蜘蛛、お借しします?   作:通りすがりのゴキブリ

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別小説の執筆だったり、テストだったりレポートだったりで遅くなりました。
…いつの間にか評価バーに色がついとる…


…それって引っ掛け問題?

イタリアンの料理店、「ミック」を出た後、僕と千鶴はすっかり暗くなった道を歩いていた。

 

「ごめんなさい。奢って貰う所か家まで送ってもらっちゃって」

 

「いいさ、この頃物騒だしね。」

 

「でも危なくなってもスパイダーマンが助けてくれるし、大丈夫でしょ?」

 

「ははっ、そうだね。」

 

それから暫く千鶴と談笑しながら夜道を歩く。

 

話す内容は音信不通だった半年の間に起こった出来事。

 

千鶴はレンカノの事や大学で出来た友達の事等、僕は大学での事や快との事等の他愛も無い会話。

 

そして話が進むに連れて僕は気が付けばスパイダーマンの話をしていた。

 

「それで、キャプテンアメリカのコスプレをした強盗は僕に向かって衝撃波をぶっ放して来たんだよ。」

 

「衝撃波?そんな事現実にあるのね…」

 

「うん、凄く痛かったよ…でも何とか倒せた。でもここからが問題だったんだよ。」

 

「えっ?何?」

 

「快の野郎、俺が痛い思いして戦っている間エロ動画みて一息ついていたんだよ。」

 

「はははっ、でも快君らしいわね!ふふふっ」

 

「あいつにも現場の過酷さを教えてやりたいよ…最悪の場合トイレにも行けないんだから。」

 

「そういえば、あのスーツってトイレの時にどうするの?その…やっぱり吸収とか分解機能とか付いてるの?」

 

「ん?そんなの無いよ、脱いで一回トイレの中で全裸になる」

 

「えっ…」

 

***

 

そして夜道を談笑しながら歩く事数分。

 

「あ…ここで良いわよ。」

 

千鶴が住んでいるだろうアパートの前にて、彼女の一言で僕達の歩みは停止する。

 

「うん…今日は付き合ってくれてありがとうね。」

 

「それはこっちの台詞よ、色々愚痴聞いて貰ってこっちもスッキリしたわ、ありがと。」

 

千鶴は家に帰るべく、背中を向け歩き始める。だが、少し歩くと何か思う所が有ったのか立ち止まり、再び彼女はこちらに振り替える。

 

何処か赤面しているように見える千鶴。

 

だが彼女の言葉を聞いた時、その理由が解った。

 

「……少し家…寄っていく?」

 

正直魅力的な話だ、最近引っ越して独り暮らしを始めたって事を言っていたし、どんな家か気になるけど…

 

「その…良いの?もう恋人じゃないのに…」

 

「別に…友達を家に誘う事なんて良くあるじゃない。」

 

「え、うん…そうだね。じゃあお邪魔しようかな。」

 

「じゃあ部屋まで行くから付いてきて。」

 

どこか不機嫌そうな千鶴の背中を追いかけなら、彼女の部屋へと向かう。

 

やはりここでも「友達」としてか…

 

数秒程の沈黙、少し二人の間に気まずい空気が流れる。

 

そんな中溜息を吐いた後、先に口を開いたのは千鶴だった。

 

「…なんで別れたんだっけ?」

 

呆れと寂しさが混じった様な苦笑を浮かべながら、彼女が投げかけた質問に一瞬だけ僕は怒りを覚えた。

 

別れを切り出したのは君だろ?

 

そんな言葉が喉元まで出て来るが、ぐっと堪える。

 

千鶴だって好きで分かれたんじゃないんだから。

 

千鶴なりの考えと決意が有って僕と別れたのだから。

 

彼女に感づかれない様に歯を食いしばり、怒りを殺す。

 

そして、スパイダーマンとして戦う時に放つジョークの様に、本心を隠し僕は軽口を吐く。

 

「...それって引っ掛け問題?」

 

「…ふっ…そうね、ごめんなさい。少し意地悪な事聞いたわね…」

 

既に僕たちは千鶴の部屋の前まで着き、千鶴はドアの鍵を開けている。

 

僕に背中を向けている為彼女の表情は見えない。

 

だが鍵を開けると同時に彼女はこちらに振り返る。

 

「でも…」

 

漸く見えた彼女の表情は少し頬が赤くなり、瞳は潤んでいた。

 

だがそれも一瞬、すぐに彼女は俯き表情を隠すと、僕の服の裾をぎゅっと掴む。

 

「私は…今でも…」

 

ピコン

 

だが僕達の都合を完全に無視するかの様に非常なLINEの通知音が鳴る。

 

「…私は良いから…誰からのLINE?」

 

一気に不機嫌になったかの様な表情をする千鶴。

 

確認してみると案の定、快からの事件発生を意味する記号が送られていた。

 

「快から。」

 

「…行くの?」

 

察したのか千鶴は心配そうな顔。

 

「大丈夫だよ、行ってくる。」

 

千鶴を宥め、彼女に背を向けて走り出す。

 

考えてみれば、このやり取り、高校時代を思い出すな。

 

あの時は恋人だったから千鶴を宥めるために、御守り代わりとして「行ってきますのキス」とかしてたっけ…

 

またしたいな…アレ…

 

…っと!集中集中!

 

急いで千鶴のアパートを後にすると、近くの裏路地でスーツに着替え、快と連絡を取る。

 

「快、何が有った?」

 

『こちら快…本日二度目だが、先程LINEで送った様に事件だ…先程通報が有ったが、どうやら今回は麻薬取引らしい。詳しい情報を送る。』

 

 

するとインカムから取引の場所等、警察から傍受した事件の詳細な情報が流れ込んで来る。

 

 

「個人的に麻薬は嫌いだし、懲らしめてやるとしますか。」

 

『その意気だ、スパイダーマン!』

 

「くれぐれも僕が戦っている間にエロ動画とか見ないでよね。」

 

『…当たり前だろ!?』

 

「何だったんだよ今の間は…」

 

快とくだらないやり取りをしつつ、僕はウェブを飛ばし、目的地までスイングするのだった。

 

***

 

 

現場までに付くと、僕は街灯に上り状況を確認する。

 

人目に付きにくい路地裏では現在麻薬の取引の真っ最中だ。

 

売り手が二人…買い手が一人。夕方の様に武器は持って居ない様だ。

 

正直麻薬は嫌いだ、取引に関わっている奴なんて一分一秒放っておく事すら胸糞悪い。

 

さっさと登場し片付けてしまおう。

 

街灯から飛び降り、取引をしているど真ん中に着地する。

 

「やぁ!こんばんは。こんな所にお薬屋さん開くの?すぐ潰れると思うけど。」

 

「クソっ!スパイダーマンだ!」

 

売り手の一人が声を上げると同時に、僕は回し蹴りを相手の首に叩き込み倒し、二人目の売り手に後ろ回し蹴りを顔面に当てて地面に沈める。

 

「てめぇ!よくも俺の生き甲斐を!」

 

後ろから買い手の男が声を荒げ、隠し持っていたナイフを両手に持ち突進して来る。

 

「あーあ、生き甲斐って…もっと他にないの?」

 

だがその程度スパイダーマンなら訳ない。

 

僕は軽口を叩くと上空にウェブを放ち、スイングする勢いを使い両足で男の顔面を蹴る。

 

僕がスパイダーマンになってから開発し、多くの戦いで使っている技「スイングキック」だ。

 

買い手の男は吹っ飛ばされ、ぐったりしている。どうやら意識を失った様だ。

 

「生き甲斐って…他にあるでしょ?トランプとか…楽しいよ?トランプ。」

 

一仕事終えた安心感を覚えつつ、気を失った買い手にジョークを飛ばす。解っていたが返事は帰って来ない。まぁ、帰って来たらそれはそれで戦わなきゃいけないから困るんだけど。

 

でも、これで通報された件については解決だ。残りは警察に任せて、快に連絡して帰ろう。

 

「あの…待ってください。」

 

だが通信を始めようとした時、誰からか後ろから声を掛けられる。声質からして女性だろう。

 

取引の関係者の中で増援を呼ぶ仕草は見られなかった…と言うことは偶然この現場を見てしまった一般人と推定できる。

 

振り返り声の主を確認する。

 

そこにいたのは千鶴に匹敵する程の美少女だった。

 

ちょこんと頭に飾られたリボンに小さい顔、小柄な身長に抜群のスタイル。

 

千鶴を綺麗な系統の美少女に当てはめるなら。目の前の娘は可愛い系統の美少女だろう。

 

可愛いな…と下らない事を考えていた僕だったが、そんなシリアルぶった考えはすぐに頭から消し飛んだ。

 

「…っ……っ…」

 

「え?!ちょ、ちょっと!大丈夫?!」

 

なんせこのリボンの娘、僕を見るなりポロポロと涙を溢しながら泣き出したのだから。

 

全く、僕は何を考えているんだ…!

 

相手は争いとは無縁の一般人でしかも女子だぞ!

 

いきなり大人三人の喧嘩を目撃して怖くない訳が無い。

 

くそ...七海麻美の言う通り、ヒーローたるものフォローの一つでも入れてやらないと駄目なのに…迂闊だった…

 

「その…ゴメン!怖かったよね…」

 

彼女にそっと寄り添い、頭を撫でで慰める。

 

だがリボンの娘は頭をぶんぶんと振り、僕の言葉を否定した。

 

「いいえ…違う…違うんです…!」

 

違う?

 

どう言う事だ?

 

頭の中がクエスチョンマークで一杯になる。

 

 

「…やっと…やっと会えた!」

 

だが彼女の言葉を聞いた途端、頭のクエスチョンマークは少しづつ消えていった。

 

やっと会えた?

 

そう言えばこの子の顔…どこかで見た事あるな…

 

という事は僕はこの娘と会った事が有る?

 

でも…えーと、誰だっけ…

 

「…あの…私の事覚えていません?」

 

不安そうな表情で俺を上目遣いで見て来るリボンの娘。…ん?ちょっと待てよ…

 

この娘のリボン…何処かで見覚えがある…!まさか!

 

「…その…半年前に…」

 

『半年前』その言葉を聞いた瞬間俺の頭に残る疑問は全て消え失せる。

 

「君はエレクトロの時の…!」

 

「はい!半年前、貴方に助けてもらいました!更科瑠夏です!」

 

 

 

 

 




ご拝読ありがとうございます。

今回初めて瑠夏ちゃんが出てきましたね。

作者の考えとしては早めに麻美ちゃんを出したいと思っています。

ご感想等お願いします。


山城拓人

スパイダーマンの正体であり、千鶴の元カレ。
破局後も千鶴との仲は悪くないが、時折自分を振ったはずの彼女が思わせ振りな態度をとる事に不満を覚えている。


一ノ瀬千鶴

拓人の元カノ。無意識かは不明だが、拓人に対して時折思わせ振りな態度を取っており、彼女が拓人を振った事には何やら深い訳が有る模様。


更科瑠夏

偶然麻薬取引の現場を目撃し、警察に通報したリボンの娘。
実はスパイダーマンと面識があり、彼女とスパイダーマンが接触した時期は半年前…千鶴と拓人が別れた時期と一致するが…

ヒロイン誰が良い?

  • 千鶴
  • 麻実
  • 瑠夏
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