きょおは、にいさゃんがポケモンをつれてきてくれるってゆってたよ。
パパとママはダメってゆってたけど、にいさゃんがかった。
なにをつれてくるのかはわかんない…かっこいいのがいいな。
リザードンなら、せなかにのりたい。ジムのナツメおねえさゃんみたいにフーディンもかっこいい!!
はやくポケモンにあいたい!!!!
※ ※ ※
昨日の夜は弟が覚えたての文字でそんな日記を書いていたと母親は言っていた。トライアルでポケモンを迎え入れることが殆ど決定してしまってからは「ポケモンフーズを買っておかなきゃね」となんだかんだ一番に乗り気だったのが母親だ。
そして、ジュンサーさんから冊子と餞別としてキズぐすりまで貰ってからようやくお迎えをするラルトスと対面したのである。
「うおぉ…ちっちゃいなぁ…」
「この子は少し兄弟より小さい子でしたからなあ!」
抱っこしていたラルトスを俺に抱かせてくるハカセ。弟が小さく大人しくしていた頃の要領で恐る恐る抱いてやると嬉しそうに「ラルル」と声をあげた。そんな無邪気な姿を名残惜しそうにカメラを抱えてハカセは連写していた。
「流石はベテラン兄上ですな! これなら、安心してベイビィちゃんを任せられますぞ!」
「ほら、まだトライアル期限の一週間経ってないし…ラルトスの居心地が悪そうならハカセの所に帰る感じになるだろ?」
「ラル…?」
ハカセは涙ながらに俺に告げるとラルトスを愛しそうに───眼鏡が分厚くて殆ど瞳は見えないが──眺めていた。
「いけませんな…親心が付く前に、俺は行きますぞ。これがベイビィちゃんのボールですから、移動で疲れてしまいそうな時には使ってくだされ!」
「おう、何から何まで世話になっちまって悪いな」
「ル……」
俺に握らせたボールは職人が手作りで作り上げると聞くフレンドボールだった。まだピンポン玉大のボールを押し付け、未練に顔を歪めながらゆっくりと離れる。
「ラル…ラルル?」
「わっ、コラ…落ちちまうっての!」
俺に抱かれたままのラルトスは赤い角を動かし何か変だとジタバタしていた。
そして、ハカセが後ろを向き走り出そうとしたその時──
「ラルルーッ!!!!」
おにいちゃん、おいていかないで。…ひとりにしないでよう!
──ラルトスが叫んだのと同時に頭の中にテレパシーのように感情が流れ込んできた。ハカセにも聞こえただろうかとヤツの姿を探すと消えている。
「んぶっ…!!」
いや、駆け出そうと腕を前に出したやたらフォームの良い俊足ポーズのままずっこけて呻いていた。動こうにも体の自由を奪われ動けないらしい。スマホからラルトスが使える技をポケペディアで調べてみると親の技を引き継ぐことがあることや金縛りについて書かれていた。
「ああ、お前これをハカセに使ったのか…」
「ラル…ラルルゥ……」
おいていかないでよう。ままにあいたいよう。
そんな思念がまた抱いているラルトスの体から俺に伝わってきた。
ちらりとハカセを見ると此方を見つめて泣いていた。やっぱりハカセにも伝わっていたらしい。
バトル換算で数ターン後、ハカセの金縛りは解けたがラルトスと抱き合っておいおいと声をあげて泣いている。道の真ん中を占拠してしまっている俺達を避けるようにして、群衆は通り過ぎていく。
いや、これは……どう考えてもラルトスを連れて帰るのは無理だろう。