初恋というのは、人それぞれ違うもので。
例えばそれは幼馴染であったり、同じクラスの子だったり。
長い人生の中でたくさんの人を好きになるけど、
その経験は中々消えないもの。
それは高校1年生になった俺、
俺の実家は遠い田舎で、都市部から車で三時間ほどかかる山間の集落のような場所だ。田舎とは言うが、山の麓には学校もあり(小・中含めて生徒数30人弱くらいだけど)、寂れてはいるが小さな商店街のようなものもある。わざわざ都市部に出なくても、子供が遊ぶにはまあ事足りるような場所だった。
俺の家は、祖父が代々の村長のようなことをしていて、そこそこのお屋敷だった。村の中でも高台にあり、玄関を開ければ目の前にはまるで緑の絨毯のような茶畑や田畑が広がっていた。正直家から下の友達の家に行くときなどは面倒くさかったが、景色はとても好きだった。
家の隣には少し大きな神社があり、夏休みに友達と遊ぶ時にはよくそこで駆け回ったりしていた。
小学校5年生の夏休み、いつものように友達とかくれんぼしていた俺は、負けず嫌いな性格もあり、入ってはいけないと厳しく言いつけられていた森に入ってしまい、案の定迷子になった。同じところをぐるぐると回っているような感覚で、寂しいやら怖いやらで無我夢中に歩き回った。
そうこうしているうちに日が落ち、真っ暗闇の中、やっと1つの明かりが見えた俺は、人がいると思い半泣きで一息に駆けた。
辿り着いたとき、希望は恐怖に一変した。およそこの世のものとは思えない異形たちが、息も絶え絶えの鹿の周りを囲っていたからだ。
この時咄嗟に口をふさいだのは、今でも良い判断だったと心の底から思う。
しかし当時はまだ10歳。おばけが怖い盛りもいいところだ。恐怖のあまり泣き出しそうになっていると、どこからともなく女の人の声が聞こえた。
〈泣いたらあかん。泣いたら奴らに憑かれるえ。〉
穏やかな、まるで木立の間を抜ける風のような声であったが、不思議と怖さもなくなり、落ち着いたのだ。あの異形達を前にして。
すると目の前で立ち尽くしていた異形たちが頭上を仰いだ。
そして次の瞬間、空からの一条の光が降り、異形たちは闇に溶ける影のように消えていった。
異形たちが消えたあと、気がついたら森の入り口に立っていた。目の前には神主さんのような灰色の装束を身に着けた人がいる。
装束と同じ灰色の髪を目元まで垂らしているせいで顔はわからないが、スッと通った鼻筋と薄い唇から、とても整った容姿をしているのが分かる。
その謎の人物は、状況が掴めず唖然とする俺を見てにやり、とイタズラっぽい笑みを見せ、
「よぉ泣かんかったなぁ。つよぉい
と、どこからか蒼くてキレイな石に紐を通した首飾りを出し、掛けてくれた。当然の如く動けなかった俺は、しかし、その髪の間から垣間見えたまるで月のような金色の瞳に、見入ってしまった。
…とまぁ長々と追想したがこれが始まり。この後はあまり思い出したくないが、知らぬ間に女性は消えていて、呆然と歩いていたら家に着いた。そこからはまぁ…うん…。
(っ`Д´)≡⊃)`Д゚);、;'.・”
親 俺
「初恋に形はあれど、人はいつか忘れはる。せやったら、骨の髄まで、うちで染めるだけやえ?」