ツインテールの小さな姉が出来た   作:とりなんこつ

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今回は二話連続投稿してみまーす。


第4話 謝罪:【調視点】

ホテルから戻ってきくると、既に切ちゃんとマリアが部屋にいた。

 

「調…」

 

心配そうに言ってくる切ちゃんを横目に、ソファーへ座る。

すると隣にマリアが座ってきた。

そのままマリアに抱き着いたけれど、マリアは何も言わないで優しく頭を撫でてくれる。

どれくらいそうしていたことだろう?

 

「それで、どうするつもりかしら?」

 

「…どうするって?」

 

ぐすん、と少し鼻を啜りながら私。

 

「確かに嫌な思いをしちゃったみたいだけど、わたしから見ても悪い人たちには見えなかったわよ?」

 

マリアに言われなくても分かっている。

天乃さんたちは、変に私に気を使っている感じじゃなかった。

あの子がもう一個ケーキをくれたことだって、別にイジワルなつもりはなかったと思う。

 

「でも、あんなことになっちゃったんだから、もう顔を合わせられないよ…」

 

同い年生まれの男の子に、まさか中等部の一回生に間違われるなんて。

頭にきて、思わず引っ叩いちゃった。

今もまだ恥ずかしくて、ちょっと悲しくなっちゃう。

 

火照ってきた顔を隠すようにまたマリアの胸へ埋める。

すると、ふっと笑ったマリアの息が頭にかかってくる感触。

 

「調。あなたはね、少しは人に甘えるってことを覚えた方がいいわよ?」

 

「…そうかな」

 

私としては、今もこうやってマリアに甘えているつもりなんだけど。

 

「今は心の整理がついてないでしょうから仕方ないわ。でも、落ち着いたらもう一度連絡を取ってみたらどうかしら? きっと天乃さんは気分を害するどころか、全力で謝ってくると思うわよ?」

 

 

 

 

 

 

マリアって、時々予言者みたいなことを言うコトがある。

ほとんどが外れて、後になって『何カッコいいこと言ってたのわたしわッ!』 ってマリアが頭を抱えて悶絶しているのを、切ちゃんと一緒に何度か見たことがあった。

 

でも、本当に稀に当たることもあるわけで。

 

翌日の放課後。

クリス先輩も一緒に門を出たところで声を掛けられる。

見覚えのある制服に長身の男の子。

 

ヨシキくん…ッ!?

 

まさか、昨日の今日で謝りに来てくれたの?

この時点でちょっと感動してしまったんだけど、彼の頬にぴったりとついた手形に昨日の怒りを思い出してツンケンとしてしまう私。

替わりに、クリス先輩と切ちゃんがかばうように前に出てくれた。

ありがとう、二人とも…なんて思っていたら、ヨシキくんの視線がクリス先輩の胸に釘付け。

 

じー。

 

思わず睨んでしまっていた。

私の視線に気づいたらしいヨシキくんがハッとした顔をした後、いきなり頭を下げてくる。

 

「昨日はすみませんでしたッ!」

 

じー。

 

「その…、デリカシーのないことを言ってしまったみたいで…ッ」

 

今さらだけど、ヨシキくんはかなり背が高い。

そんな彼が長身を折り曲げて深々と私に向かって頭を下げている光景に、周囲はざわつき始めた。

はっきり言って目立っちゃっている。

 

…どうしよう? 

切ちゃんと一緒に困っていると、クリス先輩がファミレスへと行こうと提案してくれた。

リディアンの近くの、私たちも御用達のファミレスへと入店。

座ったのはいつもの窓際の六人掛けのテーブル席で、その片側の席に私と切ちゃんにクリス先輩と並んで座る。

向かいの席にヨシキくん一人だけなんだけど、やっぱり男の子って座っても大きいな。

 

「とりあえず自己紹介からさせてもらうか。あたしの名前は雪音クリス。リディアン高等科の三回生で、こいつらの先輩ってヤツさ」

 

まずはクリス先輩が自己紹介。

 

「そしてアタシが一回生の暁切歌ッ! 調の家族兼保護者兼大大大大親友なのデース!!」

 

切ちゃん、家族と親友は分かるんだけど、保護者のつもりだったんだ…?

 

「あ、はい、雪音クリスさんに暁切歌さんですね。俺は聖ジェイナス学園一年生、天乃由輝(ヨシキ)と言います。以後お見知りおきを」

 

ヨシキくんが丁寧な口調で挨拶。

それから私の方を見てきたけれど、反射的にプイと横を向いてしまう。

 

「で? 一年坊主のアンタは、結局何をやらかしたんだ?」

 

クリス先輩からそう訊ねられ、ヨシキくんは口ごもっている。

正直に説明されたら私も恥ずかしいな、なんて考えていたら、痺れを切らした切ちゃんがぶっちゃけちゃった。

 

「聞いてくださいデスよ、クリス先輩! この男の子は、年上の調を妹扱いしたんデスよ!?

 いくら調がちっちゃくって可愛くて胸がペッタンコだって、失礼千万な話デース!!」

 

「ちょ、切ちゃん…!!」

 

フォローしているつもりなのが余計痛いよ!

 

「なるほどな。だいたい、いや、ほぼ百パー理解できたわ」

 

クリス先輩から呆れ顔で見られ、私の顔はきっと真っ赤だ。

恥ずかしくて余計に切ちゃんをポカポカしていると、クリス先輩は真剣な顔でヨシキくんと向かい合っている。

 

「真面目な話、こっちの二人はあたしの大事な後輩なんだ。そんで今回の件―――アンタの家が引き取りたいって申し出ている話も、あたしは聞いているんだよ」

 

「そうなんですか…」

 

「その上で訊ねたいんだが、アンタ的にはこの件に賛成なのか? 反対なのか?」

 

クリス先輩の質問に、私の胸がどきんッ! と大きな音を立てる。

 

天乃さん家の資料を見て、ヨシキくんのプロフィールも見た。

彼の誕生日は3月3日。

私の方が少しだけお姉さん。

実際に会って、本当にここまで背が大きいとは思わなかったんだけれど。

 

…弟が出来るって、どんな感じなんだろう?

 

そんな風に考えて胸が弾まなかったって言えばウソになるのだ。

 

「…俺は」

 

ヨシキくんが口を開く。

ドキドキとなんかうるさいよ、と思ったら私の心臓の音だ。

 

じっと見つめ、答えを待つ。

ヨシキくんの大きな咽喉ぼとけがコクリと動いて―――。

 

ピーピーピー。

 

「ッ!!」

 

この電子音は、私たち装者に対する緊急連絡の着信音。

三人は揃ってスマホを取り出して見れば、ディスプレイに緊急メッセージが表示。

ノイズ発生が懸念されるので至急現場へ急行せよ! とのこと。

 

「…悪ぃ。急用が出来たわ。この話はまた今度な」

 

さっそくクリス先輩が立ち上がる。

切ちゃんに続いて私もワタワタと後を追って走り出す。

 

「急用って…」

 

後ろからヨシキくんの声。

 

「部活デース!!」

 

切ちゃん、その返答は適当だけどGJだと思うよ?

 

 

 

 

 

 

 

指定された急行場所は、なんとリディアン音楽院だった。

S.O.N.G.の調査部に捕捉された錬金術師が逃げ込んだんだそう。

私たちが校門を潜ったあたりで、スマホにアルカ・ノイズをばら撒かれてしまったと緊急連絡の追加。

 

「あたしらのシマに手ぇ出すとは、いい度胸しているじゃねえか…!」

 

まるで任侠映画みたいな台詞だけど、クリス先輩が凄く怒っているのが伝わってくる。

校舎内の人たちの避難は済んだのかな?

それでも念を入れて、人目がつかない場所で聖詠。

 

「いいかッ! 出来るだけ建物を壊さないで片付けるぞ!」

 

シンフォギアを纏ってもクリス先輩は頼もしい。

 

「了解しました」

 

「了解したデェス!」

 

クリス先輩ほどじゃないけれど、私も怒っていた。

思い起こせばこの学校に初めてきたのは文化祭のとき。まだ武装組織【フィーネ】を名乗っていたころ。それから色々あって通い始めて、それほど日は経っていないけれど、私たちを受け入れてくた場所だ。

仲間がいて、仲良くしてくれるクラスメートもいる、温かい陽だまりだ。

そこを壊そうとするなんて許せない…!

 

「調ぇ! そっちに一匹逃げたデスよ!」

 

「任せて! 切ちゃんはここをよろしくッ!」

 

建物ごと吹き飛ばさないよう、それぞれが手分けして接近戦でノイズを倒していく。

そんなに数はいないみたいだけど、敷地内の広範囲に召喚ジェムがばら撒かれたみたい。

 

「くッ!」

 

ノイズを探して、追いかけて、ようやくシュルシャガナのアームドギアを命中させる。

 

『よくやった! これでノイズの反応は全て消失したぞッ!』

 

通信ユニットに発令所から司令の声。

入れ替わるように緒川さんからの「錬金術師を捕縛しました」との報告も入る。

 

『これでリディアン内の安全は確保されたな。ご苦労だった。気をつけて帰投してくれ』

 

はい、と返事をして通信を切って、さすがに私も少し疲れちゃった。

クリス先輩と切ちゃんはどこだろう?

とにかく、シンフォギアを解除しなきゃ。

 

そう思ったときだった。

たたたっと誰かの走ってくる足音。

切ちゃんかな? なんて思って私は完全に油断していたと思う。

 

「…調ちゃん?」

 

校舎の角を曲がって飛び出してきたのは、なんと別れたはずのヨシキくん。

 

「…ヨシキさんッ!? どうしてここに…!?」

 

「そりゃ調ちゃんのことが心配でさ」

 

そう言ってくる彼に、私は慌ててギアのスカートを引っ張り下げ、胸のあたりを手で覆う。

戦っているときは仕方ないけど、身体の線がぴったり出てしまうこの格好を見られるのは恥ずかしい。

ううん、むしろシンフォギアは一般人に見られるのは絶対に秘密で…!

 

「こ、これはねッ!」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。誰にも言わないから安心して」

 

…え?

どういう意味? まさか、シンフォギアのことを知っているの…?

 

次に、ヨシキくんがまた勢いよく頭を下げてきたので私は益々混乱してしまう。

 

「…昨日はごめんなさいッ!」

 

え? え?

 

「本当に不躾で失礼でした。どうか許してもらえませんか?」

 

頭の中がぐるぐる回る。

 

昨日の失礼は、やっぱり許せないよ。

シンフォギアは国家機密。

こんな姿を見られるのも恥ずかしい。

 

ああもう、何がなんだか分からない…!

 

「もし許して貰えるなら、あの、両親が言った通りに、一度でもいいから家に来て貰えると…」

 

結果として、私はフリーズしてしまったらしい。

 

「そ、それじゃ、俺は行くから」

 

我に返った時には、ヨシキくんの背中は遠くへ行ってしまっていた。

 

 

 

 

 

「今日は大変だったな。まさか新生したリディアンも戦場になるとは」

 

本部へ戻った私たちを、司令はそう労ってくれた。

 

「…調くん、どうした?」

 

「い、いいえ! なんでもありませんッ!」

 

答えた声は上擦ってなかったかな?

私は、シンフォギアを纏っているのをヨシキくんに見られたことを、司令に報告していない。

もちろんクリス先輩と切ちゃんにだって相談していなかった。

 

実際に一般人がシンフォギアや装者たちの戦闘行動を目撃した場合、守秘義務を負わされてたくさんの誓約書を書かなきゃならないんだそう。

日本国外はもとより、一部の国内への移動も制限されるとも。

 

本当なら、すぐに司令に報告すべきことだ。

でも、そうなると、ヨシキくんはこの先、修学旅行とかも行けなくなっちゃうんだよね?

 

それはちょっと可哀そうだと思う。

私だって、来年の修学旅行が凄く楽しみだし。

 

けれど、黙っているのは命令違反で。

だけど、ヨシキくんは誰にも言わないって約束してくれて。

 

「…調? ずっと元気がないみたいデスけど、どっか具合悪いんデスか?」

 

顔を上げたのは夕食の席。

今日のおさんどん番は切ちゃんで、「会心の出来デ~ス!」って出してくれたハンバーグも、悪いけどちょっとしか食べられなかった。

 

「んん。なんでもないよ…?」

 

「…きっと、色々あったから疲れてたんデスよ。お片付けもアタシがやっておくんで、お風呂に入って今日は早く寝るデス」

 

そう言ってくれた切ちゃんに甘えて、お風呂を済ませて横になる。

まだ22時になってもいなかったけれど、ベッドへと潜り込んだ。

 

…眠れない。

 

一人で考えれば考えるほど目冴えてきて、やっぱり司令に報告すればよかったと思っても手遅れだ。

いくらS.O.N.Gでも、いきなりSNSに情報ばら撒かれてたりしたら止められないと思う。

その前に対処するのが最善だったんだろうけど、ヨシキくんと別れてから時間は経ちすぎている。

 

…どうしよう。

もし、私だけがシンフォギア装者だってバレちゃったら、切ちゃんやみんなと一緒にいられなくなる?

 

頭の奥がスーッと冷たくなる。

大それたことをてしまったような気がして、だんだん怖くなってきた。

 

怖さを誤魔化すように、何で報告しなかったの? という自分の気持ちも分析する。

ヨシキくんがシンフォギアのことを知ってしまったら、色々な社会的な制約を課されるのは当然のことだ。それを可哀そうと思う気持ちに間違いはない。

同時に彼は未成年だから、きっと建夫さんたちご両親にも色々と報告がいって、同じような制約を受けることになるだろう。

もしそうなって、原因が私だと知られたら。

きっと天乃さん一家は、私のことを嫌うだろうな。ひょっとしたら憎まれるかも知れない。

おまえにせいでとんでもない迷惑なことになった、みたいな。

 

そんなのは嫌だ。

私を引き取っていいと言ってくれた、優しい目をしたご夫妻。

ヨシキくんだって謝りに来てくれたんだから、決して悪い子じゃないと思う。

そんな天乃さんたちに迷惑をかけるのは嫌なのはもちろん、おそらく、私のお母さんのことを知っている唯一の人たち。

司令に渡された資料の中に私のお母さんのものもあったけれど、書いてあったのは簡単なプロフィールだけ。

どんな人だったのか直接知っている天乃さん夫妻に、面影がある、とか、似ているとか言われたのはとても嬉しかった。

出来れば、お母さんのことについて、もっともっと訊ねてみたかった。

…まあ、その機会を台無しにしちゃったのは私なんだけど。

 

ふと、今日のヨシキくんの台詞を思い出す。

 

『もし許して貰えるなら、あの、両親が言った通りに、一度でもいいから家に来て貰えると…』

 

建夫さんの奥さんである、確か名前は光恵さんだったかしら?

その光恵さんも試しに泊りにきて、と言っていた。

勢いで約束したみたいな恰好になったけれど、きっと社交辞令だったと思う。

 

でも、今日のヨシキくんの言い方は、そんな風じゃなかった気がする。

むしろ、その前に私のシンフォギアを見て『誰にも言わないから』と言ってくれたことと合わせて考えてみると―――これって取引きってこと?

誰にも言わないでやるから、一度は自分の家に来てくれてって?

 

それほど乱暴なニュアンスはないのだろうけど、そういう解釈も成り立つ。

逆に、私が断って行かなかったら、秘密をバラされちゃうのかな…?

 

「…うーん」

 

 

 

 

 

悩みに悩んで、翌日の学校は休んでしまった。

切ちゃんだけが心配そうに登校したお昼過ぎ。

本当は特に具合が悪いわけじゃあないけれど、パジャマ姿のまま私がリビングのテーブルの上に広げたのは例の資料。

そこに記されている天乃さんの家の電話番号をスマホの画面に打ち込んで、一瞬ためらう。

…平日のお昼だし、繋がらなかったら諦めよう。

 

覚悟を決めてダイヤルしたら、あっさり三回目で繋がってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

更に翌日の土曜日。

 

余所行きの服に、着替えと荷物を詰め込んだカバンを持った私を見て、切ちゃんは目を丸くする。

 

「調、どこかに行くんデスか?」

 

「ちょっと天乃さんの家にお泊りしてきます」

 

「なななんデスとぉ!?」

 

 

 

 

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