聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜   作:クロウド、

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吹き荒れる暴風、斬り裂く雷鳴

 酒場での紹介から一夜明け、ベルは今【ロキ・ファミリア】のホーム【黄昏の館】にある訓練場で自分の体をほぐすために準備運動をしていた。

 

 昨日のフィンの提案によりベルの実力を証明するためにアイズとの模擬戦が行われることになった。【ロキ・ファミリア】側は殆どの団員が揃っているが、【アストレア・ファミリア】は巡回などの仕事や他にも仕事があるため偶然にも昨日のメンバーと同じだ。

 

 ベルは訓練場の中心で対戦相手であるアイズの準備ができるのを待つ。その彼女も冒険者としての装備である鎧を纏い剣を腰に携える。

 

「レフィーヤ、これ持っててくれる?」

 

「あっ、はい!」

 

 そう言って山吹色の髪のエルフの少女、神々より【千の妖精】の二つ名を与えられた魔力バカ妖精レフィーヤ・ウィリディスは憧れの先輩であるアイズからの預かりものであるボロボロの本を胸の前で抱きしめてアイズを見送る。

 

「ベル、準備できた、よ」

 

「わかりました・【我が手に来たれ―――】」

 

 ベルはアイズの言葉を受けると詠唱とともに右手を前に突き出す。すると、彼の手に雷を纏った黄色いエンブレムの剣が、腰には三つのスロットのようなものがあるバックルが現れる。

 

【雷鳴剣黄雷】

 

「何あれ!?剣がいきなり出てきたけど!」

 

「ベルの魔法だだ、ああやって自身の剣を召喚するものらしい」

 

 リヴェリアの説明に団員達はへぇ〜と声を漏らす。

 

(懐かしいな、この感覚……。)

 

 そんな中、ベルは5年ぶりに彼女と対峙したときの独特の感覚を噛みしめるように目を閉じる。

 

 師匠達との修練とは違う、アリーゼ達ファミリアの仲間と剣を交えるときに感じるのと近い感情。自分でも上手く説明できない感情にはにかみながら、ベルはその紅眼の瞳を開く。

 

「アリーゼ」

 

「ええ、スイッチ入ったわね」

 

「全く、あいつは剣を握ると顔つきが変わるな」

 

「あっ、やばい……ちょっと濡れたかも」

 

「「「え?」」」

 

 彼が瞳を開くのと同時にベルが纏っていた空気が変わったのをアリーゼと輝夜、そしてリューはいち早く感じた。何か、アリーゼがやばいことを言ったような気がするがベルの耳には届いていない。………それで良かったかもしれない。

 

 今の彼には先程までの柔らかい空気はなくまんまるだった瞳は敵を捉えるために細められ、スキの無い佇まいで全身からプレッシャーを放っている。

 

 そして、そのプレッシャーは勿論【ロキ・ファミリア】の人間達も感じた。

 

「相変わらず、普段と雰囲気がまるで違うね」

 

「ああ、今のアイツは冒険者である前に一人の剣士ということなのだろう」

 

「5年も経ったせいか、昔より佇まいが様になっとるのう」

 

 その姿を知るものは5年前よりもさらに精錬された剣士としての姿に息を呑む。

 

「まるで昨日と別人ね」

 

「うん、なんか肌がピリピリするような気がする……。」

 

「あれが本当に昨日の人族なんでしょうか?」

 

「………………。」

 

 そして、この場で初めて『剣士としての彼』を見たものは昨日の酒場で朗らかに話していた人物と同一人物なのかと疑いたくなる思いだった。

 

 ベル・クラネルは『普段の自分』と『剣士としての自分』との反復が酷く大きい少年だ。それはひとえにそれだけ彼が剣士としての誇りを持っていることにほかならない。

 

「始めましょうか。アイズさん」

 

「……うん!」

 

 その言葉でベルは【雷鳴剣黄雷】を構え、アイズは愛剣【デスペレード】を構える。

 

「それでは双方、準備ができたようなので始めよう」

 

 そう言っていい審判の役目を担っているフィンが前に出て、右手を上げる。そして、掛け声とともにその手を振り下ろす。

 

「それでは、はじめっ!!」

 

「「ッ!!」」

 

 フィンの合図と同時に二人は一斉に地面を蹴って接近し、剣をぶつけ合う。

 

 そこから始まるのは目まぐるしい攻防、アイズがベルのスキをついたかと思えばそれをかわしてベルが横薙ぎをはらい、それを受け止めたアイズが死角からの蹴りを見舞う。

 

 それらの攻防と言う名の駆け引きが既に十を超える数行われている。

 

「嘘……。」

 

「アイズと互角……?」

 

「というか、速すぎない?」

 

 その光景に驚愕するのは【ロキ・ファミリア】の面々。彼等はLv.5であるアイズにLv.4のベルに一矢報いる程度にしか考えていなかった。

 

 さらに言えばベルは一ヶ月前まで昏睡状態、その分のブランクがある分、ベルの方が圧倒的に不利で戦いになると思っていたもののほうが少ないのが実情だ。

 

 だが、二人の力は誰が見ても拮抗している。それは、彼らがざわめき出すのに十分すぎる理由だった。

 

 しかし、その拮抗もやがて徐々に崩れていく。

 

「ふんっ!」

 

「くっ……!」

 

「なっ!?」

 

「アイズさんが……押され始めた!?」

 

 拮抗していた戦いはベルの剣がアイズの剣を押し返し始めたのだ。これにさらにどよめきが起きる。本来、レベルとは荒くれ者の冒険者の間に存在する絶対的な力の値、レベルが高い者に低いものは絶対に勝てないというのが摂理と言ってもいい。

 

 だが、どうか?目の前の少年は、オラリオが誇る第一級冒険者にしてLv.5の【剣姫】を相手に互角以上の戦いを繰り広げているのだ。

 

「どういうこと、これ?ホントにあの子Lv.4なの?」

 

「……ベルの剣は重いのよ」

 

 疑問をこぼしたティオナに答えたのはベルの団長であるアリーゼだった。そして、その言葉を輝夜が次いで説明する。

 

「ベルの剣は重い。あいつの剣にはあいつが今まで培ってきたもの、背負ってきたものが全て乗っているからな」

 

「そっ、そんな精神論でレベルの差が埋まるんですかッ!?」

 

「精神論でもなんでもありませんよ、同胞の者」

 

「え?【疾風】さん?」

 

「事実彼の剣はそれを成している、それは確固たる事実だ」

 

(それにあの子が背負っているものはここにいるものが思っている以上に……。)

 

「ああ、僕も彼の剣を何度か受けたことがあるが……腕が痺れるほどの衝撃だったのを覚えているよ」

 

「そこまでなんですか、団長!?」

 

 フィンの言葉にティオネを始めとする幹部陣は驚愕する、まさか、団長であるフィンにまで一矢報いていたとは、と。

 

「だが、それはアイズも同じだ」

 

「くっ!」

 

「ぬぅ!」

 

 フィンが言うが早いか今度はアイズが攻撃に出た。先程のように容易く弾き返されることはなく確かにベルの雷鳴剣と互角に斬り結んでいる。

 

(あの頃よりもずっと重くて速いっ……!きっと僕が知らない五年え沢山の経験をしてきたんだろう。これが、今の【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタイン……!)

 

(やっぱり、ベルの剣は重い……!あの頃よりもさらに……!やっぱり、()()()でも修行を続けてたんだ……!)

 

 二人は斬り結びながら互いに互いのことを心の底から称賛する。

 

((だけど!!))

 

 互いの剣に一層強い力が込められ、反発したタイミングで距離を取る。

 

「僕は」「私は」

 

「「絶対に負けない!!」」

 

 もはや、二人はこれが模擬戦であることも周りのざわめきすらも忘れて目の前の剣士と五年間の空白を剣での対話により埋めていく。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】ーーー!」

 

 そして、解き放たれるのはアイズの魔法。風を全身に、剣に纏わせる付与魔法。これこそが、アイズの本来の戦闘形態。

 

 ここから放たれる剣戟は文字通り神速のものとなるだろう。故にこそ、ベルもまた()()()()()()する。

 

「僕の全身全霊を持って貴方を倒します!」

 

 ベルは雷鳴剣を腰のベルトに納刀すると、掌に乗るサイズの小さなを本を取り出す。金色のその本の表紙には金色のランプが描かれており、中からなにかの瞳が覗いていた。

 

【ランプドアランジーナ!】

 

【とある異国の地に古から伝わる不思議な力を持つランプがあった……】

 

 ベルが表紙である【ガードバインディング】を展開すると、その物語の概要【ライドスペル】が流れる。

 

「なに、あの本?」

 

「やはり、あれを使うんだね」

 

「団長は知っているんですか?」

 

「まぁ、見てなよ。それに詳しく知りたいなら、僕からより本人から聞くといい。彼なら教えてくれるさ」

 

 剣を納刀したベルに疑問符が湧くギャラリーだったが、フィンの一言で静まり返る。

 

 そして、それを無視したベルはその本【ランプドアランジーナワンダーライドブック】をベルトの一番左にある窪み【レフトシェルフ】に装填する。

 

 何処か刺々しい男がベルトから鳴ると、空から彼の背後に巨大なライドブックが飛来する。

 

「な、なんだあれ!?」

 

「さっきの本がでかくなって降ってきやがった!」

 

 さらにざわめきが多くなるギャラリーを無視してベルは納刀した【雷鳴剣黄雷】を引き抜く。

 

【黄雷抜刀!】

 

 剣が引き抜かれたと同時に背後のワンダーライドブックも勢いよく開き金色の装甲を纏った剣士の腕が描かれたページが展開されると、本の中からランプの魔神が飛び出してきた。

 

 ベルは引き抜いた剣顔の横に構えて手首で一回回すと顔の前に剣を構える。

 

「変身!」

 

【ランプドアランジーナ!】

 

【黄雷一冊!ランプの精と雷鳴剣黄雷が交わるとき稲妻の剣が光り輝く!】

 

 腰を低くして雷鳴剣を下から上に振り上げると、ランプの魔神がベルを中心に雷とともに高速で旋回しそれが弾け飛ぶとそこには白と金色に近い黄色の装甲を左半身に纏った仮面の剣士が経っていた。

 

「変身したッ!?」

 

「凄い!カッコいい!!」

 

 各々がそれぞれの感想を述べるなか、ロキ、フィン、リヴェリア、ガレス、そして、【アストレア・ファミリア】の団員は懐かしそうに目を細めた。

 

「久しぶりに見るね、あの姿は」

 

「……アイズと戦うときはいつもこの姿だったな」

 

「懐かしいのう……あの二人が戦うたびに訓練場に嵐が来たかと思うたわい」

 

「当時のウチからしたら悪夢以外の何者でもなかったけどな……だけど、こうしてみるとアレもいい思い出と思えるから不思議や」

 

「ベルが変身するのホントに久しぶりに見たわね」

 

「そうですね、アストレア様。あの姿を見ると、本当に帰ってきてくれたんだって思います」

 

「あらあららしくないことをおっしゃいますね、団長様」

 

「輝夜こそ、普段しない眼をしているぞ」

 

「……黙っていろ、ムッツリ妖精め」

 

「なっ……!?」

 

 何やら関係ない言葉が聞こえた気がするがそこはおいておいて……アイズとベル、否、雷の剣士【仮面ライダーエスパーダ】は互いに少しずつ距離を詰めていく。

 

 そして、その距離が縮まると二人の姿がぶれ二人の剣士の剣がぶつかり合った。

 

 魔法の余波で雷と風が辺り一面に飛び交う。それらは、嵐のように周りの人間ににお構い無しで飛来する。

 

「うおっ!」

 

「危ねえ!」

 

「あばばばばば!!!」

 

「「「ラウルに飛来したぁ!?」」」

 

「あばばばばば!!なぜか懐かしいこの感覚ううううううう!!」

 

 ラウルに飛来した雷によって骨が見える姿に、観覧していた者達は慌てて安全な距離まで避難する。

 

「あの戦闘馬鹿二人は加減を知らんのか!?」

 

「この感じも相変わらずだねっ」

 

 リヴェリアは油断して吹き飛ばされた団員を尻目に怒鳴り声をあげ、フィンは何処か諦めた様子で二人を見る。

 

 二人の戦いは激しさを増すばかりである。二人の姿はもはや、しっかりと確認することはできず剣先はもはや速すぎて残像しか見えない。

 

「【吹き荒れよ(テンペスト)】!!」

 

「くっ……!ぐぅぅぅ!!」

 

 アイズはデスペレートで雷鳴剣を絡めると風を自発的に暴発させてゼロ距離から暴風を拭き散らす。エスパーダはそれによって吹き飛ばされて地面を転がる。

 

「僕も出し惜しみしている場合じゃなさそうですね……!」

 

【ニードルヘッジホッグ!】

 

【トライケルベロス!】

 

【この弱肉強食の大自然で幾千もの針を纏い生き抜く獣がいる……。】

 

【かつて冥界の入り口に三つの頭を持つ恐ろしき番犬がいた……。】

 

 雷鳴剣を再びベルトに納刀すると新たなライドブックをベルトの真ん中と右に差し込み雷鳴剣を抜刀する。

 

【黄雷抜刀!】

 

 再び背後にライドブックが現れ、それぞれ別別のエスパーダの姿が描かれておりそれらが重なり合い全身を金色の装甲で覆われた姿が完成する。

 

【ランプの魔神が真の力を発揮する!ゴールデンアランジーナ!】

 

 無数の棘と三つ首の番犬が飛び出すと、それらの力がエスパーダの新たな装甲を形成していく。

 

【黄雷三冊!稲妻の剣が光り輝き雷鳴が轟く!】

 

「また姿が変わった!?」

 

「あの馬鹿……!あの体でワンダーコンボを使うとは……!」

 

 新たな姿へと変わったエスパーダに驚きの声が上がるが、それよりも輝夜がその姿になったことに表情を歪める。

 

 アイズの暴風も、ベルの同じ色の本三冊による力『ワンダーコンボ』も負荷が大きく長くは続かない力だ。

 

 だからこそ、この勝負は長くは続かない。

 

「アイズさん、あの構えは!?」

 

「決着をつける気だな」

 

 アイズは姿勢を低くし、暴風を纏って必殺の刺突の構えを取る。

 

(ベルの目なら、あの刺突をギリギリで回避して勝つことは容易いだろう。だけど、彼はそうはしないんだろうね)

 

 フィンの考え通りエスパーダは回避の素振りを見せず三度、ベルトに雷鳴剣を納刀しグリップのトリガーを押す。

 

【必殺読破!】

 

【黄雷抜刀!】

 

 引き抜かれた雷鳴剣は凄まじい電撃を帯びていた。正しく、それを正面から突き抜けるつもりの構えだ。

 

 そして、二人の剣士は互いに地を踏みして、互いに今出せる最強の技を放つ!

 

「【リル・ラファーガ】!!」

 

【ケルベロス!ヘッジホッグ!アランジーナ!三冊斬り!】

 

「【トルエノ・デル・ソル】!!」

 

【サ、サ、サ、サンダー!】

 

 ニ色の閃光が駆け出し、それがぶつかりあった。

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