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真っ黒な夜。
その空間には夜特有の匂いと音を感じる事ができた。そんな夜の空間に寂しげな洋館が立っている。夜の0時を時計の針が過ぎたこともあってか、その洋館からは人の気配を少しも感じ取れなかった。
だが、そこには人一人居ないわけでは無く、一つの小さな窓から光が漏れている。その窓の向こうにいた人物の名は大前咲。大前家13代目当主でありこの聖杯戦争に参加しているマスターの一人である。
ここで大前家について軽く話そう。
大前家、13代も続いている歴史の長い家である。魔術はその独特な性質と大前家は魔術師特有の感性が薄いケースが高い。しかし実力は高い者が多く、魔術刻印もしっかりと受け継ぎ、魔術回路も増えてはいないがヘリもしないという感じで基本的には問題はないのだが、一つ変わったところがある。それはほぼ全ての
なぜそんな事が起きているのかは知らないが、なぜかそんな変な事が延々と続いている。
その為かかなり早い段階で魔術刻印を移植しており、13代続いていると言っても年数ではかなり短く短命な一族だった。しかし事件は起きた。いやなぜか今まで起きなかったと言う方が正しいだろう。
13代目当主の咲の母大前日菜は交通事故でその場で即死し父大前琴時は三年前に夜の道端で通り魔に刺され、発見が遅れたのと、刺したであろう箇所が急所に入り助からなかった。さらに魔術刻印も3割程しか娘に継承しないまま死んでしまった。しかしこの通り魔はその辺のチンピラの物ではないと魔術士ならば一眼でわかる。何故なら琴時の体にある魔術回路も魔術刻印もズタズタに壊されていたからだ。こんな芸当は普通の魔術師でも到底難し事である。しかも、琴時が刺された箇所はたったの三箇所で有り、確かに壊すことは可能ではあるがたった三箇所で魔術刻印も魔術回路も壊せるような代物ではない。しかし警察はこの事件をただの通り魔事件と判断して調査するも、目撃者の一人も見つからず監視カメラにも写っていなかった。しかし咲の中では容疑者は何となく付いていた。まず父は
「ごめんね、ごめんね、父さんは悪魔と会ってしまったんだ、」
と泣きながら私に言ってきたのをいまだに覚えている。その後キシンには会ってはいないが父は時々接触していたようだった為、私はキシンの顔はよく覚えていないが、もし父を殺したのだとすればこの男だろう。
もう一人の容疑者は父の弟子であった新馬立九だ、父の弟子で有り、現在はキシンの元にいる。八年ほど前に父が時計塔から呼び出しキシンの手伝いをしていた。当時は今考えてみればおそらく父が助けを呼ぶ為に呼び出したのだろうが、立九はキシンの元へ行くと帰ってきた時に狂ったような顔をして父に何かを話していたのを覚えている。感情もよく分からない状態で見当違いな事をずっと言っていたが本人は全くの正常で催眠の魔術などはかけられておらず、それからは一才の音沙汰もなかった為、父も含めた家族全員が忘れかけていたが、父が殺された時の葬儀に突然やってきて私に対して。
「師匠は死んだ。君はどうする?生きたいか、父や母の様に死にたいか?」
それだけ言うとさっさと去って行ってしまった。今はこの家にいるのは大前咲一人で有り、父が死ぬ前まで雇っていたお手伝いさんはもううちには来てもらってきてない。いや彼がいた、私がこの聖杯戦争のために召喚した
私はこの聖杯戦争のシステムについてはそこまで詳しくなかったが、父が残した遺産の中に、この十年間で集めた父の聖杯戦争についての情報が載ったファイルが出てきてそれを頼りにしながら召喚した。
無論父も参加する気などは無かっただろうが身の危険か、それとも単なる好奇心か、いや、あのビビリの父が好奇心なんぞで動くものか。それの証拠に最後のページの方には私たち家族が逃げるための手段を書き連なっていた。そんなノートの中に一つ気になる一節があった、それは【知名度補正】だ。簡単に知名度補正について説明すると、呼び出したサーヴァントによってその土地、国、世界での知名度が強さにバフをかけると言う物だ。これによって、例えば世界的に有名な人物は必然的に強くなり、逆に知名度が低いとその恩恵が受けられない。となればこの聖杯戦争に呼び出すサーヴァントは有名な人物であればあるほど良い、しかし聖杯戦争にて呼び出したい人物がいれば触媒を用意しなくてはならない。もちろん歴史に名を刻んだ人々を呼ぶのだ、金は掛かるしもし、もし用意したとしてもその人物が召喚されるとも限らない。だが、もし召喚をしたければ用意せねば始まらない。そこで私はこの日本において武人と聞かれれば真っ先に回答としてくるであろう、人物の遺品を手に入れた。我が家の少ない財産を殆ど使ってしまったが、このサーヴァントを呼べれば確実に勝てるだろう。
△
「アサシンよ、あれが大前邸だ。」
「あれが、か、」
夜の世界に妖艶な雰囲気を醸し出すかの様な洋館がそこには立っていた。しかしその館には魔術師がおり、安易に近づけば一瞬にして設置されている罠のえじきになるだろう。
「しかし、マスターこいつら役に立つのか?」
マスターの後ろにいる、愚者の方を見る。力無くどこかを見ながら突っ立っている。よく見るとマスターが持たせた物なのか、スコップやピッケルを持っていたり、ドライバー、トンカチ、はたまたただの石を持っている個体もいた。
「あぁどうせ使い捨てだ、アサシン、一様作戦を言うぞ。まず正面玄関に二十人の中十人を送り出す、その後別方向から二組を向かわせ、潜入させる。正面は任せたぞアサシン。この十体はお前に預ける。任せたぞ」
「了解した」
自身の肉体に愚者達の感覚が伝わり、思い通りに動かせる。
「さぁ、行くぞ!」
愚者に対して声をかけると。
「「「「Aaaaaaaaaaaaaaaa」」」」
と獣の様に声を上げる。俺の声に反応してそれぞれの持っている武器を掲げていた。
△
正面の方角から魔力の気配を感じる。微量な者がほとんどだが、一体だけ強い者がいる。自らを主張するためかの様に他のものよりも、大きい反応を出している。書いていた日記を途中だが閉じ、念話で自分のサーヴァントを呼び出す。
(ランサー、来て)
声に出て出てきてか、霊体から実体化した赤の甲冑を着た身長は176cm程あり2m程の十字槍を持ち、現れる。
「あなたもわかるでしょう。あの反応が、」
するとランサーは静かに言う。
「はい、十体程でしょうか、此方に向かってきていますね。」
少し考えた後ランサーに指示を出す。
「取り敢えず正面の奴らは任せるわ、後の奴らは私たちで始末するから。」
覚悟は出来てる、これは聖杯戦争だ、私の手が汚れるのは想定内。後は父が残したあの子達に賭けるしかない。
ふと、ランサーの方を見る。戦の一つもしたことのない少女に対する目ではなく、戦うものへの目を私に向けていた。
何故そんな目を向けているのか気になったが今はあいつらを殲滅しなくちゃ。
「ランサー、正面の奴らを潰して来て!」
するとランサーは少し笑うと、真剣な顔になり正面玄関の方へと向かう。そしてたった一言言っていく。
「ランサー、
cccのbgmをよく聞いています。