スロットで大勝ちした事とポケモンを待ち侘びる家族への期待値が重かった事をハカセに洗いざらい吐いた。
もっと羨ましがるかと思ったが、微妙そうな顔をしている。高かったんだぞ、ポリゴン。
言葉を選んでハカセが漸く口にした。
「俺氏がポリゴンの景品としての価格にステータスを感じているなら、7番道路の草むらには立ち入らない方が良いかもしれませんな…」
確かに俺はポリゴン高い!と連れ帰ってから浮かれまくっている。だが、毒タイプと虫タイプ、ゴーストタイプでもない頑丈そうなポケモンで、手に入れられる範囲内で居たのがポリゴンだったのだ。
「ああ、地下通路の側の所な。そもそも、バトル用じゃなくて弟の遊び相手のつもりで引き換えたから草むらに用事がないわ」
何より、草むらは出会いの巣窟だ。消極的な理由は主に好戦的過ぎるトレーナーにある。繰り返すが、ポケモントレーナーの認識は戦闘民族だ。数の暴力や経験差でゴリ押されたなんて話をよく聞くし、昼飯代を稼ぐつもりが向こう一週間の食費に困る有様になった奴も知っている。平たく言えば、カツアゲに遭いたくない。
「勿体ぶっても仕方ないから言ってしまいますと…まだ噂の段階ですが、出るらしいですぞ。野良ポリゴン」
野良ポリゴン。我が家のポリゴンは元手は千円だし、短い付き合いだが連れ帰って愛着も湧いている。野良にいてもきまぐれだったり生意気だったり家に馴染まない可能性もある。店員が手渡してくれたポリゴンがアイツだから良かったのだ。
それにしても、人工ポケモンだし…プログラムで動いてるんだよな。
「それより、ポリゴンを外に出しっ放しで錆びついたりエラーを吐いたりしないのか?」
「テクスチャー2辺りで順応して暮らしたりしてると思われますぞ。タマゴを育てる個体に期待ですな!」
最近知ったばかりのテクスチャーに知らないナンバリングが出てきた。前に教えて貰ったテクスチャーも2だったのだろうか。それにしても、タマゴ…産めるのか?
詳細を聞こうと思ったら、先程のサーナイトがテレポートで帰ってきた。時計を指差し腹を鳴らしている。きっと普段は今頃が夕食の時間なのだろう。
「む…、博士との時間が楽しくて時を忘れておりましたな。帰る準備をして、そろそろお暇しますぞ」
「見舞いに来てくれてありがとな」
帰り支度と言っても立ち上がるだけだ。サーナイトは既にサイコパワーを発動していて「ま」しか言えずにハカセの姿は消えた。
また、学校で聞けば良いか。
※ ※ ※
入院から翌々日、検査の結果は異常なし。麻痺の後遺症もなく。俺は無事に退院した。
敢えて言うなら、味が濃いものが食べたい位だ。食事代。ベッドの場所代。治療費のトータルで二万は軽く出てしまった。思わぬ出費だ。
家に帰る前に、ポケモンセンターに寄ってロコンの様子を確認しに行った。ジョーイさんに話を聞くと自然治癒力を高めるため今は眠らせたばかりらしい。
「治療室には立ち入れませんが…少し様子を見て行かれますか?」
「お願いします」
「では、このラッキーに案内をお願いしますね」
そう言って、次の人の案内に移ってしまった。ラッキーは、一昨日見たアロマセラピーぶっぱの気が強そうな個体とは違うラッキーだった。俺にポケモンの目利きは出来ないが、自動ドアの近くで消毒をしないトレーナーに「ラッ!!」と目を釣り上げて一喝していたのが昨日のラッキーだと思う。
「…は、なんだコイツ?」
そんな風にラッキーに悪態を吐いたトレーナーへの対応は鮮やかだった。丸いボディからは想像も付かない俊足で飛びかかり、愛の鞭往復ビンタを決める。穏やかなイメージしかないラッキーに襲撃されたからか、男はポッポが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
仕上げに、掲げた手から出した水球──多分、いのちのしずく──を頭からぶっ掛けて消毒兼治療をしていたので間違いない。
学園系のドラマで「顔は狙うなよ。先生にバレちまうからな」なんて不良のシーンを見るが、ラッキーは手を出した上で即座に治療をして証拠の隠滅をしているのだから、かなりのやり手だ。初犯じゃないだろうし、アグレッシブにも程がある。
このセンターに所属するラッキー自体、怪力で物資をカイリキー顔負けに運んでいるのも街を歩いている時に何度か見ているので、武闘派でも驚かない。その気になれば格闘タイプみたいにスカイアッパーや投げ技も出来るかもしれない。
ちなみに今日の俺は臭くないので、他のラッキーがするのと変わらない対応だった。心の中であのラッキーは婦長と呼ぶことにした。
誤字報告ありがとうございます。確認前に電源が落ち、詳細確認が出来ないまま消えてしまったので、後程修正を致します。