トレーナーじゃない学生の話   作:白玉善哉

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一撃必殺

 

──人間は技術力で強さを誇るが、弱い生き物である。不幸なポケモンを無くすことは出来ないかもしれない。一人一人が心掛けて、ポケモンとより良い関係を築き、共に発展協力が出来る社会になるのを私は強く望みます。

 

学籍番号 0083190

文学部 俺

 

 

 

A4用紙にびっしりになる位の量にはなった筈だ。感想の筈が随分と壮大になってしまったが、夢や理想は地味にみみっちいよりもビッグマウス上等でいた方が良い。

 

そして、パソコンの画面を見るとポリゴンが並べたURLがズラリと並んでいる。有能だ。

クリックしてみると、カントー、ジョウト、シンオウの大都市部の役所の地域保健ポケモン課だったり、アルミア地方のレンジャーに関する記事。他は、イッシュやガラル、アローラは怪しい単語を辞書を引けばどうにか読めるかもしれないが、カロスの物はページを丸ごと翻訳に掛けるしかない。

翻訳が嫌なら自分で言語を覚えるしかないが、生憎だが時間が足りない。

 

例えば『お使いに行って何か買ってください』と別言語で書いてあったとする。それを俺が読める言葉に直すと『どうぞ、特使に行き、私に何かを買ってください』といった具合に怪しい感じの言葉に変わるから好きではないのだ。

 

眉根を寄せているとポリゴンがアイコンの歪みからデスクトップに現れ、新たなURLを貼り付けている。

マウスを手にポリゴンをクリックするとキョロキョロと辺りを見回しているようである。ディスプレイを通して此方がポリゴンを見ることは出来ても、ポリゴンが此方を認識する事は出来ないらしい。

 

 

『ありがとう。戻ってきてくれ』

 

 

そう入力すると、返送中の表記と共にメーターが現れる。カリカリとパソコンが処理をする音が暫く続き、【返送完了】の文字が現れた。お帰り、ポリゴン。

俺がボールに触れずともポリゴンが勝手に飛び出してくる。

 

 

「お疲れさん、ご褒美食べたら休んで良いぞ」

「グ…」

 

 

鳴き声も、いつものクエでなくまだ聞いた事のない鳴き方だった。心無しか尻尾にも元気がない。

疲れた時には甘いものである。デスクを弄り、おやつ用に忍ばせていたハートスイーツの包装を剥いてポリゴンに与える。

 

ポリゴンは目だけで笑うとチョコを嘴に突き刺し、出て来た時と同じように勝手に戻って行った。

 

チョコの残り香に俺も甘いものが欲しくなった。一口大のチョコを口に放り込み、肩や首の骨をゴキゴキと鳴らす。

 

まだ、課題は目標の半分…いや、それ以下かもしれない。

 

溜息を吐きながら、スマホを手に取るとハカセからメッセージが届いていた。

そういや、映画見てた時に──いや、途中から読めねぇよ。文字化けが凄い。

 

最近、俺の周りではテレビの砂嵐や蛍光灯のチラつき、ATMの文字パネルが作動しないなど電化製品のトラブルが頻繁に起きるのだ。

静電気体質とでも言うか…きっと前世は徳を積んだピカチュウなのかもしれない。ポリゴンの鳴き声に時々ノイズが混じるのも、もしかしたら俺のせいなのだろうか。

 

そして、途中で途切れていたヤマブキに何があったのか気になるところだが、明日学校で確認すれば良いだろう。

 

 

「ちと、トイレにでも行ってから続きをやるか」

 

 

その後、肛門にウォーターカッターのような衝撃を受けた俺は「み゙っ゙…」と悲鳴を上げて気絶し、朝まで目覚める事はなかった。

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