配達中に追われてたんだけどwww   作:とどころ

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次回から掲示板もちゃんとやるからユルシテ…ユルシテ…
感想がありがたすぎて泣ける…返信は遅いけど貰えたら幸いです…


Every abandoned gotta right to decide his own destiny.

▶︎新着ニュース [23区緊急完全封鎖]

       [住民の憤りと不安の声高まる]

 11月20日より突如として隔壁の降りた23区。その原因は、23区の主要企業の一つであるダブルヘテロ社より、数体の改造生物が脱走したことにあると正式に声明が発表された。

 23区担当執行官は公安室に自体の収束のため、一刻も早く生物の捕獲・鎮圧をするよう発令し、担当統括官は市民に対しなるべく早期の事態に終息と、補償を確約するという旨の発言で回答している。

 これに対し23区住民からは「早くどうにかしてくれ」「安全予報や避難誘導はありがたいが、やはり今も外に危険があるのは不安」「来月子どもが産まれる予定だが、事態が事態なだけに怖くて仕方ない」という声が見られる。

 23区は「富の区」と呼ばれる程に商業が盛んであり、これは現在の統括官と執行官が就任してからだ。飛躍的な商業的発展こそなされたが、執行官の独断専行は有名であり、それを止めない統括官にも批判の声は多い。

 今回の件が契機となり、23区を揺るがす未曾有の事態となるか。市民達に自らの絶対性を示し、信用を獲得するのか。先行きの見えない状況の中、隣接区の人々も進展を固唾を呑んで見守っている。

 現在最も危険とされているのはスクールエリアであり、早朝から夕方にかけて学生達の避難誘導が行われたが、幾らか人数が合わないと言う事態が発覚。警備員23区支部局からは捜索のための隊が現在編成中とのことである。

 

 病室とは言えない病室の中、黒い髪と琥珀の瞳を持った青年───ツバサ、つまりキャリアーは自身の首にある端末から表示されたニュースを見る。

 彼は一つ、ため息を吐いた。

 彼の足もとには、彼が運んだ少女フォーが引っ付いている。病室を間違えたのか、それとも抜け出してきたのか。

 判別はつかないが、ツバサの行動は変わらない。

 

「…行きたくねぇなぁ………」

 

 彼とて馬鹿ではない。今23区で起きている非常時に、自分が要因たり得る事は重々理解していたし、それ以外の理由も恐らくはあるだろうと察知していた。

 本音は口にした通りだ。

 だが、その行動が矛盾する。

 心と行動の不一致が起こる。

 やらなくてもいいことをやろうとする。多くの人が目を逸らすであろうことを、わざわざ直視する。

 この青年は、言うまでもなく歪なのだ。

 

 彼はフォーを起こさないように寝台から降りる。

 何かを書き留めてから自身の寝床を少女へ譲り、病室を出ると、無機質な廊下が広がっている。ゆっくりと、音を立てぬように歩き、階段を探し出す。

 

 23区の夜は、数多の電灯により輝いていた。

 窓から見ても、夥しい数の明かりが、夜の闇を殺さんばかりに蔓延っているのがよく分かる。

 おかげで電気の灯っていない廊下をサクサクと進めるものだ、とツバサは笑う。

 

 そんなこんなで、目的の階段を見つけ出し、足音を立てないように駆けていく。

 目的地は屋上。鍵がかかっていない事を確認し、手間が省けたなと思い、真っ暗な屋内から、ネオンが光る屋外へと飛び出した。

 

 此処は廃ビルの一室を診療所として利用しているのだろう。住みなれた『貧民街(バラック)』と同じように、簡素で粗雑だ。

 ぐるり、と屋上から23区を見渡し、行くべき方向を定めて───。

 

「よーう、出動かい?」

「どぅわぁ!?!?」

 

 唐突な声に驚いたあまり、ずっこけるツバサ。

 その様を、白衣と白髪の男であるキニアはカラカラと笑って眺めていた。

 困惑する視線を向けられても、片目に包帯を巻きつけた彼は笑ったままだ。

 しかし、そこに喜びという感情は見受けられない。

 それよりも、やはりこうなるか、といった諦めた呆れが見られた。

 

「…なんで……」

「お前ならこうすると思ってたよ、陣取って正解だ」

「えーっと…止めに来たんですか?」

「たりめーだクソボケ、完治後ならともかく、今の身体でE3装備(それ)使ってみろ? 今度こそただじゃ済まねえ」

 

 キニアはツバサが身に付けている腕輪を、一人の装着者を傷だらけに追い込んだものを指してそう告げる。

 装着者が逆らったこともあるだろうが、それ以前にツバサが手に入れたE3は出力が過剰極まるものであると、キニアは推測していた。

 

 それは医者としての見立てであり、患者の診察結果や己の経験則から導き出した、外れるわけも無いもの。

 だがしかし、身をもって味わった事柄を改めて事実と叩き付けられた青年は、それでもきっと己の意向を変えない。

 

「そのまま()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺から言えんのはそんだけだ」

 

 知っている。分かっている。理解している。

 今キニアの眼前にいるのは、明らかな大馬鹿野郎だ。

 こういうやつは、良くも悪くも止まらない。

 だが、死なせるには惜しいのだ。

 この都市で、こんなやつは死んじゃいけない。

 

「…いや、俺も行きたくないんだよ。死にたくないし。

 けど行きたい…っつーか、行かなきゃいけない理由の方がどうしたって重いんだよな」

 

 青年は、ぶっきらぼうにそう告げる。

 他人行儀が染み付いた敬語を外して、ありのままで言葉を吐き出し始める。

 その顔は、くしゃくしゃな苦笑いで、やるせなさと呆れを同時に内包している。

 

「無視出来たらどれだけ楽だったか…気にしたくないさ、見たくないさ…けど、その全部が『行かない理由』にはならないんだよな。そっちは本当に『死ぬかも』ってだけだからさ。

 けど『行かなきゃいけない理由』は色々あってさ、どうにかできるかもしれない、後味が悪い、俺も要因の一つかもしれない、罪悪感が嫌だ、現状を自分で把握しないといけない…ほら、そうなるとさ───もう行くしかないんだよな」

 

 ここは過酷である。

 それは『極東(Far East)』に住む者の共通の見解だ。

 発展する都度に放棄されるエリアと、そこを唯一の住処とする競争の敗北者。勝者たちは絢爛な揺り籠で暮らせど、いつふるい落とされてもおかしくない。

 強者は弱者を捨てながら生きる。

 弱者は生きるために多くのものを捨てる。

 それがここの全容だ。

 

 今日一日で、何人の人が蹴落とされたのだろう? 何人の人がのし上がったのだろう? 何人の人が犠牲になったのだろう? 何人の人がそこから目を逸らしたのだろう?

 …どんな過去があって「そう」なったのかは、まだ分からないが、一つ確かなのは、ただの運び屋(キャリアー)である筈のツバサは、それが出来なかった。

 

 だから、この男は行くのだ。

 死にたくないと叫んでも、見過ごす方が「後味が悪い」「罪悪感に苛まれたくない」なんていう理由で、自分の体を引きずって歩いていく。

 今回も、前の時と同じように。やらなくて良いことを、逃げても責められないことを、わざわざ血を吐きながらやりに行こうとする。

 

 ───そういった行動を、()()は許せなかった。

    だからこそ、青年の眼前で青い光が瞬いたのだ。

 

【SAFETY CONNECTED!】

 【Type-Giver!!】

「うぉあわぁ!?」

 

 突如としてツバサの腕輪から鳴り響く音声。

 青く輝き出す腕輪に驚愕する彼をよそに、キニアは「間に合ったか」とため息を吐くように呟いた。

 

【……一人では、行かせません】

 

 青く光る腕輪から流れ出す音声は、ツバサが運んだ少女であるフォーのもので間違いはない。

 目を見開いて驚くツバサとは対照的に、キニアは驚いた様子もなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 図ったのだ。こうなると分かっていたから。

 分かっていたのだ。少女ならこういうことが可能だと。

 そして、今この瞬間に───キニアの思考は明確に答えを出した。

 

【どうしても行くのなら、私も行きます。

 私がこのスーツから、貴方を守ります。

 私なら、それが可能ですから…

 私はそのために作られたんですから…】

 

 ツバサは、驚愕と唐突に声が出せないままでいた。

 まるでこの腕輪の中に、人一人が入って来たようだ。

 それは錯覚などではなく、揺るぎようのない事実だ。

 

【…もう私は、目の前から〝良い人〟を失いたくないんです…】

 

 血を吐くような声は、切実さを実感させられる。

 それは四番と呼ばれた少女の目の前から、「善良な人」が消えたことの証左として、あまりにも十分だった。

 だから、喪失を忌避するのは当然の話で、そのために行動を起こすのもまた自然なことだ。

 

【私も一緒に戦います。

 あなたを傷だらけにさせません。

 今度は、私があなたを助けます】

 

 腕輪が少女の意思で起動する。

 展開された青いラインが全身を包む。

 先鋭的な装甲が足と腕に形成され、背中には猛禽類の羽の骨格を模した装備が形作られて行く。

 顔を覆うV字型のバイザーも含め、その姿は空のように青い。

 

【Authenticate the existence of safety.

 Decide whether to fight or not.】

 

『It's only natural that I will fight together.』

 

【The skeletonized wings fly around in the sky.

 No one will block everyone's freedom.

 ───Blue winged falcon.】

 

 ツバサが初めて起動した時とは違い、血のような赤色は何処にもない。赤い霧は広がらず、ただ青い光が市街のネオン光を反射していた。

 

「お嬢さんはテコでもうごかねぇってよ。

 行くなら早くいけよ、そのあと説教だかんな」

「……何で?」

 

 ツバサには、理解出来ていない。

 なぜこうなったのか、ここまでされるのか。

 そんな謂れはないと思っていた。

 

「フォーはともかく、何で俺がここまですんのかって?

 …俺はお前みたいなやつ嫌いじゃねぇんだ」

 

 ポケットに手を突っ込みながら、医者は言う。

 

「…クソみたいな都市だよ、23区は。

 フォーみたいな奴は稀だけどよ、意図的に失脚させられてモルモットにされたやつも、権威のために蹴落とされたやつも、謂れなく処刑されたやつもいる。

 そしてその全てがどうしようもない流れだ。

 …お前は、知ってか知らずか、そのあたり、俺にはわからねーけど、ともかくその流れに抗ったんだ。

 ガキのために奔走した。殺せただろうに命を奪わなかった。俺が惚れ込むには、それで十分なんだよ」

 

 肩をすくめて、キニアは苦く笑う。

 恥ずかしかったのか、すぐ様顔を片手で抑えてしっしと手を払いながら、ぶっきらぼうに言い放った。

 

「帰ってきたら話さなきゃいけねぇことが山積みだ。

 無事に帰ってきやがれ、二人とも」

「…………………」

 

 青年は無言のままだったが───笑ったような声を出す。

 この夜に、青い隼のような光が夜を駆けた。

 




▶︎Blue winged falcon…青く羽ばたく隼。全性能が「赤い隼」より大きく劣っている。これといった特殊な性能は現在のところ見られないが、出力は一般的なE3を僅かに上回り───

▶︎キニア・アルド…23区貧民街に居を構える闇医者。この場合の闇医者は「認可の降りていない技術を用いる医者」の方の意味。ツバサの超回復はこのため。「人脈」が広い。

▶︎サガミ・ツバサ…致命的にまで「極東」に生きることが向いていない。大学に行けたことよりも、19という年齢に生きられたのが奇跡。貧民街の治安は、実はそこまで悪くないのだが、この男は性格のせいで何度もボロボロになった。

▶︎フォー…23区では「稀な例」になってしまった。目の前から「良い人」が死ぬのを見ており、それ以上の喪失を恐れている。自分の身体にされたこと、その身体ができることを理解している。

▶︎「良い人」…死んだ。特に珍しいことではない。

スレ住民とかキャラの紹介いる?

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