんだよ。
「おれの完璧なウインクにキモいなどと言う愚か者は初めてですよ……」
「うろ覚えならわざわざフリーザ様の物真似するな、失礼だろうが」
「んだと? このフリーザ様の生まれ変わりのおれになんて口を」
「お待たせはづちー!」
「おっしゃ行くか!」
「切り替えが光の速度なの、お前の良いところだけど速すぎて不安になるな」
なんかハゲが言ってるぜ。
「浮竹隊長ー! こんにちはー!」
「こんにちわー!」
「おお! 草鹿に高槻じゃないか。よく来たね」
来たのは十三番隊舎隊首室。部屋の主へ、やちるに合わせて元気よく挨拶だ。決して素でこれではない。
実は先に雨乾堂を訪れていたのだが、こっちにいるということは今日は体調が良いらしい。たまに散歩とか言って別の隊舎に遊びに行くこともあるから、雨乾堂にいなかったら浮竹隊長捜しの難易度は跳ね上がる。
「
「わーい、お菓子ー!」
「はっはっは、二人とも元気がいいなあ。今日はちょうどわらび餅があるから、それを食べようか」
「「やったー!!」」
二人で両手を上げて喜ぶのを隊長がニコニコ眺める。まるで孫とおじい……じゃなかった、親子だ。あ、いや、おれは書類を届けようとしただけなんだけどね?
と、そこに控えめなノックが聞こえた。
現れたのは、綺麗な黒髪を後ろで束ねている眼鏡が知的な印象の──。
「失礼します。京楽隊長がこちらに来ていませんか?」
「あれ、伊勢さん?」
「貴方は十一番隊書記の……」
「高槻葉月っす!」
八番隊副隊長、伊勢七緒さん。別名どうしようもない隊長の尻を蹴り飛ばす係である。今日も今日とて、お勤めご苦労様です!
「いつもうちの子がお世話になってます!」
「まあ最初の頃は伊勢さんにお世話になってたけど、改めてそう言われると気恥ずか誰が誰の子だって?」
「はづちーがペットで、あたしが飼い主でしょ?」
「でしょじゃねえわ悪化させんな! 幼女をご主人様と呼んでペットにしてもらってるやばいやつみたいだろうが!!」
なぜかやちるはよくおれのお姉ちゃん面をする。年齢はきっとやちるのほうが上なのだろうが、正直めちゃくちゃ複雑だ。
……というより、その都度一角がバカにしてくるのがムカつく。暇なのか?
「あ、あの……」
「すみません! ほら、引いてんじゃねえか伊勢さん」
「ごめんね、ふくかいちょー」
「いえ、私はいいんですが」
「副会長……? 副隊長じゃなくて?」
「私、女性死神協会の副会長なんです」
「あたしが会長なんだよー! 一番えらいの!」
「うそ……だろ……?」
まーたこのガキが嘘をついておられるぞ……。
しかし呆れた目で見るとやちるは怒ってぴょこぴょこ跳んだ。
「あたし嘘なんかついたことないもん」
「早速嘘をつくんじゃないよお前。この前隊長におれがサボってたって報告したの忘れてねえぞ」
「サボってたじゃん、ぐーって」
「バッッッあれはサボりじゃなくて休憩だよ! 休憩、な!?」
「それはサボりと言うのでは……?」
「ち、違うんすよほらあの、いや違くて」
「はづちー語彙も貧弱なんだからごまかしても無駄だよ」
「見た目に比べてあまりに口が辛辣すぎる!!!」
身振り手振りで否定するおれにニコニコかわいらしく笑ったまま暴言を吐く幼女。需要はありそうだがおれにはないので早急にやめていただきたい。
しかも『も』と言ったということは、身体も心も貧弱だという前提ってこと? 姉貴面するならせめて弟に優しくしなさいっていつも言ってるでしょ!
「こらこら、その辺でやめておきなさい。おやつ食べるんだろう?」
「「食べる!!」」
「手懐けられている……!」
「伊勢も食べるか? わらび餅」
「いえ、私は京楽隊長を探しに来ただけですので」
伊勢さんはそう言うと、最後にもう一度周りを見回して回れ右、ドアに手をかけた。
わらび餅があるのに帰っちゃうなんてもったいない。わらび餅の前では人は皆無力、ひれ伏さざるを得ないはずでは……!?
驚きを禁じえないと手で表現しながら様子を伺うと、顔は見えないが少し立ち止まってかぶりを振って扉を開いた。
これはもしや、伊勢さんもわらび餅を食したい迷える仔羊?
「な、なんなんですか仔羊って……」
「一緒に食べようよ、美味しいよ?」
「そうですよ、たまにはいいじゃないですか! 息抜きも立派な仕事っすよ」
「高槻さん……」
こほんと一つ咳払いをして『そうですね』と恥ずかしそうに言った伊勢さんは、扉から手を離してこちらに戻った。
「ねえねえはづちー、サボりも立派な仕事?」
「ンア〜〜! こら、いいこと言ったとこなんだからやめろよな」
「いいこと言ったつもりだったの!? びっくり」
「少なくとも、世話になったと思っている先輩に言うことではないですね」
「エーン女性死神協会のツートップがいじめてくる!!」
どれ好き?(参考までに。ネタ集め用:興味本位=5:5)
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いつメン(一角、弓親)との遠慮ない暴言
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いつメンとの男子高校生的やりとり
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やちるとのトムジェリ
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やちるとのほのぼの(広義)
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更木隊長との勝手に緊張する会話
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他隊長格とのほのぼの
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他隊長格との失言説教
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その他の要素
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全部または複数あり決められない
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別にどれが好きとかではない