高槻書記ことおれの朝は早いが、今日は違う。いつもなら5時には起きているところをなんと日がとっくに上った8時に起きる。
なぜなら今日は、世にも珍しいなんの心配事もない完全な休日なのだ。書類を持ち帰ってもない、十一番隊隊士が大暴れするような厄介な仕事もない、やちるは隊長と遊びに行くらしくこちらに来ることもない。なんて素晴らしいんだ。
まず、久々に朝ご飯をきちんと作る。とは言っても白米焼き魚味噌汁という日本の朝食ではない。
レタスにトマトにと野菜を洗って切って、バターを塗ったパンに挟み込む。一種類だと味気ないからバナナもチョコクリームと一緒に挟んでしまおう。あとはほうれん草とキノコを混ぜ込んだオムレツも用意する。
そして仕上げに、紅茶をティーバッグではなく茶葉から淹れる。モテそうだから飲み始めた紅茶だが、それを話したら『テメェ高槻の男なのにティーバックで紅茶を飲むたァどういうことだ?(意訳)』と実家から送りつけられたのだ。
ジャンピングとかいう謎の作法をきっちり行って、温めたカップに注ぐ。うーん、よくわかんないけどいい匂いだ。昨日はアールグレイで、今日はダージリン。違いはわからない。
朝食を食べ終えたら一休みしてから買い物に行く。もちろん服はあの死覇装ではなく普通の私服だ。お気に入りの上着を着てカバンを持ち家を出る。
「トマト残ってるからー……昼はカプレーゼでもしてみるか」
尸魂界には和食用の食材しか売っていないというのは一昔前の話。最近ではチーズやパクチーを作っているところもあるらしく、少し値は張るものの大抵のものは普通に手に入れられるのだ。
今日は行きつけのスーパーに行って、ついでに外れの方にまで足を伸ばしておやつを買い貯めとくか。まんじゅう、ドーナツ、クッキー……たまにはケーキを買ってもいいだろう。
スーパーでの買い物も終わり、目当ての店を見つけて喜んだ矢先。
その店周辺がやたら騒がしい。賑やか、というよりは阿鼻叫喚、と表現したほうが適切な感じの騒がしさである。先着何名さまの商品の取り合いかなんかかと適当に予測を立てたまま近づくと、原因らしきものが目につく。
「……なんか見覚えあるシルエットが見える気がする」
それは黒くてそこそこ大きくて、骸骨を模した仮面っぽいのがついている。カオナシかな?
「虚だー!!」
「ですよねー!」
店員さんが、お客様の中に死神の方はいらっしゃいませんかと叫んでいる。しかし、ここでおれが行くのはとんでもない悪手だ。
おれが弱いからではない。もちろんおれが弱いからではない。
今のおれには斬魄刀もなければ鬼道詠唱全集も持ってないのだ。所持品はチーズ、ほうれん草、鮭の切り身、鳥モモ肉、お金、マイバッグのみである。これでどうやって戦えばいいんだ!
ということでまことに残念ながら、『この中にお医者さまはいらっしゃいませんか』と言われたときのレントゲン技師のような心持ちでガン無視することにした。
はあ……。ここに、いつもは馬鹿で品のないつるりんだけどその実戦いに関しては自称クソ強いハゲがいたらなあ……。なんて馬鹿なことを考えた矢先。
「おらよっとォ!」
天高く舞い、一撃で虚をぶっ倒してみせたのは、我らが十一番隊三席斑目一角その人だった。一角はそのまま華麗に地上に着地し、周りから喝采を浴びる。
「い、一角!」
「あ? ……葉月じゃねえか、ンでこんなとこに」
「ちょっと買い物にな。つーか見たぞさっきの!! お前本当に強かったんだな!」
「テメェは今まで俺がこの程度の虚一体倒せない雑魚だと思ってたってか!?」
「誰が雑魚じゃ!!!」
「いやテメェのことじゃ……もしかして倒せないのか?」
「倒ッ……せ、ますがぁ?」
「なんか、悪かったな……。ごめんな?」
「くそ、クソが!! 弓親に言いつけてやる!」
「言いつけたところで弓親は何もしないだろうけどな」
こうして、おれこと高槻葉月のなんでもないようでそうでもない休日は終わり、おれは密かに鬼道の詠唱の文言を一つくらいはきちんと覚えようと心に決めたのだった。
お菓子は買いそびれたので後日やちると十三番隊に遊びに行った。美味かった。
おまけ
「聞いてくれよ弓親!! 一角がちゃんと強かったんだよ! 弓親も知らなかったよなあ!?」
「知らない十一番隊隊士がいることを知らなかったんだけど……」
(紅茶をティーバッグ以外で飲んだことないし(紅茶自体苦手)、カプレーゼもパクチーも食べたことないし、虚を倒したことも)ないです。
どれ好き?(参考までに。ネタ集め用:興味本位=5:5)
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いつメン(一角、弓親)との遠慮ない暴言
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いつメンとの男子高校生的やりとり
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やちるとのトムジェリ
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やちるとのほのぼの(広義)
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更木隊長との勝手に緊張する会話
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他隊長格とのほのぼの
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他隊長格との失言説教
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その他の要素
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全部または複数あり決められない
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別にどれが好きとかではない