聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜 作:クロウド、
「さて、と。服も買ったし今度はどこに行こうかしら?」
朝食を取ってしばらくして僕達はオラリオのメインストリートへと駆り出した。そこで、服屋により何故かテンションの上がったアリーゼさん達によるぷちファッションショーが行われ、巻き込まれた僕はなすすべもなくきせかえ人形にされ今は完全に疲れ切っている。
「でもまさか、アストレア様まで来るなんて……。」
「ふふふ、私も今日は暇だったしホームで留守番というのもね?」
それにしても、輝夜さんやリューさんは男物の着物だったり部屋着だったり普通のものを選んでくれたけど、アリーゼさんがスカートを持ってきたときは流石にギョッとしたな……おまけにアストレア様どこから持ってきてたのかウサミミカチューシャ持ってたし……。
「ベルにはきっと似合うと思うの」なんて言われて断ることができなかった僕の心中を誰か察してほしい……。
そう思っているとリューさんが僕に声をかけてきた。
「ベルはどこか行きたいところはありますか?」
「えっと、僕は「「「本屋」」」に……って!」
リューさんからの質問に僕と同じタイミングでアリーゼさんと輝夜さんが答えた。
「お前が言うことなど先刻承知だ」
「ベルは昔っから本の虫だったしね」
輝夜さんとアリーゼさんが言う通り、僕は昔から本が好きだった。最初は幼いときによくお爺ちゃんに読み聞かせてもらった英雄譚にしか興味がなかったけど今では本全般が好きだ。自分が知らない知識を与えてくれるある意味で未知の結晶であり先人たちが残した記録でもあるものだから。
そんなことを考えてオラリオのメインストリートを歩いていると……。
「おや?そこにいるのは我が愛しのベルきゅんではないか!?」
「げっ!」
この声、そしてこのフレーズは!?
僕はサッとアリーゼさんの背後に回り込みその後ろでガタガタと震えながら声をかけてきた神物を見る。
月桂樹の冠を被った金髪の男性。彼は興奮した様子で僕達のもとに駆け寄ってくる。そして、それを見た皆は「またか……」という表情をしている。
「あ、アポロン様……。」
「まさかこんなところで君に会えるとは!やはり私と君はなにか運命的な力で結ばれて「ないわよ、アポロン」……せめて最後まで言わせてくれないか、アストレア?」
アポロン様は相変わらず何処か型破りな愛情表現をしてくるが、その言葉をアストレア様が冷たい微笑みでピシャリと遮った。
「久しいな、スラッシュ」
「あっ、はい。一月ぶりですね、ヒュアキントスさん」
「元気そうね、【太陽の光寵童】」
「無論だ、【紅の正花】」
アポロン様の隣に控えている長身のイケメンさんがアリーゼさんの後ろに隠れた僕に挨拶をしてくれる。
ヒュアキントス・クリオさん。【アポロン・ファミリア】の団長で昔色々あって剣を交えた仲である。
色々というのは暗黒期が終わりに差し掛かり平和になり始めた頃、暗黒期ではそんな場合じゃなかったため抑え込まれていたアポロン様の悪癖がそれを機に暴走。
かなり強引かつ、こう言ってはなんだが姑息な手を用いて自分が気に入った人間を無理矢理自分のファミリアに引き抜くといった行為をしていたのだ。
まぁ、なんというか……僕もそのターゲットに入れられてしまい、【戦争遊戯】の果てに勝利をもぎ取って、それなりのペナルティをかした。
罰金や無理矢理眷属にした人達のの改宗の許可、及び、今後こういった強引な引き抜きはしない。もし上記の約束を破ったら天界に送還するという誓約だ。
ただ、僕への接触禁止とかはないので偶〜に、僕に話しかけに来る。そのたびに目が怖いので、ぶっちゃけ苦手な神様である。
その僕が数少ない苦手意識を持っている神様はアストレア様の冷たい視線に動じず話を続けた。
「全く、そう邪険にしてくれなくてもいいじゃないか?私とて反省したのだ、もうあんな真似はしないとね。なにより、あの戦いで私は学んだのさ」
「学んだ?」
「ああ、互いの【愛】を乗せた刃がぶつかりあったあの戦いは今でも忘れることができない!私はあの戦いを見て真の愛たるはなんなのかを悟ったのさ!」
「は、はぁ……。」
「アストレア、【紅の生花】、【大和竜胆】、【疾風】!ベルきゅんの愛は今は君たちのものだが、いつかが必ず私が振り向かせて見せる!行くぞ!ヒュアキントス!」
「はい、アポロン様。スラッシュ、いずれまた剣を交えさせてほしい」
「はい、勿論です」
興奮した様子で語るだけ語って嵐のように去っていったアポロン様とその後を追っていくヒュアキントスさん。なんというか目覚めた僕のお見舞いに来てくれたときと思ったけど……。
「なんか、面白い人達になりましたね」
「だな……。」
「ええ……。」
「まぁ、悪いことはしてないわけだし放っておいてもいいでしょう。ベルは災難だけどね」
「はい……。」
確かに昔のアポロン様はホントに気に入った人間を手に入れるためなら何でもしたし、ヒュアキントスさんもかなりプライドが高くて残虐な性格してたけど、アレからだいぶ変わったように感じる。
「でも、あんまりベルにちょっかいをかけるようなら、アルテミスでも呼びつけましょう」
「お願いします……。」
そんな話をしながら、僕達は当初の目的である本屋にやってきた。
だって相手にならないんだもの!