PhantasyStarOnline2-Episode of ALFY- 作:あるふぃ@ship10
A.P.228年
アークスシップ五番艦"ラグズ"のとある市街地―――――――
警報が鳴り響き、赤く燃え盛る市街地の中を走り続ける2人の姉妹。
少女たちの背後から、悲痛な叫び声や爆発音が響き渡ってくる。
数刻前、突如市街地に出現した無数のダーカーの群れは、周辺の建築物を破壊しながら、その場に居た住民達を問答無用で襲っていった。
ある者は心臓を一刺しされ、ある者は手足や頭を切り飛ばされ、ある者は崩れ落ちる建物の下敷きにされ...
その様子は、平穏な日常から一変して、阿鼻叫喚の地獄と化していた。
任務から帰還し、休暇を貰っていた姉妹の両親は、アークスとして、自分たちの暮らす市街地に突如出現したダーカーの迎撃に向かっていってしまった。
「いい2人とも。この隣の区画に、あなた達と同じくらいの年の子たちが多く住んでいる施設があるわ。しばらくはそこで、匿ってもらいなさい。」
「母さんと父さんは?」
「ここに出現したダーカー達を倒したら、すぐに迎えに行くわ。だから、そこで大人しく待っているのよ?」
姉妹の母親は、施設への道を書いたメモを渡すと、一足先に飛び出した父親に追いつくため、急ぎ家を出ていった。
母親の後を追うように私達は家を飛び出し、はぐれないように妹の手を取りながら、目的の場所へ向かって走りだす。
...あれからどのぐらい走っただろうか。
「....はぁ!!......はぁ!!」
「はぁ..........はぁ..........待って!!.....お姉ちゃん!!」
妹が息を荒げながら、なんとかして姉へと声をかける。
だが、今の姉にとって、息が上がって掠れるほどの小さな声になっている妹の声を聞く余裕は無かった。
メモに書いてあった施設への道は記憶した。
あとはこの地獄を振り返らないようにしながら、ひたすら駆け抜けていくだけ。
たとえ誰かが助けを求めていても、どんなに痛々しい声が聞こえても、決して足を止めてはならない。
私達では、何もできない。
あと少しで、ダーカーの襲撃があった区画を抜ける。
とうに肺は限界を迎え、走る足も自分のものなのか分からないほどに、感覚が無くなっていた。
それでも、安全な場所までは走り続けなければならない。
足を止めることは許されない。
掴むこの手を、離してはならない。
背後に迫る邪悪な気配に目もくれず、2人は必死になって走り続ける。
「.....あっ!!」
背後から小さな声がすると共に、掴んでいた妹の手が離れる。
振り返ると、今まで姉の手を掴み必死についてきていた妹が、転がっていた建物の瓦礫に躓き、倒れてしまっていた。
さらにその背後には、四本の鋭い足を持つ蟻のような生物が、こちらに向かってきていた。
紛れもない、ダーカーだ。
ダーカーは無機質に赤く光る目をまっすぐに妹へと向けていた。
「.....妹に........手を出すなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
姉は既に限界を迎えた肺や足に鞭を打ち、全速力で妹のもとへ駆け寄る。
もはや走る力すら残っていないと思っていた身体が、不思議と動く。
妹を守るためと必死になっているからか、それとも昔、母さんや父さんから人間の仕組みの話で聞いた、脳のリミッターが解除されたのか。
しかしそんなことは今はどうでもいい。
これなら間に合う。
倒れている妹と妹へ向かっているダーカーとの間へ、私は無心で駆けだしていた。
「うぅ...............え........?」
妹は転んだ身体を起き上がらせ、視線を後ろへ向けると、ダーカーが鎌のような鋭い足を振り上げ、今まさに自身に向けて振り下ろそうとしていた。
ザシュッ
肉を切り裂く音が辺りに響く。
振り下ろされる恐怖に、思わず目を瞑っていた少女は、その音に対し自分の身に痛みがないことを不思議に思い、そっと目を開く。
目の前には、いつも見てきた頼れる背中が、自身とダーカーの間に立っていた。
「お姉.....ちゃん........?」
「早く.......逃げ..........て.........」
僅かな風の音ですら消えるようなか細い声で、必死に伝えようとする姉は、その場で膝から崩れ落ち、前に勢いよく倒れてしまった。
そして、倒れた姉の身体から、真っ赤な血が、徐々に広がっていた。
「お姉ちゃん!!........お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
妹は必死になって倒れる姉へ声をかける。
視界が霞み、意識が遠退いていく。
もはや姉を呼ぶ声は、姉の耳に入ることはなかった。
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『これは、一つの可能性。貴方が失われ、未来が失われた瞬間である。』
声が聞こえる。
機械的だが、透き通るような美しい声が。
『だが、私はこの未来を否定する。貴方は生きねばならない。貴方は戦わねばならない。貴方は...救わねばならない。』
目を開けることができない。
声を出すことができない。
語りかける声に、耳を傾けることしかできない。
『これより先は、
『シエル、貴方の未来は、これからだ。』