トレセン学園のシェフ・ソーマ   作:PureMellow

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3部構成のつもりだったのに、4部になりそうな内容量。



幸平創真の一日【昼編】

 

 

 

【AM10:40】

 

 

2限目の英語が終わり、予鈴が鳴る。

 

クラスメイトのウマ娘たちは次の授業から3・4限通しで『レース戦術』の講義があるが、創真は午前の授業がこれで終わり。

またカフェテリアに向かう時間である。

 

「じゃ、また昼になー」

 

「うん。お昼も楽しみにしてるわ」

 

スズカに見送られて教室を出ようとすると、教室の後ろ出口近くで袖を誰かに引っ張られた。

 

「ソーマー、ワタシはランチにステーキが食べたいデース」

 

見ると、潰れ饅頭のように脱力して机に伏しているタイキが創真を見上げていた。

アメリカ生まれの彼女にとって、日本の英語の授業は退屈でしかなく、実際彼女は授業後半は船を漕いでいた。

 

「んなもんカフェテリアにあるわけないだろ。牛肉買ってきてくれれば作ってやるけどよ」

 

「Wow! 食材持ち込みオーケーですか!? では今度グレイトなアメリカンビーフを持って行きマース!」

 

先程までの低いテンションはどこへやら。

ガバリと起き上がったタイキは、爛々と瞳を輝かせた。

創真もまた、グレイトなアメリカンビーフと聞いて興味をそそられ乗り気なった。

 

「マジかよ? じゃあいっそバーベキューでもやるか?」

 

「……レアリ? So really?」

 

「休みの日でも使ってみんなでやりゃ良いんじゃねえか? その方が楽しいだろ?」

 

そんな創真の提案に、ゆらりとタイキが立ち上がって創真に近づく。

 

あ、嫌な予感する。

 

創真は冷や汗を垂らして下がろうとするも時既に遅く、満面の笑みでテンションフルスロットルのタイキがガバリと創真に抱き着いた。

 

「イィェエエエエスッ!!! ではネクストサンデーはバーベキューパーティーをしまショウ!? いっぱいヒト集めマスね!! ソーマはベリーベリーナイスです!」

 

「ちょ、待てタイキ、そのテンションでハグは、ヤメッ、イデデデデデデデッッ!!?」

 

ハグをしながらグルグルと回り始めたタイキに、割と洒落にならない悲鳴を上げる創真。

ギシリ、メシリとあまり耳心地の良くない音も鳴り始めた辺りで、タイキは創真を離したが、それでもテンション冷めやらずそのまま廊下へと飛び出していった。

 

ーーーWoooohooooo!!! レッツパーティーィィィィィ!!!

 

ーーームムッ! タイキさんどこに行くのですか!? 良くわかりませんが楽しそうなので私も驀進いたしまーす! バクシンバクシーン!!!

 

そんな傍目からはよく分からない叫び声が廊下に響く。

創真はよろけ、側にあった掃除用具ロッカーへと体を打ち付けた。

 

「何、あれ……? って、へ!? ゆ、幸平? ど、どうしたのよ……?」

 

「お、おう……ドーベル……。大丈夫だから気にすんな……」

 

廊下から教室に入ってきたメジロドーベルは、入るなり目の前でピクピクと顔色を悪くしている創真を見てビクリと体を震わせた。

 

元々男性とのコミュニケーションが苦手な彼女は、創真を心配しつつも苦手意識が相反して少し距離を取りながら恐る恐ると声を掛ける。

創真もそれを理解しているため、手を挙げて彼女に返答した。

 

そこへ、やり取り見ていたスズカも創真を心配して歩み寄ってきた。

 

「幸平くん、大丈夫? もう、タイキったら……」

 

「……ああ、そういうこと。バカね、タイキの扱い方にいい加減慣れなさいよ。 身体が持たないでしょ……」

 

「身に染みる忠告だぜ………」

 

創真は身を持ち直すと、フラフラと歩いて教室を出ようとする。

入り口にいたドーベルは創真に道を開けようと、横にズレた。

 

その時タイキが勢いよく立ち上がった時に押し出した椅子の脚にドーベルの足がぶつかり、ドーベルはバランスを崩し後ろに倒れそうになる。

 

「きゃあっ!?」

 

「うおっ、と」

 

反射で創真はドーベルの左手を掴み、彼女の転倒を阻止した。

 

「大丈夫かドーベル?」

 

「あ、ありがとう……っ、」

 

お礼を言うドーベルだが、創真の握るその手は震えて強張っている。

男性が苦手な彼女の意識が、身体を勝手に反応させているのだ。

 

創真はそれを特に気にせず、ドーベルを引っ張り起こすとすぐに手を放した。

 

「悪ぃな、触れちまって」

 

「い、いえ……いいからさっさと行きなさい」

 

「あいよ。じゃ、スズカもまた午後な」

 

「あ、うん……」

 

創真が教室を去り、ドーベルはまだ少し震えている左手を右手で握る。

その様子に、スズカがドーベルへと話しかける。

 

「大丈夫? ドーベル」

 

「………ダメね、こんなの。彼は悪くないのに………」

 

「きっと幸平くんは気にしてないわ。彼は優しい人だから……」

 

「………スズカは、変わったわね」

 

「え? そ、そうかしら………」

 

「先週まで、思い詰めたような顔をして元気なかったじゃない。それに、周りと壁を張ってるような空気纏ってたのに、幸平と親しげに話してるのが不思議よ」

 

「ええと……」

 

「彼と何かあったの?」

 

「それは……」

 

スズカは言い淀む。

それが余計にドーベルの好奇心を煽ると、そこへ更に話をややこしくする影があった。

 

「私も気になります! 私の占いで、シラオキ様からお二人には何かあったとお告げがありました!」

 

「嘘でしょ!?」

 

確かに胡散臭い。

だが、フクキタルまで来てしまいスズカは二人に囲まれた。

逃げ場がない。

 

「スズカ、ここは吐いちゃいなさいよ」

 

「ふっふっふ、スズカさん! ここは話すのが吉ですよぉ!」

 

「ぅ、ぅぅぅ………何でもないからぁ〜!!!」

 

スズカは見事に二人の間をすり抜けて逃走を図った。

まるで開きかけのゲートを避けるかのような鮮やかなスタートダッシュで、スズカは廊下へと大逃げする。

 

「あ、逃げました!」

 

「うわ、速っ」

 

「逃しませんよぉスズカさぁ〜ん!!! シラオキ様のお告げは絶対ですからねぇえええ!!!」

 

「ちょっと! もうすぐ授業が………行っちゃった」

 

フクキタルまで追っていき、ようやく教室が静かになる。

残されたドーベルは、溜息を吐いて自分の窓際の席へと戻った。

 

数分もせずに3限の開始のチャイムが鳴る。

教師もやってきて、既に授業の準備を始めている。

 

廊下から聞こえて来る四つの足音に、ドーベルはふと窓の景色をぼんやりと見ながら思いを零す。

 

「……私も、このままじゃダメだよね」

 

 

 

【PM12:30】

 

 

 

カフェテリアにおける、最も忙しく過激な時間。

昼休みは1時間と少ししかないのに、全校生徒のウマ娘がほぼ同時にやって来る時間だからだ。

 

ビュッフェは特に種類と量を多くし、無くなりそうな料理は間髪入れず補充するといったように、ウマ娘たちの食事の回転が滞りなく進むようにしなければならない。

 

カフェテリアのスタッフが最も神経を張り巡らせる時間である。

 

一人を除いて。

 

「幸平、おかわりだ」

 

「おらよ。『特製スパイシーチャーハン』だ。これで最後にしとけよ?」

 

「ああ、ありがとう」

 

最早創真の定位置と化しているカウンター脇の調理場。

オグリキャップが空の皿を置くと、当たり前のように追加を盛る創真。

量は当然3〜4人前はある特盛だ。ついでに5品目である。

 

「最近、このチャーハンを食べるとすこぶる調子が良いし満足するんだ。何か特別なものが入っているのか?」

 

「多分スパイスのお陰だろうな。お前はいつも沢山食べてはトレーニングでカロリーを一気に消費するから、体に負担掛けやすいんだよ。消化や代謝促進効果のあるスパイスを入れて作ってんだ」

 

「そうか。それはとてもありがたいな。気を遣ってもらって申し訳ない」

 

「気にすんな。その分怪我なくレースで結果残しゃそれで良いからよ」

 

「ふふ、じゃあ次のレースも勝たなくてはな。ではいただくよ」

 

「おう、おあがりよ」

 

オグリキャップがテーブルに戻っていき、創真は一度コンロの火を消して鍋を洗う。

そこでカロルからビュッフェの料理の様子を見てくれと頼まれ、創真はカウンターからカフェテリアの料理スペースへと向かった。

 

ビュッフェは、大方殆どの料理が残り少なくなっていた。

最もこの時間になれば、殆どの生徒は各々好きな料理を取り終わっていて、長テーブルは所狭しと生徒たちが談笑しながら食事をしている。

 

今ビュッフェで料理を取っているのは、大体はおかわりを取っている生徒だ。

この時間であれば、もうビュッフェに料理を追加しなくて大丈夫だろう。

 

「うわ〜、なまらどの料理も美味しいべさぁ! あとどれ食べようかなぁ〜?」

 

そんな風に創真が考えていると、トレーに様々な料理を取って大盛りのご飯を乗せたウマ娘がいた。

創真はそのウマ娘を見て笑い、声を掛けた。

 

「よう、すっかり馴染んでるじゃねぇか。スペ」

 

「ふぇ? え……え゛っ!? そ、創真さんっ!? なんでトレセン学園にいるんですか!?」

 

「何って、そりゃここで料理作ってるからな。言ってなかったっか」

 

そう言って、創真は首に掛けている学園発行のスタッフ証を見せる。

それを見てスペは余計に驚き、そしてそれ以上に喜んだ。

 

「ええ!? そうだったんですか!? ……そう言えば、昨日のあの人も名調理師って……そういう事だったんですね! 私、連絡先も聞いてなかったしもう会えないかと思ってて……会えて良かったです!」

 

「まあ色々訳あってなぁ。スペは楽しくやれてるようで良かったよ。飯は美味いか?」

 

「はい! 凄く美味しくていっぱい食べちゃいます!」

 

「はははっ、そいつは良かった。沢山食べなきゃ『日本一』にはなれねぇからな」

 

「はい! 私昨日見たサイレンススズカさんのように、夢を見せる走りをしたいです! また会いたいなぁ……」

 

「……そういや、部屋ってまだ決まってないのか?」

 

「あ、はい。まだ荷物が届いてなくて。今日の放課後に部屋割りを言われるみたいです」

 

「はーん……」

 

今朝のスズカの話から変だと思っていた創真だが、スズカとの部屋割りが決まったのは今日らしい。

だから彼女は、同室相手のことを知らないのだ。

きっと、寮に戻れば驚くことだろう。

 

そんな未来を想像して、創真は笑って言った。

 

「よかったな」

 

「え?」

 

「いや、何でもねぇ」

 

創真の言葉の意味がわからず首を傾げるスペシャルウィーク。

そんな彼女の後ろから、不意に忍び寄る影があった。

 

「おやおやぁ〜? 戻ってこないと思ったらユッキーと仲良くなってたんだ〜?」

 

「うえっ!? あ! セイウンスカイさん!」

 

「よー、セイ。スペとはクラスメイトか?」

 

「そうだよ〜。ユッキーは相変わらずウマ娘をたらし込むのが上手いねぇ?」

 

「人聞き悪ぃなオイ。スペとは昨日東京競バ場で会ってよ。そん時知り合ったんだ」

 

「創真さんは東京に来て初めての友達なんです!」

 

「へぇ〜? やっぱりたらしなんじゃないの?」

 

「お前……またゲソピー食いたいか?」

 

「うげっ、それはやめとくよ。あんなの喜んで食べるのゴルシさんぐらいじゃないの?」

 

「この間は『うにのブルーベリージャム和え』食って撃沈してたなー」

 

「うわぁ……味が想像できないししたくもないんだけど」

 

「創真さんそれ美味しいんですか!?」

 

セイウンスカイの表情が面白い程に嫌悪で歪む。

スペシャルウィークはというと、知らない料理の名前に興味をそそられていた。

 

創真はそんなスペシャルウィークを見て、悪戯にニヤリと笑った。

 

「おっ、スペも試してみるか? これは未知の味の探究のために必要でな。一見合わないと思ったものが実は凄い可能性を持ってることだってあるんだぜ?」

 

「わあ、創真さんは研究熱心なんですね! 創真さんが言うならぜ「はーいスペちゃん行くよー。スペちゃんは純朴可憐なままでいてね〜」うええ!? セイウンスカイさんどうしたんですかー!?」

 

スペシャルウィークがゲテモノ料理の餌食になる前にと、セイウンスカイはスペの腕を取って引き摺っていく。

料理を落とさないようワタワタしてるスペシャルウィークを他所に、セイウンスカイは思い出したように振り返った。

 

「あ、そうそう。今度みんなで釣りに行こうって話してるんだけど、ユッキーも行かない? 釣りたての魚で何か料理してよー」

 

「ん? おお、いいぜ。ちゃんと釣れたらなー」

 

「じゃあまた決まったら教えるよ。じゃあね〜」

 

「創真さん、またお話ししましょう!」

 

「おう、じゃあなー」

 

創真は二人と分かれて、厨房に戻ろうと踵を返す。

そこで今度は、大皿を何枚も重ねてテーブルに突っ伏している二人組を見つけた。

 

「スカーレットとウオッカ。何してんだお前ら?」

 

「ゆ、幸平さん……」

 

「ちょっと……スカーレットと大食い勝負してたんすけど……うぷっ」

 

「なんだ、食い過ぎで死んでんのか。どっちが勝ったんだ?」

 

「「私(オレ)ですっ!……うぷっ」」

 

「なんだ、また決着ついてねーの………じゃあ、」

 

そう続ける創真の顔は、それはそれは楽しそうに笑っていた。

 

「俺がジャッジしてやるから待ってろよ」

 

お腹の苦しい二人には、その表情は見えておらず。

訝しげに首を捩りつつ、そう言い残して厨房に戻った創真が戻るまでひたすら苦しさを紛らわすべく、ゆっくり呼吸をするのに努めていた。

 

ほんの数分で、創真は湯呑みを2つトレーに乗せて持って来た。

スカーレットとウオッカの前にその湯呑みを置くと、二人に起き上がるように促した。

 

「おら、食後のお茶だ。勝敗はこのお茶を先に飲み干した方が勝ちな。温度は低くしてるから、すぐ飲めんだろ」

 

「ぅぅ……助かります」

 

「お茶なら……なんとかいけるぜ」

 

二人は苦しい胃袋にお茶を流し込めることに喜ぶ。

それで勝敗が決まるならと、湯呑みに手を掛けた。

 

ーーー創真の悪戯顔には、全く気付いていなかった。

 

 

「いくぞー、

 

ーーーよーい、どん」

 

 

二人は同時に、お茶を流し込み。

 

そして盛大に、吹き出した。

 

創真はそれを見て、からからと喉を鳴らして笑った。

 

「ゔえ゛え゛え゛え゛っ!??」

 

「ゲッホ、ゴホッ!? な、なんすかこのお茶! めっちゃクセェんすけど!!?」

 

「何って、『どくだみ茶』だよ」

 

「はあっ!? どくだみっ!?」

 

「あの雑草っすか!?」

 

「なんてもの飲ませるのよ!?」

 

二人はお茶の名前を聞いて激昂する。

だが、創真は臆することなく澄まし顔で返した。

 

「何言ってんだ。どくだみは『十薬』って言われる薬用植物だぞ。東南アジアの方じゃハーブとして食用で使われてんだ。まあ、日本じゃその癖の強い匂いとかしつこいくらい増える強い植性のせいで、一般家庭じゃ雑草扱いされてるけどな」

 

「へ、へぇ……」

 

「どくだみってただの雑草じゃなかったんすか……」

 

「どくだみ茶には整腸作用とデトックス効果があるから、食後に飲むと楽になるぞ。おら、さっさと飲め飲め」

 

「うぅ……」

 

「ぐぐぅ……」

 

見事に言い返されて、二人は渋々とお茶を飲み始める。

 

創真は「う゛えっ」とか「おえ゛」などと濁った声を発して苦戦しながらちびちび飲んでいる二人を見て楽しんでいた。

 

その様子を偶々通りかかったグラスワンダーが見かけて、創真に声を掛けた。

 

「あらぁ、お二人は何を飲んでるんですか〜?」

 

「ん? おお、グラスか。どくだみ茶だよ。大食い勝負の決着をつけたいって言うんでな」

 

「まあ、珍しいお茶飲んでますねぇ。私にも一杯頂けませんか?」

 

「おう、いいぞ。ちょっと待ってろよ。ついでにこいつらの対決見ててやってくれ」

 

「わかりました〜」

 

創真が厨房にまた戻ると、グラスワンダーは二人の前に座る。

ダイワスカーレットとウオッカは、そんなグラスワンダーを懐疑的な視線で見た。

 

「グ、グラス先輩も飲むんですか……?」

 

「めっちゃ臭いし苦いっすよ? このお茶……」

 

「ふふっ、お茶には目がないもので〜。それに『良薬口に苦し』って言いますから。身体に良いものは美味しいとは限らないものですよ?」

 

「それは、そうですけど……」

 

「それに、勝負ならば苦難を乗り越えての勝利にこそ意味があるものですし。簡単に飲めるものでは、つまらない勝負になってしまいますよ?」

 

「「た、確かに……」」

 

またも見事に論破された二人は、互いを見た。

そして、勝負している意味と、その意義をもう一度反芻し、覚悟を決める。

 

「「ウオッカ(スカーレット)には負けないっ!!!」」

 

そう叫んでどくだみ茶を一気に飲み干して、湯呑みを机に置いた。

二人は涙目になりつつ、グラスワンダーに訊く。

 

「「どっちの勝ちですか!?」」

 

「うーん、僅かにスカーレットさんの方が湯呑みを置くのが速かったですね……今回は、スカーレットさんの勝ちで♪」

 

「やったあ!」

 

「ま、マジかよ……」

 

高らかに勝利を喜ぶスカーレットと、肩を落として意気消沈するウオッカ。

そんな二人をニコニコとグラスワンダーが微笑んで見ていると、創真が戻ってきた。

 

「なんだ、スカーレットが勝ったのか?」

 

「はい〜。あ、お茶ありがとうございます」

 

「おうよ、ほい」

 

「いただきます。……んっ、ふぅ……確かに癖のある香りですが、美味しいですね♪」

 

「お、流石だなグラス。ちなみにこいつらを入れて飲むと、飲みやすくなるぞ?」

 

そう言って創真がグラスワンダーの前に置いたのは、シナモンパウダーにカルダモン、クミンのスパイスの瓶。

お茶にスパイスを入れる、という飲み方にグラスは目を丸くした。

 

「まあ。スパイスを入れるんですか?」

 

「まあ東南アジアが主流の薬用茶だからな。スパイスとの相性がいいんだろ。どくだみの香りはパクチーにも似てるしな」

 

「成程……ちなみに幸平さんのオススメは?」

 

「そうだな……シナモンなら少し甘みが増すし、カルダモンなら香りを柔らかくしてくれる。クミンなら少しピリッと刺激的になるぜ。俺はどちらかと言えば、クミンがオススメだな」

 

「ちょ、ちょっと! そんなのがあるなら先に教えなさいよ!」

 

「そうっすよ! グラス先輩だけズリーっすよ!」

 

「なんだよ、勝負だったんだから楽な道選んでもつまんねーだろ。ほら、口直しに飴やるよ」

 

「「ぐぅっ……」」

 

「ふふふ、正にぐうの音も出ない、ですね〜。私も香りや味は大丈夫なので、クミンにしてみましょうか………まあ! ほんとですね、一気にエスニックな風味になって面白いです!」

 

「だろ?」

 

「それにしても幸平さん、随分珍しいお茶を持ってますね?」

 

「薬膳とスパイスに詳しい知り合いがそれぞれいてな。料理に使える薬膳とかスパイスを相談した時にこいつを知ったんだ。整腸作用とデトックス効果、あとミネラルとカリウムも豊富などくだみ茶は栄養素的にかなり高い。スパイスにも合うから、少し濃いめに抽出したどくだみ茶を炒飯に加えてオグリによく食わせてんだ。ほら、あの大食いだから身体が負担かかってないか心配でよ。今じゃあいつの最近のお気に入りだなー」

 

「まあ……オグリさんのために?」

 

「そういえば、オグリ先輩……」

 

「最近肌とか毛艶が良いような……」

 

「あん? あー、そういやどくだみ茶は美容効果もあるって言ってたーーー」

 

どくだみ茶には血行促進作用があり、それが新陳代謝を上げて消化と吸収を促し、整腸作用とデトックス効果によって身体中の老廃物排出に繋がる。

それによって、美肌効果、ダイエット効果、むくみ防止、吹き出物や老化防止と良いことずくめの美容効果を発揮するのだ。

 

最も、それが顕著に作用するのはいくら食べてもあっという間にトレーニングでカロリーとエネルギーを消化する恐るべき消化吸収能力と新陳代謝を持つオグリキャップだからなのだが。

 

そんな理由は露知らず、創真が言い切る前にグラスが肩を掴む。

ついでに、ダイワスカーレットとウオッカもその背後に並んで創真を囲った。

 

「幸平さん、どくだみ茶を分けてくださいませんか?」

 

「「私(オレ)たちはその炒飯が食べたいです」」

 

「お、おう……」

 

その有無を言わせぬ圧力に、創真は首を縦に振るしかなかった。

 




今回は原作料理はないです。
どくだみ茶は実家の裏庭に生えてたのをおばあちゃんがお茶にしてたのをよく飲んでました。
クミンは作者のオススメです。
飲み過ぎるとお腹下すので、1日一杯が目安ですかね。

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