聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜   作:クロウド、

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早く剣使わせてぇ……!


豊穣の女主人

 ―――【ロキ・ファミリア】との約束の日。僕は久しぶりに歩くメインストリートを懐かしげに見ながら、2階建ての石造りの立派な酒場、【豊穣の女主人】にやってきた。

 

 五年前にまだ開いたばかりのこの店には何度か来たことがあるけど、相変わらず立派なお店だなぁと思いながら、アストレア様、アリーゼさん、輝夜さん、リューさん、僕の五人は店の扉を押して中にはいる。

 

「ベルさん、来てくれたんですね!」

 

「シルさん、こんばんわ!今日はごちそうになります!」

 

 店に入った僕に鈍銀色の髪の女性『シル・フローヴァ』さんが笑顔で出迎えてくれる。彼女と出会ったのは五年前にここに来たときだけど、五年の間にすっかり大人っぽくなっていた。僕が昏睡状態になってからも何度も見舞いに来てくれたらしいし、目を覚ました僕を見てアリーゼさんと同じくらい泣いてくれた人だ。

 

「ご予約のお客様、ご来店で〜す!」

 

 僕達五人は予約して開けてもらっていた一つのテーブルを囲む。

 

 店の中を見回すがやはり【ロキ・ファミリア】の人たちは来ていないらしい。何故、僕達が【ロキ・ファミリア】より先に来たのかというと、まぁ、なんというかロキ様とアリーゼさんの悪戯みたいなものらしい。

 

 どうも向こうで僕が目覚めたことを知っているのは主神であるロキ様と向こうの団長とアイズさんだけらしい。ロキ様がこの場で僕が目覚めたことを発表して僕のことを知っている人達を驚かせたいと言い出してそれにアリーゼさんが悪乗りしたという感じだ。

 

 アストレア様とリューさんは完全に呆れ果てていたけど、輝夜さんは意外と乗り気だった。

 

 とりあえず、【ロキ・ファミリア】の人が来る前に食べすぎるのもあまりよくないし、とりあえず軽めのものを食べておこうとスープとかパンの軽食を頼んでおく。

 

「それで、ベル?本はちゃんと使えたの?」

 

「はい、もう三冊まで問題なく使えました」

 

「もう三冊まで使ったのですか?」

 

「うん、一冊でも十分強いけど遠征に行くなら二冊以上は使えないと」

 

「確かに一冊と二冊の差はかなり大きいからね〜。」

 

「でもやっぱり、体が少しなまってる気がするんだよね」

 

「ベルの目標は遠征までに体の感覚を戻すことだな」

 

 食事をしながら、体の調子について尋ねてくる皆。僕自身体の調子は驚くほどに問題ないけど絶好調とまでは行かない。次の遠征までにはなんとしても体の調子をもとに戻さないとなぁ。

 

 筋トレとかして筋肉量を増やしたほうが良いかな。

 

「ご予約のお客様ごらいてんにゃー!」

 

 そう考えていると見覚えのある猫耳の猫人が店中に広がる声で叫ぶ。

 

 どうやらついに【ロキ・ファミリア】がやってきたようだ、赤髪の女性主神である女神『ロキ』様を筆頭に団長であり【勇者】の二つ名を持つ金髪の小人族の男性『フィン・ディムナ』さん、副団長で確か王族のエルフの翡翠色の髪の女性【九魔姫】の二つ名を持つ『リヴェリア・リヨス・アールヴ』さん、【重傑】の二つ名を持つ屈強なドワーフの男性『ガレス・ランドロック』さん。

 

 そして、この間ダンジョンで再会した【剣姫】の二つ名を持つ『アイズ・ヴァレンシュタイン』さん。

 

 三人はあまり変わらないけど、アイズさんはやっぱり変わったな……。なんというかカッコよくなったというか綺麗になったと言うか……。

 

 そう思っていると両脇から僕の頬をむにっと掴まれた。

 

「いひゃい、いひゃいよ……あひーれひゃん。はふやひゃん」

 

「いつまでも見惚れてるんじゃないこの阿呆が」

 

「そうそう、こっちを見ていなさい」

 

 パチンッと同時に僕の頬を引っ張っていた手が離れ同時にゴムみたいに頬が戻りちょっと赤くなる。なんかちょっと理不尽じゃない?

 

 というか、そろそろ合流したほうが良いんじゃないかとアストレア様を見ると、アストレア様はふぅとなんか疲れたふうにため息をはくと【ロキ・ファミリア】の方を指差す、すると、ロキ様がこちらを見てしーっと口元に手を当てた。

 

 どうやらまだ黙っていてくれってことらしい。

 

 

 

「よっしゃぁ、ダンジョン遠征みんなご苦労さん!今日は宴や!飲めぇ!!」

 

 ロキ様の音頭で同時に『ガチン』というグラスを合わせる音とともに宴が始まる。

 

 灰色髪の狼人の方を始め、はじめて見る人も何人もいて僕はその姿に時間の流れを感じて少し寂しく感じてしまう。そんな事を考えていると、例の狼人の方がアイズさんに詰め寄る。

 

「おいっ!アイズ!そろそろ話せよ!!」

 

「ベートさん?なにをですか……?」

 

「とぼけんなって!遠征から帰る途中で何匹か逃げ出したミノタウロス!最後の一匹を追いかけてご改装まで戻ったとき、俺が追いついたときにお前が抱きついてた白髪のガキのことだよッ!」

 

『『『!!!?』』』

 

 あっ、やばい……。

 

 灰色髪の狼人の方が【ロキ・ファミリア】の団員だけでなく他の客にも聞こえるように叫んだ。全員がギョッとして、一気にアイズさんに視線を転じる。『あの【剣姫】が男に抱きついた!?』『え?アイズ、マジで!?』『うううううううう、嘘ですよね、嘘だって言ってくださいよアイズさん!』とか、あの一角が完全にカオスな状態になってしまっている。特に山吹色の髪のエルフさんが酷くうろたえている。

 

 だけど、僕は今それどころではない。

 

「ベル、どういうことかしら?」

 

「ベル、どういうこと?」

 

「ベル、どういうことだ?」

 

「ベル、どういうことでしょうか?」

 

 上からアストレア様、アリーゼさん、輝夜さん、リューさんが底冷えするような低い声で矢継ぎ早に僕を質問攻めする。まるで凍りつくような冷たい視線で僕を見つめる四対の瞳。

 

 というか、あの人白髪の子供って言っただけなのになんで速攻で僕を睨むんだ?

 

「【剣姫】が抱きつくような白髪の小僧などお前しかいないからだろうが」

 

「当たり前のように考えを見抜かないでよぉ!」

 

「ダンジョンで逢引きとはウチの兎様は思っていた以上に元気なようですね」

 

「ただの偶然だって!!」

 

 サラッと僕の頭の中を覗き込んだような回答をする輝夜さんに泣きたくなる思いで抗議する。すると、いきなりアリーゼさんが体をこちらに向け両手を広げる。僕だけじゃなくてアストレア様達まで、何してるんだろうって思っていると、

 

「さぁ、ベル。誰かに抱きつきたいなら私の胸に飛び込んできなさいッ!」

 

「もう意味分かんないよぉ!というか、僕の方から抱きついたわけじゃないし!」

 

「抱き合いはしたのね?」

 

「……あ」

 

 まさかの誘導尋問に僕がポロリとこぼした言葉にアストレア様達がはぁと額を抑える。なんだろう、物凄く呆れられているような気がする。

 

 

 

 

 

 

「「………ッ」」

 

「団長、どうかされましたか?」

 

「おい、アイズ。まさかその白髪の子供というのは……!」

 

「ねぇねぇ、アイズ。その子ってどんな子〜?」

 

「アイズさん答えてください!一体どこの馬の骨ですか!?今すぐ、消し飛ばして……!」

 

 一方、【ロキ・ファミリア】側ではことの事情を知っていて笑いを必死に堪えるフィンさんとロキ様。その相手が僕だと察してアイズさんに確認しようとするリヴェリアさん。そして、僕について好奇心で聞いているアマゾネスの姉妹の方の一人と、さっきから異常に狼狽えてなにか物騒なことを言っている山吹髪のエルフさん。

 

 流石にそろそろ出ていかないと収集つかないけど、一体どのタイミングででていったら良いんだろうとアストレア様達に視線を向けると、「自分たちもわからない」と言いたげに首を横に振った。

 

 えぇ、どうすればいいのこの状況……。どうしたものかと思っていると、ロキ様が場を収集しよとしたのか笑いを噛み殺して狼人の方に声をかける。

 

 

 

「なぁ、ベート。その白髪の子って、ひょっとしてあのこの子とか?」

 

 

 

 そう言って僕達が座っているテーブルの方を指差すロキ様。狼人の方を筆頭に一斉に僕らに、いや、『白髪の子供』である僕に視線が集中する。

 

「て、テメェッ!」

 

「あっ、ベル……。」

 

「ど、どうも……お久しぶりです……。」

 

 僕に集中する無数の視線に僕はそんな言葉しか出すことができなかった。




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