トレーナーじゃない学生の話   作:白玉善哉

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トライアル期間①

 電話相手は同じ学校の同級生だ。授業は選択制で殆ど時間割が被らない為、翌日を指定してタマムシデパートの屋上に彼を呼び出し相談をする事にした。

 

「ほほう、鉱物や不定形ですかな? 俺氏もニッチさの強いポケモンに目覚めてデビューをして頂けるようで何よりですぞ!」

 

 唯一、ゼミでのみ授業を共にするハカセと呼ばれている理科系の男である。

 俺はどちらかと言えば文系なのに何故に理科系と一緒なのだろうか。答えは単純にハカセは理科系っぽい見掛けをした文系の男だからである。

 

 頼み事をする立場でこんな事を思うのも失礼な話だが、ポケモンへのラブが溢れすぎてハカセは奇人変人の枠として年下や年上の生徒からもある意味で恐れられている。ずれた言動もあり、口の悪い者は彼をバカセと呼んでいるそうだ。

 そんな彼だが、飛び級や年齢層の疎らなスクールにおいて年が近く気楽につるむ事のできる俺にとって気の置けないありがたい存在である。

 

「……ふひひっ、俺氏。めくるめく理科系の世界にウェルカムですぞ」

 

 

 ……やっぱり、人選を間違えたかもしれない。そして、お前はまごう事なき文系だろう。

 不安がめきめきと成長中である。

 

 

「いや、俺じゃなくて弟がな……」

「なんと!! 弟君でしたか!」

 

 

 将来有望ですな! と鼻息をふんふん荒くしているハカセに事の経緯を話し終えるとずれてもいない眼鏡をぐいと中指で押し上げた。

 

 

「では、俺氏の弟君には拙者のポケモンのベイビィちゃんをお渡しすれば良いですかな?」

「不定形とか鉱物辺りから頼む」

「ちょうど、先日生まれたベイビィちゃんがおりましてな! しかし少し条件がありますぞ!」

 

 

 条件とは。そう首を傾げる俺にハカセは人差し指を突き付けてきた。熱弁を奮っていたが、要約してしまえば条件は二つ。

 

 

 一つ目、一週間のトライアル期間を設けること。

 

 二つ目、俺の家で過ごすベイビィちゃんの写真を撮って送ること。

 

 

 ニャースの譲渡会でよく聞くような内容だったので一安心である。やはりどれだけ岩に近かったりメカニックな見た目をしていてもポケモンは生き物なので無理をさせるのは禁物という事なのだろう。

 そもそも、上手く行けば譲って貰えるらしいポケモンも生まれたばっかりの赤ちゃんだしな。ハカセの心配もごもっともだ。

 

「ちなみに、預かるのってどんなヤツなんだ? ベトベターとかドガースだとポケモンに嫌な思いさせちまいそうでな」

 

 主に野生のシッターにさえ微妙な顔をする母親が原因である。懸念事項として伝えておく。ハカセは、チチチと舌を鳴らして指を振ったがしかし何も起こらない。

 

「ご心配には及びませんぞ」

 

 スペシャルラブリーですからな! と白い歯を光らせて笑っていた。

 本当に大丈夫だろうか。

 

 明日、ハカセからボールを預かる事になった。

 響きだけは俺もトレーナーデビューみたいで年甲斐もなくウキウキする。

 そう、ついに明日には弟の「飼って!!!!」から開放されるのだ。

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