トレーナーじゃない学生の話   作:白玉善哉

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神との遭遇

俺が頭を抱えること暫く──もう、焦っても仕方ないなと開き直る事にした。

ハカセには、ウツギ博士に誤爆した事を申告。

すると電話の通知が激流である。病んでいるタイプの彼女かよ。面倒なので、病院だから電話は無理だとメールを送ったら少しの間の後に長文メールだ。

 

ウツギ博士に失礼をするな。授業の席に穴を空けるな。タマゴ研究は愛の成せる研究だと誤字りながら熱っぽい文を送ってきたのだ。対面せずとも興奮しているのが分かった。

 

ポケモンを研究する人は大体崇めているハカセだが、ウツギ博士はタマゴの研究者という事で別格。オブラートに包んで神扱いだったし、包まなければ狂信者だ。だが、不慮の事故での欠席は無茶を言わないで欲しい。人間、激昂したら色々と言葉を並べ立てても伝わらないのである。

 

父と母が卵焼きに醤油かケチャップか言い争っていた時も凄かった。そんなに怒る?って勢いだった。あの時は、ソース派の俺とマヨネーズ派の弟も乱入し収拾がつかなくなっていたな。最終的には皆でただ調味料の名前を叫んでいただけな気もする。

 

話は逸れたが、簡潔にハカセを静める可能性が高い言葉を幸い俺は知っていた。

 

 

『博士、フィールドワークが終わったら見舞いに来てくれるんだけど、ハカセも病院に来る?』

 

『どちらに向かえば宜しいですかな?』

 

 

バーサーカーは正気に戻った。

 

 

※ ※ ※

 

 

ハカセは昼過ぎにやってきた。値段の着いたままのパリッと糊が張ったリクルートスーツを着て、普段と比べ緊張しっぱなしだった。何を話しかけても丸椅子で背筋を伸ばし「えー」だとか「あー」だとか、上の空だったので、放置して昼寝を決め込んだ。一応は怪我人様である。

 

──陽が傾いて夜と夕方の色が混じる頃、ウツギ博士は病院にやってきた。俺は夕飯、味の薄い肉じゃがとほうれん草の和物だとかのヘルシー献立だ。

 

 

「やあ、遅くなってごめんね。調子はどうだい?俺君…と、君は?」

「ひひひろしです…!」

 

 

固く握手を交わす二人のコンタクトを見ながら、食べる手は止めない。電子レンジの無い部屋では、食事は冷めてしまってからじゃ遅いのだ。温かく美味い内に食べるのがマナー。これは俺の持論だ。

 

ハカセが、ピチューのタマゴの発見時の事や連れ歩きなど博士の功績についてやポケルスについてをまくし立てている。何度も聞かれる質問だろうに笑顔で解説してくれているウツギ博士は人懐こく、感じの良い人だ。

俺も何か言おうと思ったが、「スターミーの図鑑説明にある地元ってどこですか?」位しか思い付かなかったので黙っておく。

 

 

「ところで、ウォシュレットについて何か分かった事はあるかい?」

 

 

ひとしきりの解説が終わると急に声を掛けられた。やっぱり忘れてなかったんですね。

 

 

「今のところは何も。ただトイレの電気系統は引き抜いてるから家族の感電は無いと思います。母も怖くてトイレに行けないわと言っていました」

「いや、それだと不十分だよ」

 

 

そう言って人差し指を立てた博士の解説が始まる。原因がロトムであった場合には、電気タイプである事を忘れてはいけない。体を走るプラズマが電源の役目を果たして意味がない事を指摘された。ハカセもウツギ博士の説明に合わせてポケチューブから【ロトムに電化製品与えてみた】というタイトルの動画を引っ張って俺の前にスマホを突き付けてきた。

 

なら、早い方が良いとスマホで家に電話を掛ける。──が、繋がらない。出掛けたのか?

 

 

「にいちゃーん、ポリゴンがぁ!!!!」

「ダメよ、走ったら病院の人に迷惑でしょ!」

 

…と、思ったら家族の方から出向いてきた。バタバタと落ち着きのない足音が響く。恥ずかしいから廊下を叫びながら来ないで欲しい。

 

と、言うよりもポリゴンがどうかしたのか?

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