感想も沢山頂けて嬉しいです。頑張ります。
タイシン、ファルコ、ブライアンとピックアップが全部すり抜けるんですが誰か助けてください。
※エアグルーヴの名前ミスしてました。失礼しました。
それは、創真がトレセン学園に来る数日前。
「トレセン学園に、男子学生を編入させる……ですか?」
「うむ! 彼ならきっと、現状を打破する光となってくれるだろう!」
何を言ってるんだ。
理事長室にて、対面して座るシンボリルドルフは内心でそう思った。
確かに、現状この学園の食堂で抱えている人員不足問題は由々しき事態だ。
いくら外部から正調理師を募集しても、一向に受けてくれる人間がやってこない。
新年になってから、派遣会社から日替わりで人材を補充してなんとか繋いでいるが、同じ人間が来てくれることは3日、4日保てば良い方だ。
今食堂で頑張ってくれているスタッフたちも、本当に疲れ切ってしまっている。
カフェテリアに行くたびにシンボリルドルフはスタッフ一人ひとりに声を掛けているが、皆笑って返してくれるもその笑みに力がない。
料理長は最近更に頬がこけたように見えた。
業務改善が一向に進まず、ましてや派遣スタッフで繋ぐというのは仕事能力が育たないため、毎日新人教育をさせられているようなものだ。
来る派遣スタッフも人間性も能力の良し悪しがあり、若いウマ娘が多いこの学園に邪な考えで来る者もいた。
無論、それ相応の粛清をしたが。
ウマ娘は人間と身体の構造が違う。
運動能力で消費するカロリーやエネルギー量も、そのために摂取する栄養や食事の量も。
この学園のウマ娘は特に優秀で強者が集う。
個々でのトレーニング意識が強く、朝や夕方に自主練をする者たちが多数いる。
故に、よく食べる者が多い。
(特に一部のウマ娘は……思考が逸れたな)
「……正直なところ、私は反対です。何人もの大人が辞めているのに、学生を一人投入しただけで現状が変わるとは思えません」
「同意! だが、彼は私の友人の息子でな。その腕前もこの目でしかと見た。人柄も問題はない」
「……腕前に関しては、理事長が言うのだから問題ないのでしょう。ですが、一番の問題はその人物が
「彼が授業に出席するのは一般教養科目のみ。希望があればスポーツ栄養学にも出席するだろう。それ以外はカフェテリアでの勤務時間にあたる。そもそもとして、彼の肩書は学生ではなく職員なのだ。学園生の皆にも、そう周知させておけば多少は扱いも変わるだろう」
「………はあ」
シンボリルドルフは大きく溜息を吐いた。
そもそもとして理事長の決定である以上、生徒会長でどうこうできる問題でも、現状を改善できる手立てがあるわけでもない。
これ以上の反論も無意味と悟った。
「……分かりました。それで、彼が来るのは?」
「3日後の午前中だ。君も同席するか?」
「……その時間は別件が。早めに終われば、顔合わせぐらいはできるかと」
「了承! では、次の話だがーーー」
「お疲れ様です、会長」
「エアグルーヴ、待っていたのか?」
話を終えたシンボリルドルフが理事長室を出ると、そこに待っていたのは副会長のエアグルーヴ。
エアグルーヴはシンボリルドルフが手に持っていた書類を持って、二人並び歩く。
「いかがでしたか、報告の方は」
「恙無く終わった……と言いたい所だが。一つ、早急な会議案件ができてしまってな」
「……何か問題が?」
「ああ。詳しくは、生徒会室でメンバーと話そう。何せ校内ではまだ秘匿案件なんだ」
「……分かりました」
シンボリルドルフは物憂げに、小さく息を吐いた。
この件が学園生に伝われば、少なからず騒ぎや混乱は避けられない。
(それを最小限に抑えるため、生徒会が万全で正確な対応と情報統制を整えなければならないだろう。今は学園が春休みだから人が少ないのが救いか……。新学期前にして、前途多難だな……)
「あ、カイチョー! ねぇねぇ、お仕事終わった? トレーニング一緒にしようよー!」
「コラ、テイオー! 廊下を走るな!」
不意に廊下の先から、ブンブンと手と尻尾を振ってこちらに走ってくるトウカイテイオー。
それを注意するエアグルーヴ。
相変わらず天真爛漫なトウカイテイオーの姿を見たシンボリルドルフは小さく笑みをこぼして、こう思った。
ーーーテイオーは暫く生徒会室を出禁だな、と。
「やあ、君が幸平創真だね」
「ん? えーっと、どちら様っすか?」
「済まない、申し遅れた。この学園の生徒会長をしているシンボリルドルフだ。気軽にルドルフと呼んでくれ」
「やーご丁寧にどうもっす、ルドルフ会長さん。今度編入して来ることになった幸平創真っす」
「ああ。理事長から話は聞いている。君にはこの学園での活躍を期待している。よろしく頼むよ」
ルドルフは、理事長室から出てきて廊下を歩く幸平創真に接触する。
幸平創真という人間を見定めるため。
口調は軽く、朗らかで人当たりは良い。
人見知りはしないタイプだろう。
片眉に傷がある以外は、
握手の手を差し出し、フレンドリーに返されたその手を握るまでは。
「 ……っ」
ルドルフはその手に戦慄する。
握っただけでわかる。硬い掌と、細長くも強靭な指。
ルドルフは、過去一度だけ同じ手を握った記憶を辿った。
数多の手豆を潰し、火傷や傷を経験した研鑽され続けた料理人の手だ。
(……この年で、こんな手ができるのか?)
『腹を空かせた客が大勢いて、それを満足させて見送らないなんて“料理人”としてありえねぇっすから』
創真と理事長の面会の終わり際、ルドルフは理事長室の扉の前にいた。
そして、創真のあの言葉が聞こえたのだ。
大胆不敵な発言をするものだ、と内心抱いていた。
だが、この手が彼を証明する。
(彼は、紛れもなくプロだ。それも、並の料理人の度を超えた一級の。
……成る程、理事長の言う通りなのかもしれないな)
「……? どうかしたか?」
握手をしたまま固まったシンボリルドルフに、創真は首を傾げた。
そこでようやくシンボリルドルフは我に帰り、握手を解いた。
「……いや、なんでもない。良い手をしていると思ってな」
「まあな。
「そうか。では、これからのカフェテリアの食事、君の料理を楽しみにしているよ」
「おう、任せな! 何人来ようが満足させてやるからよ!」
「ふっ、頼もしい。ぜひ、君の鍋を振るう姿を見せてーーー
ん? 鍋を振って学べ………ふふふっ、良い駄洒落だと思わないか?」
「え」
創真は、突然駄洒落を言い出すルドルフに自身の耳を疑った。
まさか、見た目が荘厳美麗なルドルフからそんな
一体何人ものウマ娘がその見た目とのギャップに驚かされたことか。
一方、創真の反応が薄かったためか、ルドルフは見るからに耳を垂れて落ち込んでいた。
「あまり受けなかったか……良い駄洒落を思い付いたと思ったんだが」
「……あー、そんな落ち込む? 駄洒落好きなのか?」
「私は生徒会長故に、あまり学園生が気軽に話しかけてくれないんだ……だから、気軽な雑談の種になるジョークを研究しているんだが……あまり学園生には受けてくれなくてな」
「………」
それは、アプローチの仕方間違えてね?
と、言いそうになった創真だが、思いの外真剣に悩んでいるらしいルドルフに口を噤んだ。
「……ちなみに、ルドルフ会長は鍋料理なら何が好きなんだ?」
「む、鍋料理か? ……そうだな、冬に食べるなら身体の温まるチゲ鍋などはよく食べたくなるな」
「お、いいねぇ。チゲ鍋にま
「………! あっはははは!!! 『チゲ鍋にまちげえねぇ』とは!
ふふ、いい! 実に面白いな幸平くん! あはははははっ!!!」
(えー……そんなに受けるとは思ってなかったわ)
創真としては、言ってから若干後悔したのだが、ルドルフの琴線にはとても触れたようだ。
「ふふ、ふっ、はー……こんなに呵呵大笑したのは久しぶりだ。君とはとても仲良くなれそうだ」
「そりゃ良かったわ。そういえば、ここのカフェテリアと職員寮ってどこにあるんだ? 下見と挨拶だけしていきたいんだが」
「む、なら案内しよう。良い駄洒落を教えてもらった礼だ」
「マジ? この学園広すぎるから助かるわ」
「私は午後からトレーニングがあるから、短い時間になるがな。では、行こうか」
「おう、よろしくな」
そうして、創真はルドルフの案内でトレセン学園を回ったのだった。
ちなみに、
その日の午後はいつにも増してご機嫌なルドルフの駄洒落が冴えまくり、それを聞き続けて絶不調になってトレーニングを失敗する女帝がいたとか。
(何故だ……何故今日はこんなに駄洒落が連発するんだ……!?)
「もつ鍋の量は何人分
(やたら鍋料理の駄洒落が多いのも何故だ!?)
最大の被害者はエアグルーヴと、しれっと生徒会室出禁にされたテイオー
基本的には、色んなウマ娘と絡ませて一話完結で投稿できるようにしていきます。
一話一話長くなると思いますが、ご了承下さい。