配達中に追われてたんだけどwww   作:とどころ

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身構えている時に、更新は来ないものだよハサウェイ
不定期更新ですまぬ…すまぬ…


Hi wolf. What does your nail taste like?

「───うぉらぁ!!」

 

 作られた爪を振るう。リアルタイムで学習が発生し、それは瞬間ごとにより最適に、より正確に。

 多分、それがこのスーツの本当の力、その一端。

 フォーがいて、ようやく成立するこれは、俺の体を無理やり高みに引っ張ってくれている。

 

 改造体が爪を振り上げる。ブラフだ、本命は爪に挟んだ五本の牙。徹甲弾の開発がバカらしくなるほどの威力。

 その全てを避けることが、今では容易い。

 足はまるで草原を欠ける狼のように軽やかに運ばれ、その間にもバイザー越しに見た動きを取り込む。

 

『───学習を継続。モデルケース:改造体「war dog」学習対象は「戦闘技術」学習完全完了(インストール)まで約5分と想定。

 ツバサ(ユーザー)、それまでに新規武装での拮抗を』

「りょう…っかい!」

 

 エネルギー体の爪武器。学習により、人体で振るうことが最適と判断されたが故に作られたそれを振るう。飛ばされた牙を消すには十分な盾。

 そして投擲後の隙に狙うは顎部分。気絶を願って何度も蹴りを入れ、脳をダイレクトに揺らす。

 腹が立つことに、眼前の巨大な人狼は少しも怯んでくれない。でも粘る。望みはある。

 それに───顔の見えない味方だっている。

 

 ガゥン! とキャリアーの仕事中に何度も聞いた『警備員』の狙撃銃の音。それが五つ。その全てが、俺の相対する改造体に激突する。血は出ない。鎮圧用のゴム弾だ。ダメージは薄いが、頭部を狙えばそれなりに。

 

「…よし、…よし…!」

「█▟█▞█▟───!」

 

 改造体が吠える。まだコイツは衰えを知らない。恐怖を知らない。

 だから引かない。今なお叫び、俺を殺そうと、此処を壊そうとする。

 四肢を伸ばす。途端に入る援護射撃。四つは関節を狙い、一つは頭部を狙う。

 俺はまた命を拾った。

 

『支援者達からダイレクトコールが来ていますが、繋ぎますか?』

「もちろん! っとぉ!! 目も慣れて来たからっな!」

 

 しかしこいつ本当にタフだなぁ!? かれこれ七、八発は蹴ってるのによろめく素振りも見せてくれない。脚力に自信を無くしそうだ。ただ、動きは確かに衰えつつある。

 このタイミングでダイレクトコールが来たってことは、恐らく「頃合い」だとあの壁の向こう側の人たちは判断したんだろう。

 ザリザリとノイズ混じりの音声が、俺の鼓膜を打つ。

 

『聞こえるか、そこのE3! よく耐えた! 今しがたこっちのバカが強制鎮圧剤を持ってきやがった所だ!』 

「マジですか!? そりゃあ! 助かり! ます!」

 

 九度、十度、十一度。何度も蹴りを入れる最中、ようやっとこの耐久戦に終わりが見えた。

 勢い余って爪を振るう。屈強な体を前に、ほぼ無力ではあるが、怯ませる程度の威力は存在する。

 ばぢん! と光体の爪が弾ける。咄嗟に爆発を起こし、武器を失う代わりに目眩し。

 

『可能でも打てるのは一発! あとは分かるな!?』

「はい! まっかせといてください! 狙撃頼みます!」

 

 注文は確実なチャンス。取っ組み合いが最適だが、今の装甲では心許ない。もう一度爪を出し、目眩しをゼロ距離で喰らわせるのが得策だろうか? そんな事をフォーに提案するが、彼女は心無しか得意げな笑い声で返す。

 すると、俺の纏うE3全体に走る青いラインが強く光り、四肢から細いアームのようなものが伸び、周囲の瓦礫から資源やら何やらを回収しては『造り変え』始めた。

 

『───完全学習完了しました。

 コード認定「wolf.1」───実行!』

 

 驚く俺をよそに、凄まじい速さで行われる鍛造と作成。新たに組み上がるパーツの一つ一つが、機械の鎧へ新たに組み込まれる。

 四足歩行の獣のような脚部。腕部を包むのは射出機構を持つ装甲。手足にはもちろん鋭利な実体武器。羽だった部分はバーニアスラスターに組み替えられ、腰部分と脚部の要所へ装着される。

 

『突撃で構いませんか?』

「最高!」

『了解。生命保護絶対。セーフティ最大。推進加速機構臨界。速度逆算証明完了。カウンター5』

 野生において、最も優れたセンサは警戒だ。

 これまで猛威を奮っていた改造体は、それを励起させたのだろう。屈強にして、猛々しい全身に力を込め、完全に「迎え撃つ」為の体制を取った。

 それに対して、こちらは完全な突撃の体勢。バーニアは破裂寸前な程に力を溜め込み、全身の装甲は密度を増し、使用者を守る鎧にして敵対者を潰す弾丸となる。

 

『…状況に合わせてリアルタイムで変形するE3だと…!? ありえるのかそんな代物が!?』

 

 支援者の声が、遠い。

 これから始まる一瞬の激突は、俺の未知だ。

 どんな威力か、どんな光景か、分からない。

 これまで多くの荷物を運んできた。

 死にかけたことも、殺しかけたこともある。

 けどこんなにも真っ向な騒ぎは初めてだ。

 

『カウント、5…4…3…2…1…』

 

 ゼロ。一瞬のみ世界が色を失い、止まる。

 鼓膜に響くのは爆発にも似た風切り音。手のひらに伝わるのは、眼前の改造体の爪を砕いた音。無理くりに手を開き、改造体の手を掴む。

 でかい口のある頭に頭突きを喰らわし、噛みつきを牽制。そしてゼロ距離でぶつかったままの頭を軸に、加速機構をふかしたまま、改造体を地面に向けて押し潰すように飛ぶ!

 

「ぐごおおおおおぉおおおお!?!? きついきついきついきつい!! ───大丈夫! やめないで良い!! もっと吹かせ!」

 

 俺を案じてくれたのか、フォーが俺を離脱させようとしたのが分かった。

 すぐさまそれを止め、更に加速を強くする。頭がかち割れそうだ。目も白んで来た。でも辞める理由は無い。

 これより酷い目なんて、配達をヘマした時にいくらでも体験済みだ。ダストシュートに押し込まれた時や、生爪を剥がれてゆっくりと嬲られた時の方がもっとしんどかった。

 それに加えて、経験の時と比べ今回は明確な終わりがある。

 どずん! と改造体の体に振動が走り、頭越しにそれが伝わる。きっと、鎮圧弾が届いたのだろう。俺は俺の役目を十全に果たせた筈だ。

 

 ぐらり、と体が地面に落ちる。

 視界がクラクラするが、意識はしっかり定まったままだ。

 …そして、目の前には気絶した改造体。

 やっと、一仕事が終わったんだと実感したと同時に、身体から力が全部抜けた。

 

『よくやった! お前のおかげだぞE3!! …さて、俺たちは報告に行かないといけない。その間は何も見てないからな!』

「……めちゃくちゃ良い人だなオイ…」

『……………環境の違い、でしょうか?』

「どーだろー…意外と何処にもいたりするからなぁ、ああいう人…よっと」

 

 脱力感が付き纏う体を無理やり起こしつつ、えっさほいさとその場を離脱。難民を探す手がかりを個人チャットで貰い、移動を続ける。

 …バーニアでちょっと浮きながら進んでるのはご愛嬌だ。この分なら、一人の安全確保をしつつ、スクールエリアからの離脱も間に合うだろう。

 

『…改造体は鎮圧しました。離脱しても良いのでは?』

貧民街(バラック)から野盗が来る可能性もあるからな…一応、入り口にいた警備員の所まで誘導しておか、ないと…」

 

 対応はアフターまでしっかりと。これは顧客を増やす運び屋(キャリアー)としてのコツでもあるが、やっとかないと収まりが悪いのもある。

 やるだけやってあとは知りませーんなんて、後味が悪い。

 

 それに第一、───助けて欲しいって声が、いくらでも踏み躙られるのがこの世の常なのだから、せめて一人くらい、馬鹿正直にそれを受け取ってこなす奴がいても、バチは当たらない筈だ。割は食うが。

 あとやっぱり、…助けてという声を無視するのは、後味が悪いから。

 そんな理由で死にかければ世話ないが、生きてるから万事オーケー。死ななきゃ安いもんだ。

 

『…ツバサは、初めて会う人全てに、そのように優しくしてきたのですか?』

「優しくって…俺だって相手はえら───」

 

 フォーの疑問に、駄弁るように答えようとした時。

 

 

 

 

 

 

 

 

『───汝、其処より歩む事勿れ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当に、本当に唐突だった。

 何の前触れも、前兆もなかった筈だ。

 けれど、それは現れた。

 溶け込んでいたものが浮かぶように。

 じわりと滲み込んだインクのように。

 

 黒いモヤに覆われた、大きな人型の存在。

 

 全身に、怖気が走った。

 

 視界が、歪んだ。

 

 足が、震えた。

 

 手が、強張った。

 

 内臓が、じりついた。

 

 脳が、悲鳴を上げた。

 

 ただ視界に入っただけで、この有様。

 

 そしてそれら全てが、()()()()()()()()()

 フォーがスーツで補正したわけじゃ無い。

 単なる圧力だけで、この現象が起こっている。

 矯正された視界が、現れた人型の姿を正確にする。

 

 頭部を覆う鳥籠のようなフェイスガード。幾多もの管がそこから伸び、肩部や脚部などの要所に埋め込まれ、得体の知れない何かを循環させていた。

 俺より二回りもデケぇ大柄な身体は、尋常では無い硬質感が嫌でも伝わる黒い外套を纏っている。

 此方に向けられた、静止を促す手の平を覆う装甲は、過去に一度だけ見た事のある西洋甲冑とやらの手甲を思い出した。

 そして、最後。眼前のソレが背に背負う、馬鹿でかい長方形のような刀身を持つ一振りの武器が、俺には墓標に見えた。

 

 


 

378 :フォー@Far East  2035/11/20 21:02:00 ID:Fortune

【緊急記録機能:live//ID-illegal-視界配信】

 

379:執行官補佐@Far East  2035/11/20 21:02:00 ID:Jail1

ふざけんなクソが!!!!!何で態々現場に出張ってんだよあのクソ野郎!!!

 

380:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:02:37 ID:4OyzAMOsr

えっ何これは

 

381:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:03:07 ID:nWsdYqf9u

やべぇ画面越しにちびった…

 

382:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:03:46 ID:xxx

長共々余程暇を持て余しているらしい。さて、これは幼子の方は余程焦ったか、救援信号と受け取るべきか

 

383:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:04:21 ID:Happy_I_Lo_ve_do11

おー…ここかなぁ〜?

 

384:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:04:52 ID:hDUy2SCSL

ヤベェ吐き気してきた、離脱

取り敢えず録画はしたからなんかあったらネットブッパだ

 

385:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:05:12 ID:6eM5gZDP3

ちくしょう、改造生物のしたら終わりでいいじゃんか!

 

386:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:05:44 ID:RBAWG3KxU

キャリアー生きてるんだよなこれ!?

 

387:ヤブ医者@Far East  2035/11/20 21:06:24 ID:Doctor

>>384 気持ちはわかるしありがたいがやめとけ

大至急俺が行くからまじマジで何もすんな

消されんぞお前

 

388:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:06:58 ID:ozz16WsH0

だよな どう見てもやばい物だよな

 

389:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:07:28 ID:lzxb/1tGv

何なんだよこの人…人なのかこれ?

どう見ても形以外は人じゃ無いだろ…

 

390:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:08:10 ID:8q4k/C+7d

俺たちはこれ見てることしかできない…?

 

391:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:08:48 ID:zIyUvI9uZ

畜生どうすりゃいいんだこれ

ともかくやばいことしかわからん

イッチ死なないよな、大丈夫だよな

 

392:名無しのユーザー@Far East  2035/11/20 21:09:16 ID:wWN799pl9

とにかく誰なんだよこいつは!

 

393:執行官補佐@Far East  2035/11/20 21:09:42 ID:Jail1

名前と姿を知るくらいなら問題ないから教えてやる

こいつは13区執行官補佐その人

識別名:断頭台だよクソッタレ

 

 





ボスラッシュだドン

スレ住民とかキャラの紹介いる?

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