史上最強の女子高生   作:光の甘酒

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4部構成になったこの回、今回で終わりです。
よろしくお願いいたします!!


第7話 また、始まる

「ちーちゃん、逃げるよ」

「・・・アリス」

 

 

震えるちーちゃんの手を取り、立ち上がらせる。

彼女は少し落ち着いたようでなんとか歩行できるレベルにはなっているようだ。

 

 

「ごめんね」

「どうして謝るの・・・?」

「どうしても。詳しいこと、ちゃんと話すから。ひとまずここから離脱しよう?」

「・・・わかったわ」

 

 

ちーちゃんはしっかりと立ち上がり、私と手をつなぐ。

 

 

「神谷!あとは任せるわよ!!」

「はい!若い衆を下に待機させてるんで、お嬢たちが出ると同時に突入するように指示してあります!!」

「OK、あとは頼むわ」

 

 

これで安心だ。柿本という組員は若頭直々に粛清され、あのメインマネージャーもタダでは済まないだろう。

これでちーちゃんを脅かすものはなくなる。安全に日の当たる場所を歩かせてあげられるんだ。

 

 

「逃がすかボケエエエエエ!」

「!?」

 

 

パァン!!!!

 

 

突然叫ぶ柿本。

鳴り響く破裂音。

熱くなる肩。

 

 

「テメエエエエエ柿本おおおおおお!」

「アリスううううううう!!!」

 

 

神谷は激昂し、柿本を一撃で沈める。

ちーちゃんは涙で顔をボロボロにして私の名前を叫ぶ。

 

 

「やってくれたなあ」

 

 

状況を確認する。

うん、左肩を撃たれたようだ。

熱さと共に自覚したことで痛みがどんどん増してくる。

幸い、出血は少ないようだがこりゃ撃たれた左肩は当分使えそうもないねえ・・・

 

 

「ちーちゃん、そんな顔しなさんな」

「でも・・・でも・・・!」

 

 

こういう時って撃たれてそのまま意識を失って目を覚まさなくて・・・

ってのがセオリーだとは思うんだけどね。

すまんな、あいにく私はそこまでヤワじゃなあない。肩を撃たれた程度で意識を失うこともなければ痛みでのたうち回ることもない。

アドレナリンを分泌させまくってある程度は痛みが軽減されている。

痛いっちゃあ痛いけどね。

 

 

「神谷、そっち片付いたならもう若い衆呼んでさ、そいつら回収させてよ」

「お嬢、大丈夫なんですか!?すんません、俺がついておきながら・・・」

「大丈夫とは言えないかもだけどお前が考えているほど酷くはないかな。ついでといっちゃなんだけど弾丸摘出してくれる病院紹介してくれる?」

 

 

所謂、闇医者というやつだ。

病院には暴力団関係者をお得意様にしている闇医者がいる。

志賀組程の巨大組織なら間違いなくいるだろうからそこで秘密裏に摘出をしてもらおうというハラである。

 

 

「わかりました、ウチの若いのにつれてかせます。そちらのご友人はどうなさいますか?」

「さすがにちーちゃんを若いのに送らせるのはまずよなあ。芸能人とヤクザって一番繋がってちゃいけないし。タクシー呼んであげてよ」

「わかりました。オイ!話は聞いてたな!?」

「ハイ!!」

 

 

若いのが元気よく返事をする。

 

 

「悪いですね、お手を煩わせてしまって」

「いえ!姐さんやカシラからVIPの方だと聞いておりますので!!」

「ありがとう」

 

 

若いのに微笑みかけると少し顔を赤くする。

あらやだ、可愛い子。

 

 

「じゃあちーちゃん、ごめんだけどここでいったんお別れ。詳しいことは落ち着いたら話すね。あと多分1週間くらい学校休むと思うけど心配しないでね」

 

 

私は返事を聞かずにそのまま病院へ向かった。なんとなくこれ以上話すのが気まずかったのだ。

別れ際、ちーちゃんはどうしたらいいかわからない困惑した表情だった。

 

 

 

 

志賀組に紹介してもらった病院で弾丸摘出をした私は数日入院することになった。

当たり所が良く神経も傷ついていない、さらに回復威力が高いようで医者には撃たれてこの軽傷なのは奇跡とまで言われた。

本当は入院は煩わしいと思ったが千耶と神谷が安静にしろと譲らなかったので諦めた。

ちなみに私が撃たれたことにより千耶ちゃんは神谷を処罰するつもりだったみたいだけど、参加したこと自体私の意思で自己責任だったわけで、それはやめてあげてと申し上げたところ、渋々承諾してくれた。

 

 

コンコン

 

 

病室のドアをノックする音が聞こえる。

 

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

 

やってきたのはちーちゃんだ。

今日この日、しっかりと話すということで来てもらったである。

 

 

「ごめんね、こんな格好で」

 

 

腕を吊っている私を見てちーちゃんは酷く痛ましい顔をする。

もうそんなに痛くないのに。

 

 

「まずはごめんなさい。あの場は慌ただしくてしっかり言えなかったから」

「いいのよ・・・アリスが無事なら。傷は・・・?撃たれたときは私が倒れそうだったわ」

「大丈夫よ、ありがとう」

 

 

微妙な空気が流れる中、私は息を吸い込み話を始める。

 

 

「あの日のこと。黒幕とメインマネージャーを吊り上げるためにちーちゃんを囮に使う形になった。でもそれしかなかった。言い訳になっちゃうけど」

 

 

実際、あの時メインマネージャーだけを叩いていたら黒幕の柿本はメインマネージャーを切り捨てて違う協力者を作っただけだろうし、そうなるとちーちゃんが危険に晒された状況を改善できず、手っ取り早く黒幕にたどり着くにはこれが最善だったと今でも言える。

 

 

「なんでアリスだったの・・・?」

「それはね・・・」

 

 

志賀組から協力の要請があったこと。本当は志賀組が別の潜入要員を用意するはずだったところを私が請け負うことを申し出たこと。

そのあたりを話すと理由が分かって少し納得したようだ。

 

 

「話はわかった。確かにそういう事情なら私を囮にするのが最善ね。アリスじゃなくてもそうなってたから結果は変わらないと思うわ。でも・・・私が聞きたいところの本題はそこじゃない。私が全く気付かないハイレベルな変装スキル、あの強さ。そして志賀組との関係。一体貴女は何者なの?もしかして志賀組の構成員とかなの?」

 

 

そらきた。本題だ。

 

 

「私は極道じゃない。名前が一緒なのにも理由がある。・・・これを友達に話すのは初めてだけどさ。多分すごく突拍子もなくて信じられない話だと思う。それでも最後まで聞いてくれるかな?」

「わかったわ」

 

 

私は一つずつ話す。私という存在が何なのか、数多の世界を渡り歩いた経験をそのまま持っていることや、志賀組の面々との関係。

 

 

「・・・というわけ」

「・・・・・」

 

 

ちーちゃんは黙って俯いてしまう。

 

 

「からかっているの・・・?」

「そりゃそういう反応になるよねえ普通」

 

 

まあある意味当然である。

 

 

「私は真面目に話に来ているのに、何よ。意味がわからない・・・わからないわ!」

「ごめんね。でもこれ以上言いようがない。私にとってそれは真実だから」

 

 

まっすぐ目を見据えてちーちゃんを見る。

それに対しちーちゃんも私の目をしっかりと見る。

そのまま数十秒、にらめっこ状態が続いたのだが、沈黙を破ったのはちーちゃんだった。

 

 

「ごめんなさい」

「え、なして謝るの」

「試させてもらったの。信じられない話だったから。でも貴女は翻すこともなく私の目をしっかりと見据えた。・・・・突拍子もなくて現実味のない話。でも私は信じる。貴女という人間性や現実に起きたことを加味すると信じるしかないわ」

「そっか。ありがとう」

 

 

ようやく、緊張していた雰囲気が和らいだ。

ああ、やっぱりちーちゃんはちーちゃんだなあ

 

 

「だからといって私たちの関係が変わるわけじゃない。私はいつも通りのただの志賀有栖。それ以上でもそれ以下でもないからね。それでいいかな?ちーちゃん」

「ええ。この身に起きたことはあまりに衝撃的だけど、もう大丈夫」

「よかった。あ、でもこれだけは約束する。私は絶対にちーちゃんの味方だからね。またちーちゃんが危ない目に遭ったり、悪い大人に利用されそうになった全力で助けるから」

「ありがとう。そういう状況が来ないことを願うわ」

「あはは、確かに!」

 

 

その後、私はしばらくちーちゃんと久方振りの雑談を楽しんだ。

 

 

「学校への復帰はいつから?」

「来週明けには。ほんとは今すぐにでも退院したいくらいなんだけど」

「やたらタフね・・・じゃあ、私は帰るわね」

「うん。また学校で」

 

 

そういってちーちゃんが退室した。

ふ~・・・なんとかなった。秘密を知る人が増えてしまったけどそれがちーちゃんでよかったのかもしれない。

 

 

「おーい、神谷。盗み聞きはよくないぞ~」

 

 

実はさっきから病室の外に暑苦しい男の気配を感じていたのでそれに向かって声をかける。

 

 

「うっうっうっ・・・女の子の友情っていいですね・・・お嬢もよかったですねえ・・・ううううう」

「あっつくるしいわ!でもま、今回は色々ありがと。おかげで何とかなったわ」

「なにをおっしゃいますか、お嬢にケガまでさせちゃって。しかも姐さんに恩赦まで・・・」

「それは私の自己責任だから。で、その後は?」

「柿本は粛清、メインマネージャーは永久契約でゲイ専門の風呂に沈めてやりました。奴らが持っていたAV会社も潰してルートを完全に断ち切りました」

「えげつなっ!まあでもそれくらい当然か~」

 

 

結果良し。

というわけで今回の騒動はこれにて落着。

普通に過ごすつもりがやれ芸能界の闇だのやれ極道だのスケールがどんどんでかくなちゃった。

 

 

「おはよう、アリスちゃん。一週間も休んで・・・ってその腕どうしちゃったの!?」

「おはよう、あやちゃん。いやー階段から落ちちゃって。受け身とたっらこのざまよ」

「おはよう、アリスちゃ・・・どうしたのそれ!?」

「おはよう、かのちゃん。いやー階段(以下略)」

 

 

退院し学校に復帰した。声をかけてくるみんなは腕を吊っているのに驚いているようだ。

 

 

「おはよう、アリス」

「おはよう、ちーちゃん」

 

 

笑顔のちーちゃん。

それは曇りがなくいつも通りのちーちゃん。

この笑顔を守れただけでも、よかったと思う。

 

 

「教室まで一緒にいきましょう。カバンを持つわ」

「うん、ありがと」

 

 

さあ、また新しい日常が始まる。いつも変わらない日常が。

でも私は気づいてしまった。多分私は平穏に過ごすためにこの世界に来たのではなく、友達に降りかかる危険から友達を守るために来たんだなって。

それでも私はこの世界が好きだ。というわけでいつもの、やっておこう。

 

おはよう、私の愛す世界よ。

 

 

 




日常回にするといっておきながらクッソ黒い話になったり、2話で終わらせるといっておきながら4分割したり大嘘つきまくった今回、ようやく終わりです。
気付いている方も多いかと思いますが、千聖は有咲と同じく特別な立場が与えられたヒロインの一人でした。
今後どのキャラが抜擢されるかはどうぞお楽しみに。
引き続きよろしくお願いいたします。
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