十一番隊書記の日常   作:わさび醤油

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第二十六話:新年! 飲み会! 野球拳!

私は死神である。名前は藍染惣右介。

今日は新年会と称したただの飲み会に参加する予定がある。時間があるのならば稽古でもすれば良いものを、なぜ酒を飲みぐだぐだと無益な話をし続けるのだろう。

しかし私にも付き合いというものがある。悟られないようにため息を一つ吐いて会場へと向かった。

 

「「アウトォ! セーフ! よよいのよい!!」」

 

そこには地獄が広がっていた。

否。正確には、その地獄は広がってはいなかった。ただ会場の一角で男二人がじゃんけんをしているだけだ。ごく普通のじゃんけんである。

……その両者がどちらも下着と靴下だけしか着用していない以外は。

私にも野球拳の知識くらいはある。じゃんけんに負けると服を一枚脱ぐというごく単純でごく下品な遊びだ。学生時代に一度巻き込まれたので覚えている。

しかしそんな子供の遊びをなぜ、綾瀬川五席と高槻書記が……?

斑目三席に至っては、既にパンツ一丁に剥かれて傍から他の観戦者たちと一緒になってヤジを飛ばしている。

学校でも死神になってからも大抵のことは一を聞いて十を知っていたが、珍しく──もしかすると初めて脳内を『なぜ?』が埋め尽くした。脳が理解を拒んだと言っても過言ではない。どころか少しマイルドな表現をしている。

 

「そのオシャレな靴下を脱いで、恥ずかしい姿になってもらうぜ弓親!」

(既にお互いパンツと靴下の変態コーデになっているのは恥ずかしくないのか)

「フン、受けて立とうじゃないか葉月。返り討ちにされる覚悟はできてる?」

(なぜこちらはこちらでそんな姿でキメ顔ができるんだ)

 

そして何度かのあいこののち、決着はついたらしい。勝者は高槻書記。

綾瀬川五席のほうは、それはもう恥ずかしそうに靴下を脱いでいた。そういう価値観のもとで育ったのだろうか。わからないがわからなくてよい事柄だ。

 

「あ、藍染たいちょー! いいところに」

 

脳内でツッコみつつ、なるべく見つからないように大声を出さず女性陣側に座ろうとしたが時すでに遅し。高槻書記(バカ)に見つかってしまった。周囲から憐れみの視線を感じる。

かくいう私も相手の次の言葉の予想ができてしまう。

 

「次、隊長対戦しましょうよ!」

「いや……僕はまだ来たばかりでお腹空いてるから」

「そっか、これとかオススメですよ!」

「あ、ああ。ありがとう」

 

パンツと靴下だけの変態大歓喜コーデで唐揚げを勧められてもさてそれを食べようとは思えないが、とりあえず愛想笑いだけはしておく。

やっと彼の意識を野球拳から逸らせたと思っていたら、彼は私の目の前に腰を落ち着けた。

……全く高槻書記が動く気配がしない。飽きることなく変態コーデのままでこちらをじっと見つめている。この男、おすすめしたものを私が食べるのを待っているのか?

 

「高槻くん、は……服を着ないのかい? 冬だし暖かくしたほうがいいよ」

「あ、大丈夫です! ここあったかいんで!」

 

違うそうじゃない。「大丈夫です!」がほしかったんじゃない。なぜその格好をしておいて、自分のことを心配していると思えるんだ? その格好をしているからか。

馬鹿に見えて十一番隊隊士にしては空気が読めると評価していたのだが、私が間違っていたのだろうか。

 

「隊長こそ、全然食べてないけど大丈夫ですか?」

「ああ、うん……。僕は大丈夫だけど見られていると食べづらいかな?」

「じゃあ先に野球拳しましょう!」

「君少しは野球拳から離れなさい」

「無理っすよォ、葉月は酔うと野球拳魔になるんで」

 

なんだその頭悪そうな酔い方。斬魄刀でその穢れを(すす)いだほうがいいんじゃないのか?

教えてくれた斑目三席は斑目三席で、台詞だけ見ると『仕方ない感』しか感じないが口調は満更でもない様子だ。この男もまさか例の『野球拳魔』というやつなのだろうか。

……ダメだ、ここにいるとひたすらIQが下がる。やはりこんなところに来るものではなかったな。

 

「すまない。少し調子が悪いようだから、今日はこの辺で帰らせてもらうよ」

「あ、お疲れ様でーす!」

「お大事にー」

「ここを通りたければ野球拳でおれに勝つんですね!」

「だから君は!! 野球拳から離れなさいって!!!」

 

周りに挨拶を返している間に回り込んだのか、一つしかない出入り口を塞がれた。くっ、この場から出るにはどうしてもこの男を野球拳で倒すしかないのか……!

しかし、私はもうここにはいたくない。そもそもこういう無意味な時間が嫌いなのだ。

だから私は、戦って勝つ道を選ぶ。

 

「このラッキーマンと呼ばれたおれに勝てるかな?」

「自称ラッキーマンの割には二人相手に装甲をかなり削られているようだけどね」

「ハンデですよ。このくらい追い詰められた状況でこそおれの真の強さが発揮されるんです」

「では尋常に……アウト! セーフ! よよいのよい!!

 

 

 

数時間後、私は自室にいた。

高槻書記改め野球拳魔には一回で勝った。とんでもない肩透かしである。

……私もあんなにはっちゃけられたら、楽になれるのだろうか。そんな気持ちを押し流すように酒をあおった。




あけおめございます。
中学のときには野球拳の面白さがわからなかったのですが、高校〜大学でやっとわかりました。服を脱ぐというアクションがそも面白くないですか?
とか言って野球拳したことはないし酒も味苦手で酔うほど飲んだことないので、野球拳・飲み会エアプでこの作品を書きましたことをここに謝罪させていただきます。

(主人公の身長・体重をサイレント修正しました。弓親が記憶より軽かったので……)

どれ好き?(参考までに。ネタ集め用:興味本位=5:5)

  • いつメン(一角、弓親)との遠慮ない暴言
  • いつメンとの男子高校生的やりとり
  • やちるとのトムジェリ
  • やちるとのほのぼの(広義)
  • 更木隊長との勝手に緊張する会話
  • 他隊長格とのほのぼの
  • 他隊長格との失言説教
  • その他の要素
  • 全部または複数あり決められない
  • 別にどれが好きとかではない
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