トレーナーじゃない学生の話   作:白玉善哉

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トランスミッション

 

そう、資料を集めるにも時間的に限界がある。検索エンジンが幾ら類似結果を省いた所で、データが多過ぎるのだ。

 

そこで、ポリゴンだ。

 

企業であれば、悪意あるウイルスソフトの探知と除去にポリゴンを使う所を、必要な単語をポリゴンに伝えて電脳の大海原に送り出して引っ張ってきて貰おうという魂胆である。

 

アーボックの道はアーボック。パソコンにはポリゴンだ。

 

資料さえ集めて貰えれば情報の取捨選択は楽になるし、文字書きは文系の領分である。

ポリゴンに頑張って貰っている間、感想をしたためて纏めるくらいの時間は取れるだろう。

 

 

「パソコン、入る。オーケー?」

 

 

見えぬ神より目の前のポリゴン頼みだ。俺の急な片言口調に、ポリゴンは暫く首を傾げていたが、ふよふよとデスクに浮遊する。そして、気合いを入れるように角ばると水に浮かべるゼンマイ式玩具のフルスロットルに似た動きで足を急速回転させ始めたのだ。

 

 

「ガガ…クエーッ!!」

「ポリゴン、物理的な指示じゃないからな!デジタルだぞデジタル!」

 

 

加速と気合いで勢いを付けていたポリゴンの体がピタリと止まる。補足をしなければ、渾身の体当たりで画面をぶち破るつもりだったらしい。

 

 

末恐ろしい話だ。

 

※ ※ ※

 

気を取り直し、改めて俺の計画をポリゴンに伝え直す。パソコンの周りを角ばった瞳で観察するとプログラム…もとい、本能で何をすれば分かるらしい。備え付けのボールシステム用の台座部分を嘴の先端でつつき始めた。

 

 

「ボールに入れれば良いのか?」

「クエ」

 

 

ポリゴンをボールに戻してから、システムを起動し台座にセットする。

無機質な音声でポケモンの転送サービスが起動。しかし、何も起こらない。

 

どうなってるんだ?

 

シルフカンパニーのポリゴンのQ&Aを調べて目を通す。転送はまだかと催促でもするように台座の上でボールが揺れている。ポリゴンのボールをデコピンして、読み進める。

 

 

Q.ポリゴンを電子ネットワークに繋ぐには?

 

A.ボールに入れたポリゴンを転送装置にセットし、トランスミッションを押してください。

 

※ポリゴン.exeをダウンロードしていない場合には、ページよりファイルをインストールしてから転送システムのメインファイルにポリゴン.exeを移動させてください。

 

 

よく分からん。そして、お目に掛かった事のないファイルだ。サクッとインストールをしたまでは良かったが、我が家のパソコンは古い方の為か随分と動作が遅いのである。ポンコツパソコンを叩きながら紐付けをする。

 

 

「頼む、動け動け動け!」

 

 

悪戦苦闘すること30分以上。そろそろ自前でパソコンを買うべきかもしれない。漸く、細かな処理が終了し、ポリゴンをパソコンに転送する事ができた。デスクトップには居眠りをしているアイコンサイズのポリゴンが映っていた。バッチリ成功したようである。

 

パソコンに向けて声を掛けるもポリゴンは居眠りをしている。PC内に居るからか、此方の呼び掛けに気付いてないらしい。

 

どうしたものかと思いつつマウスのカーソルポリゴンに合わせてクリックしてみる。あ、起きた。アプリのメモ帳を出して、ポリゴンをメモ帳までドラッグしてからキーボードで文字を入力する。

 

 

『捨てポケモン、政策で出てくるURLを此処に貼り付けて欲しい』

 

 

ポリゴンは鳴くかわりに、オーバーアクションでフレームの上を跳ねている。メモ帳に運んだのと同じ要領でインターネットのアイコンにポリゴンを移した。

 

画面の中でポリゴンを中心に渦を巻いたかと思うと一瞬で姿が掻き消える。どうやら、行ってしまったらしい。

 

健闘を祈りつつ、俺も授業内容を思い出しながら授業の板書メモに目を通し始めるのだった。最初の余裕も今は陰っている。もしかしたら今夜は寝られないかもしれないな。

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