オリオペ短編集   作:神仙神楽

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【コードネーム】スワラチカ
【性別】男
【戦闘経験】五年
【出身地】不明
【誕生日】4月15日
【種族】フェリーン
【身長】204cm
【鉱石病感染状況】
異例ながらも体表に源石結晶の分布を確認。メディカルチェックの結果、感染者に認定。
【物理強度】卓越
【戦場機動】優秀
【生理的耐性】欠落
【戦術立案】標準
【戦闘技術】卓越
【アーツ適正】欠落


勿忘草、二輪(ロスモンティス)

 移動都市「ロドス」の甲板からぼんやりと空を見る。視界に入るのは一日の終わりを告げる赤い陽。小さく風に吹かれ、鈴の音が耳元で聞こえた。

 ただ一つに限り並以上にこなせる事柄からエリートオペレーターとして任命された我に、平時の居場所は()()()()()。一日が始まれば四方の他移動都市連結路を見回り、一日が終われば甲板に準備された離れで過ごす―――そんな毎日を繰り返していた。

 

「…あぁ、今回は此処にいたんだ」

 

 首だけで彼女の方へ振り返る。

 戦闘時につけているユニットを外しているからか、さらに小柄に見える幼いフェリーンの少女ローズマリーが居た。

 

「どうした、ロスモンティス?」

 

「ケルシー先生が"定期診断だから離れに戻ってきてほしい"って、カーナ―――」

 

「スワラチカ、だ。少なくとも、職務中はコードネームで呼んでくれ」

 

 …そうだっけ?と透き通るような声で彼女が呟き、紙のこすれる音が微かに響く。とあるところでこすれる音が無くなり、その見開きを見た後に小さく「ごめん、忘れてた」と謝られた。

 

「まだ夜勤と変わっていない故、細かいかもしれないが…規則だしな」

 

「うん。…スワラチカ」

 

 首を傾げながらも、ローズマリーに話を促す。

 

「スワラチカは、離れに1人で暮らしてるけど…寂しく、無いの?」

 

「寂しくない、と言えば嘘になるが―――この体質では仕方ない。アーツのように"制御できる"代物でもない以上、入るわけにはいかないのは分かってる」

 

「…私が、離れに住むのは―――」

 

「冗談でも、それを言うな」

 

 彼女が頬を膨らませる。

 

 だが、こればかりは譲るわけにはいかない。彼女が皆を家族と思っている事は、エリートオペレーターとして互いに自己紹介をしたときに知っている。家族が同じ家で過ごすという考えから、我を離れから艦内の居住施設*1に移したいと考え付いたのは一度や二度ではなかった。

 それを断り続けたら、次は彼女自身が離れで生活すると提案することが多くなった。だが、我が物理的に艦内から引き離されている原因を考えると好ましくない。

 頬を膨らませていた彼女が、小さく息を吐いた後隣に座る。…しばらく夕日が沈むのを眺めていると、ローズマリーが来た方向から潜めた足音が聞こえた。

 

「…見回り、お疲れ」

 

「夜勤はグレースロートか」

 

 リーベリの少女―――が頷く。ケテルと関わる前はロドスから逃げるように遠方の任務を好んで受けていたが、今ではロドスで過ごす時間が増えている。ケテルが巧くやっているのだろう。

 

「では、任せた」

 

「じゃ、朝になったらよろしく」

 

「分かっている」

 

 短くやり取りをし、離れへと向かう。その隣をローズマリーが小走りで付いてくるので、彼女の歩幅にあわせる。…随分と物好きな事だ、何の面白みも無い我に用も無くついてくる位なら彼女自身の為の時間を取ったほうが余程建設的だというのに。

 

 だが―――悪い心地はしない。

 


 

 コードネーム名、スワラチカ。…カーナとは、実のところかなり昔から交流していたらしい。らしい、というのは私自身がその事を覚えていないから…なんだけど。

 彼はエリートオペレーターの中で異端と、職員たちから悪い意味で注目を集めていた。というのも彼自身の鉱石病と制御の儘ならないアーツの組み合わせによって、日常生活を()()()()()()で送ることができないから。

 

 だから外の離れで生活をしている。…それもあって、ロドス内のエリートオペレーターの中では一番職員に嫌われていた。それこそ例外を言うのであれば、同じエリートオペレーターたちとケルシー先生、グレースロートさん位。…本当は皆が仲良くしてほしいけど、それも難しい事は過去の私が実証済みだった。彼と皆の溝は…思っている以上に深いらしい。

 

 隣で歩いていると私のほうに流れないよう、彼が自身の髪に手を当てる。その際に響く()()()()()()()()

 

 彼の感染は硬ケラチンを主成分として作る物、()()()()()が源石化すると言う物で。それが彼自身のアーツ*2で周囲を無差別に斬りつけてしまう。

 

 初めはエリートオペレーターである彼が嫌いだった。家族である皆が、彼を嫌っていたから。記録を見る限り1年前―――エリートオペレーターに私がなるまでは少なくとも。

 でも、ケルシー先生が「彼は皆の事が大事だと思っている。当人が当人を()()()()()()()()」と言った時から。彼を目で追い、観察するようになって。彼の事だけを纏める専用の記録まで作るようになって、漸く分かった。

 

「…スワラチカ」

 

「カーナでいい。夜勤と変わった事で職務は終わった故な」

 

「ん。カーナは優しいよね、誰に対しても。グレースロートさんも、カーナを信じてた」

 

 そして、その優しさは"傷つける事しかできない自己との対比"で齎されている。彼はエリートオペレーターの中で()()()()()()()()()、しかも()()()()()()()()()()

 然し彼は()()()()できないと卑下し、それを事実として受け止めてしまっていた。

 

「そうだろうか。我には、これしかできない故よく分からないが」

 

 ほら、また卑下してる。でも―――慰める事は、出来ない。頭を撫でようとしたら過去に手を切った事があったらしい。…その時の記録には、最後に一文。

 

"触れてはいけない。触れたら、私も。()()傷ついてしまう"

 

 何があったのだろう。

 

 この事をカーナには聞けず、ケルシー先生も黙って首を横に振るばかり。この時は、私自身の忘れっぽい精神症状を恨んだ。

 

 彼のやさしさ―――自己との対比によっておこる歪なそれに気付いて。何故か、とても泣きたくなった。

 

 それから、何時からだろう。

 彼から、眼を離したくなくなったのは。彼の事だけは、忘れたくないと。彼を忘れることに、恐怖を覚えるようになってしまったのは。

*1
ローズマリーはどうやら艦内を家と認識している節があるらしい

*2
彼は鋭利化でケルシー先生は刃化と呼んでいる。有効範囲は接触した物質から半径1m少し




カーナのフェリーンのモデルはサーベルタイガー。
性能はこんな感じ。

コードネーム:スワラチカ レアリティ:6 ロゴ:ロドスアイランド
性別:男 職業:重装 募集タグ:火力/爆発力
特性:通常攻撃が前方1マスの範囲攻撃/術師に含まれ、回復の対象とならない。
基礎ステータス(未昇進Lv50)
H P:1350 攻撃:640(+60) 防御:640(+60) 耐性:10
再配置:普通(25s) 攻撃速度:やや遅い(1.6s) コスト:38 ブロック:2
素質
剣身:近接攻撃に対して自身の攻撃の[20+10%]の[確定ダメージ]を与える。
??:不明(第一昇進で開放)
??:不明(第二昇進で開放)
スキル(特化Ⅲ)
小災(パッシヴ)
自身を中心とした周囲8マスの対象全員に[2秒]に付き[70%]の[確定ダメージ]を与える。
その上で素質1発動時、自身のH Pを最大H Pの[10%]回復する。
但し[味方]も対象となる。
基地スキル
[配置不可]

コンセプト
[大虐殺]

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