聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜   作:クロウド、

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【アストレア・ファミリア】

 ―――暗い空間で二人の剣士が己の剣をぶつけ合う。

 

「ふっ!ハァッ!!」

 

「ッ!」

 

 片や右肩に鉄仮面をかぶった竜の頭部を模した装飾が凝らされた鉄仮面の仮面の剣士【仮面ライダーカリバー ジャアクドラゴン】、片や五体の竜をかたどった鎧を纏った金と紫の剣士【仮面ライダーカリバー ジャオウドラゴン】。ただ、二人が使っている剣は同じ禍々しいオーラを放つ紫の剣だった。

 

「これでっ、決めるッ!!」

 

 カリバー・ジャアクドラゴンはベルトに装填されていた【ジャアクドラゴンワンダーライドブック】を引き抜くと、持っている剣【闇黒剣月闇】の速読機【ジャガンリーダー】に三回連続で接触させワンダーライドブックに記された物語を読み込ませる。

 

【必殺リード!】【必殺リード!】【必殺リード!】【ジャアクドラゴン!】

 

「はあぁあぁぁぁぁぁ!!!」

 

【月闇必殺撃!】【習得三閃!】

 

 紫の炎を纏う剣を振り下ろすと同時にトリガーを引くと、斬撃が竜の姿となって金色の剣士へと向かっていく。だが、カリバー・ジャオウドラゴンは避ける様子を見せず、バックルに装填されている巨大な本を閉じる。

 

【邪王必殺読破!】

 

 闇黒剣のグリップエンドでバックルの上部のスイッチを押し込むと再び本が展開され、本の中に収まっていた五体の竜の顔が展開されその瞳が怪しく光る。

 

【邪王必殺撃!】

 

「ハァッ!」

 

 ジャオウドラゴンが剣を振り下ろすと一体の紫の竜と四体の金色の竜、計五体の竜が渦を巻くように放たれる。五体の竜はジャアクドラゴンが放った竜を蹴散らし、彼に向かっていく。

 

「ぐぅぅ、うわァぁぁぁ!!!!」

 

 闇黒剣でガードしようとするが五体の竜による攻撃が直撃しジャアクドラゴンは吹き飛び、地面に転がる。そして、彼を纏っていた仮面と鎧が本のページのようにパラパラと舞い散ると白髪の少年の姿に戻る。

 

 すぐに闇黒剣を杖にして立ち上がろうとするがその少年の首元にジャオウドラゴンが持つ闇黒剣の鋒が突きつけられる。喉元に突きつけられた冷たい刃にゴクリと喉を鳴らすがその剣はすぐに降ろされる。

 

 ジャオウドラゴンがベルトの本を閉じて引き抜くと、彼の鎧もページが舞い散るように崩れ黒髪の青年へと姿が戻る。そして、剣の代わりに手を差し出す。少年がその手を掴むと引き上げて立ち上がらせる。

 

「やっぱり、まだ師匠には勝てませんか」

 

「いや、お前はもう十分に強い。俺もその年でそこまでは戦えなかった」

 

 そう言って弟子である少年『ベル・クラネル』にいうのは彼の師匠の一人闇の聖剣【闇黒剣月闇】の持ち主、『富加宮賢人』。この状態の賢人をベルは通称『闇賢人師匠』と呼んでいる。

 

「今のお前なら、現実でカリバーになっても問題ないだろう」

 

「………。」

 

 ベルはその言葉に今も握りしめる闇黒剣を見つめる。あのとき、自分が使ってしまった力。

 

 そのせいで多くの人を悲しませたことだけは罪の意識がある。そのベルの考えを悟った闇賢人はベルに注意を促す。

 

「あのときお前を止めなかった俺が言えることではないが、お前がいなくなって悲しむ人間がいることを忘れるなよ」

 

「師匠……。」

 

 闇賢人がそう言うと暗かった空間に白い光が差し込む、やがてその光が空間全体をおおうと視界を白く染めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ん、んうぅ……。」

 

 窓から差し込む光を受けて僕は瞼を開く。

 

 頭はボーッとするなんてことはなく、妙に意識ははっきりしている。師匠達との修行の後はいつも目が冴えている。ただ、体はそうも行かないので少し重い感覚が残る。

 

 っていうか、アレ?なんかおもすぎない……?

 

 そこでようやく気づいた、僕の布団が不自然に盛り上がっていることに。というか、腰回りに()()()しがみついてる感覚があるような。

 

 恐る恐る布団を捲し上げると、そこには見慣れた赤髪のお姉さんがいた……。

 

「んぅ……。」

 

 僕の思考がフリーズしていると、赤髪のお姉さん、僕たち【アストレア・ファミリア】の団長『アリーゼ・ローヴェル』さんが目を覚まし僕を見つめる。そして、にこやかに笑うと、

 

「おはよう、ベルぅ……」

 

 とりあえず、僕はいきなりの状況に脳が理解を追いつかず絶叫した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「全く、朝から何をしているのですかアリーゼ!」

 

「だってぇ、久しぶりにベルと寝たかったんだもの!ベルが可愛いのが行けないのよ!私は悪くないわ!」

 

「何という責任転嫁だ……。」

 

 場面は変わって朝食の席。あの絶叫のあと、皆が僕の部屋に雪崩込んできて、寝間着がはだけているアリーゼさんを見てなんとも言えない雰囲気になった。ついでに『普通悲鳴あげるの逆じゃない?』とか聞こえたような気がするけど、きっと気のせいだ、うん。

 

 そして現在、絶賛説教を受けながら全く反省していないアリーゼさんの無茶苦茶な言い分に金髪のエルフのお姉さん、『リュー・リオン』さんが呆れたように疲れたように額を抑えた。いいぞ、もっと言ってやってリューさん!

 

「まぁまぁ、いいではないですか。六歳の頃から一緒にいるのです、入浴すら一緒にしたというのに今更なにが問題だというのですか?」

 

「輝夜、そういう問題ではない!」

 

「あらあら、まさか今更になってこの兎様を()として認識されたのですか?相変わらず、脳内がロマンチックですね生娘妖精様は」

 

「輝夜、貴様ぁ!」

 

 話に割って入ってきた黒髪の極東美人、【アストレア・ファミリア】副団長のちょっぴり意地悪なお姉さん『ゴジョウノ・輝夜』さんがいつもの調子でリューさんを挑発する。

 

 いけない、このままでは僕も不利になってしまう。そう思い至りリューさんに加勢仕様と口を挟む。

 

「そうですよ、昔ならともかく僕だってもう13歳なんですし……。」

 

「ほほう?十三歳になった?では、五年間貴方様は何をしていましたか?」

 

「えっ……それはその……。」

 

「五年間眠りこけていただけのくせして大人ぶるでないわ!そもそも十三歳も世間的に見たら立派な子供だぶわぁかめ!!」

 

「うっ、うぅ……アストレア様ぁ……!」

 

 僕は輝夜さん口撃に耐えきれず僕達の綺麗な胡桃色の紙の女神様『アストレア』様に助けを求める情けない声を出してしまう。アストレア様はほほえみながら輝夜さんに顔を向ける。

 

「輝夜。あまりリューとベルをいじめないで上げなさい」

 

「ふぅ……わかりました、アストレア様」

 

 さすがの輝夜さんもアストレア様に窘められては何も言えない。

 

「ところでベル、もう体は大丈夫なの?」

 

「はい、昨日ダンジョンに潜ってきましたけど少し体力が落ちてる以外はもう問題ないです。多分、ユーリのお陰だと思いますけど」

 

「あ〜、あいつの能力ってマジでメチャクチャだもんな」

 

「お陰で遠征は助かってるけどな」

 

 今この場にはいないもうひとりの仲間、僕らのもうひとりの仲間であり僕の師匠の一人でもある人物?のことを思い出す桃髪の小人族の『ライラ』さんと狼人の『ネーゼ』さん。

 

 二人の言う通り彼の能力はホントにメチャクチャである。記憶消したり、姿変えたり、おまけに傷を治せるとかポーションの意味がなくなるよ。

 

「それで?そのユーリはまだ帰ってないの?」

 

「はい、多分帰り道でなにか気になることがあって寄り道してるんじゃないかな?」

 

「あの好奇心旺盛な千歳児め……。」

 

 リューさんのお説教から脱出したアリーゼさんの言葉に答えると、輝夜さんは呆れたように額を抑えた。ユーリには今、アストレア様の使いで僕が生まれ育った村に行ってもらっている。()()()()()()()()を僕の育ての親に報告に行ってもらっている。

 

「まぁ、でも、怪物祭までには帰ってくるんですよね?」

 

「そうね、それまでには帰ってくるように言ってあるわ」

 

「ベルは巡回に参加するの?」

 

「そのつもりだよ」

 

 怪物祭というのは【ガネーシャ・ファミリア】が開催する、ダンジョンから連れてきたモンスターを調教して見世物にすると言ったものだ。その巡回も【アストレア・ファミリア】の仕事に含まれている。

 

「久しぶりのお祭りなんだから、ベルは普通に楽しんでもいいのよ?」

 

「でも、僕だって【アストレア・ファミリア】だし、ちゃんと仕事もしないと」

 

 僕がそう言うと、アリーゼさんや輝夜さんが微笑ましいものを見るように笑みを浮かべ、輝夜さんが僕の頭をなでてくる。

 

「相変わらず変なところで真面目だな、お前は。生真面目妖精の爪の垢でも飲んだか?」

 

「それは誰のことを言っているんだ、輝夜?」

 

「あら、わかりませんか?」

 

「はいはい、喧嘩はそこまでよ。それで、ベルは今日もダンジョンに?」

 

「はい、そろそろ剣だけじゃなくて()も使って戦いたいし」

 

 僕がそう言うと皆の表情に影が差す。それは当然といえば当然な反応だ、僕が()()()()になった原因はその本にもあるのだから。

 

「そう……でもあまり無茶しちゃ駄目よ?あの剣を使ったりしなければ問題ないわ」

 

「……はい、わかってます」

 

 アストレア様の注意に俯いて答える。そして、夢の中で闇賢人師匠に言われたことを思い出す。

 

 あの言葉はきっと、賢人師匠だから言えたことだろう。僕自身、もうあんな事が起きないように剣士としての腕は磨き続けてきた。だから、もうあんな事にならない。絶対に。

 

 ―――そう心に誓い僕達は朝食を終えた。




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