聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜   作:クロウド、

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まぁ、こんな感じかな……。


時計の針は壊れていた

「「あれ?」」

 

 僕達がお店に入ると見慣れた顔が四つそこにあった。

 

「アイズさん」「ベル」

 

 そこにいたのはアイズさんをはじめとする【ロキ・ファミリア】の女性陣、ティオナさん、ティオネさん、そしてウィリディスさんだった。

 

「あら、奇遇ね。貴方達も買い物?」

 

「うん、アイズの服選びのついでにね」

 

 アリーゼさんの質問に答えたティオナさんの言葉にふと、アイズさんの方を向く。確かに、昨日や一昨日来ていた戦闘用の軽装ではなく白い短衣にミニスカート、花をかたどった刺繍が施されていて着こなしているアイズさんがアイズさんだけに金髪相まっててともよく映えている。

 

「えっと……どうかな、ベル?」

 

「す、凄く綺麗だと思います……。」

 

「ッ……ありがとう、ベル」

 

「よかったわね、アイズ」

 

「ムムムムム……!」

 

 アイズさんの意外な質問に僕は戸惑いながらも率直な意見を返した。なんか、ティオネさんがアイズさんになにか耳打ちしてウィリディスさんが凄い目で僕を見てるんですが、これは如何に?

 

「ベェ〜ルゥ?相変わらず、アイズと仲がいいわねぇ?」

 

 はっ、殺気!?

 

 振り返るとそこにはいつかの冷たい目をしたアリーゼさんが……!?

 

 とりあえず、「帰ったら覚えときなさい」と言われた。僕……何されるんですか?

 

 どうか、帰る頃には忘れていてくださいと願いながらふと、一人だけ話に入らず本棚を見ていたティオナさんに視線を向けた。しばらく、本棚を見ていた彼女だったがやがて残念そうに声を漏らした。

 

「あぁ、やっぱりまだ新しいのはないのかぁ……。」

 

 ティオナさんは本棚に触れながらどうやら、お目当ての本が見つからなかったらしく若干肩を落とす。僕はティオナさんが口にした言葉に若干の違和感を感じ聞いていみることにした。

 

「やっぱりっていうのは?」

 

「うん、この本のシリーズ、何年か前から新しいのがでてなくてね……でも、感なんだけどこのシリーズはまだ終わってないような気がするんだ」

 

 そう言って、ティオナさんは本棚から一冊の本を取り出した。

 

 ん?

 

「その本って……。」

 

「あっ、ベル知ってる?アタシ、英雄譚が好きでねタイトルに惹かれて読んでみたらもうハマっちゃってハマっちゃって」

 

「【新英雄伝説空我】?どんな話なんですか?」

 

 その表紙を覗き込んだウィリディスさんがその内容について尋ねる。

 

「えっとねぇ、古代の戦士の力を受け継いだ戦士が人間を襲うグロンギって言う怪物と戦うんだけど、戦いだけじゃなくて人同士の掛け合いとか心情が凄い細かく書いてあっててね!最後の雪山での戦いはホントに感動したんだ!」

 

 興奮した様子でウィリディスさんに説明をするティオナさん。なんか、こうやって熱演されると()()()()()()()()()ものがある……。すると、そんな僕の心情を察したのかアリーゼさんが僕に変わっていってくれた。

 

「あぁ、それベルが書いた本よね?」

 

「「「え?」」」

 

 アリーゼさんの言葉にアイズさん以外の【ロキ・ファミリア】の人たちが僕の方を向く。

 

「暗黒期が終盤に差し掛かった頃、ベルが趣味で書いてたものをヘルメスが本にしてくれたのよ」

 

「じゃあ、ホントに君がこれを考えて書いたの!?凄いじゃん!!」

 

「当然よ!私の弟は凄いんだから!」

 

 アストレア様の説明にティオナさんは目をキラキラさせて、本を持ったまま僕に詰め寄ってくる。近い!近い!昨日も思ったけど、この人、他人との距離感が普通より近い!

 

 アリーゼさんも自分のことのように胸を張ってないで助けてよ!

 

 僕は出会ったばかりの頃の大秦寺師匠を真似て、掌で僕とティオナさんの顔の間を遮り壁を作る。僕が困ってると察してくれたのかティオネさんが「困ってるでしょ、離れなさい」と言って妹さんの服を掴んで引き剥がしてくれたのでようやく話ができる。

 

「いや、僕は夢で見たものを文字に起こしただけで……。僕が考えた内容ってわけじゃ」

 

「「「夢?」」」

 

 僕がそう答えると疑問符を再び浮かべる【ロキ・ファミリア】の皆さん。その中でウィリディスさんが一番早くに覚醒し、半信半疑の様子で僕に質問する。

 

「そ、それって、夢に見た内容だけで一冊の本を書いたってことですか?」

 

「一冊ではない、ベルが書いた本は確か十一冊あったはずだ」

 

「「「十一ぃ!?」」」

 

 三人が同時に驚愕の声を上げた……至近距離だったから思わず耳をふさいでしまった。

 

 なんか、店主のお爺さんも何事かと思ったらしいけど特に問題ないとわかると視線を本棚に戻した。他にお客さんがいなくてよかった〜。

 

「あっ、もしかして……!【金色龍のアギト】とか【鏡界世界の龍騎】とかも?」

 

「えっと……はい、僕が書きました」

 

「凄ぉい!あたし君が書いた本全部読んだよ!全部すっごい心に響いた!」

 

「そのシリーズなら私も読んだわよ、団長との話の種にするために」

 

「団長も読んでるんですか?」

 

「えぇ、前にお部屋に伺った時、団長の本棚にそのシリーズがきれいに並べられてたのよ。それで、読み始めてみたら意外に面白くて団長も詳しく読み込んでたから話が弾んでね!ありがとう、ベル。感謝するわ」

 

「あっ、えっと……どういたしまして?」

 

 ティオナさんからのストレートな称賛とティオネさんからのよくわからないお礼を受けて、さらに照れくさくなって顔を掌で造った壁で隠す。というか、フィンさんも読んでくれてたんだ。

 

「あれ?でも、作者のところ【カミヤマ】って書いてありますけど?」

 

「ペンネームです……本名だと恥ずかしいので。師匠の名前から取らせてもらいました」

 

「それにしても……ティオナさんやティオネさんだけじゃなく団長まで愛読してるなんて……私も読んでみようかな」

 

「レフィーヤ、ベルの本はおすすめ……私も、いつも読んでる」

 

「「「なっ!?」」」

 

 アイズさんが放った言葉に『新英雄伝説空我』の表紙を悩むように見ていたレフィーヤさんだけじゃなくてティオネさんとティオナさんまで驚愕の表情で固まった。

 

「あのダンジョンとジャが丸くんしか興味のないようなアイズが!?」

 

「勉強がだいっきらいなアイズが!?」

 

「愛読するような本!?」

 

「ティオネ、ティオナ、レフィーヤ……流石にひどい……。」

 

 同じファミリアの仲間に散々ないわれ用のアイズさん、無表情がデフォルメなのにそれでもわかるくらいズーンと落ち込んでいる。

 

 アレ、既視感があるような?あっ、今朝の僕か……。

 

 そんなどうでもいいことを考えていると、アイズさんが肩から下げていたポーチからところどころ薄汚れた一冊の本を取り出す。あっ、あの本って……。その本の表紙には一体の魔物と三体の竜を象った鎧を纏う二本の剣を持つ剣士の姿が描かれていた。

 

 そして、題名は―――『剣に生きる』。

 

「この本も、ベルからもらった」

 

「『剣に生きる』?私この本知らないんだけど」

 

「それは当然ですわ、その本はベルが一番最初に書いて神ヘルメスが勝手に本にしてベルに渡したものでこの世に一冊しかないものですから」

 

 輝夜さんの言葉を聞いて三人がアイズさんが持ってた本―――『剣に生きる』の表紙を見つめる。

 

「つまり、非売品ってことよね?」

 

「その本って、アイズさんがいつも持ってる本ですよね?ダンジョンにも持っていってましたし」

 

 あぁ、だからあんなにボロボロなんだ……いつも持ち歩いてくれてたんだ。レフィーヤさんの言った言葉に嬉しさとやっぱりちょっぴり照れくささがある。

 

「ねぇねぇ、どんな話なの?」

 

「えっと、ね……「わぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!」―――ベル?」

 

 ティオナさんの質問にアイズさんが答えようとした瞬間、僕が大声を出して割って入った。

 

「それは教えちゃ駄目です!アイズさん!!」

 

「どうして?だって、この本は……。」

 

「どうしてもです!話すんなら僕がいないところで話してください!!」

 

「わ、わかった……。」

 

 僕が鬼気迫る表情と声音で念を押すとアイズさんは渋々頷く。僕が恥ずかしさから息を切らしていると、後ろからアストレア様達がクスクスと笑う声が聞こえてきた。

 

「なに、笑ってんの?アリーゼさん達?」

 

「いや、だって……ねぇ?」

 

「ベル、すみません……!」

 

「ごめんなさい、ベル。でもこれは無理よ……!」

 

 僕はアリーゼさん達に恨みのこもった目線を向ける。アリーゼさんは今にもお腹を抱えて笑い出しそうだし、リューさんとアストレア様は必死に笑いをこらえようとしているけど、全然こらえきれてないし……!

 

「クスクス。まぁまぁ、そのへんでよろしいではないですか皆様?うちの兎様も幼き日に書いた()()()()()()にした小説を初対面同然の方たちにに読まれていい気分がしないのは当然でございます」

 

「輝夜さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?」

 

 僕が必死に隠そうとしていることをクスクスと笑いながらあっさり口にした極東美人のお姉さんの名前を絶叫にも似た声で叫んだ。

 

「え?この本、ベルがモデルなの?」

 

「そうよっ!その本はベルが夢で見た話を文字に起こしたんじゃなくて、自分の経験とかを師匠の小説家を真似て書いたものなのよねぇ、ベル?」

 

「いっそ、一思いに殺して……。」

 

 アリーゼさんがサラッと暴露した本の内容に僕は恥ずかしさが限界に達し、本棚の影で三角座りになっていた。店の迷惑?知ったことか……。正義の剣士でも逃げたいときはあるのだ。

 

「ベル、大丈夫……?」

 

「うぅ……ありがとうございます、アイズさん……。」

 

 三角座りで落ち込んでいた僕にアイズさんが心配そうな声と手を差し伸べてくれた。

 

 ―――でもこうなった原因、貴女なんですけどね……。

 

「アイズ、帰ったら読ませて!」

 

「うん、でも……ベルが……。」

 

「別に構いませんけど、内容に関する質問には一切答えませんので……僕の羞恥心的な問題で。聞くならフィンさんに聞いてください、あの人も読んだはずですから」

 

 僕が若干素っ気なく返すと、再びテンションが上がるティオナさん。これで次あったときに質問攻めになんぞなったときには流石の僕も羞恥心で爆発するかもしれない。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 本屋を離れた僕達はこれもなにかの縁ということで近くの喫茶店で談笑しながら昼食をとったあと、アイズさんのすすめでジャが丸くんを食べながら、街を散策していた。

 

 ―――やっぱり、五年も経っているのであったものがなくなっていたり、その逆でなくなっていたものが治ったり、新しいものがあったり……知っている街のはずなのに酷く別のどこかのように感じてしまう。

 

 今朝こんなことを考えていたら皆に見透かされてアリーゼさんにデコピンを喰らったなぁとふと思い、皆がいるはずの前を見た。

 

 ―――だが、そこには誰もいなかった。

 

「―――はぐれた、か」

 

 何故か僕の思考は驚くほどに澄んでいた。なに、焦る必要はないその気になればあの人達が行く場所に僕が先回りすれば良いんだから。アリーゼさんたちもその事は知っているはずだ。

 

 それに―――、

 

「次、あんな顔をしたら今度はデコピンじゃ済まないしね」

 

「あれ、ベル君?」

 

 そんなナイーブな事を考えていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 そこにいたのは鈍色の単発の女性、自分が言うのはおかしいけど五年前は若干の幼さを感じた顔立ちはお姉さんに似て凛々しい顔立ちになっていた。

 

「アーディさん」

 

「やっぱり、ベル君だ!どうしたの、こんなところで?」

 

 そこにいたのは僕達とは違う形でオラリオの治安を守る【ガネーシャ・ファミリア】のアーディ・ヴァルマさんだった。アーディさんは僕の顔を確認すると笑って駆け寄ってきた。

 

 僕は彼女に皆とはぐれてしまったことを話すと、アーディさんはクスクスと笑い出す。

 

「君の迷子癖は相変わらずだねぇ」

 

「ハハハ、フィルヴィスさんとかにも言われましたよ。最も、五年も前ですけどね」

 

「……どうしたの?」

 

「?」

 

()()()()()()()()()

 

 ―――僕って、そんなにわかりやすい顔してるかなぁ……。

 

 いや、これはアーディさんならではかな……。この人の前だと何故か【アストレア・ファミリア】の皆の前でも口に出せない弱音が何故か自然と口からこぼれてくるのが不思議だ。

 

「ここは僕が知ってるオラリオじゃないんですね……。」

 

「え?」

 

「僕にとってのオラリオは誰かの明日のためにひたすらに走っていたあの場所……もちろん、あの頃に戻りたいなんて思ったことはないですけど、ただ、なんていうんですかね……僕だけ時間が止まったような……そんな気がしてならないんですよ」

 

 近くの民家の壁に体を預けながらそんな言葉がポツポツとこぼれてくる。

 

 ―――昔、とある魔王様に僕に剣士以外の仮面の戦士の歴史を見せてもらったことがある。

 

 その中で彼自身の歴史で彼が言った言葉。

 

『時計の針はさ、未来にしか進まない。ぐるっと一周してもとに戻ったように見えても……未来に進んでるんだ』

 

 だが、もし時計の針が壊れてしまっていたら?それは果たして、本当に進んでいると言えるのだろか?

 

 ―――時計の針()は今、前に進めているだろうか?

 

 【アストレア・ファミリア】の皆も、アイズさんも確かに前に進んでいた、しかし、僕の時間は……きっとあの場所で止まってしまったんだろうな。

 

「よしっ、ベル君!あそこにいこう」

 

「あそこ?」

 

 何かを思いついたようにパンと手を叩いたアーディさんはオラリオを囲う高い外壁へと視線を向ける。そして、僕の顔を見て親指でそこを指差しながら一言こういった。

 

 

 

 

「もやもやするんならさ、ひとっ走り付きってよ!」

 

 

 




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