聖なる剣を束ねる英雄〜女神アストレアに誓う、僕は僕の【正義】を貫く!〜   作:クロウド、

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不死鳥の剣士と破滅の本での飛羽真言葉を参考にしました


己の正義

 ―――雷と風の刺突が交差すると、あたりに衝撃に待った砂埃で出来た粉塵が僕達の視界を塞いでいた。

 

 そして、粉塵が晴れると―――アイズさんの首元に剣を突きつけた僕の姿が顕になった。

 

「アイズさんッ!?」

 

 山吹色の髪の妖精さん、レフィーヤさんが叫ぶのと同時に空中からヒュンヒュンという音ともに何かが地面に刺さった。それはアイズさんの武器であるデスペレード、僕の雷鳴剣の刺突で空中に弾き飛ばされていたものが地面に落ちたのだ。

 

 僕は勝負が決まったことを確認し、雷鳴剣をソードライバーに納めワンダーライドブックを閉じた。すると、僕が変身していた、エスパーダの姿がパラパラと舞い散り元の姿に戻る。

 

「僕の勝ちです……アイズさん」

 

「うん……私の、負け……。」

 

 僕が自身の勝利を告げると、アイズさんは悔しさのような感情がこもってないはにかんだ笑みをこぼしてみせた。

 

「やっぱり、ベルは強い……。」

 

「アイズさんもすごく強かったです」

 

 お互いに手を差し出して、互いを称賛し合うように握手をする。最初は僕が勝つといつも不貞腐れて手を取ってくれなかったけど、だけど、何度か模擬戦をしてからこうして互いを称賛するのが僕達の間での決まりになっていた。

 

 アイズさんがデスペレードを取りに行く姿を見ていると、僕は急に足元がふらつき、地面に倒れそうになる。あっ、やばい。ワンダーコンボの負担が今になってどっと来た。

 

「あっ……。」

 

 僕はとっさに足に力を入れようとするがそれが間に合わず、地面に激突……する前にこちらへ走ってきていたリューさんに抱きとめられた。

 

「大丈夫ですか、ベル?」

 

「すみません、リューさん……。」

 

 リューさんは僕の腕を首の後に持っていき、僕の肩を支えて立たせてくれる。

 

 エルフの人って、多種族の人との接触を極端に嫌うって聞いてたけどリューさんはそんなことがないんだよな。アリーゼさんとかアストレア様が初めて見た時、凄い顔してたけど。

 

「ベル、大丈夫なの?」

 

「あらら、久しぶりの戦いで張り切っちゃったの?」

 

「馬鹿が。あの体でワンダーコンボなど使えば、そうなるに決まっているだろうが」

 

「かうやひゃん、いひゃい……。」

 

 アストレア様とアリーゼさんが心配そうに僕の顔を見てくれるけど、輝夜さんには僕の頬をむに〜っと引っ張ってお説教をされた。

 

 そこへ、剣を回収したアイズさんとヒュリテ姉妹、レフィーヤさんがやってくる。特にティオナさんは興奮した様子で僕に尋ねてくる。

 

「すごかったね、ベル!さっきの剣、後あの本なんなの?」

 

「あぁ、これのことですか?」

 

 僕はランプドアランジーナのワンダーライドブックを取り出して見せると、そうそうとうなずく。話しちゃっていいの?と、アリーゼさんとアストレア様に視線を向けるけど別に構わないって顔をしている。

 

「これはワンダーライドブックって言って、様々な力が秘められた本でこっちの【雷鳴剣黄雷】は聖剣と呼ばれる剣です」

 

「聖剣?魔剣じゃないんですか?」

 

「違いますよ、雷を放っても砕けてないでしょ?」

 

 この世界の魔剣は使用回数を超えると砕け散ってしまう使い捨てのものだ。だけど、聖剣が砕けることはありえない。人の手で作られたものもあるとはいえワンダーワールドの力を内包した剣だからだ。

 

「どっちも、この世界には本来ないものです」

 

「え?どういうこと?」

 

「僕のスキルはこことは別の世界からこの本と聖剣を召喚するっていうスキルなんです」

 

「「「別の世界?」」」

 

「すみません、これ以上はちょっと……。」

 

 そんなものがあるのだろうかと半信半疑の表情だが、これ以上の説明をするのは危険だ。これ以上話すとなると、どうやっても【全知全能の書】や【黙次録】に触れなきゃいけなくなるから。

 

「仕組みとしてはライドブックに込められた力を聖剣で開放することで変身して戦う、それが僕の戦い方なんです」

 

「ねぇねぇ、それって私にもできる?」

 

「試してみますか?」

 

「え?いいの!?」

 

 僕は雷鳴剣が収まった腰の【聖剣ソードライバー】とワンダーライドブックを興奮した様子のティオナさんに差し出す。ティオナさんはワクワクした様子で僕からそれを受け取ると僕さっきしたのを真似て腰のスロットにワンダーライドブックを装填して、剣を引き抜こうとする。

 

 だが、

 

「うわっ!」

 

 剣を握った瞬間、迸った電流にティオナさんは驚いて剣を離す。そして、その衝撃で腰から落ちてバックルから剣の状態になった雷鳴剣とワンダーライドブックが僕の手の中に独りでに戻ってくる。

 

「まぁ、僕以外が使うとこうなるわけです。どうやら、聖剣は僕にしか使えないようで」

 

「えぇ〜!」

 

「だからといって、僕が聖剣を使いこなせているかと言われればそうでもありませんしね」

 

「そうなの?」

 

「はい、今の僕じゃ精々五・六割しか力を引き出せませんから」

 

「あれで、五割って……。」

 

「謙遜、ってわけでもなさそうね……。」

 

 僕のこの言葉は謙遜でもなんでもない。師匠達の戦いを見たあとで自分のほうが上手く使えているなんて口が裂けても言えない。だからこそ、鍛錬を欠かすわけには行かないのである。

 

「聖剣は持ち主を選ぶことはあっても、持ち主に縋ることだけはない。その資格がないと判断されれば剣の側から持ち主を見限る。だから、剣に見合うように己を鍛える必要があるんです」

 

「まるで、生きてるみたいね。その剣」

 

 ティオネさんの言うことはある意味で的を射ていると思う。実際、飛羽真師匠は火炎剣に向こうから選ばれたし、大秦寺師匠は剣の声が聞こえると言っていた。なにより、まさしくそれを体現した存在が僕らの仲間にいるわけだし。

 

「さっき言った、ワンダーコンボというのは相性のいい聖剣で三冊の本を同時に使った状態のことです。互いの本の力を最大限発揮できますけど、その代わりに剣士の気力と体力をかなり消費する。今の僕じゃ、一日に一回使うのがやっとです」

 

「へぇ、だからそんなに体の負担が大きいのね」

 

「昔はもう少し使えたんですけど、やっぱり体力が落ちてるなぁ……。」

 

「悲観することはない、万全の状態じゃないのにLv.5の冒険者に勝てるのだから少しずつ取り戻していけばいい」

 

「そうそう、あれだけ戦えれば上出来よ」

 

「そのたびに倒れられたら溜まったものではないがな」

 

「うっ」

 

 僕ががっくりと肩を落としたけど、僕の肩を支えてくれるリューさんとアリーゼが慰めてくれるけど輝夜さんが相変わらず意地悪なことを言ってくるのでぐぅの音も出なくなる。

 

「ベル、大丈夫か?」

 

「あっ、リヴェリアさん……はい、ちょっと体に力が入らないだけです」

 

「改めて見せてもらったよ、剣士としての君の力を。腕は落ちていない、いや、昔よりも強くなっていたね」

 

「まっ、アイズたんが負けたのはムカつくけどな」

 

「これロキ、真剣勝負に茶々を入れるでない」

 

 僕の姿を称賛してくれるフィンさんと、アイズさんが負けて若干むくれているロキ様をたしなめるガレスさん。

 

「ねぇねぇ、ベル!今度は私と戦ってよ」

 

「バカティオナ、アンタ話聞いてなかったの?どうみても、今日はもう戦えないでしょ。というか、アンタの武器、この間の遠征で使えなくなって修理でしょう」

 

「えぇ〜〜!!」

 

「あはは……。」

 

 ティオナさんが興奮した様子で模擬戦を申し込むけど、見ての通り動けない僕を指差してティオネさんが注意した。なんとも言えない笑みがこぼれた。

 

「それじゃあ、ロキ。私達は帰るわ。ベルを早く休ませたいしね」

 

「大丈夫か?なんなら、うちで少し休むくらいなら構わんけど?」

 

「別に歩けないほどじゃないから大丈夫ですよ」

 

「そか。」

 

 ロキ様がそう納得するとアリーゼさんとフィンさんが団長同士でなにやら話し合っている。多分、次の遠征のことについて話しているのだろう。僕達は邪魔しないように黙っていると。

 

「そういや、ベル」

 

「なんですか、ロキ様?」

 

 ロキ様がまた、僕に問いかけてきた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ―――その質問に再び空気が変わったのを感じた。

 

 そういえば、五年前に一度ロキ様とあのにっくき黒い神様に聞かれたっけ……。僕はさして気にすることもなく笑顔でその質問に答えた。

 

「変わりませんよ、僕の『正義』は。絶対に」

 

「ねぇ、ロキ。どういう意味、それ?」

 

「あぁ、ティオナ達は知らんかったか。はっきりいって、ウチは最初はアストレアが好かんかった。すべての人間が公平になんてなるはずなんてないのに、正義なんちゅう無意味なもんを掲げるこいつがな」

 

 流石に主神を貶されてアリーゼさん達が視線を鋭くするけど、僕はリューさんの腕から抜け出しそれを腕で制する。

 

「ロキ、言葉がすぎるぞ」

 

「ええやろ、昔のことやし。その時コイツに聞いてな。そしたら、否が応でも認めなあかんくなった。ウチらの存在意義に関わるからな。折角や、もう一回聞かせてくれんか?ジブンの正義」

 

 そういって、目を見開いて僕に尋ねるロキ様。はっきりいって、こんなに人がいる中で話すのって結構恥ずかしい内容だから嫌なんだけどなぁ。でも断れる雰囲気ってわけでもなさそうだし。

 

 僕は意を決して、その問いに答えた。

 

「何も変わりませんよ、『世界を守ること』です」

 

 僕がそう答えると、皆が「はぁ?」という顔になる。それはもう、「何いってんだこいつ」みたいな眼してた。だから嫌なんだよ、初対面同然の人にこういう事言うの。

 

「それはまた……大それた……。」

 

「だけど、現実味がないわね」

 

「そうですかね、意外と簡単ですよ」

 

 なかなかに辛辣なことをいうヒュリテ姉妹の二人。だけど、僕は自分の考えを変えずに強い口調で話し始める。

 

「じゃあ、世界って何でできてると思います」

 

「なにって、それは……。大地とか、海とか、自然とか……ですか。」

 

 今度はレフィーヤさんが答えるけど、僕が求めるのはそういった根本的なものではない。

 

「僕は人だと思っています」

 

「「「人?」」」

 

「人は生きていく中で様々な苦難にぶつかります。それを乗り越えようとする足掻きがその人の物語となってそれが『歴史』となっていきそれが今の世界を造っています」

 

 僕の言葉に皆さんはただ耳を傾ける。

 

 かつて、師匠達が戦った【不死の剣士】は争いは決してなくならいといった。世界は悪と災いで出来ているとも。そんななかにきっと正義などないと思ったことだろう。だけど、師匠達はそれを乗り越えた。

 

「以前ロキ様は正義は無意味だと言いました。確かに、いつの時代も争いが耐えることはありません、だけど、それだけではないはずだ。その争いの中で人は多くのものを生み出してきた。それはきっと、人を救いたいという気持ち、人の善意や思いやりから生まれたものです。だから、たしかにそこに正義はある、そして、その正義は今も歴史となって確かに継承されている」

 

 僕はこのことを本に、剣に、そして師匠達から教わった。それはきっと、世界を超えても変わらない人類に共通する力なのだと思う。

 

 それらが無意味なら、神々が神の力を放棄してまで外界に来た意味もまた無意味になるはずだ。

 

「だから、僕の言う正義っていうのは……いずれ、歴史になる人々の物語を守り未来につなげること、ですかね?」

 

「―――そうか、まぁ、そういうことにしとくわ。まっ、次会うまで達者にしとけ」

 

「おい、ロキ。全く、自分で聞いておいて、すまんなベル」

 

「いえ、それでは僕達は帰ります」

 

「ああ、気をつけて」

 

「遠征についてはおいおい、使いを出すよ」

 

「わかったわ」

 

 僕が答え終わると、ロキ様はどこか満足したように頷いて踵を返してホームの建物の方に戻っていった。リヴェリアさんに謝罪を言われたがロキ様が満足してくれた答えかどうかは微妙なのでなんともいえない。最後に団長同士で二言、三言話すと今度こそ僕達は帰路についた。




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