「さっきお前に来客があったぞ」
「え、誰?」
「なんかねー、きれいな人だった!」
「髪は亜麻色の長髪で、背が高くて……あと上質そうな着物を着てたかな」
「……おれは不在ですのでお帰りいただくようお伝えください」
「そう言うと思って」
「既にこちらへ招いております」
「アホーーーーーッッッッッッ!!!!」
亜麻色の長い髪をもち背が高く上等な着物を着こなす美人の女性。その挙げられた特徴全てに覚えがある。
冷や汗が止まらないし、口が思うように回らない。なんとか逃げねば、一度戦略的撤退を行って体勢を立て直さなければ。そう思うのに動けない。
なぜなら、おれの肩にぽんと手が乗ったのだ。振り向かなくてもわかる、この人は──!
「あ……ね、姉さ、ん」
「あら、これから用でもあるの?」
私より優先させるべき用が?
容姿は身内の贔屓目を引いても美人だが(おれの女版をもっと綺麗にした感じだ)、その性格はまさしく女王様。当主たるもの強くなくてはと武道にも長け頭も切れる才色兼備なのを打ち消すほどの唯我独尊っぷりだ。
しかし、姉さんは一応TPOを弁えて振る舞う賢い人でもある。今日はきっとそろそろ一度帰ってこいと言いに来たんだろうし、用事を済ませたら何も火種を撒くことなくさっさと帰ってくれるはずだ。
「ごめんなさいねうちの愚弟が。この子気が利かない上に空気も読めなくて……迷惑ばかりかけてるでしょ」
「いえいえ。葉月さんにはいつも助けられてます」
「やめてよ姉さん、そんなこと言いに来たわけじゃないでしょ」
「は?言われたくなきゃあんたはお菓子の一つでも持ってきなさいよ愚図」
「え?」
空気が凍る。
ダメだ、今日の姉さんは機嫌が良い……ッ!! 久々に存分に罵れる弟に会って嬉しいんだこの特殊性癖女!
「あ、あはは僕は日課のヘアチェックがあるからこれで」
「何回見てもその前衛的どころか一周弱回って後衛的な髪は変わらないんだから違うことに時間を使った方がいいわよ」
「なんだァ? テメェ……」
「ナルシストがする顔じゃなくなってんぞ弓親!!」
「姉さんほんとに頼むからもう黙って!」
「お前の姉貴やばすぎるだろ……」
「全然違うんだよ、顔は似てんのに……」
「私が贈答用にもなれない潰れ梅のような顔だと言いたいの!?!?」
「おれそんなブサイク!?」
その昔学校で『残念爽やかイケメン』と呼ばれたこともあったというのに。男に。
女の子からは特に何も言われなかった。そもそも話す機会がなかった。
「ま、まあ、百歩譲っておれが贈答用の梅だったとしても」
「贈答用にもなれない潰れ梅よ」
「……だ、としてもッ! 姉さんだってちょっと目が切れ長なだけで、パーツは大して変わんないからね!?」
「まあ、あんたが私の下位互換であることは認めるわ。あんたの真の欠点は性格と能力だもの」
「能力はともかく性格は鏡見てから言ってほしい」
「美しく完璧な私を見たらあんたがもっと霞んで見えるじゃない」
「葉月、お前よくこの家庭で育ってそんな自己肯定力身につけたな……。いや遺伝子的には間違いなくそう育つのは理解できるが」
「姉さんは姉さんだから……」
言ってしまえば慣れなのだが、そもそも姉さんは許されそうな人や親しい人にしか罵詈雑言を浴びせないので、家で聞く分にはデカい猫がおれを爪研ぎにしてるようなもので大したダメージはないのだ。いや爪研ぎにされたらめちゃくちゃ痛いな……。
おまけ『もし姉に婚約者がいたら』
「俺様が許されるのは跡部景吾と私くらいのものなのよ。ねえ樺地」
「ウス」
「義兄さんも樺地に顔を寄せないで!」
「自分のこと俺様だと理解してんのか……」
「葉月の無茶振り体質は家系だったんだね」
「義兄さんはなんとも思わないの? ちゃんと嫌なことは嫌って言うんだよ?」
「うーんそうだね……。あ、できればもっと踏んでほしいな」
「あんた程度が私に指図するなんて。いい度胸だわ、踏んであげる」
「ありがとうございます!!!!」
結構初期から書き溜めてた今作主人公の姉ネタ。
なのに没にした理由は、主人公姉に言い返す人が思いつかなかったからです。基本的にこの作品では主人公がハゲって言ったら雑魚って言い返す人がいたり、おかっぱって言ったら君にはこの美的センスがわからないのか……って返す人がいたりします。それなのにこの女ときたら……。
あと主人公の掘り下げが必要な作品でもないのにオリキャラ多いのも……なので。
どれ好き?(参考までに。ネタ集め用:興味本位=5:5)
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いつメン(一角、弓親)との遠慮ない暴言
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いつメンとの男子高校生的やりとり
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やちるとのトムジェリ
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やちるとのほのぼの(広義)
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更木隊長との勝手に緊張する会話
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他隊長格とのほのぼの
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他隊長格との失言説教
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その他の要素
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全部または複数あり決められない
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別にどれが好きとかではない