「先生!おかえりなさい!どうでした?」
大統領に呼び出され、なんだか役割を押し付けられて帰ってきたワタクシをバーベナさんが迎え入れる。
「ただいま戻りました。なんか堅苦しい肩書きを任せられましたね。んー、要は諸外国にいってポケモンの調査をしてこい、みたいなものです」
「出張ですか?」
「ええ、ただあくまでも仕事ではなく協力という形なので、もう少し先伸ばしにしましょうかねえ」
自国の状況もわからないまま他国に飛んで調査なんて勿体ない...ではなく、これからの自分達の生活圏を見ておかねば不安にもなるというものだ。
自分個人と赤の他人にはさして関心もないが、自分の周りの人間は安全であってほしいと思う。それも、顔と性格のおかげで数えるほどしかいないわけだが。
それに、気がかりもある。
「そういえば、あの子の様子はどうですか?」
「あっちでヘレナがお世話してます。おっかなびっくりですけど」
バーベナさんが指した方向に目を向けると、リンゴを既に何個も完食したと見える今朝出会ったポケモンと、もう一人の助手の姿があった。
近づいて、声をかけてみる。
「なにか変わった事はありましたか?」
「わっ!?あ、帰ってたんですね、お世話に一生懸命で気付かず...」
「いえ、構いません。それで、どうですか?」
「この子自体が変わった生き物である、ということ以外には、特には...食欲もあるようですし」
「凄いよく食べますよ、この子。確か出会った時も食料庫に居たんですよね?食いしん坊なのかなあ」
「何もないならよかった。至って健康のようですね。ひとまず安心です」
飢えていたのかもしれないな、などと考えながら、恐る恐るそのポケモンに近づいてみる。
ワタクシの接近に気付いたのか、さっきまでリンゴを食べていたポケモンがこちらに駆け寄ってくる。
「モノ!」
む、お礼でも言ってるのでしょうか。
「そういえば、アナタの名前をまだ知りませんね」
そう思い立ち、ポケモン図鑑を目の前のポケモンに翳してみる。
―モノズ そぼうポケモン
なんにでも かみつく しゅうせい。
たべられるものは なんでも たべる。
うかつに ちかよると きけんだ。
「ほう。アナタはモノズというポケモンなのですね」
「モノ!」
名前を呼んだからか、応えるように鳴き声をあげてくれる。なんだかかわいらしさを覚えている自分に驚いた。
「何にでも噛み付く...でもこの子、食べ物以外噛んでませんでしたよ?ねえヘレナ」
「はい。おとなしいというか...」
「ふむ...まあ、種族柄こうでありがち、というだけでそうじゃないこともあるのでしょうね。人間やその他の生き物と同じです」
そう言いながらポケモン図鑑を片手にモノズから少し距離を離す。大統領との緊急会合での記憶を頼りに、渡されたポケモン図鑑にクレジットカードの番号を打っていく。
「これでいいのでしょうかね...」
打ち終わって間もなく、どうやら承認されたようで図鑑に「買い物」の画面が表示された。モンスターボールとキズぐすりしか買えないようだが、今はさしたる問題ではない。ワタクシは試しにモンスターボールを一つ買ってみた。すると下の出っ張りの部分から赤と白のモンスターボールが一つ出てきた。
「やはりなかなか珍妙なものですね、これは...」
そうひとりごちて、再び二人と一匹の元にモンスターボールを携え赴く。
「あ、先生、それは...?」
「テレビではまだ?これはモンスターボールといって...まあ、詳しい説明はまた後で。さてと...」
クッションに座り周りを見渡しているモノズに近づき、しゃがみこむようにしてモンスターボールを差し出す。
「アナタ、ワタクシのポケモンになりませんか?」
モノズはおずおずとモンスターボールに近づき、真ん中についているボタンを自分の口で押す。そうしてモノズはモンスターボールに吸い込まれていき一度...二度...三度...そして揺れが収まった。
「わ...あの子、そのカプセルの中に?」
「ええ、この子達はこの中が居心地がいいみたいです」
モンスターボールを持ちながら立ち上がり、中央のボタンを押してみる。するとさっきまでと同じように、クッションの上にモノズが現れた。
「よろしくお願いしますよ、モノズ」
「ズッ!」
この瞬間から、第二の人生とでも言うべき、ワタクシのポケモントレーナーとしての人生が始まったのだった。
遅れた上に短めであると、罪深いです
モノズ視点も書く予定でしたが頓挫しました、今の私には無理です
書きたいお話はあるので復活する可能性はあります